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34 完結 アニーの婚約(ヤン視点)
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ウェンディお嬢様とナッシュの婚約を無事に終え、懸念していたエドアルト様との関係も問題なさそうです。
ウェンディお嬢様がエドアルト様の元に嫁ぐ話があった時、私ヤンガスが旦那様の養子になる予定でした。しかしお嬢様とエドアルト様の仲が破局してしまい、どうなる事かと心配していたら突然現れたナッシュがお嬢様の心を掴みました。今では婚約も果たし二人は幸せそうです。
エドアルト様と破局してから旦那様はウェンディお嬢様に対して罪滅ぼしをするかのように干渉しだしました。破局したのは旦那様達の過去のせいでもありましたからね。
学園ではソーニアとマリフル嬢を排除し処罰は彼女たちの父親に任せました。
ネッドも消えて残りの学園生活を穏やかに過ごし、卒業後はナッシュと幸せな家庭を築いて欲しいと旦那様は願っています。
さて本日は旦那様にミエサと共に呼び出されました。きっとアニーお嬢さんの待遇について話し合うのだと思われます。
執務室に入ると予想通り旦那様は単刀直入に尋ねてきました。
「ミエサ、アニーはウェンディの脅威になると思うか?」
「ご両親が処刑されてからは大人しくしています。脅威にはならないと思いますがお二人が仲良くなるにはもっと時間が必要かと思います」
「そうか・・・ヤンはどうだ?」
「ナッシュ様をまだ恐れていますし、脅威にはならないと思います。生意気な態度も最近では改めて素直になっています」
「あの・・・」
ここでミエサが話に割り込んできました。
「旦那様よろしいでしょうか」
「なんだ?」
「アニーお嬢様が子犬のように懐いているのはヤンさんに対してだけです」
「ふむ、メイド達には厳しいのか?」
「メイドには普通に接しています。多分アニーお嬢さんはヤンさんに好意を持っています」
「私は世話係ですから頼りにはされていると思いますよ」
「ずっと一緒にいるうちにヤンさんのお人柄に惹かれたんだと思うんです」
「はぁ? 気のせいでしょう」
「アニーお嬢さんには『デブ』と罵倒され続けて好意など感じたことはないですよ」
「もうデブでは無いですよね? 今のヤンさんに憧れるメイドもたくさんいるんですよ?」
青天の霹靂です。私は女性にモテた事は生まれてから一度もありません。
「ふむ、ヤンもいい加減に身を固めないといけない。アニーはどうだ?」
「いやいや、あり得ません!」
だがしかしアニーお嬢さんは「ヤンと結婚? ・・・別にいいけど・・・」と答えたのです。
「いやいやダメでしょう」
「なんで? 私が犯罪者の娘だから? 足が不自由だから? 不良物件を押し付けられると思ってるんでしょう!」
「違います。14歳差ですよ? 私はオジサンじゃないですか」
「関係ない。誰も私を好きになってくれないの。リハビリ頑張るから、私を嫌わないで」
正直、旦那様に押し付けられた感はありました。
毒親に育てられた彼女を気の毒だと思っていました。ナッシュに執着していたのも頼れるのは彼だけだったから。でも彼はアニーに同情しながらも憎み、好意などなかったのです。
「本当にいいのですか? 私と結婚して後悔しないですか?」
「うん、ヤンは優しいし頼りになるから・・・好き」
恥じらいながら俯くアニーが可愛い・・・いい年して少しときめいてしまいました。
「分かりました。結婚しましょう」
世話係になった時からアニーを大切にしてあげようと思ったのです、こうなったらもう最後まで大事にしましょう。
こうしてアニーは私、クレベル男爵家の三男ヤンガスと婚約する運びとなりました。
旦那様と奥様は大乗り気でアニーを養女にし、婚約祝いに本邸の敷地内に別宅を建ててプレゼントして下さるそうです。
今日はお祝いにウェンディお嬢様とナッシュが来てくれました。
「おめでとう。二人とも幸せになってね」
「おめでとうアニー、ヤンさんと幸せに」
「有難うございます。ほら、アニーもお礼を言って」
「うん有難う。その、酷いこと言ってごめんなさい。今まで本当にごめんなさい」
「お互い水に流しましょう。これから私達4人はきょうだいになるんだもの」
「アニーは本当の義妹になるんだね」
泣きそうなアニーは言葉に詰まっていました。二人とも私達を受け入れてくれたので一安心です。
それから2年も待たず、学園を卒業すると直ぐにウェンディとナッシュは結婚式を挙げました。ウェンディは感動的な美しさで参列者を魅了し、ナッシュも堂々として立派な挙式でした。
これからはウェンディを若奥様、ナッシュを若旦那様とお呼びしなくてはなりません。
挙式はまだ先ですが杖をつきながら歩けるようになったアニーは教会のバージンロードを義父と歩くのを楽しみにしています。
私達の家の施工が始まるとアニーは大喜びで、二人で毎日見学に来ています。
「私は絶対にカミラみたいな母親にはならないわ。いい奥さんになるから嫌いにならないでね」
怒るヤマネコのように周囲を威嚇し、困った問題児だったアニー。
そっと寄り添うアニーの横顔からはいつの間にか幼さが抜けて美しい大人の顔になっていました。
「嫌いになんてなりません。貴方が好きです。温かい家庭にしましょう」
