╣淫・呪・秘・転╠亡国の暗黒魔法師編

流転小石

文字の大きさ
227 / 430
第8章 魔王国編

第227話 状況説明

しおりを挟む
「エルヴィーノ、あなたの荷物を預かっているわ」
リーゼロッテから渡されたのは転移する前の衣服に専用のエマスコだった。
一目見てエマスコが恐ろしい状態になっていた。
エマスコは送られて来た紙でパンパンになっていて、大よその察しはついている。
おそらくあの2人だ。

(ううっ、見たくないなぁ)
とりあえずポケットに押し込んだ。
リーゼロッテと”家族”に同族が生き残っていた事を伝えて部屋を後にした。
新しい国を作る場所の候補地が見つかった事は言わなかった。
まだ不確定なのと、関係親族に現状の説明をしなければいけないので、事が落ち着いてから話そうと考えたエルヴィーノはパウリナとアンドレアに会いに行く。

同じ住居階の獣人族専用の応接室に出向くと、都合良くパウリナとアンドレアが子供達と寛いでいた。
「あなたっ!」
姿を見て駆け付けるパウリナ。
(可愛い奴だ)
「大丈夫だった?」
「ああ、心配かけたな」
抱きしめ合う夫婦の間に割って入るのは姑だ。
「黒龍王!」
何故か怒っている様に見えたエルヴィーノだ。
「マルソさんから大よその事は聞いていますが、説明してもらえますか?」
自分には一切落ち度は無く、逆に”良く無事で戻ってきた”と褒めて欲しいくらいだが、心配していたのも事実だろうから説明する。

「俺を召喚したのはノタルム国のジャンドール王で、いきなり召喚された俺がちょっと怒って臨戦態勢になったけど、なんとか話し合いで落ち着いたよ。今後の取り組みを双方で考えるとしてノタルム国にもゲレミオを導入するつもりだ。その為に信頼できるヤツを1人連れて来たから」

ざっとこんな感じだろうと、ダークエルフの島の件とシーラの件は話さなかった。
「ええっ連れてきているのですか!?」
「ああ、俺に忠誠を誓ったヤツだ」
怪訝けげんな表情のアンドレア。
それはマルソから聞いている”魔族”だからだ。

「黒龍王、魔族ですよ」
「ああ、知ってるよ」
何か言いたそうな顔だ。
「・・・大丈夫なの?」
「勿論さ。俺が家族を危険な目に合わせる訳無いだろ?」
溜息を付いて呆れるアンドレアに、ソファに座っていたのだがベッタリと寄り添うパウリナと双子を抱いて言い切ったエルヴィーノだ。
「それで、どんな人なのですか? 何処で待たせているの?」
今日は旅館エスピナに泊まらせて明日の昼に合う事を話した。
「ネル殿よりも大きいですよ。元将軍ですからね」
獣人族には魔族の存在はほとんど知られていないが、その名は噂話で知れ渡っている。
主にアルモニア教の宗教上で使われる仮想の敵だからだ。

「戦争は起きないのですね?」
「大丈夫。俺がそんな事、させないよ」
「黒龍王がそう言ってくれるなら安心です」
「では、アルモニアの教祖様の所へ行って下さるかしら。マルソさんが戻ったら直ぐに会いに来るようにとことづかっているわ」
「分かりました。その前にロザリーとロリには何と言って有りますか?」
そう言ってポケットに入れた大量に送られて来た紙を出した。

「うわぁ全部お姉様達よ。・・・何か怒ってるみたい」
知りたくない情報を無邪気に教えてくれたパウリナだ。
「その事はマルソさんに聞いてくださいな。今回の件はマルソさんが情報管理していますから私達から余計な事を言わない様に指示が有ったの」

「では、教祖様に会ってきますがパウリナも一緒に来て欲しいな」
理由はエマスコを無視したのではないと証人なって欲しいからだ。
一応被害者だと思っているエルヴィーノは妻達の無茶振りを忘れていた。
原因や結果などは二の次で自分達を心配させ怒らせた事で罰を受けるのが当然だと考えている”あの2人”だ。

因みにペルフメとカメルシーは城勤めになっているが、住居階までは立ち入り出来ない。
まだそこまで信用されていないのかアンドレアが許可を出していない。
それは構わないが、他の獣人達が心配になってくる。
あの2人が城内をウロウロしたら何か問題が起こりそうで心配だが様子を見ることにした。

2人は一日二回、昼と午後に群青の聖戦士として伝説の神獣降臨を行なえるパウリナに謁見しに来る国民を、謁見の場で見張る役目が有るからだ。
態度や言動の悪い者や、不意に近づく無礼者を容赦無く石化するのが仕事だ。

