16 / 19
第16話:五感を支配する極上スイートルーム! 魔脈APIと現代建築で究極の客室をDIYせよ
しおりを挟む
サニタリーの革命は無事に成功。
となれば次に取り組むべきはリゾートの要たる客室……つまりゲストルーム)だ。
城全体に温水洗浄便座を完備し、男たちの尊厳を木端微塵に砕き去った翌日。
私は休む間もなく、VIP向けの客室作りへと着手していた。
「マーサ、使っていない南側の広い客室を視察するわよ。案内してちょうだい」
「はい、シャルロッテ様! こちらです!」
マーサと共に、私は分厚い木の扉を開けた。
そして、一歩足を踏み入れた瞬間に――私は絶望で頭を抱えた。
「な、なんなのこの空間は……っ!」
ピューピューと容赦なく吹き込む隙間風。
長年閉め切られていたせいか、鼻をつくカビとホコリの匂い。
石剥き出しの冷たい床に、色あせた壁のタペストリー。
部屋の隅にはダニが大量に繁殖していそうな硬い藁のベッド。
照明といえば、壁に掛けられた煤けた燭台がポツンとあるだけだ。
「こんな部屋じゃ、王都のセレブから金貨の一枚もむしり取れないわ! ペインの塊じゃないの!」
「も、申し訳ございません! すぐに掃除を――」
「掃除レベルで解決する問題じゃないわ、マーサ。これは根本的な空間デザインの敗北よ!」
私は腕まくりをして、部屋の中央に陣取った。
「まずは箱……空間の基礎からやり直すわよ!」
私は両手を床につけ、地下に眠る魔脈から膨大なエネルギーを引き出した。
「壁と床の基礎工事よ! 『土魔法・材質変換』!」
冷たく無骨だった石の床が、なめらかで温かみのある無垢材風のフローリングへと生まれ変わる。
壁は古びた石積みを完全に覆い隠すように、調湿・消臭効果のある漆喰風の白い壁面へとコーティングした。
「次は空調! 部屋の四隅と天井に複合魔法陣を構築! 『炎』で空気を適温に温め、『風』で部屋全体にムラなく循環させる! 同時に『水魔法』のミストで乾燥を防ぐ……名付けて、魔力駆動型・全自動空調システム!」
腐りかけていた窓枠も土魔法で完全に密閉・断熱化。
これで外で吹雪が吹き荒れていようと、室内は常に「湿度50%、気温25度」の快適な春の陽気に保たれる。
「なんだか、空気がスッキリとして、とても呼吸がしやすいです……」
「ふふっ、空間のベースはできたわね。次は照明と家具……インテリアよ!」
五つ星リゾートには、統一感のある洗練された家具が必須だ。
私はサウナの薪用に騎士団が伐採してくれていた辺境の魔樹の余りを空間に浮かせた。
「『風魔法・切削』! そして『水魔法・研磨』!」
見えない風の刃が魔樹を精密に切り出し、高圧の水流が表面をシルクのように滑らかに磨き上げる。
釘を一切使わない伝統的な木組みの技法を魔法で再現し、あっという間に北欧風のモダンで美しいローテーブルと、曲線が身体にフィットするラウンジチェアを錬成した。
意外と前世の動画サイトで見た知識も役に立つね。
「よし、さらに部屋の隅に小さな木製キャビネットを錬成! その中に『氷魔法』の魔石を組み込んで……異世界版・小型冷蔵庫……ミニバーの完成よ!」
私はキャビネットの中に、温室で採れたフルーツを漬け込んだ特製デトックスウォーターと、キンキンに冷えた極上の発泡果実酒の瓶を常備した。
いわゆるシャンパンだ……。
「高級ホテルといえば、部屋備え付けのミニバー……ありきたりなエールじゃなくて、優雅なシャンパンでいつでも冷たい喉越しを提供できるわ!」
「なんと……! 辺境の冬は外に置けば瓶ごと凍りついて割れてしまい、部屋の暖炉のそばに置けば生ぬるくなってしまうのに……この箱の中は常に凍らない程度の極上の冷たさが保たれているのですね」
「その通り! 徹底した温度管理こそが、五つ星のホスピタリティよ!」
