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イカしたゲーム、負けられない戦い 01
しおりを挟む「よっ、はっ! ふぉ! ……で、ここで待ち伏せして~~からの~ぉ~……喰らえッ! オララララッ!」
「おぉ!」
「ふっふ~ん♪ まぁ余裕ですわ。あとは時間切れを待つだけ……と──はい、大勝利! イェイ!」
「上手ね」
「でしょでしょ~。あ、見てリザルトでも私の成績トップ! ほらサクラもっとしっかり目に焼き付けて、キル数を音読して、写真撮ってもいいゾ!」
「……うぜぇ」
「まだ二日目なのにもうBランクに上がっちゃった。すごくな~い?」
「……すごーい」
「わかる。はぁ……自分の才能が恐いよ──」
額に手を当て、やれやれ~と大げさにポーズを決めるレイに呆れつつ、私は画面に映る▲のキャラクターを眺めていた。
最近巷で流行っている『スプラッシューン』という名前のテレビゲームだった。テレビやSNSなどでも常に盛り上がっていて、私もキャラや設定、ゲームの雰囲気は知っていた。▲と●のキャラクターが互いの能力を発動し、陣地を奪い合いながら戦うシューティングアクションゲーム。それぞれ武器を持って戦うけど、ポップで愛らしいキャラクターたちが入り乱れる映像は見ているだけでも楽しい。あと、残虐じゃないので安心して眺めていられる……。
レイのお母さんが仕事のビンゴ大会でゲーム機とソフトのセットを当てたらしく、何故か妙に家に呼びたがるレイにまた新手のくまたんか……と嘆きつつ向かうと、ゲームをプレイするレイの姿があり、私はしばらくレイがプレイする姿を眺めていたのだ。「ホイ!」とか「あらよっと!」といちいち声を出し、体をゲームのキャラクターにシンクロさせて揺らすレイはなかなか楽しく、抜群に可愛い! レイの実況プレイだったら一生眺めていられる気がした。
「サクラもやる?」
「いいの?」
「私もやりたいじゃない! って顔してるから。あと、私だけが遊んでると先生に言いつけられて明日学級裁判開かれそう」
「小学生か。……まぁ興味あるけど」「ほう、サクラはスマホゲーム廃人だと思っていたのに、意外!」
「ゲームってゲーム機が家にないとできないじゃない。昔から少し興味はあったけど、わざわざ買うほどじゃなかったのよ。ってか廃人じゃないし」
「この前のイベントでランキング10に入っていたのは廃人だよ……」
「しょうがないでしょ。SSRキャラの強化アイテムが上位報酬だったから」レイに似ているキャラのため、私は必死に頑張った。たかがゲーム、されどゲームだけどやりこみ過ぎて成績に響いてしまうのは馬鹿らしいので、勉学とスマホゲームを両立させるのは大変だったわ……。
「まぁとりあえず練習モードで動きに慣れよっか」レイはコントローラーを私に投げる。
「決定はこれ?」
「そ。で、後ろのトリガーを押すとドピュっドピュ~、ビュルルル! って発射するから」「言い方!」「だってそんな感じじゃん。でね、そうそうコントローラーを上下左右に動かすと一緒に動いて」
「うわ、画面が揺れる。なにこれ……酔いそう」
「慣れたら動かしやすいよ。まずはその的に向かって攻撃」
「ふんふん」
トリガーボタンを押すと、画面に映る▲のキャラクターは武器を構え、色のついた液体を発射した。
「次は地面に塗ったインクに隠れる。上のボタンを押すと」「見えなくなった」「基本はこの状態で移動して、相手が現れたら攻撃!」
最初は立ち止まった状態で色々な方向に発射した後、塗ったインクに沿うように移動する。それを何度か繰り返すとそこそこ動けるようになってきた。
「思ったよりも簡単なのね」
「え、え、うわ~一分も経たずに調子こき始めた……」
「こいてない。そうだ、あの派手な必殺技みたいなのどうやって発動するの?」
「ほう、その質問をするとは……。流石サクラ、お目が高い」「さっさと教えなさい」「地面を塗るとパワーが貯まるから、上のメーターが光った後にそのスティックを押し込む!」
