異世界従魔具店へようこそ!〜私の外れスキルはモフモフと共にあり〜

渡琉兎

文字の大きさ
145 / 186
第三章

第145話:道中の賑やかさと楓の居場所

しおりを挟む
 バルフェムまでの道中は、とても賑やかなものになった。
 それは鈴音が外の景色に興奮しきりだったからだ。

「薬草採取の時にも外には出たんでしょう?」

 楓がそう質問すると、鈴音は苦笑しながら教えてくれる。

「そうなんですけど、あの時は何が起きるのか、危ないことはないのか、そんな緊張感で景色を楽しむ余裕なんてなかったんです」
「あー、それは分かるかもー」

 鈴音の説明を聞いたアリスも納得顔で頷いた。

「そうだったんだ……二人とも、大変だったんだね。それに、お城に置いて行っちゃって、ごめんね?」

 思わず楓が謝ると、アリスと鈴音を顔を見合わせ、すぐに微笑んだ。

「なんで犬っちが謝るのかなー?」
「そうですよ、犬山さん。むしろ、私たちの方が謝らないと」
「え? なんで?」

 自分が二人から謝られる理由が分からず、楓は首を傾げながら問い掛けた。

「犬っちがお城を出るってなった時ー、あーしたちはなんもできなかったからさー」
「アッシュ様たちが呼び出し、助けてくれる。その手を振りほどくことが、あの時は怖くてできなかったんです」
「うーん。むしろ、そっちの方が普通だと思うよ? 私がおかしな行動をとったんだから、二人が気にする必要はないからね?」

 異世界に召喚されて、いきなり独り立ちしようだなんて考える人は、後にも先にもいないのではないかと楓は考えてしまう。
 だからこそ、二人が謝る必要はどこにもなく、やはり自分が謝るべきなのだと思えてならない。

「お互いがお互いを心配してのことだろう? ならば、謝る必要はないんじゃないか?」

 そこへ話が聞こえていたヴィオンが声を掛けた。

「確かにねー。カエデはアリスとスズネが心配で、二人もその逆なんでしょう? それって謝るよりも、いいことだと思うけど?」

 ヴィオンの意見にティアナも同意する。
 すると今度は三人で顔を見合わせ、お互いに笑い合う。

「……あはは! 確かにその通りだね!」
「あーしたち、両想いってこと?」
「うふふ。そうかもしれないね」

 謝り合っていた三人が、最後は笑顔を向け合っている。
 その姿がティアナとヴィオンには眩しく映り、二人も思わず笑みを浮かべていた。

 バルフェムに戻ってくると、鈴音はどこか緊張した雰囲気を抱いている。

「……王城もそうでしたけど、王都の外も初めてなので、緊張しますね」

 そんな鈴音の肩に、楓が手を置く。

「大丈夫だよ、有明さん。バルフェムの人たちは、みんな優しいから」
「あーしも受け入れてもらえたもんねー! 鈴っちなら絶対に大丈夫!」
「……うん。ありがとう。犬山さん、アリスちゃん!」

 励ましてくれた楓とアリスにお礼を伝え、鈴音は一度深呼吸をする。

「はっ! カ、カエデ様!!」
「「「……楓様?」」」

 しかし、楓が王族の一筆が記された書類を持ってきたと知っている門番が彼女を見ると、様付けで声を掛けてきた。
 楓はその場で首を傾げ、アリスと鈴音は楓を見ながら同じように首を傾げる。

「そちらの女性の方は!?」
「あ、えっと、鈴音と申します」
「スズネ様でございますね! アリス様もいらっしゃいますし、どうぞどうぞ! そのまま中へお入りください!」