感動するマーサを横目に、私はさらに家具の錬成を進める。
「マーサ、魔猪の余った毛皮があるわよね? 持ってきてちょうだい」
「はいっ、すぐに!」
マーサが運んできた魔猪の分厚い冬毛の毛皮を、私は土魔法の錬金術で徹底的に洗浄・防虫加工し、ベッドサイドに敷く極上のフカフカラグマットに仕立て上げた。
素足で歩けば、雲の上を歩いているような感触だ。
「さらに、内臓を包んでいた柔らかい皮膜は極限まで薄く鞣して袋状にし、中にスライムコアを粉砕した極小ビーズを詰め込む!」
これをローテーブルの横に配置して……身体の形に合わせて沈み込む、一人掛けのパーソナル・リラックスソファ──そう、人をダメにするクッションの完成だ。
「マーサ、ちょっと座り心地をテストしてみてちょうだい」
「め、滅相もございません! 私のようなメイドが、シャルロッテ様のお作りになった家具に腰を下ろすなど……!」
「いや、別にクッションに座るくらいそんなにかしこまらなくても……」
私は激しく遠慮するマーサの肩を押し、無理やりクッションに座らせた。
――バフッ。
その瞬間。
「……あ……れ……?」
マーサの姿勢が、スライムのように崩れ落ちた。
極小ビーズが、長年の過酷な立ち仕事で酷使されすっかりガタが来ていた彼女の腰や関節の隙間を優しく、完璧にホールドする。
「あ、あぁぁ……腰の痛みが……骨が溶けていくように心地よい……。美しいお花畑が見えます……」
「ちょ、ちょっとマーサ!? 昇天しないで、こっちに戻ってきて!」
完全に白目を剥いて三途の川を渡りかけた初老のメイドを、私は慌てて引き剥がした。
恐るべき魔力だ。このデモンストレーションにより、リラックス効果のヤバさは完全に証明された。
「次は照明と音響ね。こんな目に刺さるような炎剥き出しのロウソクじゃ、気が休まらないし、外は猛吹雪で風の音がうるさいわ」
私は燭台を撤去し、代わりに淡い光を放つ光魔法の魔石を、天井の縁やベッドの下、壁のくぼみなどに隠すように配置した。
光源を直接見せず、壁や床に反射した柔らかい光で部屋を包み込む間接照明だ。
さらに、防音結界を張った室内の壁に微弱な風魔法と『水魔法』を組み合わせた小さな魔法陣を刻む。
「無音すぎるのも逆に落ち着かないのよ! 小川のせせらぎや葉の揺れる音……環境音で聴覚から自律神経をハック!」
魔法陣から人間が最もリラックスするという1/fゆらぎのヒーリングBGMが静かに流れ始める。
ただ温かいだけじゃない、光と空気と音で人間の副交感神経を優位にする究極の空間デザインだ。
「す、すごいですシャルロッテ様……! ここがさっきまでのカビ臭い部屋だなんて、信じられません……!」
現実に引き戻されたマーサが、足元をフラフラさせながらも感嘆の声を上げる。
「驚くのはまだ早いわ。部屋の中央には究極のスリープテック……量産型ウォーターベッドを錬成するわよ!」
私が自室に作ったマジック・フローティング・マットレスの改良版である。
今回はあらかじめ取っておいた特大サイズの魔猪の丈夫な皮膜を使って巨大な袋を作り、中に適温に温められた水を満たす。
体圧を完璧に分散し、無重力のような寝心地を提供する悪魔の寝具だ。
「……でも、これだけじゃまだ足りないわ。肌に直接触れるシーツの質が命よ! それに、いくらベッドが最高でも、堅苦しい貴族の服を着たままじゃ休まらないわ!」
私は昨日ボタニカルドーム温室にこっそり植えて、すでに爆速で収穫を終えていた魔綿花の山を取り出した。
「『風魔法』で極細の糸に紡ぎ、『水魔法』で不純物を洗い流し、『土魔法』の精密操作で一気に織り上げる!」
シュババババッ! という音と共に雲のように白く、シルクのように滑らかな極上のシーツと掛け布団が空中で完成し、ウォーターベッドの上へとふわりと舞い降りた。
