傷を舐め合うJK日常百合物語

八澤

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ソーシャルゲーム、無課金 01

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 ──確信、だった。

 直感で”それ”を感じた。
 絶対的な信頼感。
 ぼわっと体が燃えるような熱を浴びた途端、指先に収束する力の迸りを感じる。ドクン、ドクン……と脈動で体が大きく震えるのがわかる。
 ぞくぞくとこみ上げてくる期待を胸に、私は表示されているボタンを押下した。

「来て……お願いっ」

 思わず口走っていた。
 声に震えが混じる。
 熱っぽい感覚がびりびりっと肌を撫でた。
 ──スマホの画面が暗転した。ド派手な火花が散るような演出が画面一杯に広がると、微かな緊張と強い期待感が私の中で溢れかえる。
 十枚のカードが重なった刹那、その内の一枚が煌々と輝きを放っている姿を目にする。ドッ──キンッッッ! と心臓が高鳴った。呼吸が荒くなる。きた……きた、きたきたきたんじゃない……と逸る気持ちを抑えつつ、私は一つ一つ丁寧にカードをめくっていく。

 SR
 SR
 R
 R NEW!
 R NEW!
 SR NEW!
 R

 ごくん……と唾を飲み込む。
 虹色の光を燈すカードをそっと指で弾いた。

 SSRの「あっ、あっ……あぁぁぁ……そんな……え~~ちょっと待って──え~~~これ持ってるじゃない……はぁぁぁあ……はぁ……あ……」

 既存のSSRキャラクターだった。
 しかも限界までVUPしているので、このカードは素材として消化するのみ。残りも既存のRで私は深い絶望感に襲われた。がっくりと項垂れ、ベッドにスマホを放り投げる。ぬめっとしたやるせない感覚が毛穴から吹き出し、そのまま動けなくなる。

「ねぇこの前の授業でさ……って、どうしたの?」
「う……うぅ……う」
「泣いてる?」「泣いてない」「でも顔は青ざめ、体は生まれたての子鹿のようにガクガク震えてるよ……生まれたての子鹿なんか見たことないけど」
「そんな表現……いらない……はぁ……」
「何かあったの?」

 レイはそっと私に駆け寄ると、何故か覆い被さってくる。また私を暖房代わりにして……と思ったけど、振り払う力も出てこない。そのままレイに良いように弄られ「はぁ……サクラ堪能しちゃった」と荒い息を零すレイは、ベッドの上で光っているスマホを見つけ、「なるほど、また回したの……」と呆れ口調で言った。

☆★☆★

 時は遡り、二週間前。
 教室の自席に座っていると、レイが現れ、突然スマホの画面を私に見せつけた。

「ねぇねぇこれ知ってる?」
「……ん、あぁCMでよくやってるスマホのゲームよね?」

 レイがスマホの画面に表示されたそれは、最近テレビをつけるとこれでもかとCMで宣伝されているゲームだった。デフォルメされたキャラクターが動き回り、闘ったり、キャラを集めて育成したりする、らしい。

「サクラも知ってるんだ」
「まぁあれだけCMで見かければね。なんかキャラを強くしてダンジョン潜るんでしょ」
「うん。サクラはゲームとか興味ある?」
「……私、ゲームしたことない」
「へぇ、今どき珍しいねぇ。ゲーム脳になるから禁止されているんだっけ?」
「ナニソレ。単純に興味無かっただけ」

 当時は毎日ピアノに向き合っていたから──。ピアノ以外の何かを受け入れることを拒否していたの。

「そ、とにかく知ってるなら話が早い。こいつを見てよ」
「出た、くまたん」
「今なんかこのゲームが全国のゆるキャラとコラボしてね、なんとなんと! くまたんがその内の一匹に選ばれたのです!」

 レイは嬉しそうに顔を輝かせた。その美少女具合と相まって、キラキラと光を放っている。眩しい……。

「へぇ……」
「興味無さそうな顔しないで! サクラにも関わってくる話なんだから」
「え、私?」
「うん」

 レイは力強く頷き、語り始めた。

「今回のコラボは、ゆるキャラ一匹につき二種の枠が定められているの」
「ふむふむ」
「一匹は私もゲームをインストールしてね、ネットで色々調べながらほら……ゲットしたんだ」

 寝そべっている無駄に豪奢な服装のくまたんが画面に表示されている。
 レイはその状態で画面を横向きに変更すると、全画面にくまたんが表示された。その瞬間、カシャっと画面が浮かび上がり「で、こうやってスクリーンショットを保存するのが、私の目的」
「……もう一匹は?」
「一匹ゲットするのに無課金であの手この手でアイテム集めてスタミナ回復させながらクリアできた。けど、二匹目は厳しい。期限内まで完了する目処が立たない。……まぁ課金したらどうにかなるかもだけど」
「課金?」
「うんゲーム内のアイテムやガシャっていうアイテムやキャラをゲットできるクジを回せるの」
「よくわからないけど──その課金って奴? するといいと思うわ」
「いやそこは止めるでしょ普通……あっ、待って逃げないで私の話を最後まで訊いて!」「もう読めたわ。つまり私のスマホでそのゲームを攻略させて、残りのくまたん画像を手に入れるって魂胆でしょう? お断りします」
「ひぃ……お願いする前に断られた」