 先ほどまで緊張していた鈴音だが、楓だけではなく、アリスのことも認知しており、二人が一緒ならと顔パスで入場を許してくれた。

「ど、どういうこと?」
「……あー! そっか! あーし、レイニャンとミリっちと一緒にこっち来たからかも!」

 鈴音が困惑気味に呟くと、アリスは王族の関係者だと思われたのかもしれないと声を上げた。

「私もレイス様からの書類を持ってきてたし、その可能性は高いかも」
「……あ、あはは。私、もしかして、無駄に緊張しちゃってました?」

 楓もそう口にしたことで、鈴音は苦笑いしながらそう呟いた。

「まあまあ。問題なくバルフェムに入れるんだから、それでいいんじゃないの? スズネ?」
「ティアナの言う通りだ。それじゃあ、改めて――ようこそ、バルフェムへ」

 ティアナが鈴音の肩をポンと叩きながら、そしてヴィオンは門を通るように促しながら、鈴音へ声を掛けた。

「ティアナさん、ヴィオンさん……はい! ありがとうございます!」

 こうしてバルフェムに戻ってきた楓たち。

「私は従魔具店へ戻りますけど、皆さんはどうしますか?」

 楓の言葉へ最初に答えたのは、ティアナだ。

「私は冒険者ギルドに戻ったことを報告しなきゃ」
「俺もそうだな」
「それじゃー、鈴っちも行こうよ! 冒険者ギルド!」
「わ、私も!?」

 まさか全員が冒険者ギルドに行くとは思わず、またアリスが鈴音を誘ったのも楓には驚きだった。

「実はあーし、冒険者に登録したんだー! だからさー、鈴っちもどうかなーって!」
「そうだったの? ……アリスちゃんがそう言うなら、分かった!」

 楓とは違い、アリスも鈴音も戦闘で役に立つスキルを授かっている。
 自由に生きていくならば、冒険者という選択肢が出てくるのも当然かと楓は納得した。

「分かった。それじゃあ、有明さん。時間が空いたら、従魔具店にも顔を出してね!」
「絶対に顔を出します! 犬山さん、本当にありがとうございました!」

 鈴音たちを別れた楓は、その足を従魔具店へ向ける。

「帰ろうか、ピース」
「キュン!(うん!)」

 ピースに声を掛けた楓だったが、彼女の足取りは自分でも気づかないうちに自然と速くなっていた。

 ――カランコロンカラン。

 勢いよく従魔具店の扉を開くと、そこには店内を掃除しているリディがいて、カウンターに立つミリーがいて、ちょうどカウンターの奥の部屋からオルダナが出てきたところだった。

「おぉ! 戻ったか、嬢ちゃん!」
「カエデさん! おかえりなさい!」
「おかえり、姉ちゃん! ピースもな!」

 オルダナが、ミリーが、リディが、それぞれ笑顔で声を掛けてくれた。
 その声掛けが嬉しく、楓は自然と胸が熱くなり、満面の笑みで答える。

「みんな、ただいま!」
「キュキュキキュー!(ただいまー!)」

 自分の居場所はここなのだと実感した楓は、すぐに三人の下へと駆け寄っていったのだった。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

ブスすぎて嫁の貰い手がないから閨勤侍女になれと言われたので縁を切ります、完全に!完全縁切りの先にあったのは孤独ではなくて…

ハートリオ
恋愛
ルフスは結婚が決まった従姉の閨勤侍女になるよう父親に命令されたのをきっかけに父に無視され冷遇されて来た日々を終わらせようとブラコン父と完全に縁を切る決意する。 一方、従姉の結婚相手はアルゲンテウス辺境伯とのことだが、実は手違いがあって辺境伯が結婚したいのはルフス。 そんなこんなの異世界ファンタジーラブです。 読んでいただけると嬉しいです。

35年ローンと共に異世界転生! スキル『マイホーム』で快適5LDK引きこもり生活 ~数学教師、合気道と三節根で異世界を論破する~

月神世一
ファンタジー
紹介文 「結婚しよう。白い壁の素敵なお家が欲しいな♡」 そう言われて35年ローンで新築一戸建て(5LDK)を買った直後、俺、加藤真守(25歳)は婚約者に捨てられた。 失意の中、猫を助けてトラックに轢かれ、気づけばジャージ姿の女神ルチアナに異世界へと放り出されていた。 ​「あげるのは『言語理解』と『マイホーム』でーす」 ​手に入れたのは、ローン残高ごと召喚できる最強の現代住宅。 電気・ガス・水道完備。お風呂は全自動、リビングは床暖房。 さらには貯めたポイントで、地球の「赤マル」から「最新家電」までお取り寄せ!? ​森で拾った純情な狩人の美少女に胃袋を掴まれ、 罠にかかったポンコツ天使(自称聖騎士)が居候し、 競馬好きの魔族公爵がビールを飲みにやってくる。 ​これは、借金まみれの数学教師が、三節根と計算能力を武器に、快適なマイホームを守り抜く物語。 ……頼むから、家の壁で爪を研ぐのはやめてくれ!

で、お前が彼女に嫌がらせをしている理由を聞かせてもらおうか?

