【完結】断頭台で処刑された悪役王妃の生き直し

有栖多于佳

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第39話 母娘の語らい

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その日の晩餐に母マリアは姿を見せなかった。



「すまないね、マリアンナ。君のせいではないんだ、どうやら私に怒ってしまったようで夫人の間に籠城してしまったんだ。」

申し訳ないと眉を下げ情けない顔で父が謝罪してきた。



「ええと、お父様大丈夫ですの?」

(うちの両親も夫婦喧嘩するんですのね!)



表面上の顔は冷静さを保っているように見せてはいるが、胸中は目の前で情けない顔をしている父と先程の赤く染まった顔で叫んで走り去ってしまった母の姿を思い出して、あわわと驚きが止まらないマリアンナであった。



「あ~、うん、大丈夫だ、~たぶん。」

目を泳がせながら力なく答えるのを聞くに、



(絶対、大丈夫じゃないわね。どうして、)

「どうして、お母様にキチンとスケジュールをお伝えしませんでしたの?侍女や側近から良く漏れませんでしたわね。」

「ああ、そりゃ、誰にも伝えていなかったからね。」

父がしてやったりの顔で軽口を叩いた。



「えっと、お父様?」

「だから、マリーが今日来ることを知っていたのは私だけだ。」

「は?」

「ん?」

何か問題でも?と目で問いかけてきた父に、

「はああああああ~?」

と、地を這うような不機嫌な声をあげたのだった。



「お父様、わたくしの従者たちは今どうしておりますの?随分大所帯でやって来たのですもの、受け入れ体制が取れず騒ぎになっているのでは?」



食事にしたって部屋の支度にしたって、混乱していることは想像に難くない。

(そりゃあお母様も籠城するわ、お母様の側仕えも一緒になってお父様を非難したのでしょう、いや家令こそサプライズってなに言ってんだ!と顔を青くしながら叫びたかったでしょうね。)



「マリーの従者の受け入れ体制は前もって整えさせていたから大丈夫だろう、まあ多少は混乱したかもしれないが些末なことだ。」

父は鷹抑にそう言った。



「些末って、」

マリアンナが呆れた声をあげると、

「些末なことさ。マリアの普段の姿を娘に見せれるタイミングなど今日この時しか無いのだから。マリアは良く周りを見ているからね、もし家令に伝えていたら使用人たちの動きでバレてしまう。そうしたら君の良く知っている女帝の仮面を被って待ち受けるだろう。それでは意味が無いんだ。」

父は小さく笑いながら、ため息をついて答えたのだった。



朝食にも母マリアは顔を見せない。

さすがにこのまま放置も出来ないと、家令を呼んで挨拶したい旨を伝えてもらった、勿論、マリアンナの思惑ではないが急な来訪の詫びもした。



父と同じ年だという家令は、

「いいえマリー様がお気に為さる事など一つもございません。いつでもフラッと気軽にお訪ね頂いても大歓迎でございます。とはいえ、マリア様にもお心構えをする準備時間もお必要です。フランツ様はご自分が気安い質でいらっしゃいますから、少々、繊細な心の機微に疎いのです。」

