【完結】勇者PTから追放された空手家の俺、可愛い弟子たちと空手無双する。俺が抜けたあとの勇者たちが暴走? じゃあ、最後に俺が息の根をとめる

ともボン

文字の大きさ
19 / 104
第三章 ~Sランクの緊急任務に参加するということ~

道場訓 十九    漢女との苛烈な出会い

しおりを挟む
「どうした? 誰か前に出る奴はいないのか?」

 俺は首をコキコキと鳴らしながら、威嚇いかくを含んだ目で周囲を見渡した。

 俺の正拳下段突せいけんげだんづきの威力に恐れをなしたのか、冒険者たちは一歩前に出るどころかその場から動こうともしない。

 全員が全員とも、凍り付いた表情で口をパクパクとさせている。

 俺はそんな冒険者たちを見ながら嘆息たんそくした。

 本当なら闘神流とうしんりゅう空手からてをこんな見世物のように使いたくはなかった。

 しかし、死と隣り合わせになったときほど人間は暗い本性ほんしょうが出る。

 ここに集まっている冒険者たちがそうだ。

 死と隣り合わせのSランクの緊急任務ミッションに参加しなくてはならない。

 という恐怖感はいとも簡単に仲間割れや私刑リンチを起こすようになり、やがては弱者を対象となる生贄いけにえを欲するようになる。

 そうなると緊急任務ミッションへ参加する前に殺し合いすら起きかねない。

 だからこそ、俺は少々手荒てあらに冒険者たちの目を覚ますキッカケを作った。

 それとは別に俺の本当の実力も分かってもらえれば、少なくとも俺がSランクの緊急任務ミッションに参加することの不満もなくなるだろうと思ったのだ。

 事実、冒険者たちの中からは、

「す、すげえ……何だ、この力は?」

「誰だよ、あいつを無能のサポーターと呼んで馬鹿にした奴は……とんでもねえ腕前じゃねえか」

「やっぱり、くさっても勇者パーティーの一員だったってことか?」

 次々に俺への見方を変える者が現れ始めた。

 どうやら、これでスムーズに話を進められそうだな。

 正直なところ、いつまでもこんなところでたむろっている場合ではなかった。

 気を失っている騎士によると、すでに魔の巣穴すあなからSランクの魔物が出現したことは確認されている。

 そして騎士団の包囲網ほういもうがあらかた突破されているとすれば、大半の魔物はそろそろ魔の巣穴すあなが出来たというアリアナ大森林を抜ける頃合いだろう。

 となるとやはり魔物たちを迎撃する場所は、アリアナ大森林と続いているアリアナ大草原しかない。

 なぜなら、この街はアリアナ大草原の先にあるのだ。

 もしもアリアナ大草原を突破されたら、間違いなくこの街は魔物たちに蹂躙じゅうりんされて崩壊する。

 俺はもう一度だけギルド内を見回した。

 冒険者たちは誰一人として口を開くどころか、一歩も動かずに俺の次の言葉を待っているようだった。

 つまり、俺の一言で冒険者たちがどう動くのか決まるということだ。

 それならば俺の口から出る言葉は決まっている。

「どうやら俺が今回の緊急任務ミッションに参加することを認めてくれたようだな。だったらあとは全員でアリアナ大草原に――」

 向かうぞ、と全員を誘導ゆうどうしようとしたときだ。

 ダアンッ!

 突如とつじょ、2階から勢いよく床を蹴る音が聞こえた。

 同時に真上から突風のような殺気が吹きつけてくる。

「――――ッ!」

 俺はすかさず後方に大きく跳躍ちょうやくした。

 ヒュンッ!

 すると俺がいた寸前の場所に、一拍いっぱく遅れで何かが空間を切り裂く音が鳴る。

「お前は……」

 俺は床に着地すると、真上から不意打ちをしてきた襲撃者と向かい合った。

拙者せっしゃの不意打ちを難なくかわすとは……やはり思った通りだ」

 襲撃者の正体は、つやのある黒髪をうなじの辺りで一つに束ねている女だった。

 顔立ちは恐ろしいほど整っている。

 すみで書いたような黒眉くろまゆに、すっきりと通った鼻梁びりょう

 そして眼光は生来の気の強さを表すように鋭い。

 俺は改めて襲撃者を見つめた。

 年齢はエミリアと同じ16歳ぐらいだろうか。

 けれども170センチの俺よりも頭一つ分は身長が高い。

 とはいえ間違いなく女だった。

 それも超がつくほどの美女だ。

 だが、一方でと呼んでも差し支えのない凛々しい雰囲気もあった。

 年齢が若いという意味の乙女おとめよりも、勇ましい意味での漢女おとめという表現がピッタリとくる。

 その理由の一つは彼女が着ていた服装にあった。

 ヤマト国の独特な衣服――純白の道衣どうい緋色ひいろはかまの上から、動きやすいけい甲冑かっちゅうまとっていたのだ。

 それだけではない。

 黒髪の美女の両手には、二尺にしゃく三寸五分さんすんごぶ(約70センチ)の大刀が握られていた。

 お前は女なのにサムライなのか?

