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第三章
第117話:真面目な男子会
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◆◇◆◇
楓たちが盛り上がっているその時、レイスとヴィオンは酒を飲み交わしていた。
「俺……いえ、私のような者と飲み交わしてくれるとは、光栄でございます」
「普段通りに話してくれて構わないよ。僕たちしかいないんだからね」
「……ありがとうございます」
レイスはそう口にしながらグラスを前に出すと、ヴィオンはお礼を口にしながら自らのグラスをぶつけた。
――カンッ。
グラス同士の美しい音が鳴り響き、お互いに酒で喉を潤していく。
小さく息を吐いたあと、最初に口を開いたのはヴィオンだった。
「……本当に、ザッシュはここにくるでしょうか?」
「分からない。だけど、警戒しておくに越したことはないと思うんだ」
「そうですね。特に今は、カエデさんもいますから」
そう口にしたヴィオンは酒を一口含み、飲み込んでから再び口を開く。
「あいつ、ちょっと不思議なんですよね」
「不思議というのは?」
「昔から逃げるのが上手かったんです。まあ、冒険者として自分が生き残ることを考えるのは当然なんですが、本当に忽然と消えるんです」
「確か、今回の一件でも突然姿を消したと報告が上がっていましたね」
「ですが、それはあいつのスキルではありません」
「……そうなのですか?」
ヴィオンの言葉にレイスは驚きの声を上げた。
「はい。あいつのスキルは〈音速黒鼠〉と言って、姿勢を低くすればするほど、足が速くなるという特殊なスキルなんです」
「……それは、姿勢を低くすれば、消えたように見えるほど速くなる、というわけではないのですか?」
「そう見えなくもないかもしれませんが、忽然と消えるなんてことになるとは思えません」
「確かに、そうですよね」
ザッシュが逃げおおせた理由がスキルではないと分かり、レイスは思案顔を浮かべてしまう。
そこへヴィオンは、自らの考えを伝える。
「……俺はザッシュが、従魔と契約をしているんじゃないかと考えています」
「従魔とですか? ですが、あの場には従魔らしき姿はありませんでしたよ?」
「はい。それが俺にも不思議でならないんですが、ザッシュのスキルではない以上、別の何かの力を借りているとしか考えられない」
「それが、従魔ということなんですね?」
レイスの言葉に、ヴィオンは大きく頷いた。
「……その身を隠している従魔がいる? もしそうであれば、その従魔がザッシュの姿を消していると考えられる、ということですか?」
「自身の姿を隠せるなら、その主の姿も隠せるのではないか、と考えました」
「あり得ない話ではなさそうですね」
ヴィオンの話はあくまでも推測の域を出ない。
それでも、スキルではないと分かったのだから、それ以外に秘密があると考えるのは普通のことだ。
特にヴィオンはライゴウという従魔と契約している。
特別な力が従魔によるものと考えるのは当然なのかもしれない。
「明日、僕の方でもミリアと一緒にそのような魔獣がいたか、考えてみます」
「俺の方でも何かあればご報告いたします」
「なんだか、こちらばかりお願いをしてしまってすみません。僕にできることがあれば、なんでも言ってくださいね」
「レイス様がお気になさることではないですよ。俺は俺のやりたいことをやっている、ただそれだけですから」
少しばかり空気が重たくなっていたが、ヴィオンの言葉を受けてレイスの表情から僅かに力が抜ける。
「ありがとうございます、ヴィオンさん」
「それはこちらのセリフですよ」
お互いに笑みを浮かべ、再びグラスをぶつけ合う。
それからの二人は世間話に花を咲かせたあと、先にレイスが就寝した。
ヴィオンはミリアに変わって護衛を受けた身として、周囲への警戒を切らさないよう、椅子に腰掛けての仮眠だ。
冒険者生活も長く慣れたものだったが、この日に何かが起きるということはなかった。