 私は逃げようとするも、即座にレイに腕を掴まれる。

「サクラ、ソシャゲーの課金は恐ろしいの。射幸心を煽られることで理性の箍が外されてね、ズブズブと沼に沈むように青天井に課金してしまう……」
「レイなら大丈夫よ」
「無垢な瞳で真っ直ぐ見つめながら言わないで……。そんな気しちゃうから!」
「冗談なんかじゃないわ。レイは射幸心に負けない。あなたを信じる私を、信じて」
「さっきから肯定する言葉に全く心が篭っていないのわかるんだから! とにかく……インストールしてください」
「だから、課金したらいいじゃない」
「だって無料で遊べるのに課金するって……なんかできればしたくないじゃん?」
「ファンならどれだけお金払っても手に入れるものじゃないの?」
「くぅ……いや……まぁ……ね、イヤイヤ惑わされるな私! ってかそういう正論今はいらない。それにね、たくさん課金してもゲットできないかも。でも新規で始めればくまたん入手までのレアアイテムは確実に揃うんだ。ってかお金無いの! 課金したくてもできません! これでいい? 切羽詰まってるんです! お願いサクラ。お願いします、私に協力してください~~~」

 レイは私の右手を両手で掴むと、瞳を潤ませて懇願してきた。その可憐な表情で迫られ、無下に断ることに罪悪感を覚える。多分それがレイの狙い、と感じつつ、私は「はいはい、どれをインストールしたらいいの?」と訊いた。

「わぁ、ありがとうサクラ!」

 レイは私に抱きついてくる。ぎゅぅぅと締め付けられ、その圧迫感が心地良い……。私は「離しなさい」と口しながらも、実はもっと味わいたいと願っていた。すると、レイは私から離れず、私に抱きつくような格好で、私の取り出したスマホの画面を指差し始める。ホント距離が近い。レイの温度が心地よくて気を抜いたらふにゃっと私の体が蕩けそう。

「あのね、ストア開いて……。で、一番上にある奴を押して……」
「ん……これ?」
「そうそう。あ、少し時間かかるよ」

 その後、レイの指示通り、私のスマホにゲームをインストールした。

「あ、これインストールに結構ギガ使うけど大丈夫? ギガ足りてる?」「あまり使わないし、ってかその言い方絶対おかしいでしょ」
「上限超えたら超遅くなるよ」
「動画とか見ないし、家ではWi-Fiあるから」
「え、Wi-Fi家にあるんだ。……Wi-Fiってお金かかるの?」
「……無料よ」「ウソ!? じゃあウチにも付けて欲しい。私の家族誰もそういうのわかんないからさ。毎月スマホの上限超えないかヒヤヒヤもんだよ。サクラ教えて教えて~」
「まぁ、私もお手伝いさんが詳しい人が居て、付けて貰ったんだけど」
「ふわぁ……クソの役にも立たないね。期待させるな、最初からそう言え」
「アンインストールしていい?」「冗談です。ごめん……ごめんなさいぃ……。今日帰りパフェおごりますから。メイド服着るよ。サクラみたいに!」
「……別に着なくていい」

 ニヒヒとレイは悪戯っぽい笑みを浮かべた。その笑みを避けるようにスマホを見つめる。名前はまぁsakuraでいいか。チュートリアルを終えると、それではガシャを回してみましょうか、と画面に映るスーツの女性キャラが言った。キラキラと輝く不思議な雰囲気を放っている。
 ……虹色に光るカードが出現した。

「うっそ、いきなりSSR!?」
「凄いの?」
「これを引き当てるために普通は何度もインストール、アンインストールを繰り返すのに……」「その時間無駄でしょ」「でもキャラは強いから冒険で役立つしSNSで自慢できるよ!」「自慢って……」「自己顕示欲満たせる」「なんか不毛」

 妖精っぽい格好で、凄い装飾が施されたキャラクターが当たった。まぁ、確かに綺麗だけどなんかおどろおどろしく、イラストの雰囲気も凄いので手に入れるまで粘る気持ちは少しわかるかも。

「で、この後は?」
「まずは最初のクエストをクリアしてストーリーを進めて……、3章まで進めるとイベントクエストに入ることができるから、そこでアイテム補充しながらダンジョンをひたすら攻略して」
「結構長いのね」
「これもくまたんのため、サクラ、頑張ろう!」

 えぇ……と顔をしたけど、レイは私の意志を押しつぶすようにぎゅっと抱きついてくる。コイツ……わかってやってるわね。……けど、凄く気持ちいい……。レイの匂い。はぁ……。

☆★☆★


//続く
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