朝起きるとミミックになっていた ~捕食するためには戦略が必要なんです~

めしめし

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第4章 7階層攻略編

第93話 パンドラボックスの発見

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僕の隙を突き、一瞬で背後に回り剣をつきつけたタケル。
誰の目にも勝敗は明らかだった。

(どうだい兄貴?俺っちを連れて行く気になっただろ?)
タケルの自信に満ちた声が僕の頭に響く。

確かに負けたのは残念だったが、強力な味方が出来たことを喜ぶべきかもしれない。
後はタケルもリュウみたいに裏切らないことを祈るだけ。

(僕の負けだ。一緒にダンジョンを攻略しよう。
でも、最後の攻撃はどうやったんだ?)

(さすがにそれは教えられねぇな。)

最後のタケルの攻撃は意表を疲れた。
完全に姿を消して僕の攻撃を避けた上に、僕の背後までとったのだ。

(で、どうする兄貴?どこから攻める?)

(僕はパンドラボックスを探しているんだ。
それさえ獲得できれば、7階層を本格的に攻略しようと思っている。)

(あのパンドラボックスねぇ…。
そういや南のシャーマンどもが、確保してるって噂を聞いたな。)

意図せず有力な情報をゲットできた。
それなら噂の真相を確かめねばならない。

(じゃあ、シャーマンのいる南に向かおう。)

(OK兄貴。それじゃ準備しねぇとな。)

僕らはパンドラボックスを獲得するために、まずはシャーワンたちのいる最南端へ向かうことにした。
最南端は今いるところよりもさらに南西部に位置する。
僕らはゆっくりと最南端に向かって移動し始めた。

意外にも最南端までは、ほとんど敵には会わなかった。
何度かミミックに襲われたが、全て返り討ちにしたのだ。

最南端も最北西端や最南東端と同じように、1つの大きな部屋となっているようだ。
入り口が一か所しか無い所も変わらない。
入り口の前には、民族衣装風の服を着たシャーマンたちが数人立っている。
おそらく門番なのだろう。
中に入るには奴らを倒すしかない。

戦闘準備をする僕に向かってタケルは、

(兄貴、正面突破をするつもりかい?
それよりもいい手があるぜ。ただ、この作戦は兄さんにしか出来ねぇ。)

僕にしか出来ない作戦?一体何を考えてるんだ。

タケルの作戦は、とてもシンプルだ。
タケルの経験から、特定のアイテムを探す場合には魔眼スキルの【千里眼】が役立つらしい。
検索条件に欲しいアイテム名を入れ、【千里眼】でそのアイテムを検索する。
するとそのアイテムがある場所を映像で確認できるのだ。
その位置をマップと照らし合わせることで、欲しいアイテムの位置が分かる。
ただ7階層はテレポートが使用できないので、その場所までは自分の力で行く必要がある。

後はその行き方だ。
僕は【千里眼】を使用してパンドラボックスの場所を、最南端の一番深部にあることが確認できた。
通常のルートで行くなら、唯一の出入り口である正面の通路から行かなければならない。
しかし、タケルの作戦はもっと大胆だ。

僕らが狙うのは正面の通路ではなく、隣の部屋。
隣の部屋の最深部に行って、その一から【暴食】で壁を食べて潜入しようというのだ。
確かに正面から突破するのに比べて、リスクは少ない。
敵との闘いも最小限となるだろう。
ただ、暴食スキルでこの部屋の壁が本当に食べられるかどうかはわからない。
7階層の壁は通常の壁と違い、強力な魔力で覆われているのだ。

(だったらまず、その魔力から食ったらいいんじゃね?)

!?
確かに壁に覆われている魔力から食べて、魔力を無力化すれば壁を食べるのは簡単になるかもしれない。
試してみる価値はありそうだ。
しかし、タケルは【暴食】スキルのことを、なぜここまで理解しているんだろう?
概要を話したとは言え、タケルを敵に回せばこの発想力は脅威になるのかもしれない。

しかし、今はそれを考えずにおこう。
まず僕がしなければいけないことは、パンドラボックスを獲得することだ。

僕は、宝箱のある部屋の隣の対角線上の位置に移動した。
最南端と現在地の間には厚い壁で隔たれている。
壁に触れるとわずかな魔力の反応を感じる。
おそらくこの魔力を帯びた壁が、テレポートなどの移動魔法を妨げているのだろう。

僕は壁を覆っている魔力に対し【暴食】を使用。
壁を覆っている魔力を、一時的に無効化させることに成功した。
これなら壁を食べることができるかもしれない。
僕は出来るだけ音を出さないように、【暴食】で壁を食べたのだ。

壁に僕らの通れるだけの穴を開けた僕らは、早速穴を通って隣の部屋に侵入した。

壁の向こうは宝物庫のようだった。
赤く光る宝箱がいくつも部屋に置かれていた。
レアアイテムも魅力だが、今回の目的はパンドラボックス。
僕らはパンドラボックスを探した。

すると明らかに強力な魔力を発する宝箱が、台座付きの上でディスプレイのように飾られている。
これがパンドラボックス…。

それは今までに見た宝箱とは一線を画していた。
宝箱としてはとても小さいが、見ただけでも分かるその頑丈さ。
おそらくメタルボックスよりもさらに強度が高いだろう。

その洗練されたフォルムは、見る者を一目で魅了する。
宝箱宙に施された凝った装飾は、それだけで存在感があるのだ。
思わず開けてすぐに箱の中身を確認したい、という衝動に駆られてしまうだろう。

僕は思わずその美しすぎる宝箱に目を奪われて見入ってしまった。

(兄貴、早く逃げないと見つかっちまうぜ。)
タケルの声でようやく僕は我に返った。
そうだ。早くこの宝箱を開けて宝箱を乗り換えないと。

僕は意を決してパンドラボックスの蓋を開けようとした。
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