異世界従魔具店へようこそ!〜私の外れスキルはモフモフと共にあり〜

渡琉兎

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第二章

第68話:噂話

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 ティアナに手料理を振る舞ってから数日の間、バルフェムでは王家からの依頼が冒険者ギルドに入っている、という噂でもちきりとなった。
 特に、今回の依頼内容が依頼を受けなければ伝えられない、という点も相まって噂話が飛躍に飛躍していったのだ。

「――なんだ? ついに戦争か?」
「――フォルブラウン王国がか? 違うだろう、ドラゴン討伐だって!」
「――物騒なこと言わないでよ。きっと宝石が採れる鉱山が見つかったのよ~!」

 物騒なことを言う人もいれば、自分に都合の良いことを言う人もいて、楓は何が本当なのか首を傾げることしかできないでいた。

「なんだか、すごい盛り上がりようですね」
「どれだけ盛り上がっていたとしても、王家からの依頼だもの。私たちには無意味だわ」

 楓がボソリと呟くと、同じ部屋で仕事をしていたセリシャが相槌を返した。

「確かにそうですね」

 実際には楓も関係はありそうなところだが、直接依頼や話があったわけではないため、セリシャの言葉に同意しておくことにした。

「……よし、できたー!」

 話題を変えるためではなかったが、タイミングよく楓が作っていた従魔具が完成したため、セリシャも噂話からそちらに思考を向ける。

「ありがとう、カエデさん。これで既製品のラインナップも充実してくれたわ」
「それもこれも、オルダナさんのアドバイスのおかげです!」

 楓はオルダナの従魔具店へ足を運んだ時、店頭に並んでいた様々な従魔具を目にしていた。
 さらに、既製品を作るならということで、細かなアドバイスも貰っていたのだ。

「首輪、足輪、腕輪だけじゃなく、アクセサリーでもいいだなんて、知りませんでした」
「私が教えていなかったんだもの、仕方がないわ。むしろ、ごめんなさいね」
「そんな! セリシャ様の教えは本当に助かっています! ありがとうございます!」

 今回、楓が作っていた既製品の従魔具は、耳に付けるタイプのイヤリングだ。
 ピアスとは違い、穴を開けなくても付けられるとあって、小さなアクセサリーの中では人気の高いものになっている。
 とはいえ、大型の従魔になれば小さなアクセサリーだと見ている側からすれば見つけるのが困難で、相手が従魔なのか、魔獣なのか、判断が難しい場合が多い。
 楓はそう考えていたのだが、オルダナの考えは違っていた。

「まさか、首輪や足輪、腕輪と合わせて、オシャレのために小さなアクセサリーを従魔に付けさせるなんて考え、思いつきませんでした」

 そう口にした楓ではあるが、一度教えてもらえば納得の話でもあった。
 何故ならオシャレをするということは、人間も同じだからだ。

「私たちだって衣服を着て、オシャレのためにアクセサリーを付けるんだもの。従魔が付けちゃダメだなんてこと、ないですよね!」

 スキル〈従魔具職人〉が外れスキルと言われていたからか、従魔がオシャレをするための従魔具を作る、という考えが完全に抜け落ちていた。
 その考えを教えてくれたオルダナに、楓は心の底から感謝していた。

「うふふ~。これからもっとたくさん、オシャレで可愛らしい従魔具を作るんだ~!」
「キキュキュギュイ、ギガギュキキ!(可愛いだけじゃなくって、カッコいいのも作ってね!)」

 楓がそう呟いたところで、今度はピースが彼女の頬に触れながら、肩の上からそう声を掛けた。

「確かに! 女の子の従魔だけじゃないもんね! 男の子の従魔のために、カッコいい従魔具も作らなきゃ!」
「楽しそうね、カエデさん」
「はい! 私、とっても楽しいです!」

 セリシャの問い掛けに満面の笑みで返した楓。
 しかし――そんな時間は長くは続かなかった。

 ――コンコンコン!

 セリシャの部屋の扉が強めにノックされ、楓たちは顔を見合わせる。
 立ち上がったセリシャが扉を開くと、廊下にはエリンが立っていた。

「し、失礼します、ギルマス!」
「どうしたの、エリン?」

 エリンの様子を見たセリシャは、すぐに用件を聞いた。

「実は、セリシャ様を通して従魔具を作ってもらいたいという人たちが、窓口に殺到しているんです~!」

 驚きの言葉に、楓は驚きのまま立ち上がった。
 しかし、セリシャが静かに右手を上げたため、楓は浮いた腰を再び椅子に戻す。

「全く。押しかけてもダメだとあれだけ言っておいたのに」
「ど、どうしましょう?」
「私が行くわ。カエデさんは、私が戻ってくるまでここにいてちょうだい。外に出てはダメですからね?」
「わ、分かりました」

 それからセリシャとエリンが部屋を出て行くと、残された楓は物音一つ立てないよう、身動き一つしないよう、椅子に座り続けていた。

「……キュルキュル(……やれやれ)」

 あまりに緊張していた楓を見たピースは、肩を竦めながらそう呟いたのだった。
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