蒼き流れの中で

白い黒猫

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八章 ~親の願いと子の想い~ カロルの世界

まやかしのまぐわい

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 カエルレウスの最後の四人は、研究所においても特別な意味をもっていた。最もアクアの素養を強く持つ子供たちとされている。その当事者であるローレンスにとってもそのメンバーは研究的な意味ではなく、精神的な意味で皆が特別な存在だった。弟であシルワンは勿論、双子の姉妹も従姉妹という血の繋がり以前に、ローレンスが数少なく心を許せる仲間で本当の意味で身内ともいうべき存在だった。
 いつもじゃれあい、そのまま狭いベッドに四人で動物のようにくっつきあって眠ってしまったり、宿舎を逃げだし森の中で野宿して一晩過ごしたり、一緒に倉庫から盗んだお酒で酒盛りしたり、あらゆる体験を共有して生きてきた。そうしてずっと生きていくものと思っていた。
 しかし流れる月日がその関係が変化していった。
 いや正確には変わったのはローレンスの仲間の見方というべきだろう。その仲間だと思っていた相手が女性だった事に気づいてしまった事にある。そこを意識してしまうと、かつての無邪気な関係には戻れなくなっていた。
 赤くて柔らかい髪、そして滑らかなその肌、果物を思わせる赤いつややかな唇、落ち着いたその声、知的な緑の瞳。そして柔らかなラインを描く胸の膨らみ。初めて夢性してしまった時は、相手にどうしようもない罪悪感を覚えた。暫くはキーラと目を合わせられなかった。そして同時に自分の想いに気が付いた。仲間であるキーラを愛している事を、異性として。

