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第8話 小話 長姉と弟皇太子
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その日、デビュタントを控えたテルス=ハデス帝国の第一王女エリザヴェータと隣国で友好国のヘルメス公国第三公子アルベルトとの婚約が発表された。
エリザヴェータはプラチナブロンドに青い目で、父王配フランツに良く似た見た目の、涼やかな美貌の少女であるがその薄い色味が寂しげに、地味目だと言われていた。
大陸一の美少女、天使の生まれ変わりと言われた母女帝マリアの面影は無かったが、厳しい帝王学を優秀に修め、少しずつ始めいている母の職務の補佐や社交も卒無くこなす姿は為政者の顔を覗かせていた。
寧ろ、宰相や文官からは同じ時分の女帝マリアよりも余程出来が良いと影では評価されてもいた。
年子の弟カールヨハンは、成人前の12才で皇太子として立太子され、こちらも年端も行かぬのに実直な職務遂行に、帝国の未来は明るいのだと要職の者たちはそう囁いていたのだった。
婚約発表の後、家族での祝いの晩餐も終えた頃、エリザヴェータの後宮の執務室にカールヨハンがそっと訪ねた。
「こんな日まで執務ですか、姉上。」
カールは自室に併設された執務室で書類を裁いている姉に非難めいた声をかけた。
「あら、カール。少しかけて待ってて貰える?明日の閣議に陛下が出す外交案をちょっと不安で見返しているのよ。」
エリザヴェータはカールに視線を向けると席を進め、また素早く書類に視線を落とした。
席に着いたカールに侍女がティーカップを置いた。
香り高い紅茶の香りを飲みながら、姉が一段落つくのを待った。
「お待たせしたわね。あ、エルザ。カールにももう一杯お茶を。そうしたらもう下がって良いわ。ドアの外にはカールの護衛がいるのだから、貴女はもう上がりなさい。」
二人にお茶を淹れ侍女が下がると、先に声を上げたのはカールだった。
「姉上、やはりアルベルトと婚約したのだね。」
無表情な顔つき、抑揚の無い声、普通の人ならその言葉の真意を悩むところだろう。
だがしかし、幼い時より一緒に学び過ごしてきた、良く似た面立ちの姉弟はその言わんとする事が直ぐに理解できたのだった。
「ええ、本当に。この先の展開も同じになるのでしょうね。」
特に気負いのない声色でそうエリザヴェータが茶器を手に取りながら言った。
「宰相など、格下国の三男坊を婿入りさせる意味がわからんと嘆いていたよ。」
「何か陛下の深いお考えがあるのでしょう。」
「深いものか。リンネ王国と帝国を二分してしまっただろ、あっち側はネプトス王国とクロノス王国という衛生国を2つ持っている。我が帝国もハデス王国と父の生家のモントス公国の2つだ。ユラユラ揺れているヘルメス公国を我が衛生国に据えて、リンネ王国より数の優位を持ちたいというだけさ。」
変わらず抑揚の無い冷たい声でカールがそう言った。
「ヘルメス公国は北側のウラヌス王国と西側のユメテス帝国の連合国と国境線で小さな紛争が頻発しているものね、帝国の傘の下に入りたいのでしょうね。とは言え、次男殿はリンネ王国の侯爵令嬢が王子妃として嫁ぐとか。相変わらずの二元外交、どうなのかしらね。」
エリザヴェータはうっそりと笑みを見せた。
「まあ、これでマリアンナの話が単なる夢物語では無いと証明された。姉上にはご不便かけるが、暫く愚者の相手をしてやってくれ。」
カールが、滅多にみせない右の口端を上げて歪んだ笑みを見せた。
「カール、その笑みはまるで悪役のようだから、およそではしない方が良いわ。」
エリザヴェータの指摘をまるっと無視してお茶を飲み終えたカールが立ち上がり、短時間で姉弟の語らいは終わった。
エリザヴェータはプラチナブロンドに青い目で、父王配フランツに良く似た見た目の、涼やかな美貌の少女であるがその薄い色味が寂しげに、地味目だと言われていた。
大陸一の美少女、天使の生まれ変わりと言われた母女帝マリアの面影は無かったが、厳しい帝王学を優秀に修め、少しずつ始めいている母の職務の補佐や社交も卒無くこなす姿は為政者の顔を覗かせていた。
寧ろ、宰相や文官からは同じ時分の女帝マリアよりも余程出来が良いと影では評価されてもいた。
年子の弟カールヨハンは、成人前の12才で皇太子として立太子され、こちらも年端も行かぬのに実直な職務遂行に、帝国の未来は明るいのだと要職の者たちはそう囁いていたのだった。
婚約発表の後、家族での祝いの晩餐も終えた頃、エリザヴェータの後宮の執務室にカールヨハンがそっと訪ねた。
「こんな日まで執務ですか、姉上。」
カールは自室に併設された執務室で書類を裁いている姉に非難めいた声をかけた。
「あら、カール。少しかけて待ってて貰える?明日の閣議に陛下が出す外交案をちょっと不安で見返しているのよ。」
エリザヴェータはカールに視線を向けると席を進め、また素早く書類に視線を落とした。
席に着いたカールに侍女がティーカップを置いた。
香り高い紅茶の香りを飲みながら、姉が一段落つくのを待った。
「お待たせしたわね。あ、エルザ。カールにももう一杯お茶を。そうしたらもう下がって良いわ。ドアの外にはカールの護衛がいるのだから、貴女はもう上がりなさい。」
二人にお茶を淹れ侍女が下がると、先に声を上げたのはカールだった。
「姉上、やはりアルベルトと婚約したのだね。」
無表情な顔つき、抑揚の無い声、普通の人ならその言葉の真意を悩むところだろう。
だがしかし、幼い時より一緒に学び過ごしてきた、良く似た面立ちの姉弟はその言わんとする事が直ぐに理解できたのだった。
「ええ、本当に。この先の展開も同じになるのでしょうね。」
特に気負いのない声色でそうエリザヴェータが茶器を手に取りながら言った。
「宰相など、格下国の三男坊を婿入りさせる意味がわからんと嘆いていたよ。」
「何か陛下の深いお考えがあるのでしょう。」
「深いものか。リンネ王国と帝国を二分してしまっただろ、あっち側はネプトス王国とクロノス王国という衛生国を2つ持っている。我が帝国もハデス王国と父の生家のモントス公国の2つだ。ユラユラ揺れているヘルメス公国を我が衛生国に据えて、リンネ王国より数の優位を持ちたいというだけさ。」
変わらず抑揚の無い冷たい声でカールがそう言った。
「ヘルメス公国は北側のウラヌス王国と西側のユメテス帝国の連合国と国境線で小さな紛争が頻発しているものね、帝国の傘の下に入りたいのでしょうね。とは言え、次男殿はリンネ王国の侯爵令嬢が王子妃として嫁ぐとか。相変わらずの二元外交、どうなのかしらね。」
エリザヴェータはうっそりと笑みを見せた。
「まあ、これでマリアンナの話が単なる夢物語では無いと証明された。姉上にはご不便かけるが、暫く愚者の相手をしてやってくれ。」
カールが、滅多にみせない右の口端を上げて歪んだ笑みを見せた。
「カール、その笑みはまるで悪役のようだから、およそではしない方が良いわ。」
エリザヴェータの指摘をまるっと無視してお茶を飲み終えたカールが立ち上がり、短時間で姉弟の語らいは終わった。
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