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第一章
第45話:迷子とお説教
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「ギュウ! キキギャウギギギャ! ギャンギュギュギャウリリリリ!(もう! おいらなら余裕で倒せたのに! なんで逃げたんだよ!)」
どれだけの距離を逃げたのか分からない中、突如としてピースに頬を何度も叩かれた楓は、開口一番でそう言われてしまった。
「……え? そ、そうなの?」
「ギャウン! キキギュキャキャン!(そうだよ! おいら、強いんだからね!)」
手に乗ってしまうほど小柄なピースである。
楓からすれば魔獣の中でも弱い部類に入るのだと勝手に思っていたのだが、実はそうではなかった。
そもそも、魔法を使える魔獣自体が少ないのだが、そのことを楓は知らない。
この世界の人間であったなら、ピースが水魔法を使った時点で、彼が強い魔獣であることを理解していたはずだ。
実のところ、ティアナもピースがいるからこそ、長時間で楓から離れても大丈夫だと考えていた。
「……そうなんだああぁぁぁぁ~! ごべんでええぇぇぇぇ~!」
「ギギッ!! ギ、ギャギュゲキュキュ!?(えぇっ!! な、なんで泣くの!?)」
「私のせいで、ここがどこだか分からなくなっちゃったよおおぉぉぉぉ~!!」
楓は無我夢中で走り続けていた。
それこそ、ピースの声が聞こえないくらい、必死にだ。
当然、通ってきた道を覚えているわけもなく、今もここがどこなのかすら、楓には分かっていなかった。
「……キキュキキュ(……やれやれ)」
「どうじよう、ピーズー!」
泣きながら声を上げた楓に、ピースは小さな胸を張り、ドンと叩く。
そして、楓の肩から下りると、俺についてこいと言わんばかりに右手を上げた。
「……キュキュン」
「……可愛いピースが、カッコよく見える!」
それから楓は、今度こそ冷静であろうと心がけながら、ピースについていくことを決めた。
怖さはある。それでもピースが強いのだと思えば、多少は怖さも和らぐというものだ。
(…………とはいっても、やっぱり怖いよおおぉぉぉぉ~!!)
内心では大焦りな楓だったが、時折ピースが振り返ってくるので、表情だけは何とか取り繕っていた。
どれだけ歩いただろうか、無我夢中で走っていたせいもあり、楓の体力は限界に迫っていた。
「……はぁ……はぁ……はぁ……はぁ……」
呼吸が荒くなり、肩が上下に動き出す。
するとピースは、得意な水魔法を使って楓に飲み水を与える。
「キキ」
「……飲んで、いいの?」
「キュン」
前を歩いているので翻訳できなかったが、楓の問い掛けに大きく頷いてくれたため、彼女はピースが作り出した水を一気に飲み干す。
「……ぷはあっ! ……この水、すっごく美味しい!」
「キュッキュキューン!」
楓が満面の笑みを浮かべながら感想を伝えると、ピースはドヤ顔で胸を張る。
その姿が可愛らしくもあり、おかしくもあり、楓は思わず笑ってしまう。
「うふふ。本当にありがとう、ピース」
水のこともそうだが、ピースのおかげで張り詰めていた緊張が適度に緩んだ。
これ以上張り詰めていれば、何かあった時にプツンと切れていたかもしれない。
「――カエデー! ピースー!」
するとここで、森の奥からティアナの声が聞こえてきた。
「……あぁ……ああっ! ティアナさーん! ここでーす!」
ティアナの声に涙を流しながら、楓は大声で応えた。
しばらくするとティアナが駆けつけてくれ、彼女はそのまま楓を抱きしめる。
「あぁ、よかった! 何かあったんじゃないかと心配したのよ!」
「うぅぅ~、ごべんだざいぃぃ~!」
それからティアナは、周囲に魔獣がいないことを確認すると、ピースが案内してくれた湖の方へ向かい、そこで話を聞くことにした。
「どうして最初の場所から離れたの? ピースもいたんでしょ?」
「うぅぅ、実は――」
それから楓は、自分からピースに散歩をしようと伝えたことや、この湖で物音を聞いて怖くなったこと、ピースが強いと知らずに逃げ出したことを伝えた。
「全面的に私の無知が原因です。本当に申し訳ございませんでした!」
ティアナへ説明をしていると、自分がどれだけ無知で、みんなに迷惑を掛けてしまったのかを、冷静に実感することができた。
だからだろう、最後の謝罪に涙はなく、真剣な面持ちでの誠心誠意な謝罪になっていた。
「……はあぁぁ~。なるほど、そういうことだったのね」
「本当に申し訳ございません――痛っ!?」
ティアナの大きなため息を聞き、楓はもう一度謝ろうとした。
しかしその途中で、ティアナのデコピンが楓のおでこに命中した。
「うぅぅ……ティアナさん?」
「謝るのはもう終わり。分からなかったら知ればいい。これから同じミスをしなければいい。違う?」
「……はい、そうだと思います」
楓は今まで、ミスをしたら上司から怒鳴り声を落とされていた。
だからだろう、ミスをしたら怒られるという感覚が染みついており、今回もティアナから怒鳴られることを覚悟していた。
しかしティアナは柔和な声で楓を宥め、そして慰めてくれた。
それだけで楓は心から安堵し、自分でも制御できないくらいに号泣してしまう。
「ど、どうしたのよ、カエデ!」
「ギャギュギュ、キャキュゲ!(大丈夫なの、カエデ!)」
「うぅぅ……ごべんだざい、わだじにも、わがりばべんんんん!」