そう父に苦言を呈したものの、そこには確かな絆が有るように感じられた。



「マリー様のお二人をご心配されるお気持ち、キチンとマリア様にお伝え致します故、ご心配召されぬよう。それでは。」

家令はそう言って出ていった。



確かに母に伝わったようで、午後のお茶の時間に面会する運びになった。



離宮のティサロンは大きなガラス窓の向こうに青く澄んだ湖が一面見渡せる絶景で、陽光も燦々と差し込み眩いばかり。

品の良いテーブルとソファが設えてあり、そこに美しく着飾った貴婦人が凛とした姿で座っていた。



その姿は見慣れた肖像画に良く描かれていた女帝マリアのままであった。

父は隣には座らせて貰えなかったようで、1人掛けのソファに埋もれていた。



「お久しぶりでございます、お母様。昨日は行き違いで、突然の来訪となってしまいご迷惑おかけしました事お詫び申し上げます。」

マリアンナが丁寧な挨拶をした。



「お久しぶりです、マリアンナ。いいえ、昨日のことはこちら側の不備、あなたの詫びは必要ありません、寧ろ詫びるのは悪戯が過ぎたお父様の方でしょう。」

いつもの表情の無い顔であったが、その声は嫌味をたくさん含んでいて、しかしチラリとも視線を父に向ける事もなくそう返してきた。



「さあ、マリー、席に座りなさい。」

母が声をかけると、父は自分の横の1人掛けソファの隣の席を指した。



父の指定した席に座り、母の侍女が香り高いお茶をサーブすると、部屋から退出してしまった。



美しい湖を見ながら、いえ、美しい湖とその手前に座りお茶を飲む母を見つめながら、マリアンナも静かにお茶を飲んだ。



部屋に静寂が広がる。



(気まずいですわ、話を振らなければ、とはいえ招かれた身。話を振って貰わないとマナー違反ですわね、なんでもいいんで、とにかく口火を切ってもらえないのでしょうかね、お父様?)



そんな気持ちを込めて横の席の父をみれば、父が何とも情けない顔で口を結んでいた。



(え、お茶も飲まないんですの?どうしたんですの、お父様?)

マリアンナは、何度も目線で語りかけるも、父は一言も声を出さず話もせず、茶も飲まず、ただじっとしているだけ。

居たたまれないマリアンナは、母を上目遣いに伺った。



暫く落ち着かない静寂に身を委ねていると、母が

「マリアンナ、薬草について知りたいと、な。わたくしが師事しているネクロという大学教授がいるので、話をつけてあるから教えを乞いなさい。」

そう伝えてきた。



静寂に居たたまれず、手にしたお茶は母も自分も既に飲み終えている。

母がカップを置いて、茶会の終了を告げようとした瞬間、



「薬学の教授に師事出来るのはありがたいのですけれど、わたくしは全くの素人。初めはお母様がお教え願えませんか?」

マリアンナが真っ直ぐ視線を母に合わせてそう頼んできた。



「そ、そう。…なぜわざわざ遠路遥々やって来てまで、わたくしに?」

母は小さく息を飲んだ後、質問をした。



「実は難しい数式を教えて欲しいと家庭教師をお願いしたドプラー教授が、『普遍的な問題の解決を研究している』お母様に教えを乞うべきだと仰いまして。それについても、どんなことかとお聞きしたくて。」

マリアンナが情けない顔で答えた。



「全く相変わらず小難しい言い回しをして、それじゃあ何を言ってるか、貴女、わからなかったでしょう。そんな頓知のようなことの為にこんな遠くまで来て。はあ、頭の痛いこと。」

母は本当に頭が痛いのかこめかみを押さえて言った。

「普遍的な問題とかじゃなくて、生んだ子が幼く亡くなること無く健やかに育つように願うのは、どこの母親も必ず願うことでしょう。それだけよ、学術的でなくってがっかりしたでしょ?全く…」



「お母様はどうしてそう思ったの?きっかけがあったのではなくて?」

マリアンナの素朴な疑問に、母は一瞬目を見開き、小さくため息を溢した。



「最初にエリザヴェータを、続けてカールとオフィーリアを生んで。その次はすぐに流れてしまったのよ。腹の中で育たなかったの。妊娠したらそのまま生まれて来るものだと思っていた自分の浅はかさを恥じて、出産や乳幼児について遅ればせながら調べたのよ。そうしたら、多くの女性は出産で命を落としているし、生まれた子は王族の子でさえ半分は死産や病気で夭逝してしまうと知って。急いで、わたくしが生んだ子供たちがちゃんと成人まで育つように環境を整えよう、そう思っただけ。アンドレが言うような研究なんてものでは無いのよ。」



