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第56話 敵驃騎兵、砲兵、歩兵壊滅
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距離2,000mを切り、襲歩で突撃を続ける騎兵およそ800に対し、九七式中戦車の新砲塔、旧砲塔の両方と、九五式軽戦車も射撃を開始した。
九七式中戦車ほかの戦車隊は、各個に目標を定めた射撃であるが、野砲と三式中戦車は斉射続行である。
距離が詰まってきたため、未来位置は予測するが、直接照準に近い射撃となる。
野砲と三式中戦車、一式砲戦車の第四斉射が騎兵集団の真ん中後方に着弾、炸裂したが、やや散布界が広く、有効となったのは4発程度であったものの、それでも、20騎ほどが吹き飛ばされた。
戦車隊の射撃は、当然、榴弾を用いて行われたところ、やはり、チハ車旧砲塔の短砲身57粍砲が最も効果を発揮した。本砲は、初速は遅いが炸薬量が多いため、榴弾の威力は大きい。
弾着の度に、10騎ほどの騎兵が宙に舞い、斃れて行く。
彼我の距離が1,000mを切るか、という辺りで、不意に騎兵集団の先頭が地中に隠れた。
巧妙に偽装された、薬研堀に落ちたのである。
深いV字型に掘られた薬研堀は、いったん落ちると、馬も人も体勢を立て直すのが困難である。
襲歩で全力疾走中だったから、後続の騎兵は、堀に気付いても止まることができずに、次から次へと落ちて行く。
先に落ちた騎兵は、馬から振り落とされながらも、何とか這い上がろうとするが、足場の悪い斜面で滑り、思う様に上がれないことに加え、後続の騎兵が落ちて来るので、馬に踏み潰される者も続出した。
運良く薬研堀に落ちなかった騎兵たちは、堀の手前で立ち往生するかウロウロ動き回るだけで、これは野砲と戦車隊による砲撃の格好の的となった。
およそ400騎ほどが、堀に落ちずに残ったものの、進撃路を探してウロついているうちに砲弾が降り注ぎ、その半数のおよそ200騎が吹き飛ばされた。
残った200騎は、それでも諦めずに、幸運にも戦車隊越壕のために用意されていた進撃路を発見し、そこを通って突撃を再開した。
すでに距離は1,000mを切っている。
ここで、歩兵隊の重機関銃、軽機関銃と歩兵銃(小銃)、戦車の車載機関銃が、一斉に射撃を開始した。
ダダダダダダ…
タタタタタタ…
ズドン、ズドン
と銃声が響き、騎兵隊の前面に射撃が集中する。
20輌近い戦車と、二個中隊の歩兵が放つ重機、軽機、歩兵銃の射撃は凄まじく、突撃する騎兵隊は、騎馬も騎兵も、次々と血飛沫を上げて斃れて行く。
「長篠の合戦は、こんなのじゃあなかったのか。」
日本軍の将兵は、誰しもがそう思った。
砲兵陣地にいたアールトやソフィアといった魔術師たちは、凄まじい砲撃の威力に圧倒され、さらに凄まじい弾幕の威力にも圧倒され、攻撃魔法を使う暇がなかったほどである。
薬研堀に落ちながら、ようやく這い上がって来た敵兵たちは、槍やサーベルを構えて突撃して来たが、
これらも機関銃や歩兵銃などの的になっただけで、次々と撃ち据えられて行った。
やがて、敵の突撃が止んだ。
主を失った馬が何頭か駆け回っているだけで、驃騎兵隊は全滅したのである。
騎兵は全滅したが、まだ敵には歩兵と砲兵が残っている。
特に歩兵は、こちらの戦力よりも数的には多く、騎兵が突撃している間に間隔を詰め、3,000mほどの距離にいて、3列横隊の戦列を二つ、縦深的に作り、300人ほどの3列横隊が前面に広がっていた。
敵の指揮官らしいのが号令を掛けているが、声はまだ聞こえない。
少し経って、横隊が前進を始めた。
ドラムの音と行進曲が、風に乗って聞こえて来る。
その後方を見ると、砲兵も、射撃準備をしながら付いて来ている。
「目標、敵砲兵。距離3,000、撃ち方始め!」
野砲と三式中戦車、一式砲戦車が、敵の砲兵目掛けて射撃を開始した。
「信管、弾帯、薬頭、基縁部、爆管ヨシ!」
山田兵長ほか野砲の装填手が、呪文を唱えるように発声し、装填前の砲弾を頭から撫で回し点検する様子は、それを見ていたデ・ノーアトゥーン属領主府兵やミズガルズ王国兵が、後日、酒場で酔っ払うと、ワインの瓶を砲弾に見立てて真似をすることになる。
