異世界従魔具店へようこそ!〜私の外れスキルはモフモフと共にあり〜

渡琉兎

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第二章

第63話:ティアナとレクシア

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 オルダナとの顔合わせは、楓にとって非常に有意義なものとなった。
 共同経営の話も出てきたものの、さすがに話が一気に進展し過ぎだと判断したセリシャから、今回はこの辺でということで、顔合わせはお開きとなった。
 次の話し合いは三日後となり、それまでに楓は、彼女が望む従魔ファーストな従魔具店に必要なものがなんなのかをまとめておくよう、セリシャから宿題を出されていた。
 ひとまずは宿題に専念するように言われ、既製品作りもお休みだ。
 今も宿の部屋にこもり、従魔具店のことを考えている。

(オルダナさんの従魔具店を見ていると、本当に従魔のために作られたお店だって分かったな。従魔と一緒に入れるよう、通路を広く取っていたり、木材だからか床も滑り難そうになっていたし)

 もしかすると木造だったことも、従魔のためを思ってなのではないか、楓はそんなことを思い始めていた。

(私が考える、従魔ファーストな従魔具店か……)

 ――コンコンコン。

 そこまで考えたところで、部屋の扉がノックされた。

「はーい!」
『――カエデさんにお客さんよ。冒険者のティアナさんって人』
「ティアナさん?」

 ティアナが楓を訪ねてくるのは初めてで、楓は驚きながら扉を開く。

「おはようございます、女将さん。ティアナさんはどちらに?」
「受付のところで待ってもらっているわ」
「それじゃあ、一緒に行きます」

 楓は女将と一緒に受付へと向かい、そこでティアナと、彼女の従魔であるレクシアと顔を合わせた。

「おはようございます。ティアナさん、レクシアさん」
「おはよう、カエデ。急にごめんね」
「コココン」

 楓が挨拶をすると、ティアナとレクシアも挨拶を返してくれた。
 女将とはそこで別れ、楓はティアナに訪れた理由を聞いてみる。

「今日はどうしたんですか?」
「んー……なんとなく?」
「え? なんとなくで、わざわざ宿まで?」

 まさかの答えに楓は怪訝な表情でティアナを見る。
 するとティアナは視線を逸らせ、何やら苦笑いを浮かべていた。

「……いいです。レクシアさんに聞きますから」
「えぇっ!? ちょっと、カエデ!!」

 ティアナが用事を口に出さなかったこともあり、楓はレクシアに話を聞くことにした。
 何故か大慌てのティアナだったが、気にすることなく楓は口を開く。

「触ってもいいですか、レクシアさん?」

 楓の言葉にレクシアは一つ頷く。
 そして、楓はレクシアの柔らかな毛並みを撫でながら、声を掛ける。

「ティアナさんは、私に何か用事があったんですよね?」
「ココンココンコン。ギュルルココン、ギャルギルコンコン(カエデの料理が食べたいそうよ。食い意地が張っているから、言いたくないそうだけれど)」
「……私のお料理ですか?」

 レクシアから聞いた内容も、楓からすればまさかの答えだった。
 楓は視線をティアナに向けると、恥ずかしかったのか両手で顔を覆っている。

「……本当なんですか?」
「……うん」
「別に、恥ずかしがることではないと思いますけど?」
「……そ、そうかな?」
「はい。むしろ、私としては嬉しいですし」

 楓が「嬉しい」と口にすると、ティアナの表情はパッと明るくなった。

「ありがとう、カエデ!」
「でも、お料理ですか。ここは宿ですし、やっぱり野営になりますかね?」
「あー、確かにそうね。私も宿に泊まっているから、台所を貸したりとかできないしなぁ」

 宿の受付前で楓とティアナが腕組みをしながら考え込んでいると、戻ってきた女将から声が掛かる。

「あら? カエデさんたち、まだいたのかい?」

 そんな女将を見た楓は、ダメもとでこんなお願いを口にする。

「あの、女将さん。実はティアナさんが私の手料理を食べたいみたいで、もし可能であれば、台所をお貸しいただけないでしょうか?」
「いいわよ」
「衛生上難しいことは分かっているんですが、そこをなんとか…………って、え?」
「だから、いいわよ」
「「……い、いいんですか!?」」

 まさかの即答に、楓だけではなくティアナまで驚きの声を上げた。

「冒険者のお嬢さんがそこまで食べたいってことは、カエデさんのお料理が美味しいってことだろう? あわよくば、真似させてもらおうと思ってね!」
「ぜ、全然真似てください! というか、女将さんのお料理は美味しいじゃないですか!」

 楓がセリシャの紹介で女将の宿に泊まった中で、一番嬉しかったのは女将の料理だ。
 異世界に召喚されて、最初の食事が冒険者愛用の携帯食だった。
 ティアナも楓のなんでもない料理に感動していたこともあり、正直なところ食事の部分が一番心配だった。
 しかし、女将の料理はどれを食べても美味しく、楓は大きく胸を撫で下ろしたことを今でも覚えていた。

「そう言ってもらえると嬉しいわ! だけど、もっと美味しくなるなら、見てみたいじゃないのよ!」
「ありがとうございます、女将さん! カエデ、一生のお願いよ!」
「一生って……分かりました! 女将さんからもお許しが出ましたし、精いっぱい頑張らさせていただきます!」

 こうして楓は、初めて野営以外での料理をすることになった。
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