異世界従魔具店へようこそ!〜私の外れスキルはモフモフと共にあり〜

渡琉兎

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第二章

第65話:断った理由

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「あら? あたいが聞いちゃいけない話かね?」

 ティアナの発言は女将にも聞こえており、彼女はどこか遠慮気味に問い掛けた。

「あぁ、大丈夫ですよ。断りましたから」
「お、王家からの依頼を断っちゃったんですか!? そっちの方が驚きなんですけど!!」

 苦笑しながらティアナがそう答えると、最後の断ったという発言に楓が再び驚きの声を上げた。

「まあ、私以外にも依頼を出しているみたいだったからね。冒険者ギルドも無理に受けなくてもいいって感じだったから、断わったのよ」
「そ、そうだったんですね。……でも、断わってよかったんですか?」
「評価は下がるだろうけど、それだけよ。私は私のやりたいようにやる。そのために冒険者になったんだもの」

 ティアナは自由に旅をしたい、そう思って冒険者になっていた。
 その思いがあるからこそ、受けたくない依頼は受けない、それを常に実践してきた。
 そして、受けた依頼に関しては全力でこなしていく。それがどんな簡単な依頼であってもだ。
 だからこそ、冒険者ギルドもティアナには信頼を置いていた。
 故に、ティアナが受けないと言えば、それを説得するようなこともしなかった。

「自分のやりたいことができなくなるんだったら、私は冒険者を引退するわ」
「……ティアナさん、カッコいいです!」
「そ、そうかな?」
「そうですよ! 自分を持っている女性、とってもカッコいいです! 私も頑張らなきゃ!」

 ティアナの生き方に感銘を受けた楓は、グッと拳を握りながらそう宣言する。

「……それに、今はレクシアもいるからね」

 拳を握る楓の姿に苦笑しながら、ティアナはレクシアを撫でた。

「レクシアさんですか?」
「従魔になってくれてからまだ数日だもの。お互いに分からないことの方が多いから、まずはお互いを知って、戦闘面でも連携が取れるようになってからじゃないと、危ない橋は渡れないわ」

 ティアナの説明を聞いた楓は、納得顔で大きく頷いた。

「確かに、その通りですね」
「私の安全もそうだけど、何より従魔になってくれたレクシアのことを考えなきゃいけないもの。それに比べれば、冒険者ギルドからの評価なんて、どうでもいいわ」

 最後にそう説明したティアナは、最後のサンドイッチを口いっぱいに頬張った。

「……ん! 最高だった! ありがとう、カエデ!」
「お口にあったなら、よかったです」
「ねえ、カエデさん。このサンドイッチだっけ? 食堂でも出していいかしら?」

 話が終わったと判断した女将が、続けてそんなことを口にした。

「もちろんです! これ、中身の具材を変えるだけでいろんなバリエーションができるんですよ!」
「そうよね! あたいもそう思っていたところさ!」
「おぉっ! ということは、ここの食堂に来たら、いつでもサンドイッチが食べられるってことね!」

 嬉しそうに声を上げたのは女将だけではなく、ティアナもだった。
 ティアナも手が汚れにくく、食べやすいサンドイッチがお気に入りになっていたのだ。

「包み紙とかを工夫すれば、持ち帰りとかもできると思いますよ!」
「「それはいい!」」
「あ……そういえば、料理にも特許とかってあるんですか?」

 サンドイッチは異世界系の作品では定番の料理だが、そのたびに驚きの声が上がっていたと楓は記憶している。
 ならばと楓は、従魔具に使ったベルトの特許の話を思い出し、料理にもあるのかと女将に問い掛けた。

「レシピに対しての特許はあるわね」
「これ、商業ギルドに特許を申請した方がよくないですか?」
「絶対にそうよ! これなら冒険者もこぞって買いに来るはずだわ!」
「確かにそうね。でも……それなら、あたいじゃなくてカエデさんがやるべきじゃないかしら?」

 楓の質問にティアナが声を上げていたが、続けて口を開いた女将の発言に、この場にいる全員の視線が楓に集まった。

「……え? えぇっ!? わ、私がですか!!」
「そっか。サンドイッチを考えたのはカエデだし、女将さんの言う通りかもしれないわね」
「カエデさんの手柄を奪うわけにはいかないもの。登録はカエデさんがやるべきだわ」
「いえいえ! 私が登録したところで、それ以降は何もできませんし、工夫して売ってくれるんだったら、全然女将さんが登録してください! というか、お願いします!」

 誰が登録するかの争いに、最後は楓が大きく頭を下げながら懇願してきた。

「どうしてそこまで登録を渋るんだい? 特許料も入ってくるし、カエデさんが儲かるんだよ?」
「確かにお金は大事ですけど、それ以上に私は女将さんがサンドイッチに工夫を凝らして、いつでもより美味しい食事が食べられるようになってくれた方が嬉しいんです!」
「あ! その気持ちは分かるかも! 私も女将さんが工夫して作ったサンドイッチ、食べてみたいかも!」

 すると今度はティアナも楓の言葉を後押しするように口を開いた。
 女将としては楓の手柄を奪うようなことはしたくなかったが、当の本人がそこまで強く望むのならと、腹を決めた。

「……分かったよ! それじゃあ、あたいが商業ギルドに登録するさね!」
「あ、ありがとうございます、女将さん!」
「その代わり、カエデさんの宿代は無料にしてあげるわね! それに、食事代も!」
「え? …………ええええぇぇええぇぇっ!?」

 満面の笑みで女将がそう言うと、一瞬何を言われたのか理解できず、楓は一拍置いて驚きの声を上げた。

「そ、それは絶対にダメですよ!」
「それじゃあ、登録はやっぱりカエデさんに――」
「それもダメです~! ティアナさんからも何か言ってくださいよ~!」

 特許登録の件で味方になってくれたティアナに助けを求めた楓だったが、ティアナはニコリと笑いながら、こう口にする。

「女将さんが折れてくれたんだから、今度はカエデが折れる番ね」
「そ、そんな~!!」

 こうして、誰がサンドイッチの特許を申請するか問題は、幕を下ろしたのだった。
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