今の所、そのような不埒者は居ないそうだ。
何故なら、謁見の前に控室で礼儀作法などを教えられるのだが、その片隅に獣人の石像が置いて有る。
精密な作りはとても石像とは思えない程の出来栄えだがポーズが変なのだ。
立ったまま何かを防御しそうな形をしている。
そして最後に教えられるのが無礼者の末路だった。
その話を聞き石像を触り、ごくりと息を飲むのがほとんどだ。
実際は死刑囚を石化しただけの物だが、一般獣人には効果的のようで未だかつて謁見の場で石化の魔法を使った事は無い。

また、謁見が終わると女性達はパウリナの事を話すが、男性達は両隣の女性ペルフメとカメルシーが気になって仕方ないらしく、必ず種族名と名前を聞いて来るので極秘扱いにした。
だが、これも城の噂になっている様だ。
歳甲斐も無く、いや歳だから時間を持て余している年配の獣人男性がパウリナよりもペルフメとカメルシー見たさに並ぶと言う噂も耳にした。
(勝手にしろ)とあきれるエルヴィーノだ。


※Cerounodostrescuatrocincoseissieteochonuevediez


マルソ殿にエマスコし、王城に向うと連絡した。
パウリナも同席する事を伝え、ロザリーとロリに説明するのに証言してもらう為と説明し、2人に合う時はマルソ殿にも一緒に付いて来てもらうよう依頼した。
それだけ後ろめたい事シーラの件が有るからだが、今はまだ隠した方が良いと考えたエルヴィーノだ。
パウリナと2人で転移して王城の応接室に向った。

「国王、無事だったか」
応接室に入るなりマルソ殿が声を掛けてくれた。
すると夫を差置いてアブリルとプリマベラが国王に抱き着いて来た。
「国王、よく無事に戻ってきたわ」
「もう、どれだけ心配した事か。ねぇお母様」
「本当に良かったわ」
パウリナもたじたじで見ていたがエルヴィーノはお見通しだ。
義祖母と義母が作った秘密結社で影の魔法使いがエルヴィーノだからだ。
(俺が居なくなると二度と脂肪除去が出来なくなるからな。困った人達だ)
「教祖様がお待ちよ」と案内される。

「聖戦士殿には申し訳ないが席を外して頂けますかな」
マルソ殿が優しく拒んできた。
するとアブリルが優しく案内した。
「ごめんなさいね。今は私達聖女だけで話したいの。だからロリの所で待って居てもらえるかしら」

「分かりました。待ってるね、あなた」
笑顔で答えてロリの自室へとメイドに案内されて向うパウリナだ。
「では国王」
奥の聖女達専用の応接室に向った。
そこにはロリ以外の教祖直系聖女夫婦が待っていた。
母娘三代だ。
「皆さんにはご心配をかけましたが無事に帰還しました」
「おお、戻ったか国王。無事で何よりじゃ」
安心した教祖のエネロだ。

「ところで国王。我らは既に知っておるぞ。お主が魔族を統べ、魔族の女を娶る事をな」
(なんで? どうして知ってる? ヤバい、誤魔化して見るか?)
「ええっと何の事でしょうか?」
すっとぼけたフリをした。
「隠さんでも良い。我らは神の使者から直接お言葉を賜ったのじゃからのぉ」
(ん? 神の使者? 神、あっ! ラソンか。なんで告げ口するんだろ。フィドキアは念話も出来ないし、困ったなぁ)
「どうなんじゃ?」
「教祖様、龍人様は何と言われましたか?」

まさかラソンの存在を国王が知っているとは思わなかった教祖とアブリルだが、直ぐに理解したのはロリが教えたのだと勝手に解釈したのだ。
「知っておったか。重要なのはアルモニア教と魔族は敵対している事になっとる事じゃ」
「確かにそうですが、現実には魔族では無くてクエルノ族と言う種族です。そしてノタルム国と言う国が別の大陸に存在します」
「「「おおおっ」」」
おおよその見当は付いていたが”別の大陸”と言う場所を特定していなかったので驚いた一同だ。

「して、配下にしたのか?」
教祖が何を期待しているのか解らないが否定しておく事にした。
「いいえ、アルモニア教はノタルム国を配下にしたいのですか? 彼らは人族より遥かに強いですよ」
「いやなに、そうなる可能性が高いと聞いたからじゃ」
(確かに高い)
「もう大変だったんですからね」
「何がじゃ」
「人族が魔族と呼んでいる事ですよ。あわや戦争も辞さないと言う緊迫した事態でしたよ」
(嘘だけどぉ)
後日、両国は会う事になるから何か対策を取らなければと思案していたが、アルモニア教にノタルム国とクエルノ族を認めさせて、魔族を別の対象に替える提案をする予定だ。
そこでリアム殿が口を出してきた。
「それを何とかしたのが国王だろう?」
「確かにそうですけどね」