そうしてきっといい夫になると誓ったのでした。
────終わり。
最後まで読んで頂いて本当に有難うございました。
ウェンディお嬢様がエドアルト様の元に嫁ぐ話があった時、私ヤンガスが旦那様の養子になる予定でした。しかしお嬢様とエドアルト様の仲が破局してしまい、どうなる事かと心配していたら突然現れたナッシュがお嬢様の心を掴みました。今では婚約も果たし二人は幸せそうです。
エドアルト様と破局してから旦那様はウェンディお嬢様に対して罪滅ぼしをするかのように干渉しだしました。破局したのは旦那様達の過去のせいでもありましたからね。
学園ではソーニアとマリフル嬢を排除し処罰は彼女たちの父親に任せました。
ネッドも消えて残りの学園生活を穏やかに過ごし、卒業後はナッシュと幸せな家庭を築いて欲しいと旦那様は願っています。
さて本日は旦那様にミエサと共に呼び出されました。きっとアニーお嬢さんの待遇について話し合うのだと思われます。
執務室に入ると予想通り旦那様は単刀直入に尋ねてきました。
「ミエサ、アニーはウェンディの脅威になると思うか?」
「ご両親が処刑されてからは大人しくしています。脅威にはならないと思いますがお二人が仲良くなるにはもっと時間が必要かと思います」
「そうか・・・ヤンはどうだ?」
「ナッシュ様をまだ恐れていますし、脅威にはならないと思います。生意気な態度も最近では改めて素直になっています」
「あの・・・」
ここでミエサが話に割り込んできました。
「旦那様よろしいでしょうか」
「なんだ?」
「アニーお嬢様が子犬のように懐いているのはヤンさんに対してだけです」
「ふむ、メイド達には厳しいのか?」
「メイドには普通に接しています。多分アニーお嬢さんはヤンさんに好意を持っています」
「私は世話係ですから頼りにはされていると思いますよ」
「ずっと一緒にいるうちにヤンさんのお人柄に惹かれたんだと思うんです」
「はぁ? 気のせいでしょう」
「アニーお嬢さんには『デブ』と罵倒され続けて好意など感じたことはないですよ」
「もうデブでは無いですよね? 今のヤンさんに憧れるメイドもたくさんいるんですよ?」
青天の霹靂です。私は女性にモテた事は生まれてから一度もありません。
「ふむ、ヤンもいい加減に身を固めないといけない。アニーはどうだ?」
「いやいや、あり得ません!」
だがしかしアニーお嬢さんは「ヤンと結婚? ・・・別にいいけど・・・」と答えたのです。
「いやいやダメでしょう」
「なんで? 私が犯罪者の娘だから? 足が不自由だから? 不良物件を押し付けられると思ってるんでしょう!」
「違います。14歳差ですよ? 私はオジサンじゃないですか」
「関係ない。誰も私を好きになってくれないの。リハビリ頑張るから、私を嫌わないで」
正直、旦那様に押し付けられた感はありました。
毒親に育てられた彼女を気の毒だと思っていました。ナッシュに執着していたのも頼れるのは彼だけだったから。でも彼はアニーに同情しながらも憎み、好意などなかったのです。
「本当にいいのですか? 私と結婚して後悔しないですか?」
「うん、ヤンは優しいし頼りになるから・・・好き」
恥じらいながら俯くアニーが可愛い・・・いい年して少しときめいてしまいました。
「分かりました。結婚しましょう」
世話係になった時からアニーを大切にしてあげようと思ったのです、こうなったらもう最後まで大事にしましょう。
こうしてアニーは私、クレベル男爵家の三男ヤンガスと婚約する運びとなりました。
旦那様と奥様は大乗り気でアニーを養女にし、婚約祝いに本邸の敷地内に別宅を建ててプレゼントして下さるそうです。
今日はお祝いにウェンディお嬢様とナッシュが来てくれました。
「おめでとう。二人とも幸せになってね」
「おめでとうアニー、ヤンさんと幸せに」
「有難うございます。ほら、アニーもお礼を言って」
「うん有難う。その、酷いこと言ってごめんなさい。今まで本当にごめんなさい」
「お互い水に流しましょう。これから私達4人はきょうだいになるんだもの」
「アニーは本当の義妹になるんだね」
泣きそうなアニーは言葉に詰まっていました。二人とも私達を受け入れてくれたので一安心です。
それから2年も待たず、学園を卒業すると直ぐにウェンディとナッシュは結婚式を挙げました。ウェンディは感動的な美しさで参列者を魅了し、ナッシュも堂々として立派な挙式でした。
これからはウェンディを若奥様、ナッシュを若旦那様とお呼びしなくてはなりません。
挙式はまだ先ですが杖をつきながら歩けるようになったアニーは教会のバージンロードを義父と歩くのを楽しみにしています。
私達の家の施工が始まるとアニーは大喜びで、二人で毎日見学に来ています。
「私は絶対にカミラみたいな母親にはならないわ。いい奥さんになるから嫌いにならないでね」
怒るヤマネコのように周囲を威嚇し、困った問題児だったアニー。
そっと寄り添うアニーの横顔からはいつの間にか幼さが抜けて美しい大人の顔になっていました。
「嫌いになんてなりません。貴方が好きです。温かい家庭にしましょう」
そうしてきっといい夫になると誓ったのでした。
────終わり。
最後まで読んで頂いて本当に有難うございました。
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