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第二章
第69話:依頼殺到
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それからしばらくして、扉が開かれてセリシャが戻ってきた。
「カエデさん! 既製品でいいから、あるだけ出すわね!」
「えっ! あ、はい!」
何がどうなっているのか理解できなかったが、セリシャの迫力に負けてすぐに返事をしてしまう。
そんなセリシャがテーブルに魔法鞄から、既に完成した既製品を次々と出していく姿を見つめながら、楓は静かに問い掛ける。
「……あ、あの、セリシャ様? いったい、何があったんですか?」
「とりあえず、既製品を購入したいという人たちだけに残ってもらおうと思ったのだけれど、オーダーメイドを希望していた人たちまで残ってしまったの」
「え? それ、どういうことですか?」
オーダーメイドではなければ、いったい既製品に何を求めているのか、それが楓には思いつかなかった。
「私の失敗だわ。カエデさんが作ってくれたイヤリングタイプの従魔具、あれを見せてしまったのよ」
セリシャが見せた既製品は、楓が作った中でも特別小さな従魔具だった。
あまりにも小さいため、従魔具自体に特別な能力は宿っていない、本当にオシャレのためだけの従魔具だ。
しかし、それが見栄えを重視する者たちの目を引いてしまった。
「どこにも置いていないデザインであり、そのうえ小さいながら精巧に細工がされていた。それを見た人たちが、こぞって購入したいと言い出したのよ」
「……え? 私、そんな珍しいデザインのアクセサリー、作りましたっけ?」
自分では心当たりがなかった楓は、困惑気味に問い返した。
「カエデさんの考えと、あの人たちの考えが違い過ぎたのね。とにかく、まずは在庫を確認しないと……あぁ、足りないわ!」
今日から作り始めたからか、イヤリングタイプの従魔具は数も多くない。
どうしたものかと、セリシャは考え始める。
その姿を見た楓は、自分にまだ余力があることを確認すると、力強くこう口にする。
「私、作ります!」
楓の言葉を聞いたセリシャは、弾かれたように振り返る。
「でも、今日はもうたくさん作っているでしょう?」
「まだまだやれます! 最近はたくさん従魔具を作っていたからか、まだ作れるって感覚的に分かるんです!」
楓は従魔具を作り続けることで、〈従魔具職人EX〉を徐々にではあるが使いこなせるようになっていた。
その最たる部分が、自分の限界を知ることにある。
スキルを使い過ぎに寄り倒れた過去がある楓にとって、限界を知ることが何より大事なことだった。
特にセリシャは楓の保護者的立ち位置にいるため、限界を見極めようと過保護になっている部分もあった。
しかし、今回の楓の発言はセリシャの意識を変えるものであり、楓の成長を実感する部分でもあった。
「……それじゃあ、カエデさん。私は今から、商業ギルドのギルドマスターとして尋ねます。本当に、まだ作れるのですね?」
「はい!」
「自分の限界を、自ら管理することができますか?」
「やってみせます!」
力強い楓の返事を聞き、セリシャも覚悟を決めた。
「……分かりました。それでは、従魔具職人のカエデさん。イヤリングタイプの従魔具を、作れるだけ作ってくれるかしら? 材料は全て置いていきます」
「任せてください!」
腕まくりをしながら答えた楓を見て、セリシャは内心で苦笑する。
自分が過保護過ぎたのだと気づいたからだ。
今後は保護者としての目線ではなく、ギルドマスターとしての目線で、そして仕事間でのパートナーとして、楓のことを見ていこうと心の中で決めた。
(これは、オルダナをせっついて共同経営を急がないといけないかもね)
既に作業へ取り掛かっていた楓に頼もしさを感じながら、セリシャは今後のスケジュールを頭の中で組み立てていく。
オーダーメイドを希望していた人たちまで欲しがるとは思っていなかったが、これは言ってしまえば嬉しい誤算でもある。
(全く。カエデさんのデザインやアイディアもそうだけれど、レベルEXも本当に規格外なのね。私も久しぶりに、本気で頭を使わなければいけないわね!)