ピカッ! と光った瞬間、レイの指示に従い、スティックを押し込んだ。するとキャラクターがピョーン! と宙に舞い上がったと思ったら、一気に落下し、周囲をド派手に攻撃する。
「へぇ、これで近づかれたら逆に返り討ちにできるってわけね」
「あとはサブウエポンがこのボタンで……」
「このサブ攻撃で牽制しつつ、銃やさっきの必殺技で仕留める……と」
「サクラの吸収力ヤバイ……。成長してる──凄い疾さで!」
「いやこんなの初歩の初歩でしょ」
「ま、イキっていられるのも練習モードだけだよ。もう一通り操作は教えたから、早速対戦してみよっか」
「まだ早くない?」
「習うより慣れろ、さ。実戦あるのみ! このモードだとランクとか気にせず気軽に戦えるんだ」
「あ、ちょっと……」
「ふふふっ、サクラが血祭りに上げられる光景楽しみぃ」
レイはニヤっと不気味な笑みを浮かべる。
ふん、そう簡単にレイの思い通りになるわけにはいかないわ! と私は果敢に挑む。が、やはり現実は厳しい。基本的な動作はこなせるも私は初心者なので、他の●や▲たちに簡単にあしらわれ、チームは無残に敗北した。三戦目でようやく相手を一人倒せたけど、その報復と言わんばかりに袋叩きにされてしまった……。
「へっへっへ、くくく、ケケケ、ぷぷぷ~」
「その変な笑い方辞めろ」
「はぁ……サクラがボコボコにされるの堪らんねぇ。ひっひっひ~ゾクゾクする……」
「くねくね悶えるな」
「しかもポーカーフェイス気取ってるけど実は内心悔しがってる!」「別に、まだ初心者なんだからこのくらい仕方ないって流せるし」
「えぇ~ホントかな」
何故かレイは私に抱きついてきた。
コントローラーを握る指を上から擦られる。ぞくっとする寒気に胸が高鳴るも、必死に押し留める。
「スリスリするな」
「サクラちゃんの感情チェック。ほら、私って相手の体に触れると思考を読み取れる体質なの」
「お馬鹿なこと言ってんじゃないの」
「ふむふむ、ホントーはクッソ悔しくて、テレビの向こう側の相手をギッタギタのボッコボコにしてぇ、か……。サクラ、相手に喧嘩売るようなメッセージ送らないでよ」
「送らない。そもそも送り方わからないし」「わかったら送るのか、恐い……」
「次の闘いが始まるから離れなさい」
「やだ~、サクラがどういう心境で闘ってるのか観察したい」
「もう……」
レイはうだうだ言いながら私を背後から抱きしめるように抱きついてくる。レイの柔らかい四肢や胸がむにゅっと私に触れて、少しだけ安堵する。特に胸の感触が凄い……。先程手も足も出ない状態で八つ裂きにされ、腸が煮えくり返っていたけど、少しだけ……ううん、かなり和らぐ気がする。レイの愛らしさで冷静になるも、けど、……やっぱりこうして抱き締められるとなんかむず痒いというか、これはこれで集中できないじゃない。
「あ、またやられた。そこは隠れて相手の様子を観察しないと~」
「だって上から敵が……」
「我慢してやり過ごす。そいつはパワーが……あぁ、やられてるの! ぎゃぁぁ! 悔しいじゃない! 次出会ったらその顔撃ち抜いてやるじゃない!」
「いちいち私の心境実況しないでいい」「サクラがフルボッコされるとこ実況してみた」
ケラケラと笑うレイに腹立つも、耳元で声が響くと変に緊張してしまう。いつの間にかレイは膝立ちになり、私を上から覆うように抱きついていた。レイの顎が私の頭頂部に触れ、首元をすっと腕が交差する。頭を包むこの柔らかい膨らみは……レイの、おっぱい──。その感触と温かみで頭の中がふわふわする……。
そのままレイに詰られつつプレイを続け、どうにか最後に勝利することはできた。リザルトだと私の戦績はボロボロだったけど……。
☆★☆★
帰宅後、私はスマホから通販サイトにアクセスした。もちろんレイの家で遊んだゲーム機を買うために。
少し前まではどのお店でも品切れでネットでも度々ニュースになっていたけど、今は落ち着いているのか、普通に売っている。
……お小遣いには、まだ余裕がある。
