朝起きるとミミックになっていた ~捕食するためには戦略が必要なんです~

めしめし

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第4章 7階層攻略編

第91話 同盟

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(ここで待ってもオークは現れないってどういうことだ?)

僕は自信満々に答える馬鹿にたずねた。

(だって兄貴、オークの習性ってもんを分かってねぇよ。
オークの目は白黒でしか見えねぇんだ。
だからこんなところで待っててもオークは宝箱を見分けられねぇ)

(じゃあ、一体奴らはどうやってレアアイテムをゲットしているんだ?)

(戦って奪うのよ!オークたちは強い敵がいるところに向かって行って、力ずくで宝箱を奪ってんだ。
相手が自分より強くても関係ねぇ。どんな相手でも、ワンパンよ!
くぅー、男だねぇ!)

こいつオークに洗脳でもされてるんじゃなかろうか?

(じゃあ、オークはどうやってその強い敵を見つけてるんだ?)
戦闘特化のオークだけで敵の情報が分かるとは思えない。
ひょっとすると協力者がいるかもしれない。

(兄貴らが獣人を全滅させただろ?あれから7階層のパワーバランスが変わっちまったんだ。)

(えっ、僕らのせい?)
意外な答えに、僕は驚いて聞き返した。

(たった数匹のミミックたちが、獣人たちを滅ぼしちまったんだ。そりゃ、対策するだろ?
それぞれのエリアを牛耳っていた奴らが、危機感を感じて同盟を組み始めたんだ。)

(同盟?)

(そうなんすよ。南は南東、南、南西エリア、北は東、北東、北エリアがくっついちまった。
だから兄貴、南東に手を出したら、南も南西も敵にまわっちまうんだ。)

なるほど、オークが敵の場所が分かるのは南か南西のやつらが手引きしているのか。

(じゃあ、オークたちはどんな勢力と同盟してるの?)

(オークらがくっついてんのは、南尾シャーマンたち。奴らいつも変な衣装して気持ちわりぃ。
ただ、変わった呪文や特技を持ってる。オークたちに敵やレアアイテムの位置を教えてんのはアイツらにちげぇねえ。)

シャーマン…祈祷師の類だろうか?

(最もこえぇのがオークよりも格上種族のオーガだ。
個体数は少ねぇが、タイマンの強さはダントツでトップだろうな。)

力押しするタイプだろうか?
オークよりも格上となれば、かなり強いだろう。

(ちなみに北は?)

(北はエルフやドワーフ、人間が同盟を組んだようだぜ。
モンスター体人族みてぇになっちまったな。
中立を貫いているのは西だけだ。俺っちも西については詳しくはねぇ。)

とにかく、僕らに対抗するために同盟を組んだわけだ。
とは言っても僕のパーティで残ってるのは僕だけなんだけど。

(ざっとこんなもんよ。
それで兄貴はどうする?俺っちはどこまでも兄貴について行くぜ?)

別に仲間にしたつもりはないんだけど?
彼の紫の宝箱は目立ちすぎる。
僕はもうこれ以上は目立ちたく無いんだ。
それにミミックを連れて行くのはもうこりごりだ。
色々教えてくれたし、悪い奴じゃなさそうだけど信用できるとは限らない。

ミミックは基本嘘つきだ。
自分の目的のためには兵器で仲間も犠牲にする。
ミミック同士でのばかし合いはもうこりごりだ。
とりあえずこの馬鹿には諦めてもらおう。

(仲間と分かれたばかりだから、僕はもう少し1人でいたい。)

(兄貴心配すんな。俺っちが寂しさ埋めてやんよ)


いや、そうじゃなくて…。

(君の宝箱は派手過ぎて潜入には向かないんだ。)

(兄貴かっこいいだろ?この宝箱。
でぇじょうぶ!潜入の時には黒塗りのスーパー韋駄天号にすっから。)

ダサすぎる…!全く動じないなこの馬鹿。

(君にもしものことがあったらダメだろ?君も元の世界に戻りたいだろ?)

(兄貴には辛いことがあったもんなぁ。
大丈夫、俺はそう簡単にくたばらねぇよ。)

段々腹が立ってきた。
遠回しに言っても伝わらないようだ。
はっきり言っやろう。

(僕は今1人でダンジョン攻略を進めたいんだ。
だから、付いてこられると迷惑だ!)

よし、言ってやった。
これでさすがにこの馬鹿も理解しただろう。

(兄貴は優しすぎるんすよ。そんなにまで俺っちの身を心配してくれんでも俺っちなら大丈夫。)

なんでこいつはそんなにポジティブ思考なんだ。
説得しようと理由を探す僕の方が馬鹿みたいだ。

(兄貴は俺っちを遠ざけようとしてるみてぇだけど、離れねぇぞ。)

うーん、どうしたら離れてくれるだろう?

(兄貴、俺っちから離れたければ、タイマンだ。
俺っちが勝ったら俺の言うことは聞いてくれよ。)

ミミックはどうしてもこうも好戦的なのだ。
僕も人のことは言えないが…。

勝てばいいのだ。
僕に負けると諦めがつくだろう。

僕と馬鹿はオーク圏の一角で、人知れず闘いを行った。
ただ、その時の僕は予想もしていなかった。
まさか僕が負けるなんて…。
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