それからしばらくの間、ティアナは楓の隣に座り、ピースは肩の上から、彼女が泣き止むまで寄り添っていたのだった。
どれだけの距離を逃げたのか分からない中、突如としてピースに頬を何度も叩かれた楓は、開口一番でそう言われてしまった。
「……え? そ、そうなの?」
「ギャウン! キキギュキャキャン!(そうだよ! おいら、強いんだからね!)」
手に乗ってしまうほど小柄なピースである。
楓からすれば魔獣の中でも弱い部類に入るのだと勝手に思っていたのだが、実はそうではなかった。
そもそも、魔法を使える魔獣自体が少ないのだが、そのことを楓は知らない。
この世界の人間であったなら、ピースが水魔法を使った時点で、彼が強い魔獣であることを理解していたはずだ。
実のところ、ティアナもピースがいるからこそ、長時間で楓から離れても大丈夫だと考えていた。
「……そうなんだああぁぁぁぁ~! ごべんでええぇぇぇぇ~!」
「ギギッ!! ギ、ギャギュゲキュキュ!?(えぇっ!! な、なんで泣くの!?)」
「私のせいで、ここがどこだか分からなくなっちゃったよおおぉぉぉぉ~!!」
楓は無我夢中で走り続けていた。
それこそ、ピースの声が聞こえないくらい、必死にだ。
当然、通ってきた道を覚えているわけもなく、今もここがどこなのかすら、楓には分かっていなかった。
「……キキュキキュ(……やれやれ)」
「どうじよう、ピーズー!」
泣きながら声を上げた楓に、ピースは小さな胸を張り、ドンと叩く。
そして、楓の肩から下りると、俺についてこいと言わんばかりに右手を上げた。
「……キュキュン」
「……可愛いピースが、カッコよく見える!」
それから楓は、今度こそ冷静であろうと心がけながら、ピースについていくことを決めた。
怖さはある。それでもピースが強いのだと思えば、多少は怖さも和らぐというものだ。
(…………とはいっても、やっぱり怖いよおおぉぉぉぉ~!!)
内心では大焦りな楓だったが、時折ピースが振り返ってくるので、表情だけは何とか取り繕っていた。
どれだけ歩いただろうか、無我夢中で走っていたせいもあり、楓の体力は限界に迫っていた。
「……はぁ……はぁ……はぁ……はぁ……」
呼吸が荒くなり、肩が上下に動き出す。
するとピースは、得意な水魔法を使って楓に飲み水を与える。
「キキ」
「……飲んで、いいの?」
「キュン」
前を歩いているので翻訳できなかったが、楓の問い掛けに大きく頷いてくれたため、彼女はピースが作り出した水を一気に飲み干す。
「……ぷはあっ! ……この水、すっごく美味しい!」
「キュッキュキューン!」
楓が満面の笑みを浮かべながら感想を伝えると、ピースはドヤ顔で胸を張る。
その姿が可愛らしくもあり、おかしくもあり、楓は思わず笑ってしまう。
「うふふ。本当にありがとう、ピース」
水のこともそうだが、ピースのおかげで張り詰めていた緊張が適度に緩んだ。
これ以上張り詰めていれば、何かあった時にプツンと切れていたかもしれない。
「――カエデー! ピースー!」
するとここで、森の奥からティアナの声が聞こえてきた。
「……あぁ……ああっ! ティアナさーん! ここでーす!」
ティアナの声に涙を流しながら、楓は大声で応えた。
しばらくするとティアナが駆けつけてくれ、彼女はそのまま楓を抱きしめる。
「あぁ、よかった! 何かあったんじゃないかと心配したのよ!」
「うぅぅ~、ごべんだざいぃぃ~!」
それからティアナは、周囲に魔獣がいないことを確認すると、ピースが案内してくれた湖の方へ向かい、そこで話を聞くことにした。
「どうして最初の場所から離れたの? ピースもいたんでしょ?」
「うぅぅ、実は――」
それから楓は、自分からピースに散歩をしようと伝えたことや、この湖で物音を聞いて怖くなったこと、ピースが強いと知らずに逃げ出したことを伝えた。
「全面的に私の無知が原因です。本当に申し訳ございませんでした!」
ティアナへ説明をしていると、自分がどれだけ無知で、みんなに迷惑を掛けてしまったのかを、冷静に実感することができた。
だからだろう、最後の謝罪に涙はなく、真剣な面持ちでの誠心誠意な謝罪になっていた。
「……はあぁぁ~。なるほど、そういうことだったのね」
「本当に申し訳ございません――痛っ!?」
ティアナの大きなため息を聞き、楓はもう一度謝ろうとした。
しかしその途中で、ティアナのデコピンが楓のおでこに命中した。
「うぅぅ……ティアナさん?」
「謝るのはもう終わり。分からなかったら知ればいい。これから同じミスをしなければいい。違う?」
「……はい、そうだと思います」
楓は今まで、ミスをしたら上司から怒鳴り声を落とされていた。
だからだろう、ミスをしたら怒られるという感覚が染みついており、今回もティアナから怒鳴られることを覚悟していた。
しかしティアナは柔和な声で楓を宥め、そして慰めてくれた。
それだけで楓は心から安堵し、自分でも制御できないくらいに号泣してしまう。
「ど、どうしたのよ、カエデ!」
「ギャギュギュ、キャキュゲ!(大丈夫なの、カエデ!)」
「うぅぅ……ごべんだざい、わだじにも、わがりばべんんんん!」
それからしばらくの間、ティアナは楓の隣に座り、ピースは肩の上から、彼女が泣き止むまで寄り添っていたのだった。
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