さらに、同じ素材を起毛させて作った、極上の肌触りのふかふかルームウェア(バスローブ風)も錬成し、ベッドの上に美しくセットする。
「はぁ……はぁ……仕上げはアメニティと香りの演出!」
洗面台にはクリスタル・スライムから抽出した極上のボタニカル・セラムと薬用ピーリング石鹸を、可愛らしいガラス小瓶に詰めて並べる。
そして土魔法で素焼きの美しい陶器を作り、その中に温室で採れた魔香草(なんかラベンダーっぽい謎の草)の抽出液を垂らした。微弱な風魔法で、部屋全体にリラックス効果の高い香りをほんのりと漂わせた。
アロマディフューザーである……。
「視覚、触覚、聴覚、そして嗅覚……五感すべてを完全に支配する、極上スイートルームの完成よ!」
私は腰に手を当てて、出来上がった完璧なゲストルームを見渡し満足げに頷いた。
床材から家具、寝具、アメニティ、さらにはミニバーとルームウェアに至るまで、辺境の天然素材を最新のマーケティング知識と魔法で再構築した、五つ星ホテルのプレジデンシャル・スイートにも引けを取らない圧倒的な顧客体験がここにある。
「さあ……箱とサービスは整ったわ」
私は最高に邪悪で美しい笑みを浮かべた。
「あとはこの空間の顧客満足度を計測するだけよ。マーサ、この城で一番の金づる……じゃなくてVIPに、今夜この部屋でテスト宿泊をしてもらうよう伝えてきなさい!」
「は、はいっ! すぐに公爵様をお呼び出ししてまいります!」
究極の罠であるスイートルームを仕掛けた私は今夜、氷の公爵がこの部屋で完全に理性を溶かされ、二度と元の生活に戻れなくなることを確信してほくそ笑むのだった。
となれば次に取り組むべきはリゾートの要たる客室……つまりゲストルーム)だ。
城全体に温水洗浄便座を完備し、男たちの尊厳を木端微塵に砕き去った翌日。
私は休む間もなく、VIP向けの客室作りへと着手していた。
「マーサ、使っていない南側の広い客室を視察するわよ。案内してちょうだい」
「はい、シャルロッテ様! こちらです!」
マーサと共に、私は分厚い木の扉を開けた。
そして、一歩足を踏み入れた瞬間に――私は絶望で頭を抱えた。
「な、なんなのこの空間は……っ!」
ピューピューと容赦なく吹き込む隙間風。
長年閉め切られていたせいか、鼻をつくカビとホコリの匂い。
石剥き出しの冷たい床に、色あせた壁のタペストリー。
部屋の隅にはダニが大量に繁殖していそうな硬い藁のベッド。
照明といえば、壁に掛けられた煤けた燭台がポツンとあるだけだ。
「こんな部屋じゃ、王都のセレブから金貨の一枚もむしり取れないわ! ペインの塊じゃないの!」
「も、申し訳ございません! すぐに掃除を――」
「掃除レベルで解決する問題じゃないわ、マーサ。これは根本的な空間デザインの敗北よ!」
私は腕まくりをして、部屋の中央に陣取った。
「まずは箱……空間の基礎からやり直すわよ!」
私は両手を床につけ、地下に眠る魔脈から膨大なエネルギーを引き出した。
「壁と床の基礎工事よ! 『土魔法・材質変換』!」
冷たく無骨だった石の床が、なめらかで温かみのある無垢材風のフローリングへと生まれ変わる。
壁は古びた石積みを完全に覆い隠すように、調湿・消臭効果のある漆喰風の白い壁面へとコーティングした。
「次は空調! 部屋の四隅と天井に複合魔法陣を構築! 『炎』で空気を適温に温め、『風』で部屋全体にムラなく循環させる! 同時に『水魔法』のミストで乾燥を防ぐ……名付けて、魔力駆動型・全自動空調システム!」
腐りかけていた窓枠も土魔法で完全に密閉・断熱化。
これで外で吹雪が吹き荒れていようと、室内は常に「湿度50%、気温25度」の快適な春の陽気に保たれる。
「なんだか、空気がスッキリとして、とても呼吸がしやすいです……」
「ふふっ、空間のベースはできたわね。次は照明と家具……インテリアよ!」