Debby
恋愛
ヴェルトが友人からの手紙を手に辺境伯令嬢であるレィディアンスの元を訪れたのは、その手紙に「詳細は彼女に聞け」と書いてあったからだ。 簡単にいうと、手紙の内容は「学園で問題を起こした平民──エボニーを妻として引き取ってくれ」というものだった。 一方その話を聞いてしまった伯爵令嬢のオリーブは動揺していた。 ヴェルトとは静かに愛を育んできた。そんな自分を差し置いて、言われるがまま平民を妻に迎えてしまうのだろうか。 そんなオリーブの気持ちを知るはずもないエボニーは、辺境伯邸で行儀見習いをすることになる。 オリーブは何とかしてヴェルトを取り戻そうと画策し、そのことを咎められてしまう。もう後は無い。 オリーブが最後の望みをかけてヴェルトに自分を選んで欲しいと懇願する中、レィディアンスが静かに口を開いた。 「で、そろそろお前が彼女に嫌がらせをしている理由を聞かせてもらおうか」 「はい?」 ヴェルトは自分が何を言われたのか全く理解が出来なかった。 *--*--* 覗いてくださりありがとうございます。(* ᴗ ᴗ)⁾⁾ ★全31話7時19時更新で、全話予約投稿済みです。 ★★「このお話だけ読んでいただいてもOKです!」という前提のもと↓↓↓ このお話は独立した一つのお話ですが、「で。」シリーズのサイドストーリーでもあり、第一弾「で、私がその方に嫌がらせをする理由をお聞かせいただいても?」の「エボニーその後」でもあります(あるいは「最終話」のその後)。 第一弾「で、私がその方に嫌がらせをする理由をお聞かせいただいても?」 第二弾「で、あなたが私に嫌がらせをする理由を伺っても?」 第三弾「で、あなたが彼に嫌がらせをする理由をお話しいただいても?」 どれも女性向けHOTランキングに入り、特に第二弾はHOT一位になることが出来ました!(*´▽`人)アリガトウ もしよかったら宜しくお願いしますね!

過労死コンサル、貧乏貴族に転生す~現代農業知識と魔法で荒地を開拓していたら、いつの間にか世界を救う食糧大国になっていました~

黒崎隼人
ファンタジー
農業コンサルタントとして過労死した杉本健一は、異世界の貧乏貴族ローレンツ家の当主として目覚めた。 待っていたのは、荒れた土地、飢える領民、そして莫大な借金! チートスキルも戦闘能力もない彼に残された武器は、前世で培った「農業知識」だけだった。 「貴族が土を耕すだと?」と笑われても構わない! 輪作、堆肥、品種改良! 現代知識と異世界の魔法を組み合わせた独自農法で、俺は自らクワを握る「耕作貴族」となる! 元Sランク冒険者のクールなメイドや、義理堅い元騎士を仲間に迎え、荒れ果てた領地を最強の農業大国へと変えていく、異色の領地経営ファンタジー!

無能聖女の失敗ポーション〜働き口を探していたはずなのに、何故みんなに甘やかされているのでしょう?〜

矢口愛留
恋愛
クリスティーナは、初級ポーションすら満足に作れない無能聖女。 成人を迎えたことをきっかけに、これまでずっと暮らしていた神殿を出なくてはいけなくなった。 ポーションをどうにかお金に変えようと、冒険者ギルドに向かったクリスティーナは、自作ポーションだけでは生活できないことに気付く。 その時タイミングよく、住み込み可の依頼(ただしとても怪しい)を発見した彼女は、駆け出し冒険者のアンディと共に依頼を受ける。 依頼書に記載の館を訪れた二人を迎えるのは、正体不明の主人に仕える使用人、ジェーンだった。 そこでクリスティーナは、自作の失敗ポーションを飲んで体力を回復しながら仕事に励むのだが、どういうわけかアンディとジェーンにやたら甘やかされるように。 そして、クリスティーナの前に、館の主人、ギルバートが姿を現す。 ギルバートは、クリスティーナの失敗ポーションを必要としていて――。 「毎日、私にポーションを作ってくれないか。私には君が必要だ」 これは無能聖女として搾取され続けていたクリスティーナが、居場所を見つけ、自由を見つけ、ゆったりとした時間の中で輝いていくお話。 *カクヨム、小説家になろうにも投稿しています。

異世界へ誤召喚されちゃいました 女神の加護でほのぼのスローライフ送ります

モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎ 飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。 保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。 そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。 召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。 強制的に放り込まれた異世界。 知らない土地、知らない人、知らない世界。 不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。 そんなほのぼのとした物語。

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

召喚とか聖女とか、どうでもいいけど人の都合考えたことある?

浅海 景
恋愛
水谷 瑛莉桂(みずたに えりか)の目標は堅実な人生を送ること。その一歩となる社会人生活を踏み出した途端に異世界に召喚されてしまう。召喚成功に湧く周囲をよそに瑛莉桂は思った。 「聖女とか絶対ブラックだろう!断固拒否させてもらうから!」 ナルシストな王太子や欲深い神官長、腹黒騎士などを相手に主人公が幸せを勝ち取るため奮闘する物語です。

処理中です...