歩兵の歩みの速度に合わせて粛々と前進する敵砲兵の中に砲弾が着弾し、10組ほどの砲と砲兵を吹き飛ばした。
トゥンサリル城の弾着観測所から
「初弾命中、諸元そのまま。効力射!」
という連絡が入る。
「諸元そのまま、用ー意、撃ーッ!」
各小隊長と車長の号令で、次弾が発射され、敵砲兵列の直後に弾着し、爆風が10数組の砲と兵を吹き飛ばした。
その後、彼我の距離が2,000mを切るまでに各砲が20発ずつを発射し、散開しつつあった敵砲兵を全滅させた。
歩兵は、戦列を崩さずにそのまま整然と前進を続けている。
「おいおい、奴ら騎兵と砲兵が全滅したのを見ただろうに、まだこっちへ来やがる。」
野砲の小隊長が、呆れたように呟いた。
「だが、向かって来る以上、殺るしかねぇだろうな。」
同じ陣地にいた、もう一人の小隊長が引き取って言った。
野砲の次の斉射と同時に、戦車砲も射撃を開始し、敵の歩兵戦列を削り取って行った。
「連中、伏せるっちゅうことを知らんのかいな。」
一人の歩兵分隊長の軍曹が言うと
「自分らとは、およそ常識がかけ離れているんでありましょうな。」
傍らにいた伍長が、答えるように言った。
歩兵の戦列が薬研堀に差し掛かると、後方に控えていた兵士が梯子を堀に掛け、歩兵は梯子を伝って堀へ降り、また梯子を伝って堀のこちら側へと登って来た。
「準備のよろしいこって。」
それを見た兵隊の誰かが言った。
しかし、距離が1,000m近くまで縮まったため、騎兵を攻撃した時と同じように、戦車の車載機関銃と歩兵中隊の銃が発砲を開始した。
砲撃で半数以下に撃ち減らされた歩兵の戦列が、血に染まって次々と斃れて行く。
「クソッ、そんなに死にてえのか。」
重機関銃を発射している一番銃手の伍長が、呆れたように呟いた。
数を減らした敵の歩兵は、さらに次々と撃ち据えられ、もう前進できる状況ではない。
それでも敵歩兵は、訓練で使う射撃の的のように、次から次へと向かって来る。
「ええい、いい加減にしやがれ、チクショウめ!」
何十発目かの弾丸を発射し、ボルトを操作した上等兵が、これも呆れたように毒付いた。
延々と続いていた敵歩兵の前進とこれを迎え撃つ射撃は、歩兵の全滅をもってようやく終了となった。
九七式中戦車ほかの戦車隊は、各個に目標を定めた射撃であるが、野砲と三式中戦車は斉射続行である。
距離が詰まってきたため、未来位置は予測するが、直接照準に近い射撃となる。
野砲と三式中戦車、一式砲戦車の第四斉射が騎兵集団の真ん中後方に着弾、炸裂したが、やや散布界が広く、有効となったのは4発程度であったものの、それでも、20騎ほどが吹き飛ばされた。
戦車隊の射撃は、当然、榴弾を用いて行われたところ、やはり、チハ車旧砲塔の短砲身57粍砲が最も効果を発揮した。本砲は、初速は遅いが炸薬量が多いため、榴弾の威力は大きい。
弾着の度に、10騎ほどの騎兵が宙に舞い、斃れて行く。
彼我の距離が1,000mを切るか、という辺りで、不意に騎兵集団の先頭が地中に隠れた。
巧妙に偽装された、薬研堀に落ちたのである。
深いV字型に掘られた薬研堀は、いったん落ちると、馬も人も体勢を立て直すのが困難である。
襲歩で全力疾走中だったから、後続の騎兵は、堀に気付いても止まることができずに、次から次へと落ちて行く。
先に落ちた騎兵は、馬から振り落とされながらも、何とか這い上がろうとするが、足場の悪い斜面で滑り、思う様に上がれないことに加え、後続の騎兵が落ちて来るので、馬に踏み潰される者も続出した。
運良く薬研堀に落ちなかった騎兵たちは、堀の手前で立ち往生するかウロウロ動き回るだけで、これは野砲と戦車隊による砲撃の格好の的となった。
およそ400騎ほどが、堀に落ちずに残ったものの、進撃路を探してウロついているうちに砲弾が降り注ぎ、その半数のおよそ200騎が吹き飛ばされた。
残った200騎は、それでも諦めずに、幸運にも戦車隊越壕のために用意されていた進撃路を発見し、そこを通って突撃を再開した。
すでに距離は1,000mを切っている。
ここで、歩兵隊の重機関銃、軽機関銃と歩兵銃(小銃)、戦車の車載機関銃が、一斉に射撃を開始した。