五つ星リゾートには、統一感のある洗練された家具が必須だ。
私はサウナの薪用に騎士団が伐採してくれていた辺境の魔樹の余りを空間に浮かせた。
「『風魔法・切削』! そして『水魔法・研磨』!」
見えない風の刃が魔樹を精密に切り出し、高圧の水流が表面をシルクのように滑らかに磨き上げる。
釘を一切使わない伝統的な木組みの技法を魔法で再現し、あっという間に北欧風のモダンで美しいローテーブルと、曲線が身体にフィットするラウンジチェアを錬成した。
意外と前世の動画サイトで見た知識も役に立つね。
「よし、さらに部屋の隅に小さな木製キャビネットを錬成! その中に『氷魔法』の魔石を組み込んで……異世界版・小型冷蔵庫……ミニバーの完成よ!」
私はキャビネットの中に、温室で採れたフルーツを漬け込んだ特製デトックスウォーターと、キンキンに冷えた極上の発泡果実酒の瓶を常備した。
いわゆるシャンパンだ……。
「高級ホテルといえば、部屋備え付けのミニバー……ありきたりなエールじゃなくて、優雅なシャンパンでいつでも冷たい喉越しを提供できるわ!」
「なんと……! 辺境の冬は外に置けば瓶ごと凍りついて割れてしまい、部屋の暖炉のそばに置けば生ぬるくなってしまうのに……この箱の中は常に凍らない程度の極上の冷たさが保たれているのですね」
「その通り! 徹底した温度管理こそが、五つ星のホスピタリティよ!」
感動するマーサを横目に、私はさらに家具の錬成を進める。
「マーサ、魔猪の余った毛皮があるわよね? 持ってきてちょうだい」
「はいっ、すぐに!」
マーサが運んできた魔猪の分厚い冬毛の毛皮を、私は土魔法の錬金術で徹底的に洗浄・防虫加工し、ベッドサイドに敷く極上のフカフカラグマットに仕立て上げた。
素足で歩けば、雲の上を歩いているような感触だ。
「さらに、内臓を包んでいた柔らかい皮膜は極限まで薄く鞣して袋状にし、中にスライムコアを粉砕した極小ビーズを詰め込む!」
これをローテーブルの横に配置して……身体の形に合わせて沈み込む、一人掛けのパーソナル・リラックスソファ──そう、人をダメにするクッションの完成だ。
「マーサ、ちょっと座り心地をテストしてみてちょうだい」
「め、滅相もございません! 私のようなメイドが、シャルロッテ様のお作りになった家具に腰を下ろすなど……!」
「いや、別にクッションに座るくらいそんなにかしこまらなくても……」
私は激しく遠慮するマーサの肩を押し、無理やりクッションに座らせた。
――バフッ。
その瞬間。
「……あ……れ……?」
マーサの姿勢が、スライムのように崩れ落ちた。
極小ビーズが、長年の過酷な立ち仕事で酷使されすっかりガタが来ていた彼女の腰や関節の隙間を優しく、完璧にホールドする。
「あ、あぁぁ……腰の痛みが……骨が溶けていくように心地よい……。美しいお花畑が見えます……」
「ちょ、ちょっとマーサ!? 昇天しないで、こっちに戻ってきて!」
完全に白目を剥いて三途の川を渡りかけた初老のメイドを、私は慌てて引き剥がした。
恐るべき魔力だ。このデモンストレーションにより、リラックス効果のヤバさは完全に証明された。
「次は照明と音響ね。こんな目に刺さるような炎剥き出しのロウソクじゃ、気が休まらないし、外は猛吹雪で風の音がうるさいわ」
私は燭台を撤去し、代わりに淡い光を放つ光魔法の魔石を、天井の縁やベッドの下、壁のくぼみなどに隠すように配置した。
光源を直接見せず、壁や床に反射した柔らかい光で部屋を包み込む間接照明だ。
さらに、防音結界を張った室内の壁に微弱な風魔法と『水魔法』を組み合わせた小さな魔法陣を刻む。
「無音すぎるのも逆に落ち着かないのよ! 小川のせせらぎや葉の揺れる音……環境音で聴覚から自律神経をハック!」
魔法陣から人間が最もリラックスするという1/fゆらぎのヒーリングBGMが静かに流れ始める。