自分が楓を支えていくのだと、この時のセリシャは知らず知らずのうちにそう考えていたのだった。
その後、楓がデザインした既製品のおかげで、オーダーメイドを希望していた人たちはひとまず落ち着きを取り戻し、商業ギルドをあとにした。
セリシャは安堵の息を吐き、そのままテーブルに突っ伏していた楓に声を掛ける。
「無理をしたんじゃないの、カエデさん?」
「えへへ~」
「笑ってごまかさないの」
「でも、少しだけですよ? 限界が来たわけじゃなかったですしね」
セリシャの問い掛けに笑いながら顔を上げた楓。
そんな楓に渋面になりながらも、心配の声を掛けたセリシャ。
お互いが、お互いのことを思い行動しているのだから、誰も文句は言えなかった。
「……ありがとう、カエデさん」
「……こちらこそ、ありがとうございました、セリシャ様」
その代わり、お互いに感謝を伝え合い、笑いあった。
「カエデさん! 既製品でいいから、あるだけ出すわね!」
「えっ! あ、はい!」
何がどうなっているのか理解できなかったが、セリシャの迫力に負けてすぐに返事をしてしまう。
そんなセリシャがテーブルに魔法鞄から、既に完成した既製品を次々と出していく姿を見つめながら、楓は静かに問い掛ける。
「……あ、あの、セリシャ様? いったい、何があったんですか?」
「とりあえず、既製品を購入したいという人たちだけに残ってもらおうと思ったのだけれど、オーダーメイドを希望していた人たちまで残ってしまったの」
「え? それ、どういうことですか?」
オーダーメイドではなければ、いったい既製品に何を求めているのか、それが楓には思いつかなかった。
「私の失敗だわ。カエデさんが作ってくれたイヤリングタイプの従魔具、あれを見せてしまったのよ」
セリシャが見せた既製品は、楓が作った中でも特別小さな従魔具だった。
あまりにも小さいため、従魔具自体に特別な能力は宿っていない、本当にオシャレのためだけの従魔具だ。
しかし、それが見栄えを重視する者たちの目を引いてしまった。
「どこにも置いていないデザインであり、そのうえ小さいながら精巧に細工がされていた。それを見た人たちが、こぞって購入したいと言い出したのよ」
「……え? 私、そんな珍しいデザインのアクセサリー、作りましたっけ?」
自分では心当たりがなかった楓は、困惑気味に問い返した。
「カエデさんの考えと、あの人たちの考えが違い過ぎたのね。とにかく、まずは在庫を確認しないと……あぁ、足りないわ!」
今日から作り始めたからか、イヤリングタイプの従魔具は数も多くない。
どうしたものかと、セリシャは考え始める。
その姿を見た楓は、自分にまだ余力があることを確認すると、力強くこう口にする。
「私、作ります!」
楓の言葉を聞いたセリシャは、弾かれたように振り返る。
「でも、今日はもうたくさん作っているでしょう?」
「まだまだやれます! 最近はたくさん従魔具を作っていたからか、まだ作れるって感覚的に分かるんです!」
楓は従魔具を作り続けることで、〈従魔具職人EX〉を徐々にではあるが使いこなせるようになっていた。
その最たる部分が、自分の限界を知ることにある。
スキルを使い過ぎに寄り倒れた過去がある楓にとって、限界を知ることが何より大事なことだった。
特にセリシャは楓の保護者的立ち位置にいるため、限界を見極めようと過保護になっている部分もあった。
しかし、今回の楓の発言はセリシャの意識を変えるものであり、楓の成長を実感する部分でもあった。
「……それじゃあ、カエデさん。私は今から、商業ギルドのギルドマスターとして尋ねます。本当に、まだ作れるのですね?」
「はい!」
「自分の限界を、自ら管理することができますか?」
「やってみせます!」
力強い楓の返事を聞き、セリシャも覚悟を決めた。
「……分かりました。それでは、従魔具職人のカエデさん。イヤリングタイプの従魔具を、作れるだけ作ってくれるかしら? 材料は全て置いていきます」
「任せてください!」
腕まくりをしながら答えた楓を見て、セリシャは内心で苦笑する。
自分が過保護過ぎたのだと気づいたからだ。
今後は保護者としての目線ではなく、ギルドマスターとしての目線で、そして仕事間でのパートナーとして、楓のことを見ていこうと心の中で決めた。
(これは、オルダナをせっついて共同経営を急がないといけないかもね)
既に作業へ取り掛かっていた楓に頼もしさを感じながら、セリシャは今後のスケジュールを頭の中で組み立てていく。
オーダーメイドを希望していた人たちまで欲しがるとは思っていなかったが、これは言ってしまえば嬉しい誤算でもある。
(全く。カエデさんのデザインやアイディアもそうだけれど、レベルEXも本当に規格外なのね。私も久しぶりに、本気で頭を使わなければいけないわね!)
自分が楓を支えていくのだと、この時のセリシャは知らず知らずのうちにそう考えていたのだった。
その後、楓がデザインした既製品のおかげで、オーダーメイドを希望していた人たちはひとまず落ち着きを取り戻し、商業ギルドをあとにした。
セリシャは安堵の息を吐き、そのままテーブルに突っ伏していた楓に声を掛ける。
「無理をしたんじゃないの、カエデさん?」
「えへへ~」
「笑ってごまかさないの」
「でも、少しだけですよ? 限界が来たわけじゃなかったですしね」
セリシャの問い掛けに笑いながら顔を上げた楓。
そんな楓に渋面になりながらも、心配の声を掛けたセリシャ。
お互いが、お互いのことを思い行動しているのだから、誰も文句は言えなかった。
「……ありがとう、カエデさん」
「……こちらこそ、ありがとうございました、セリシャ様」
その代わり、お互いに感謝を伝え合い、笑いあった。
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