最近はほとんど課金(レイ似のキャラのスキンガチャで少し回したけど……)していないので、大丈夫──。
翌日。
おはよ~って私にいつもと同じくしがみついてくる。
「そうそう昨日のアレを……」
「買ったの!?」
レイは突然素っ頓狂な声を上げる。
……しかもまだ「えぇ、購入したけど……どうして知ってるの?」伝えていないはずなのに。
「あ、そ、そんな顔してたから~」「あんた、マジで私の思考読めるの?」「おっと気づかれてしまいましたか~うへへまいったな~。私は常にサクラの心情を把握してる」「乗って来ないでいいわよ。私もソフトとゲーム機購入したから、届いたら設定とか教えて」
「いいけど……。でもまさかそんな……ね、一応私たち高校生なのだからさ、数万するゲーム機を購入するのに少し迷わない?」
「誰かさんと違って無駄使いしてないし」
また増えている鞄に吊るされたくまたんストラップをじぃっと睨むと、レイは私の視線から隠すように手で覆う。
「なんで隠すの?」
「こ、これは……18禁だから!」
「あんたも18以下じゃない」「”精神”は18以上あると思う」「それだけは絶対無い……絶対無い!」
「めっちゃマジで言い切ったよ。しかも二度。精神年齢幼いみたいな言い方、傷つくよ」
「嘘は、嫌いだから」「自分はす~ぐ嘘つくクセに……」
「つかないわよ。それよりもまた増えてるわね」
「くまたんグッズは日々大量に生み出される……。でも買わずに後悔するより買って後悔した方がいいじゃん。それに買い食いする時はサクラに奢って貰え──なんちゃって、嘘です、冗談だよ♪」
「てへ、って顔しても、ほとんど聞こえてるから」「記憶の消し方でググって」「ねぇよ」「……なにかショックを与えたら消えるかな……。キスとかする?」「はぁ、なんでよ!?」突然意味不明なことを口走るレイにドキッと胸が鳴る。まぁ確かにレイにキスとかされたら意識弾け飛びそうだけど、そんな白昼堂々と道端でキスなんてありえないっての。
「うぅぅ、今月ピンチなんですよ~」「それ毎月聞く」「あ、今日は新商品のハンバーガー楽しみにしてたじゃん。一緒に食べようね」
「……奢らないわよ」
「はぁ~ゲームの設定とかソフトのあれこれを私の曇り一つ無い純粋順枠な圧倒的な善意で教えてあげようと思っていたんだけどなぁ~~~~あ? ……あ?」「一人でできるし」「うぁあ……あ……お願いサクラ様、教えさせてください、だから……その見返りに奢ってくださいぃ……」「わかったから、スリスリするな」「だって嬉しいんでしょ?」
ニヤニヤと微笑みつつレイは言う。
レイに抱きつかれてスリスリされながら手を握られ、ぴりっとする感触を覚えるとゾクゾクと快感がこみ上げてくるのは事実。けど、その言い方だとまるで私がレイに抱きつかせるたびに渋ったみたいじゃない……。
☆★☆★
数日が経過し、ゲーム機とソフトが届いた。レイの全く当てにならない指示の下、簡単に設定を終えることができた。キャラクターは▲か●を選ぶことができ、「サクラはなんか●っぽいから●の方がいいよ」とレイが言ったので、そうした……。「レイは、▲になんか似てるわ」「え、そう?」「なんかアホっぽくにかっと笑った顔の雰囲気が似てる」
「やだぁ……サクラちゃん、そんな回りくどい褒め方しなくてもレイの笑顔最高に可愛いじゃないって想いが伝わってくる」つんつんと私の頬を指で突いてくる。
「飛躍し過ぎだ」いいえ、その通り。
まだレイとの実力差は大きく、結構足手まといになってしまう……。
レイのこんなものなの? ってドヤ顔が鬱陶しい(でも超可愛い)。ただ、これ以上舐められるのは私のプライドが許さない。レイを図に乗らせるのもそろそろ終わりにしてやりたい。
私の中で小さな闘志がメラメラと燃え始める。何かに挑む感覚。絶対に負けられない、逃げられない──。ドキンと指が震える。その懐かしい感触に浸りつつも、無残にも画面の中ではじけ飛ぶ●の復讐を誓う。
☆★☆★
//続く
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