そんな二人だが、まさか女性陣の部屋で自分たちが話題の中心にいて盛り上がっている等とは、夢にも思っていないのだった。
楓たちが盛り上がっているその時、レイスとヴィオンは酒を飲み交わしていた。
「俺……いえ、私のような者と飲み交わしてくれるとは、光栄でございます」
「普段通りに話してくれて構わないよ。僕たちしかいないんだからね」
「……ありがとうございます」
レイスはそう口にしながらグラスを前に出すと、ヴィオンはお礼を口にしながら自らのグラスをぶつけた。
――カンッ。
グラス同士の美しい音が鳴り響き、お互いに酒で喉を潤していく。
小さく息を吐いたあと、最初に口を開いたのはヴィオンだった。
「……本当に、ザッシュはここにくるでしょうか?」
「分からない。だけど、警戒しておくに越したことはないと思うんだ」
「そうですね。特に今は、カエデさんもいますから」
そう口にしたヴィオンは酒を一口含み、飲み込んでから再び口を開く。
「あいつ、ちょっと不思議なんですよね」
「不思議というのは?」
「昔から逃げるのが上手かったんです。まあ、冒険者として自分が生き残ることを考えるのは当然なんですが、本当に忽然と消えるんです」
「確か、今回の一件でも突然姿を消したと報告が上がっていましたね」
「ですが、それはあいつのスキルではありません」
「……そうなのですか?」
ヴィオンの言葉にレイスは驚きの声を上げた。
「はい。あいつのスキルは〈音速黒鼠〉と言って、姿勢を低くすればするほど、足が速くなるという特殊なスキルなんです」
「……それは、姿勢を低くすれば、消えたように見えるほど速くなる、というわけではないのですか?」
「そう見えなくもないかもしれませんが、忽然と消えるなんてことになるとは思えません」
「確かに、そうですよね」
ザッシュが逃げおおせた理由がスキルではないと分かり、レイスは思案顔を浮かべてしまう。
そこへヴィオンは、自らの考えを伝える。
「……俺はザッシュが、従魔と契約をしているんじゃないかと考えています」
「従魔とですか? ですが、あの場には従魔らしき姿はありませんでしたよ?」
「はい。それが俺にも不思議でならないんですが、ザッシュのスキルではない以上、別の何かの力を借りているとしか考えられない」
「それが、従魔ということなんですね?」
レイスの言葉に、ヴィオンは大きく頷いた。
「……その身を隠している従魔がいる? もしそうであれば、その従魔がザッシュの姿を消していると考えられる、ということですか?」
「自身の姿を隠せるなら、その主の姿も隠せるのではないか、と考えました」
「あり得ない話ではなさそうですね」
ヴィオンの話はあくまでも推測の域を出ない。
それでも、スキルではないと分かったのだから、それ以外に秘密があると考えるのは普通のことだ。
特にヴィオンはライゴウという従魔と契約している。
特別な力が従魔によるものと考えるのは当然なのかもしれない。
「明日、僕の方でもミリアと一緒にそのような魔獣がいたか、考えてみます」
「俺の方でも何かあればご報告いたします」
「なんだか、こちらばかりお願いをしてしまってすみません。僕にできることがあれば、なんでも言ってくださいね」
「レイス様がお気になさることではないですよ。俺は俺のやりたいことをやっている、ただそれだけですから」
少しばかり空気が重たくなっていたが、ヴィオンの言葉を受けてレイスの表情から僅かに力が抜ける。
「ありがとうございます、ヴィオンさん」
「それはこちらのセリフですよ」
お互いに笑みを浮かべ、再びグラスをぶつけ合う。
それからの二人は世間話に花を咲かせたあと、先にレイスが就寝した。
ヴィオンはミリアに変わって護衛を受けた身として、周囲への警戒を切らさないよう、椅子に腰掛けての仮眠だ。
冒険者生活も長く慣れたものだったが、この日に何かが起きるということはなかった。
そんな二人だが、まさか女性陣の部屋で自分たちが話題の中心にいて盛り上がっている等とは、夢にも思っていないのだった。
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