お犬様のお世話係りになったはずなんだけど………

ブラックベリィ

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第7章 儀式という夢の後

350★紅夜は憂鬱な気分で黄昏れる*side蓬莱家*

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 怨霊や邪霊などの澱み穢れしモノをまき散らした者が【狩る者】なだけに、簡単な祓い清めでは浄化されて、綺麗にならず、四苦八苦しているのだ。

 ただひたすら、浄化の《能力》を持つ者は、結界内に持ち込まれた、邪念や霊なるモノを強制的に排除し、汚染された神域の空気を急いで清浄化する作業に追われていたのだった。

 なまじ、桜が一族の者へと変異している真っ最中なので、特に神経をピリピリさせているのは、実は、爺やその人だったりする。

 新しい一族、それも純血種であり、一族の長である白夜から、真血を受けたが為に、白夜の娘と言っても良い存在である桜は、ある種の希望でもあるのだ。

 一族の中には、確かに桜の存在を疎む者も少数居るが………。
 大半の者は、桜を容認しているどころか、むしろ喜んでいた。

 異種である人間との交わりを好まないが故に起きた血の濁りのセイかも白夜達兄弟と姉妹の父親的存在の男は、ひたすらに種馬だった。

 しかし、残念なコトに、種馬なのは、白夜達の父親だけだった。
 他の一族の者は、男達にしろ、女達にしろ、子を持つ者が居なかったりする。

 紅夜は無人となった、長い廊下を見て、切なげに肩を竦めて首を振る。

 種馬な親父を批判する前に、子作りしろよなぁ………ったく………
 だが、もう、その親父も【狩る者】達に強襲されて殺されて居ないんだぞ

 今、子供を得られるのって…もしかしなくても俺と桜だけじゃん
 年齢だけでいえば、まだまだ兄上達も姉上達もこれからだけど………

 冗談抜きで、連れ合いになる相手が居ないんだよなぁ………
 情を楽しんで交す居ては居ても、一族に迎えたいって相手は居ないって

 はぁ~…マジで、真族って終わりが近いよなぁ………
 和輝だったり間違いなく言うな『絶滅危惧種』ってさ

 などと思いながら、紅夜はその気分のままにゆっくりとした足取りで歩く。
 せっかく愛する女・桜を腕に抱き、甘い夢をペットハウスでそのまま見ようと目論んでいただけに、紅夜は重い溜め息を無意識に零れ落とす。

 いや、本当は、爺やが俺を呼びに来るの理解わかっていたけどさぁ
 今回の藤夜兄上を正気に戻す為に執り行った儀式への支払い金額とか……

 いや、それ以前に、和輝達についての話し合いが必要だからって理由で
 兄上達に、呼び出されるだろうってコトは予測していたけどさぁ…はぁ~

 俺には、どうやって、和輝達のコトを説明したらイイかわからない
 いや、和輝達じゃなくて、和輝自身のコトを…だな…はぁ~どうしよう

 本音を言えば、あのまま、ペットハウスの部屋のベッドに倒れ込んで
 桜を腕に抱き込んで、夢も見ずにぐっすりと、朝まで熟睡したかったぜ

 できれば…そうできればだけど、少し頭ン中で整理する時間欲しかったな
 あの和輝の許容の広さとかを、どうやって言葉にしたら良いやら………

 気分的に重い足取りで、其処に到着してしまった紅夜は、兄達が待つ居間の扉に手を掛けて、押し開く。

 こういう時には、ノックを省略して入室しても、文句を言われないので、ノックせずに入るコトにした。

 良く手入れされた扉は、軽く押しただけで、音も無く内側へと大きく開く。
 紅夜は諦め気分で、静かに室内へと滑り込む。

 そっと入室した紅夜に、和輝達の様子を大画面で観察していた3人の兄が振り返る。

 勿論、観察していたのは主に白夜と蒼夜で、視力を失った藤夜は、声と雰囲気を探るだけだった。

 なんせ、藤夜は、先刻、やっと十数年ぶりに正気に戻ったばかりで、視力を失っているコトに対する適応も出来ていないのだから………。

 そんな中、最初に、長男らしく、蒼夜が声を掛ける。

 「ああ、お帰り紅夜…楽しくしているところを、呼び出して悪かったね」

 それに重なるように、当主を務める白夜が肩を竦めて言う。

 「すまないな、紅夜……桜のコトも、色々な意味で、心配なのだが
  こちらの状況がわからないのでな、お前からの報告が欲しい」

 2人の兄弟の反応と、先刻の大半が意味不明の説明に、首を傾げる藤夜は、見えない瞳を紅夜へと向けて、切実そうに言う。

 「紅夜、色々と疲れているところ悪いが、蒼夜兄上と白夜からの説明では
  私には、良くわからないコトが多いんだ
  済まないが……私に、理解わかりやすく説明して欲しいのだが……」

 三人三様の言葉に、紅夜はフッと嘆息して、まずは挨拶をする。

 「お待たせしました、蒼夜兄上、白夜兄上、藤夜兄上」

 そこで、いったん言葉を切り、紅夜は気遣わしけに、蒼夜の隣りに座る藤夜を見て言う。

 「その……説明はいったんおいて置いて、気分はどうですか?藤夜兄上」

 ああ…また……藤夜兄上?…昔は、藤夜兄さんって呼んでいたはずなのに
 蒼夜兄さんにも、白夜にも、兄上になっているし…何かあったのか?
 私が、正気を失っている間に、どれほどのコトがあったのだろう?

 紅夜からの心配が明確ににじみ出ている言葉に、藤夜は首を傾げて答える。

 「心配してくれてありがとう、紅夜……取り敢えず、気分は良いよ
  見えないコトと、身体が思ったようには動かない不自由はあるけど……

  随分と、紅夜にも心配を掛けてしまったようだね
  私が正気を失っている間に、色々とあったんだろうね

  昔は、藤夜兄さんって呼んでいたのに、今は兄上というほどには
  それでも、紅夜には出来れば兄さんと呼んで欲しいな」

 落ち着いた口調での言葉に、紅夜は少しホッとした表情になる。














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