ただ温かいだけじゃない、光と空気と音で人間の副交感神経を優位にする究極の空間デザインだ。
「す、すごいですシャルロッテ様……! ここがさっきまでのカビ臭い部屋だなんて、信じられません……!」
現実に引き戻されたマーサが、足元をフラフラさせながらも感嘆の声を上げる。
「驚くのはまだ早いわ。部屋の中央には究極のスリープテック……量産型ウォーターベッドを錬成するわよ!」
私が自室に作ったマジック・フローティング・マットレスの改良版である。
今回はあらかじめ取っておいた特大サイズの魔猪の丈夫な皮膜を使って巨大な袋を作り、中に適温に温められた水を満たす。
体圧を完璧に分散し、無重力のような寝心地を提供する悪魔の寝具だ。
「……でも、これだけじゃまだ足りないわ。肌に直接触れるシーツの質が命よ! それに、いくらベッドが最高でも、堅苦しい貴族の服を着たままじゃ休まらないわ!」
私は昨日ボタニカルドーム温室にこっそり植えて、すでに爆速で収穫を終えていた魔綿花の山を取り出した。
「『風魔法』で極細の糸に紡ぎ、『水魔法』で不純物を洗い流し、『土魔法』の精密操作で一気に織り上げる!」
シュババババッ! という音と共に雲のように白く、シルクのように滑らかな極上のシーツと掛け布団が空中で完成し、ウォーターベッドの上へとふわりと舞い降りた。
さらに、同じ素材を起毛させて作った、極上の肌触りのふかふかルームウェア(バスローブ風)も錬成し、ベッドの上に美しくセットする。
「はぁ……はぁ……仕上げはアメニティと香りの演出!」
洗面台にはクリスタル・スライムから抽出した極上のボタニカル・セラムと薬用ピーリング石鹸を、可愛らしいガラス小瓶に詰めて並べる。
そして土魔法で素焼きの美しい陶器を作り、その中に温室で採れた魔香草(なんかラベンダーっぽい謎の草)の抽出液を垂らした。微弱な風魔法で、部屋全体にリラックス効果の高い香りをほんのりと漂わせた。
アロマディフューザーである……。
「視覚、触覚、聴覚、そして嗅覚……五感すべてを完全に支配する、極上スイートルームの完成よ!」
私は腰に手を当てて、出来上がった完璧なゲストルームを見渡し満足げに頷いた。
床材から家具、寝具、アメニティ、さらにはミニバーとルームウェアに至るまで、辺境の天然素材を最新のマーケティング知識と魔法で再構築した、五つ星ホテルのプレジデンシャル・スイートにも引けを取らない圧倒的な顧客体験がここにある。
「さあ……箱とサービスは整ったわ」
私は最高に邪悪で美しい笑みを浮かべた。
「あとはこの空間の顧客満足度を計測するだけよ。マーサ、この城で一番の金づる……じゃなくてVIPに、今夜この部屋でテスト宿泊をしてもらうよう伝えてきなさい!」
「は、はいっ! すぐに公爵様をお呼び出ししてまいります!」
究極の罠であるスイートルームを仕掛けた私は今夜、氷の公爵がこの部屋で完全に理性を溶かされ、二度と元の生活に戻れなくなることを確信してほくそ笑むのだった。
46
あなたにおすすめの小説
私を裏切った夫が、後悔しているようですが知りません
藤原遊
恋愛
政略結婚として、公爵家に嫁いだ私は
愛のない夫婦関係を「仕事」だと思い、正妻の役目を果たしてきた。
夫が愛人を持つことも、
その子を屋敷に迎え入れることも、黙って受け入れてきた。
けれど――
跡取りを、正妻の子ではなく愛人の子にする。
その言葉を、人前で軽く口にした瞬間。
私は悟ったのだ。
この家では、息子を守れないと。
元々、実家との間には
「嫡子以外の子は実家の跡取りにする」という取り決めがあった。
ならば話は簡単だ。
役目を終えた私は、離縁を選ぶ。
息子と共に、この家を去るだけ。
後悔しているようですが――
もう、私の知るところではありません。
乙女ゲームの世界だと、いつから思い込んでいた?
