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二部
◇外伝:ランヴァルドの追想◆
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今から十年近く前のことだ、親友であるザクセンに騎士団を案内していた時、ふと、アンネリースの妹であるオデット・バダンテールと目があった。
まだ少し幼さの残る容姿の彼女に、どこかで目をうばわれていた。
さらさらとしたサイドポニーの髪に、宝石のように澄んだ紫色の瞳、陶器のように白い肌。
この時はまだ、彼女に恋をしているという自覚はなかった。
それでも、心のどこかでは強く惹かれていたのかもしれない。
ふと、隣を歩いていたザクセンに問いかけられる。
「ランヴァルド、彼女が誰か知っているか?」
もちろん知っている。
だが、ザクセンの瞳に恋心のようなものを感じて、言うのをためらった。
「……オデット・バダンテール嬢だよ」
「オデット……綺麗な名前だな」
この時にはまだ、なぜ、彼女が魔術師であることを伏せたのか分からなかった。
ただ、興味津々といったようすのザクセンを見て、少しばかり胸に黒い感情がうかんだことは自覚していた。
それからしばらくすると、オデットはランヴァルドの補佐官になった。
どんどん綺麗になっていく彼女に興味を持つ男は多く、
彼女に自覚はなくとも、そういう目的で話しかける者も増えていった。
それをさりげなく追い払っていたのだが、オデットがいつも一緒に過ごす相手は決まって男爵家出身のユーグだった。
ランヴァルドとアンネリースがそうであったように、彼女たちも幼馴染なのだという。
そういえば、昔からよく一緒にいるのを見た気もする。
いつからか、自分がそんな二人の姿に嫉妬心を抱いているのに気づきはじめた。
なぜだろう、たしかにアンネリースに恋心を抱いていたはずの自分は、いつのまにかオデットに想いを寄せていたのだ。
それは幾度もともに戦場を駆け抜けたからか、それとも彼女の素直な好意に惹かれたのか、両方かもしれない。
とにかく、どうしても彼女を他の男に譲りたくないと思っていた。
そんなことになったら、自分はおかしくなってしまうのではないかと思うほど、オデットに惹かれていた。
それはまだ二人が婚約する前のこと。
ある日の夜、オデットに与えられている研究室に遅くまで明かりが灯っているのに気づいて、扉をノックしたが返事がない。
迷いはしたが、ランヴァルドが扉を開けると、オデットは机につっぷして眠ってしまっていた。
「オデット、こんなところで眠っては……」
身体に障るだろうと言いかけたところで、寝ぼけた様子の彼女がなにか呟いた。
「――……ランヴァルドさま……?」
起きたのだろうか、と思ったがどうやらそうではないらしい。
「……お慕い、しております」
「――……」
少し悲しそうに笑った彼女の言葉に、鼓動が高鳴るのを感じた。
きっと自分はずるい、とてもずるい人間だ。
バダンテール家との縁談話がある、姉のアンネリースか、妹のオデットか。
彼女をそんなふうにむりやり奪いたくないと、ずっと思ってきたのだが、それが崩れていくのを感じた。
眠っている彼女の頬に手を伸ばし、そっと触れてからはなれる。
この時には、心を決めていて、
彼女の肩に毛布をかけ、愛おしさに青い瞳を細めた。
まだ少し幼さの残る容姿の彼女に、どこかで目をうばわれていた。
さらさらとしたサイドポニーの髪に、宝石のように澄んだ紫色の瞳、陶器のように白い肌。
この時はまだ、彼女に恋をしているという自覚はなかった。
それでも、心のどこかでは強く惹かれていたのかもしれない。
ふと、隣を歩いていたザクセンに問いかけられる。
「ランヴァルド、彼女が誰か知っているか?」
もちろん知っている。
だが、ザクセンの瞳に恋心のようなものを感じて、言うのをためらった。
「……オデット・バダンテール嬢だよ」
「オデット……綺麗な名前だな」
この時にはまだ、なぜ、彼女が魔術師であることを伏せたのか分からなかった。
ただ、興味津々といったようすのザクセンを見て、少しばかり胸に黒い感情がうかんだことは自覚していた。
それからしばらくすると、オデットはランヴァルドの補佐官になった。
どんどん綺麗になっていく彼女に興味を持つ男は多く、
彼女に自覚はなくとも、そういう目的で話しかける者も増えていった。
それをさりげなく追い払っていたのだが、オデットがいつも一緒に過ごす相手は決まって男爵家出身のユーグだった。
ランヴァルドとアンネリースがそうであったように、彼女たちも幼馴染なのだという。
そういえば、昔からよく一緒にいるのを見た気もする。
いつからか、自分がそんな二人の姿に嫉妬心を抱いているのに気づきはじめた。
なぜだろう、たしかにアンネリースに恋心を抱いていたはずの自分は、いつのまにかオデットに想いを寄せていたのだ。
それは幾度もともに戦場を駆け抜けたからか、それとも彼女の素直な好意に惹かれたのか、両方かもしれない。
とにかく、どうしても彼女を他の男に譲りたくないと思っていた。
そんなことになったら、自分はおかしくなってしまうのではないかと思うほど、オデットに惹かれていた。
それはまだ二人が婚約する前のこと。
ある日の夜、オデットに与えられている研究室に遅くまで明かりが灯っているのに気づいて、扉をノックしたが返事がない。
迷いはしたが、ランヴァルドが扉を開けると、オデットは机につっぷして眠ってしまっていた。
「オデット、こんなところで眠っては……」
身体に障るだろうと言いかけたところで、寝ぼけた様子の彼女がなにか呟いた。
「――……ランヴァルドさま……?」
起きたのだろうか、と思ったがどうやらそうではないらしい。
「……お慕い、しております」
「――……」
少し悲しそうに笑った彼女の言葉に、鼓動が高鳴るのを感じた。
きっと自分はずるい、とてもずるい人間だ。
バダンテール家との縁談話がある、姉のアンネリースか、妹のオデットか。
彼女をそんなふうにむりやり奪いたくないと、ずっと思ってきたのだが、それが崩れていくのを感じた。
眠っている彼女の頬に手を伸ばし、そっと触れてからはなれる。
この時には、心を決めていて、
彼女の肩に毛布をかけ、愛おしさに青い瞳を細めた。
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