「その解決方法が魔族の、クエルノ族の嫁を貰う事か? どんな娘じゃ? 結婚の合意は出来ているのか?」
一番知りたかったのは四番目の素性だった一族だ。
次々に教祖から質問され答えるエルヴィーノ。
「嫁の候補とは合意を得てますよ。相手はノタルム国国王の娘です」
「「「うぅむ」」」
婿達は唸っている。
聖女達はやっぱりなって目で睨んでいる。
「あのぉ、この件はロリには」
「当たり前じゃ。お腹の子を産むまではここに居る者と、国王の両親に先代獣王夫婦だけじゃ」






ふぅ安心したぜ。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

盾の間違った使い方

KeyBow
ファンタジー
その日は快晴で、DIY日和だった。 まさかあんな形で日常が終わるだなんて、誰に想像できただろうか。 マンションの屋上から落ちてきた女子高生と、運が悪く――いや、悪すぎることに激突して、俺は死んだはずだった。 しかし、当たった次の瞬間。 気がつけば、今にも動き出しそうなドラゴンの骨の前にいた。 周囲は白骨死体だらけ。 慌てて武器になりそうなものを探すが、剣はすべて折れ曲がり、鎧は胸に大穴が空いたりひしゃげたりしている。 仏様から脱がすのは、物理的にも気持ち的にも無理だった。 ここは―― 多分、ボス部屋。 しかもこの部屋には入り口しかなく、本来ドラゴンを倒すために進んできた道を、逆進行するしかなかった。 与えられた能力は、現代日本の商品を異世界に取り寄せる 【異世界ショッピング】。 一見チートだが、完成された日用品も、人が口にできる食べ物も飲料水もない。買えるのは素材と道具、作業関連品、農作業関連の品や種、苗等だ。 魔物を倒して魔石をポイントに換えなければ、 水一滴すら買えない。 ダンジョン最奥スタートの、ハード・・・どころか鬼モードだった。 そんな中、盾だけが違った。 傷はあっても、バンドの残った盾はいくつも使えた。 両手に円盾、背中に大盾、そして両肩に装着したL字型とスパイク付きのそれは、俺をリアルザクに仕立てた。 盾で殴り 盾で守り 腹が減れば・・・盾で焼く。 フライパン代わりにし、竈の一部にし、用途は盛大に間違っているが、生きるためには、それが正解だった。 ボス部屋手前のセーフエリアを拠点に、俺はひとりダンジョンを生き延びていく。 ――そんなある日。 聞こえるはずのない女性の悲鳴が、ボス部屋から響いた。 盾のまちがった使い方から始まる異世界サバイバル、ここに開幕。 ​【AIの使用について】 本作は執筆補助ツールとして生成AIを使用しています。 主な用途は「誤字脱字のチェック」「表現の推敲」「壁打ち(アイデア出しの補助)」です。 ストーリー構成および本文の執筆は作者自身が行っております。

転生勇者が死ぬまで10000日

慶名 安
ファンタジー
ごく普通のフリーター・岩倉運命は謎の少年に刺され、命を落としてしまう。そんな岩倉運命だったが、サダメ・レールステンとして転生を果たす…

俺が死んでから始まる物語

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。 だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。 余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。 そこからこの話は始まる。 セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕

【コミカライズ決定】勇者学園の西園寺オスカー~実力を隠して勇者学園を満喫する俺、美人生徒会長に目をつけられたので最強ムーブをかましたい~

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】 【第5回一二三書房Web小説大賞コミカライズ賞】 ~ポルカコミックスでの漫画化(コミカライズ)決定!~  ゼルトル勇者学園に通う少年、西園寺オスカーはかなり変わっている。  学園で、教師をも上回るほどの実力を持っておきながらも、その実力を隠し、他の生徒と同様の、平均的な目立たない存在として振る舞うのだ。  何か実力を隠す特別な理由があるのか。  いや、彼はただ、「かっこよさそう」だから実力を隠す。  そんな中、隣の席の美少女セレナや、生徒会長のアリア、剣術教師であるレイヴンなどは、「西園寺オスカーは何かを隠している」というような疑念を抱き始めるのだった。  貴族出身の傲慢なクラスメイトに、彼と対峙することを選ぶ生徒会〈ガーディアンズ・オブ・ゼルトル〉、さらには魔王まで、西園寺オスカーの前に立ちはだかる。  オスカーはどうやって最強の力を手にしたのか。授業や試験ではどんなムーブをかますのか。彼の実力を知る者は現れるのか。    世界を揺るがす、最強中二病主人公の爆誕を見逃すな! ※小説家になろう、カクヨム、pixivにも投稿中。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~

シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。 主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。 追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。 さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。 疫病? これ飲めば治りますよ? これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。

処理中です...