 そんな時だった、ローレンスの仲間の二人が后の候補に選ばれたとの噂が広まったのは。その事だけでも動揺したローレンスだったが、彼はさらに衝動を受ける事になる。候補であるキーラが晴れ晴れした笑顔で后の件を受けるつもりだと明かしてきたのだ。ローレンスが伽の責務を終えたら結婚して欲しいと告げる直前に。
 自分がこんなにも悩み想っていたのに、相手は自分等見てもおらずもっと先を見つめていた事に呆然とするしかなかった。
 それ以降キーラが、ノーピリスのトゥルボーとも仲良く会話している姿も見るようになり、キーラが遠下がってしまったように感じた。彼女が嫁ごうとしているのは能力、容姿、地位どれをとっても一介のアミークスでしかも子供の自分に、太刀打ち出来る相手ではない。
 そんなどうしようもないままならぬ想いを抱え、今日も一人になりたくて秘密基地にきていた。昔は四人で毎日のように入り浸っていたこの場所にくるメンバーはいない。喧嘩している訳ではないが、なんかバラバラになってしまった。
 一人秘密基地の中でため息をついていたら、誰かが登って来る気配がする。赤い髪が見え一瞬キーラである事を期待して心が小さく震えた。
(もしかして宮殿を抜け出して自分のようにここを懐かしんできてくれたのか?)
 赤い髪に気の強そうな切れ上がった緑の瞳、白い肌の中で赤い唇が存在感をもつ。愛する女性とまったく同じ造形な筈なのにそれがキーラでないことを瞬時に分かるのはローレンスの想いの力なのだろうか?その少女の碧の瞳がローレンスの顔を見て丸くなる。
「マギー?」
 ローレンスは内心の落胆を隠し微笑みかける。相手はローレンスが、ここにいた事に驚きながらも昔のように入ってきて隣に座ってくる。その昔と変わらない感じがローレンスには少し嬉しかった。眉を寄せ何やら難しい顔をして悩んでいる感じも小さい頃から変わらない。ローレンスは笑いかけその頭を撫でる。
「どうしたんだ? なにかあったのか?」
 フーと大袈裟にため息をつく少女。
「色々、女には悩む事が多いのよ!」
 彼女もまた、将来の事を悩んでいる。悩んでも仕方が無いことで停滞しているローレンスと異なり。
「そうだよな、なんかキリーとお前が俺を置いて大人になっていくみたいで、寂しいな」
 少女は顔を横にふり、甘えるようにその腕に抱きついてくる。
「大人か~、いつまでも子供でいたかったな。ここで、四人で、無邪気に遊んでいたあの時代のまま」
 当に今の自分の気持ちと同じ言葉にローレンスはホットする。
「そうだな、ずっと四人で一緒に悩み笑いあの時代が良かった。あの時はお前達もなんでも話してくれた。今何が最高に楽しくて、そして何に怒っているのかとか」
 甘えてくれる少女が可愛くて抱き寄せる。
「そうだね、キリーはいつも一人で決める。私にも相談しないで。そして今度も改めてソーリス様の后になる事を承諾した」
 誰かと会話する事で、紛らわされていた現実を思い出しローレンスの笑みは固まる。そして心の中のドロドロとした感情を思い出す。
「わかっているのよ、私もどうするべきなのか? 今後もアミークスとノービリスが良き関係を築いていくためにも。
 それに、キリーを一人にしない為にも私も后になるべきだと。でも怖いローレンス達と離れるのは」
 考えに耽っていた事でローレンスは少し惚けていたのかもしれない、行き成り抱きつかれ我に返った。そして腕の中で震える幼馴染の存在を改めて強く感じる。冷静で大人なキーラとは異なり、自分を頼り弱み悩みを見せてくれる、その存在が愛しく思える。その背中を宥めるように優しく撫でてあげると、腕の中の少女は顔をガバッと上げてローレンスを見つめてくる。
「ねえ、ローリー。私に勇気を頂戴! 私が前に進めるように」
 首を傾げたローレンスに覆い被さるように少女は顔を近付けてきて、唇にキスをしてくる。気が付けばローレンスは体勢を崩し床に押し倒されていた。
「ローレンス、貴方が好きなの。だから抱いて」
 虚ろな口調とは異なり、熱い感情を、宿す瞳に心臓がドクリ音をたてる。
「駄目だよ、伽の前に身体を繋げるのは」
 宥めるようにそう話し掛けるが、声が掠れる。
「分かってる、后になるしかない事は。だからせめて初めて受け入れる男性はローレンスがいいの。愛する男性との思い出があれば、私は前に進める」
 覆い被さっている少女の姿が、キーラの姿に被る。まるでキーラが自分に、熱烈に求愛しているように錯覚しそうになる。
「駄目だよ、マギー、子供が出来たら……」
 少女はローレンスの上着のボタンを開けていき、その逞しい胸にキスを落としていく。
「マギー、い、けない、」
「大丈夫、私はまだ初経を迎えてない。だから子供が出来る事はない」
「マ、マギー!」
「お願い。私を、今だけ受け入れて!」
 顔の上にある少女の碧の瞳から、涙が溢れてローレンスの頬に落ちる。愛する女性と同じ顔、同じ声で『抱いて欲しい』と連呼されるとローレンスの理性も薄れていく。静止の為に動いていた腕が少女の肩を掴む。驚いたその身体を抱き寄せ、その唇にキスをする。暫くはされるがままになっていた少女だが、状況を理解し自らも積極的に、キスを深めていく。
 ローレンスは身体を、反転させ少女を組みしだく。
「本当に良いのか?」
 上擦った声でそう尋ねると、少女は嬉しそうに頷く。目尻から涙が零れるのを、指で拭いてやる。そして、そのまま震える手を少女の衣類へと動かしそのボタンを外していく。今まで水浴びの時など見たことあるとはいえ、潤んだ瞳で呼吸を荒くして上下する女性の胸は、ローレンスの身体に疼きを与える。ゆっくりその膨らみを撫でると、少女は震えながらも目を閉じる。相手を怖がらせないように優しく撫で揉み、その感触を味わう。柔らかく心地よく半分陶酔しながら、掌で指先でと撫でていく。
「ンッ」
 ビクリと身体を震わせ、口から小さく漏れる声にローレンスはドキドキしてくる。そして再び覆い被さり右の胸の先端にキスをしてそっと咥え軽く吸ってみる。
「ァッ」