シナココ
ファンタジー
母親違いの妹をいじめたというふわふわした冤罪で婚約破棄された上に、最北の辺境地に流された公爵令嬢ハイデマリー。勝ち誇る妹・ゲルダは転生者。この世界のヒロインだと豪語し、王太子妃に成り上がる。乙女ゲームのハッピーエンドの確定だ。
……乙女ゲームが終わったら、戦争ストラテジーゲームが始まるのだ。
王国最強の天才魔導士は、追放された悪役令嬢の息子でした
由香
ファンタジー
追放された悪役令嬢が選んだのは復讐ではなく、母として息子を守ること。
無自覚天才に育った息子は、魔法を遊び感覚で扱い、王国を震撼させてしまう。
再び招かれたのは、かつて母を追放した国。
礼儀正しく圧倒する息子と、静かに完全勝利する母。
これは、親子が選ぶ“最も美しいざまぁ”。
婚約者チェンジ? 義理の妹は公爵令嬢の地位もチェンジされました』 ~三日で破談、家ごと褫奪の末路です~
ふわふわ
恋愛
「お姉様の婚約者、私がいただきますわ。だって“公爵令嬢”ですもの」
義理の妹コンキュはそう言って、王太子との婚約を奪いました。
父はそれを容認し、私は静かに受け入れます。
けれど――
公爵令嬢とは“地位”ではなく、“責任”の継承者。
王宮で礼儀も実務も拒み、「未来の王太子妃」を名乗った義妹は、わずか三日で婚約破棄。
さらに王家への不敬と統治能力の欠如が問題視され、父の監督責任が問われます。
そして下されたのは――家ごとの褫奪。
一方で私は、領地を守り、帳簿を整え、静かに家を支え続ける。
欲しがったのは肩書。
継いだのは責任。
正統は叫びません。
ただ、残るだけ。
これは、婚約を奪われた公爵令嬢が
“本当に継がれるべきもの”を証明する物語。
蔑まされた没落貴族家の悪役令嬢ですが、この舞台の主役は私がやらせていただきます!
あぷりこっと
恋愛
「君の嫉妬深さにはもう辟易しているんだ」
婚約者のハイベルクにそう告げられた瞬間、レーウは確信した。
――計画通り。
何も知らない侯爵令嬢ランダ。王国最強と謳われた騎士団長ハイベルク。彼がその双剣を振るう相手を間違えた時、破滅のカウントダウンは始まった。
世間がレーウを嫉妬に狂った没落家の伯爵令嬢と蔑んでいる間、彼女は自警団と共に貴族院の秘密を暴き敵の逃げ場を奪い続けていた。
格安警備会社へのすり替え、配電盤の掌握、そして夜視の魔導具。
感情を切り捨て毒となった令嬢が公爵邸舞踏会を、社会的抹殺の舞台へと変える。
「不運と踊る?……いいえ。私に踊らされていたのだと、地獄で気づきなさい!!」
※ヒロインの活躍が凛々しいので応援してください♪
死ぬ瞬間にだけ、愛してほしい
しょくぱん
恋愛
「代わって。死なない程度に、ね?」
異母姉リリアーヌの言葉一つで、エルゼの体は今日もボロボロに削られていく。
エルゼの魔法は、相手の傷と寿命を自らに引き受ける「禁忌の治癒」。
その力で救い続けてきたのは、初恋の人であり、姉の婚約者となった王太子アルベルトだった。
自分が傷つくほど、彼は姉を愛し、自分には冷ややかな視線を向ける。
それでもいい。彼の剣が折れぬなら、この命、一滴残らず捧げよう。
だが、エルゼの寿命は残りわずか。
せめて、この灯火が消える瞬間だけは。
偽りの聖女ではなく、醜く焼けた私を、愛してほしい。
家出を決行した結果
棗
恋愛
フィービーの婚約者ミゲルには大切な幼馴染がいる。病弱な幼馴染をいつも優先するミゲルや母が亡くなって以降溝が出来てしまった父と兄との関係にフィービーは疲れていた。
デートの約束をしてもいつも直前になって幼馴染を理由にキャンセルされ、幼馴染にしか感情を見せないミゲルを、フィービーを見ようとしない父や兄を捨てる決心をしたフィービーは侍女や執事の手を借りて家出を決行した。
自分を誰も知らない遠い場所へ行ったフィービーは、新しい人生の幕開けに期待に胸を躍らせた。
※なろうさんにも公開しています。
私の人生に、おかえりなさい。――都合のいい「お姉ちゃん」は、もうどこにもいません
しょくぱん
恋愛
「お姉ちゃんなんだから」
――それは私を縛る呪いの言葉だった。
家族の醜い穢れを一身に吸い込み、妹の美しさの「身代わり」として生きてきた私。
痛みで感覚を失った手も、鏡に映らない存在も、全ては家族のためだと信じていた。
でも、、そんな私、私じゃない!!
―― 私は、もう逃げない。 失われた人生を取り戻した今、私は、私に告げるだろう。
「私の人生に、おかえりなさい。」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる