日本帝国陸海軍 混成異世界根拠地隊

北鴨梨

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第66話 挺身兵、エルフの集落防衛

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「そのアールヴル、つまりエルフの集落は、あまり外界との交流を持たない様子で、エルフ以外の種族を見かけることはありませんでした。」

 再び話を始めた鹿島少尉は、いったん麦酒を一口飲んでから、次のように語り始めた。

・自分たちは食客のような扱いをされているように思えたが、常に見張られている感じがした。「この世界」について質問しても、あまり答えてもらえなかった。

・4日ほど経ってから、集落へ外敵の侵攻があった。「ゴブリン」とかいう小鬼多
 数が押し寄せて来たもので、住人によれば、たまにあるということであった。

・弓矢と刀剣を応戦する住人たちの戦況が、一時、芳しくないように思われたた
 め、自分たちも軽機、機関短銃、99式歩兵銃などの装備で加勢することにした。
 集団で押し寄せるゴブリンの群れに対して、日本軍の火器は効果的で、門を突
 破して侵入するゴブリンの死体の山を築いた。

・そのうち、身の丈6尺くらいはある、ギガントゴブリンとかいう巨躯のゴブリン
 が現れ、一時苦戦したが、新規に配備されていた四式噴進砲で斃した。


 ここで花川特務少尉が

「噴進砲とは?」

と質問すると、鹿島は

「俗に言う『ロタ砲』のことで、噴進式、つまりロケット推進で、タ弾、対戦車用の穿甲榴弾のことですが、これを発射するのでそう呼ばれています。」

 鹿島が説明したとおり、「ロタ砲」は、ドイツ軍のパンツァーシュレック、米軍のバズーカ砲に当たる、ロケットランチャーのことで、日本軍でも、ようやく試作から本格生産に移行しようかという、対戦車用の新兵器であった。


・ギガントゴブリンが、ロタ砲の攻撃で文字通り木っ端微塵になって斃されると、
 それまで女性にしか興味を示さず、いくら撃ち倒しても前進し、怖いもの知らず
 に思われたゴブリンの群れが総崩れとなり、先を争って逃げ始めた。

・エルフの戦士たちが追撃を行い、相当な数のゴブリンを討ち取ったようである
 が、自分たちは追撃戦にはほとんど参加しなかった。

・戦いが終了してから、自分たちは集落の長の家に招待を受け、歓待された。一緒
 に戦ったことで、相手の信頼を得たことに違いなかったが、自分たちも、エルフ
 たちが戦友の如く思われるようになった。

・その後、見張られているような感覚も無くなり、行動も自由になった。「この世
 界」についても、詳しく教えてもらえるようになった。また、降下後、リヤカー
 に積み切れず現場に隠匿・残置した物資の回収や、自分たちが発見できなかった
 物料箱の捜索・回収もやってくれた。

・おおよその情勢を教えてもらったが、アールヴルは、たくさんの集落を作ってい
 て、その集落が集まって、ブリーデヴァンガル属領の中の自治領的存在となって
 おり、外部とは、必要最小限度の往来を行っているのみ、ということだった。

・数日後、今度は属領主都に「不思議なワイバーン」と「浮かべる城のような鉄の
 船」出現の情報が、商人から集落にもたらされた。

・間違いなく、自分たちと同じ世界から誰かが来たんだと思った。すぐにでもデ・
 ノーアトゥーンの街へ行きたかったが、距離があり、徒歩では日数がかかること
 と、転移して来たのが米軍である可能性もあったことから、慎重に行動すること
 にした。

・ちょうど良く、デ・ノーアトゥーンの街にあるアールヴル「自治領」の連絡事務
 所のような場所へ赴く馬車があったので、便乗させてもらうことにした。ただ、
 全員がまとめて赴くことは許されず、何人かを置いて行くように求められたの
 で、部下の曹長以下3名を残置した。

・1日半ほどかけてデ・ノーアトゥーンの街に着いた。外周城壁の内部に立ち入る
 ためには、身分を明らかにしなければならないとうではあったが、自分たちは
 エルフの随行というような形で街へ入ることができた。

・街に来てから、我が軍戦車の行進や陸軍部隊、海軍陸戦隊の戦闘をはじめ、海軍
 艦艇の本格的対空戦闘に龍退治の空中戦など、全て我が軍によるものであり、こ
 の世界に来たのが日本軍であったとこの目で確認することができて、とても嬉し
 かった。

・あとは、陸海軍の部隊と、どう接触するかの機械を窺っていたところ、話し易そ
 うな海軍の下級士官を見つけ、話し掛けられそうになったので、こちらから接触
 することにした。


「ほほう、そちらもゴブリンの襲撃を受けましたか。」

 花川が、興味深そうに聞いた。

「そうです。自分らは今、冒険者ギルド会館の中に間借りしている、アールヴル『自治領』の事務所におりますが、ギルド関係者の話だと、アールヴル、つまりエルフの戦士は、傭兵の供給源なのだそうです。したがって、デ・ノーアトゥーンの街が襲撃されるか、または襲撃されるおそれがあれば、エルフの戦士を雇うことになるはずなので、集落を先制もしくは同時攻撃することで、これを阻止しようとしたと考えられる、とのことであります。」

 そう言うと、鹿島は麦酒で喉を湿らせた。

「なるほど。実際、デ・ノーアトゥーンの防衛線では、エルフ戦士はともかく、『冒険者』とかいう連中をギルドで掻き集めたと聞きますからな。」

 花川も麦酒をグイっとあおった。

「鹿島少尉はご存じかどうか分かりませんが、当地の我々海軍と陸軍は、『ブリーデヴァンガル方面混成根拠地隊』というものを編成し、属領主府との交渉ごとに当たることとしております。少尉たち挺身隊の皆さんも、その一員となるのがよろしいかと思います。」

 花川が説明すると、鹿島は

「根拠地隊、ですか。」

と、少し怪訝そうな顔をしたが、「根拠地隊」とは、そもそも海軍の組織名称であるから無理もないと言える。

「そうです。まあ、海軍と陸軍で共通の組織を立ち上げるに当たり、何かほかの適用な名称があれば良かったのかも知れませんが、『混成』という言葉で逃げを打っているようなものでしょう。」

 花川は一息つくと続けた。

「いずれにせよ、海軍省やどこかの艦隊の認めたものではなく、臨時のものですが、海軍少将を司令官とする根拠地隊の体裁は一応整っております。差し支えなければ、明朝8時…ああ、我々の暦で言えば元旦になりますか。商工ギルド会館で待ち合わせましょう。いえ、商工ギルド会館は、冒険者ギルドの近くですから、直ぐお分かりになりますよ。」
 
 鹿島は、一瞬、考えてから

「分かりました、明日0800、商工ギルド会館でお会いしましょう。」

 その返事を聞いた花川は

「話は決まった。ところで鹿島さん、もう少し飲んで行かれますよね。」

と言い、女給を呼んで追加の麦酒と肴を注文した。
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