母が俯き加減でボソボソ話す姿を初めてみて、マリアンナは衝撃を受けていた。

マリアンナの知る母は女帝マリアの姿であり、自信で溢れ独善的で、決して間違いを認めないような苛烈な印象しかなかったから。



「それで、ドプラー教授の論文に行き着き『腹の子を診る機械』を頼むなんて、お母様素晴らしいですわ。」

急な娘の称賛に母が顔を上げてマリアンナを凝視した。



「お兄様の嫌がらせのおかげで、ここへ来るのに随分時間がかかってしまったでしょう?だから王宮にある子育て注意書を初版からお義姉様へ贈られた物まで全て目を通して来ましたの。皇帝と王子、王女の建物を分け、建物毎に専属の使用人を置いて病を移し合わないようにされたのもお母様でしたのね。お母様たちが滅多に子供の建物に寄らなかったのも、」

「皇帝として多くの者に会わなければならないから、どこで病の元を得てるやも知れん。子供たちに移したら大変だから、子らの成長を見れぬのはやむを得ないな。」



母が言い訳のように早口でそう言った。



「お母様って、本当にお兄様に良く似ておいでで。思いを表すのが下手過ぎですわ。」

マリアンナは呆れを含んだ声でそう言った。



「…。いいでしょう、教えて差し上げましょう。



マリーは知らないでしょうけど、政は男の世界。

世の中の男性は、マリーが思っている以上に不潔よ。

トイレに行っても手を洗わない、毎日風呂に入る者はごく稀で、下着すら小まめに換えないのよ。」

母は眉間に深い皺を寄せてそう言った。



(お母様、きっと今のわたくしの発言を斜め上に理解なさったのね)



「ま、まあ。そんな人も居るやもしれませんけど、」

「貴女の驚きは当然です。しかしマリアンナこれは事実なのよ。」



マリアンナの言葉に被せて、うんうんと頷き、徐に話を続けた。



「そんな人はマリアンナの思っている倍以上。わたくしが調べた所、王宮に出入りする貴族男性の4人に1人は1週間下着すら換えない。ハンカチで手を拭く者は10人に1人、その1人のハンカチが清潔である補償もない。しかも、貴族でありながら奴等娼館に通っては、あろうことか、服も着替えず香水の臭いを纏わり付つけて、そのまま王宮に来たりしよる、どんな病を持っているかと、顔を会わせる度に気が気じゃなかったわ。」



母が話す王宮に出入りする貴族男性の不潔さに、マリアンナは鳥肌がたってしまった。



「それは汚ならしい、ですわね。」

マリアンナは震えながら呟いた。



「そうでしょう。そんな場に身を置いているわたくしが、大切な子らに触れて病を移してしまったら、わたくしはもう政をこなせないでしょう。そう思っての措置だったのだけど、親としては駄目でしょうね。わたくしが母から与えられた全てをどの子にも与えられなかったのだから。」

そう言って目の前の母は横を向いてしまった。



母には母の思いがあっても、背負う重圧があり、権謀が渦巻く帝国の王宮で、必死で見えぬ敵と戦っていたのだろう。

1度目の世界を俯瞰して見れるようになった今のマリアンナには、当時の母の気持ち想像すると胸が苦しくなり、目頭が熱くなった。



思い起こせば、帝国の王宮では毎日湯に浸かって身体の垢を落とすことが習慣になっていた。



1度目の世界で、アレス王国で同じことを願ったら、贅沢散財悪役王妃と責められたのだった。



母からの手紙にはいつも『歯をキチンと磨きなさい』『毎日お風呂に入って下着は常に清潔にしなさい』等というお小言が書いてあった。

いや、お小言では無く母の言葉を借りるなら病無く健やかに育つ為に必要な教えだったのだろう。

確かにマリアンナは1度目の世界でも2度目の今も風邪を引くこともほとんど無い健康体である。



「お母様のおかげで、わたくし健康に大人と成れましたわ。ありがとうございます。」

涙が溢れぬように眉間に力をギュっと入れ、マリアンナは頑張って笑顔を作って感謝を告げた。

少し不自然な笑顔になってしまったのは、ご愛敬だ。



「…、息災で何より。大きく美しくなったな。」

横を向いていた母がマリアンナに目を向け暫くジッと見つめた。

そうして目を細めて、満面の笑みでそう答えた。



その笑顔はマリアンナが初めて見る、ティルームに差し込む陽光のような、温かな母の眼差しであった。

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