日本帝国陸海軍 混成異世界根拠地隊

北鴨梨

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第158話 野盗騎兵、全滅

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「九五式軽戦車改の一丁上がりだ!」

 朝日大尉は満足した。

 これで、防御は格段に向上し、敵の機関銃弾すらプスプスと貫通する情けない装甲とはおさらばで、しかも、重量の増加は僅かであって、軽快さは全く失われていない。 

 前方機銃発射口や開閉式の点視孔、車体前部上面の変速機トランスミッション点検口扉への追加装甲も、上手に処理されている。

「御影軍曹、どうだ、ミスリル追加装甲が施された気分は?」

 上機嫌の朝日大尉に尋ねられても、車長の御影には、今一つピンと来ないらしく

「はあ、まだ実感が湧いて来ないであります。」

と答えただけだった。

 御影のリアクションはともかくとして、その日のうちに、5輌ある九五式軽戦車全てについて、装甲の追加を行ってもらった。

 第一線での兵器の改造について

「陛下から賜った兵器に、勝手な改造を加えるのは許されない。」

などと言う者もいるが、朝日の部隊に、そのようなことを口にする者はいなかった。

 あとは塗装であるが

「根室か樽前山丸の補給物資の中に、塗料があれば良いのだが。」

と、青白いミスリルの光沢を放つ装甲板を見て、朝日は思った。

 とりあえず、それはブリーデヴァンガル島に帰ってからのことである。

 ◆◆◆◆

 ミスリル鉱山奪還後、ヴィルタネン准男爵率いるミズガルズ王国軍は、ヴァナヘイム王国軍の再襲来に備え、しばらくの間は、そのまま駐屯することとなった。

 朝日大尉以下の日本軍部隊は、王都クラズヘイムを経由して、ブリーデヴァンガル島へ帰還する。

 ただし、馬車の数が不足しているため、歩兵と陸戦隊の徒歩部隊の輸送は、2回に分けて行うことにした。

 帰還に際して、ヴィルタネンとドワーフのミスリル工房マスターであるカール・スミスから、王都やデ・ノーアトゥーンにも、ドワーフの工房は存在するため、大量のミスリル鉱石とミスリルの圧延板の輸送を委ねられた。

 無論、圧延板は、戦車の追加装甲に用いられる予定である。

 ミスリルを搭載した自動貨車トラックと馬車を、戦車と軽装甲車、装甲兵車、兵員が乗った馬車が護衛する隊形を組んだが、全部合わせて50台に達する大キャラバンである。

 基本は2列、ミスリル搭載車の部分のみ3列として縦隊を組んだ。

 王都までは、人が小走りに走る程度の馬車の速度に合わせて、2昼夜は必要となる。

 貴重な戦略物資のミスリルを輸送しているため、日本軍の車輛部隊のみで王都まで駆け抜けたいところであったが、ミスリル全てを輸送するのは車輛が足りず、馬車を使用せざるを得ないことから、時間を要することは仕方がなかった。

 車列が出発した初日は何事もなく済んだが、2日目の朝、車列が宿営地を出発してすぐのことである。

 街道脇の林から、胸甲を身に着けた竜騎兵が30騎ほど現れた。

 朝日は、道草無用とばかりに、その場を通り過ぎようとしたが、隊長らしい騎兵が朝日の一式中戦車に近寄り、並走しながら

「我は、ミズガルズ王国騎士ヘルト・ファン・エトホーフトなり。その車列、停止されたい。」

と叫んだ。

 朝日は、そのまま無視を続けたが、騎士エトホーフトを名乗ったその騎兵は、さらにしつこく停止を求め、ついにはマスケット短銃を取り出し

 ドン

と頭上に向けて発砲した。

 発砲した折、右手の裾から、何かの刺青がチラリと見えた。

 朝日は

「何のつもりだ!」

と凄んだ。

「とにかく、停まっていただけませんか。」

 エトホーフトは、車列の停止に拘る。

「停止なぞせんでも、話はできるだろう。早く済ませてくれ。」

 朝日は停止に応じない。

 このエトホーフトと名乗った騎士であるが、朝日には、どうにも胡散臭く感じられた。

「では、申し上げる。貴殿らは、ミスリルを輸送中とお見受けするが、ここからは、私たち騎士団が護送いたします。」

 エトホーフトの言葉に

「我々の車列に合同するということかね?」

 朝日が問うと

「いえ、この後は、我々がミスリルを輸送するということで、皆様はお役御免ということになります。」

 エトホーフトは、シレっとして答えた。

 車列の周りの騎兵は、いつの間にか4~50騎に増えている。

「誰だ、そんなことを命じた奴は?」
「誰の命令でも関係ない!さっさとミスリルを寄越せ!」
「やれるものか。こっちはミズガルズ国王の命令で動いていたんだ!」

 朝日も譲らない。

 すると、ついにしびれを切らしたのか、エトホーフトを名乗ったその騎兵が、スラリと抜いた頭上でサーベルを振り回すと、車列の前方に、200騎ほどの騎兵が現れた。

「おとなしくミスリルを渡せば良いものを。後悔させてやる!」
 
 そうエトホーフト吐き捨てると、エトホーフト以下の騎兵たちは、前方の騎兵たちのところへ駆けて行き、一つの塊となった。

 ラッパが鳴り、騎兵の列が前進を始める

「ほお。野盗風情が、一丁前に、本物の騎兵気取りか。」

 朝日は

「カク、カク、カク、こちらアサ。半円陣を形成しミスリル搭載車輛を守れ。戦車砲斉射用意、目標前方の騎兵群。その後は機銃にて制圧せよ 終ワリ。」

と、無線で各車輌に指示を出し、自らも車輛を移動させながら射撃準備をした。

「打ち方、始め!」

 無線を通じた号令で、各戦車が、戦車砲を斉射した。

 ドドド―ン

 ドドーン

 三式中戦車の75㎜砲から九五式軽戦車の37㎜砲まで、各種口径砲が一斉に火を噴く。

 3列横隊の相手は、すでに速足トロットから駆け足キャンターに移っている。

 その前面で、戦車砲弾が一斉に炸裂した。

 着弾地点に差し掛かった騎兵は、馬諸共に吹き飛ばされ、前面で砲弾が炸裂した馬は、驚いて立ち上がってしまっている。

 この一撃で、騎兵集団は、5~60騎が失われた。

 しかし、なおも前進を続けていて、ついには襲歩ギャロップに達している。

 そこへ、各車の車載機関銃の掃射が襲い掛かった。

 騎兵たちは、ある者はサーベル、ある者は槍を構え、突進して来るが、車載機関銃の銃弾が騎兵自身にあるいは馬に命中し、次々と打ち据えられて行く。

 運良く、戦車の車列まで到達できた騎兵も、戦車砲塔の点視孔からの拳銃の射撃や、後方で待ち構えていた、歩兵の重機関銃や軽機関銃の射撃で斃されて行く。

 こうして、10分も経たないうちに、エトホーフト以下の騎兵たちは、全滅した。

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