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しおりを挟む☆アヴェル視点☆
セアラに話した『王家が厄介』というのは後継者争いのことだ。
ジルベスト王太子、ユリエラ王女、レオン第三王子、以上三名が候補となっている。
王太子とユリエラ王女は、亡くなった前王妃の実子だ。
なので第一側妃が今の王妃である。
今の王妃には実子のカーティス第二王子がおられたが不慮の事故で亡くなっている。
三番目のレオン王子は第二側妃の実子だ。
今の王妃が第二側妃とレオン王子を保護している。
王妃は王太子と王女を警戒しているのだ。
現在、陛下は病に伏して、公務は王妃と王太子が全て担っている状態だ。
慣例では王太子が次期国王だが、彼は王太子妃を蔑ろにして愛人を大勢囲う色狂いと貴族達からすこぶる評判が悪い。
夜会では早速セアラを宮殿に招いていた。
これについては必ず夫人と共に訪れるよう、一人では決して行かないようセアラに言い聞かせておいた。
王太子は政治手腕には定評があり、エリアスの実家は大きな後ろ盾になっている。
ユリエラ王女は頭がよろしくない。
レオン王子はまだ10歳と幼い。
陛下の病状が深刻な今、ジルベスト王太子とユリエラ王女が動き出す予感があった。それにエリアスが巻き込まれる懸念がある。
*
俺は義父にエリアスからセアラを奪うよう命令されていた。
妹であるウェルデス侯爵夫人を溺愛する義父は、姪のセアラには幸福な婚姻を望んでいた。というのも、セアラに冷淡な態度を見せるエリアスとの婚約は上手くいかないと思われていたからだ。
けど、セアラの努力でエリアスは少しづつ心を開いた。
相手がエリアスでなければ俺にも勝機があったかもしれない。残念ながらセアラは全く俺を男性として意識してくれなかった。
ひたすらエリアスを慕うセアラが健気で、いつしか俺は応援すらしていた。
義父も諦めたようで、最近は俺に戻って家業を手伝うよう頻繁に連絡が有ったのだ。
『セアラのデビューを見届けるまで』と俺は帰国を遅らせていた。思った通りエリアスはセアラをエスコートできなかった。だから俺が務めるしかないじゃないか。
夜会の日に皇太子殿下からユリアナ王女との婚約話が持ち出されたので、これを機に俺は国に戻ることに決めた。
セアラは成人した。今後はエリアスとの婚姻について話し合いが行われるはずだ。
王家がエリアスに絡んで先行きは困難そうだが、2人は愛し合っているんだ大丈夫だろう。
セアラの幸福を願い、俺は後ろ髪を引かれつつ侯爵家を後にした。
*****
アヴェルが去って淋しくなった。いつも当たり前のように傍に居たのに。
ウォルフ卿と剣の手合わせしても気合が入らず「怪我するといけないので元気が出るまで剣を手にするのは中止です」と言われた。
アヴェルが担ってくれていた執務を私に任された。
私も一生懸命勉強して手伝ってきたつもりだが「アヴェルの半分も仕事を熟せたら大したものよ」と母に言われた。
「アヴェルがどれだけ優秀で私達を助けてくれていたのかを実感しました」
「ふふ、これからは向こうで婚約者選びに忙しくなるでしょうね」
「婚約者?」
アヴェルの隣に立つ女性、ちょっと想像できない。
「そろそろドナリアド公爵家と婚姻のお話を進めなくては」
「エリアス様と婚姻! ……夢のようだわ」
母がドナリアド公爵家にお伺いの手紙を出すと、エリアス様から先ぶれがあった。
エリアス様を信じて、ずっと私はこの日を待ちわびていた。
嬉しい私とは反対にエリアス様は厳しいお顔で当家を訪れた。
客室にお通しすると彼は立ったまま深く頭を下げて────
「ウェルデス侯爵令嬢、貴方との婚約を白紙に戻します」と宣言した。
「……エリアス様? 今日は求婚にいらして下さったのですよね?」
「王太子殿下が貴方を側妃にと希望されている。私とは婚約を解消し、王家に嫁いで頂きたい」
側妃ってどういうこと?
「いやです……いや……」
「我儘は困ります。王太子殿下のご命令ですよ? 拒否など言語道断。正式に私との婚約を解消した後は王家より申し込みがあるでしょう。お受けして下さい」
「嘘ですよね?『信じて欲しい』と仰いました。私はこれからもずっとエリアス様を信じます」
エリアス様はソファーに腰を下ろすと足を組んで「私を愛していますか?」と尋ねた。
「愛しています。ずっとエリアス様だけを愛してきました」
「なら私の為にドナリアド公爵家の為にも婚約解消を。王家に嫁げるのです。貴方にとっても良い話です。私にとっても──ね?」
「ユリエラ王女殿下と──婚姻されるのですか?」
「未定ですが、恐らく」
呆然と立ち尽くしていると母が客室に訪れた。
「どうか今日のところはお引き取りを、公爵閣下とも話し合いを望みます!」
「承知した。これで失礼する」
エリアス様が去って、頭の中が真っ白になった私は膝から崩れ落ちた。
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