 少女の声がローレンスをますます興奮させる。触っている胸の動悸からも少女の高鳴りも感じる事が嬉しかった。愛しさが増し更に胸を手と口で愛撫する。少女の腕がローレンスの後頭部に廻されその髪を絡めていた手が、ローレンスのシャツを脱がそうとしてくる。ローレンスは身体を起こして邪魔なシャツを脱ぎ上半身裸になる。少女も起き上がり、上を完全に脱ぎ捨て、下のスカートも脱ぎ迷いもなくその下着も取り払い笑う。その姿は自分より幼く守ってやらねばならないと思っていた子供ではなかった。生まれたままのその姿は美しく官能的で、ローレンスは唾を飲む。猫のように前屈みで近付いてきて、ローレンスのズボンに目を向け細める。何時になく盛り上がり布を押し上げている下半身の様子が恥ずかしくなるが、相手は『嬉しい』と笑いズボンの布越しにその膨らみに恭しくキスをして見上げ無邪気に笑う。そんな事をされるとローレンスの股間はますます熱く苦しくなる。相手は全裸なのに自分は着衣であることが、失礼な気もしてきて少し身体を後ろに下げ残っていた衣類を全て脱ぎ捨てる。改めて二人で向き合い全裸で抱き締め合い、互いを撫であいながら、舌を絡めた濃厚なキスをする。
 股間はキツかったが、ローレンスはこのまま挿入するわけにはいかない。初めて人と身体を繋げる事もあり相手の負担ガ大きい事は理解できていた。そっと少女の股間に手を伸ばす。初めて触る女性の生殖器は思ったより熱く、柔らかく、そして濡れていた。自分と同じで相手も感じてくれているのを実感し安堵しながら、ゆっくりとその尖った先端を指で撫でると、少女は身体を震わせ仰け反らせ声を漏らす。
「痛い?」
 赤毛の頭がフルフルと横に振られる。
「そうされると、身体がビリビリするような変な、ゥッ、かん、じ、アッ」
 更に撫で優しく摘まむと必死にローレンスにしがみつくように抱きついてくる。そして彼女の股間から益々水が溢れローレンスの手を濡らしていく。
「アンッ」
  指をゆっくりと濡れた穴に挿入していくと身体を強ばらせるので一旦止め、声をかけ落ち着かせ、力が抜けてきたら、更に奥に差し入れ指を動かす。伽の時の女性がされていたように、ゆっくりと指でうねる内壁を指の腹で撫でると、身体をガクガクと振るわせてよりローレンスに身体を預けてくる。
「もう……恥ずか……しい、早く繋がりたい!」 
 少女が堪らなくなり叫ぶ。
「でも今のままだとお前がつらいぞ」
 ローレンスは なるべくジックリ解していく、初めての彼女が辛くないように。先程感じていたらしい入口付近の突起を刺激しながら細い穴を解していく。声を漏らしながら少女も手を伸ばしてきてローレンスの股間の起立しているモノを柔らかく触ってくるのでローレンスも思わず声を漏らす。
「そろそろ挿れるぞ、大丈夫か?」
 耐えきれず、そう声を上げると『挿れて!』と叫んでくる。
 覚悟を決めてガチガチに硬くなったモノを温かい水を溢れさせた穴へとあてがいゆっくりと挿入させていった。中は熱く狭くローレンスのモノをなまめかしく震えながら締め付けてくる。
「アッ、ァ、ァ」
 苦しげな少女の声が絶え間なく漏れる。
「辛いか? 大丈夫か? やめるか」
 ローレンスの問い掛けに顔を横に振る。そして強く抱きついてきて少女の方から腰を落とす。その刺激にローレンスの方が思わず声をあげる。肩で息をしながらプルプルと震えている小さな身体を抱き締めながら、ローレンスは自分の股間が温かい柔らかい胎内に抱き締められている感触にクラクラとした酔いに似た恍惚感を覚える。
「痛くないか?」
「嬉しい、ローリーと一つになれている」
 質問にそう答えその体勢のままキスをしてくる。少女が動いた事で双方の敏感な所を刺激してしまったようだ。その刺激がきっかけで、二人は腰を動かし始める。今まで感じたことないような身体中に駆け抜ける快楽。小屋の軋む音と、二人の身体のぶつかる音、息遣いと呻くような声だけが響いた。二人は生まれて初めて味わうその感覚をただ夢中で追いかけるのに必死で、会話なんてする余裕もなかった。
 ローレンスのぼやけた視界の中で、三つ編みにしていた髪も解け、乱れた赤い髪で緑の瞳を潤ませた少女の身体が揺れる。舌ったらずに『ローリー』とただ繰り返すその声だけがローレンスの耳に届く。ローレンスの熱い体内のうねりがどんどん膨れあがっていくのを感じる。それがしまいには限界を超え噴き出す。
「キリー」
 放った瞬間、自分がとんでもない言葉を発したのに気が付いた。その言葉は相手にも届いていたようで、乱れた息を必死で整えながら、少女がローレンスを見上げ困ったように哀しそうに笑う。
「ごめんね、ローリー」
 ローレンスが謝るよりも先に、謝罪の言葉を言われてしまい、謝れなくなってしまう。まだ繋がったままの体制で二人に向き合うしかできない。
「ローリーの気持ち分かってた。ずっと見つめていたから。なのにこんな事をお願いして」
「……嫌、俺こそ悪かった」
 どんな理由があれ、こういう事をしている最中に他の女性の名前など呼んではいけなかった。
「実はね、その事知りながら  ……私ね、前にフラーメンに伽の相手にローレンスを求めたの。
 でもね、それは許されなかった。私たちは血が近いからダメだって……従兄弟だからって……」
 少女はローレンスに跨った恰好のまま凭れてくる。赤い髪がローレンスの胸を擽る。
「キリーも私と同じ気持。ローリーの事が好きで、でも結婚も伽も出来ない事を知って諦めた。
 ローリーなら分かるよね? キリーが打算とか出世欲で動く人間じゃないって」
 ローレンスは相手に見えてないだろうけど頷き、抱きしめている相手の髪を撫でる。もう完全に髪は解けているので髪をとかすように指を動かす。
「ローリーじゃなければ、他の人ならば皆同じ。だったら皆の為になり、尊敬できる相手に身を預けたい。そう思ったんだと思う」
 ローレンスは短く『ああ』と答える。実は愛されていたという喜びと、どちらにしても結ばれる事はなかったという事実にやや放心する。
「私はキリーのように強くなかった。だからバカな事だけどこうやってローリーに一度だけ抱かれる事で前に進もうと思ったの。
 だからローリー、私を今キリーだと思って抱いて! それぞれ前に進もう! ね。私はローリーを利用した。だからローリーも私を利用して! そして自分の未来を築いて!」
 愛する女性とまったく同じ顔をもつ少女は大人びた顔で笑いキスしてくる。理性では、そんなまやかしの行為に意味はないと思うものの、感情と身体は裏切り熱くなってくる。そのままもう二人は相手をむさぼるようにキスをして抱き合い身体を絡めあった。二人の感情の昂ぶりが落ち着くまでの時間を。
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