ダダダダダダ…
タタタタタタ…
ズドン、ズドン
と銃声が響き、騎兵隊の前面に射撃が集中する。
20輌近い戦車と、二個中隊の歩兵が放つ重機、軽機、歩兵銃の射撃は凄まじく、突撃する騎兵隊は、騎馬も騎兵も、次々と血飛沫を上げて斃れて行く。
「長篠の合戦は、こんなのじゃあなかったのか。」
日本軍の将兵は、誰しもがそう思った。
砲兵陣地にいたアールトやソフィアといった魔術師たちは、凄まじい砲撃の威力に圧倒され、さらに凄まじい弾幕の威力にも圧倒され、攻撃魔法を使う暇がなかったほどである。
薬研堀に落ちながら、ようやく這い上がって来た敵兵たちは、槍やサーベルを構えて突撃して来たが、
これらも機関銃や歩兵銃などの的になっただけで、次々と撃ち据えられて行った。
やがて、敵の突撃が止んだ。
主を失った馬が何頭か駆け回っているだけで、驃騎兵隊は全滅したのである。
騎兵は全滅したが、まだ敵には歩兵と砲兵が残っている。
特に歩兵は、こちらの戦力よりも数的には多く、騎兵が突撃している間に間隔を詰め、3,000mほどの距離にいて、3列横隊の戦列を二つ、縦深的に作り、300人ほどの3列横隊が前面に広がっていた。
敵の指揮官らしいのが号令を掛けているが、声はまだ聞こえない。
少し経って、横隊が前進を始めた。
ドラムの音と行進曲が、風に乗って聞こえて来る。
その後方を見ると、砲兵も、射撃準備をしながら付いて来ている。
「目標、敵砲兵。距離3,000、撃ち方始め!」
野砲と三式中戦車、一式砲戦車が、敵の砲兵目掛けて射撃を開始した。
「信管、弾帯、薬頭、基縁部、爆管ヨシ!」
山田兵長ほか野砲の装填手が、呪文を唱えるように発声し、装填前の砲弾を頭から撫で回し点検する様子は、それを見ていたデ・ノーアトゥーン属領主府兵やミズガルズ王国兵が、後日、酒場で酔っ払うと、ワインの瓶を砲弾に見立てて真似をすることになる。
歩兵の歩みの速度に合わせて粛々と前進する敵砲兵の中に砲弾が着弾し、10組ほどの砲と砲兵を吹き飛ばした。
トゥンサリル城の弾着観測所から
「初弾命中、諸元そのまま。効力射!」
という連絡が入る。
「諸元そのまま、用ー意、撃ーッ!」
各小隊長と車長の号令で、次弾が発射され、敵砲兵列の直後に弾着し、爆風が10数組の砲と兵を吹き飛ばした。
その後、彼我の距離が2,000mを切るまでに各砲が20発ずつを発射し、散開しつつあった敵砲兵を全滅させた。
歩兵は、戦列を崩さずにそのまま整然と前進を続けている。
「おいおい、奴ら騎兵と砲兵が全滅したのを見ただろうに、まだこっちへ来やがる。」
野砲の小隊長が、呆れたように呟いた。
「だが、向かって来る以上、殺るしかねぇだろうな。」
同じ陣地にいた、もう一人の小隊長が引き取って言った。
野砲の次の斉射と同時に、戦車砲も射撃を開始し、敵の歩兵戦列を削り取って行った。
「連中、伏せるっちゅうことを知らんのかいな。」
一人の歩兵分隊長の軍曹が言うと
「自分らとは、およそ常識がかけ離れているんでありましょうな。」
傍らにいた伍長が、答えるように言った。
歩兵の戦列が薬研堀に差し掛かると、後方に控えていた兵士が梯子を堀に掛け、歩兵は梯子を伝って堀へ降り、また梯子を伝って堀のこちら側へと登って来た。
「準備のよろしいこって。」
それを見た兵隊の誰かが言った。
しかし、距離が1,000m近くまで縮まったため、騎兵を攻撃した時と同じように、戦車の車載機関銃と歩兵中隊の銃が発砲を開始した。
砲撃で半数以下に撃ち減らされた歩兵の戦列が、血に染まって次々と斃れて行く。
「クソッ、そんなに死にてえのか。」
重機関銃を発射している一番銃手の伍長が、呆れたように呟いた。
数を減らした敵の歩兵は、さらに次々と撃ち据えられ、もう前進できる状況ではない。
それでも敵歩兵は、訓練で使う射撃の的のように、次から次へと向かって来る。
「ええい、いい加減にしやがれ、チクショウめ!」
何十発目かの弾丸を発射し、ボルトを操作した上等兵が、これも呆れたように毒付いた。
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