 俺が襲撃者の女に思わずたずねようとしたとき、周囲から「キキョウだ!」と歓声に近い声が上がった。

「勇者パーティーの切り込み隊長――カチョウ・フウゲツの妹のキキョウ・フウゲツだ!」

「何だと! あいつがあの若干じゃっかん16歳で冒険者Aランクに昇格した、ヤマトタウンの〈天剣てんけん漢女おとめ〉――キキョウ・フウゲツなのか!」

 せきを切ったようにざわつき始めた周囲の中、俺は襲撃者の女――キキョウ・フウゲツをまじまじと見た。

天剣てんけん漢女おとめ〉。

 噂には聞いたことがある。

 商業街の北にあるヤマト国からの移民たちが作り上げたヤマトタウンにおいて、天才剣士として名を上げてきた女武芸者の異名だ。

 天賦てんぷの才の剣を使う勇ましい女――すなわち〈天剣てんけん漢女おとめ〉という異名だったが……はて、もう一つ何か別な異名もなかったか?

 まあ、それはさておき。

 カチョウの妹か……そう言えば以前に妹がいるとか聞いたことがあったな。

 言われると独特な喋り方や格好以外にも雰囲気がかなり似ている。

 ただし、明らかに実力はカチョウよりも上だった。

 2階から飛び降りても平気な脚力きゃくりょく

 空中からでも正確に刃筋はすじを通してくる斬撃の鋭さ。

 まったくブレない体軸たいじくの強さ。

 全身から怒涛どとうの如く放出されている魔力マナ

 どれをとっても超一流の武術家のそれだ。

 一対一の正々堂々とした闘いならば、それこそ上位ランカーの冒険者とも互角に渡り合えるかもしれない。

 だが、微妙に何かが引っかかる。

 全身から発せられている魔力マナの流れが明らかにおかしい。

 Aランクに昇格できるほどの腕前なのに、あまり魔力マナを上手くコントロールできていないように感じられたのだ。

 などと俺が小首を傾げていると、キキョウは大刀の切っ先を勢いよく俺に突きつけてきた。

 そして――。

「勇者パーティーから追放されたサポーターであり、空手家からてかと名乗る拙者せっしゃと同じヤマト人のケンシン・オオガミ……お主、間違いなくをやっているな!」

 そう言うとキキョウは、キッと俺をにらみつけてくる。

「おいおい……いきなり斬りつけてきて、アレをやっているなと言われてもまったく分からん。俺が何をやっているって?」

「とぼけるな! お主が非合法な魔薬まやくを使っていることはすでに確信した! 拙者せっしゃの不意打ちをかわせたことが何よりの証拠だ!」

 非合法な魔薬まやくだと?

 あまりに突拍子とゅぴょうしもないことを堂々と言われ、俺はキキョウと目線を交錯こうさくさせながら唖然あぜんとするしかなかった。

 そんな俺に対して、キキョウは図星だなとばかりに不敵な笑みを浮かべる。

 俺は右拳の拳頭けんとう部位に付着していた木片を払い落した。

 さて、どうするか?
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

さんざん馬鹿にされてきた最弱精霊使いですが、剣一本で魔物を倒し続けたらパートナーが最強の『大精霊』に進化したので逆襲を始めます。

ヒツキノドカ
ファンタジー
 誰もがパートナーの精霊を持つウィスティリア王国。  そこでは精霊によって人生が決まり、また身分の高いものほど強い精霊を宿すといわれている。  しかし第二王子シグは最弱の精霊を宿して生まれたために王家を追放されてしまう。  身分を剥奪されたシグは冒険者になり、剣一本で魔物を倒して生計を立てるようになる。しかしそこでも精霊の弱さから見下された。ひどい時は他の冒険者に襲われこともあった。  そんな生活がしばらく続いたある日――今までの苦労が報われ精霊が進化。  姿は美しい白髪の少女に。  伝説の大精霊となり、『天候にまつわる全属性使用可』という規格外の能力を得たクゥは、「今まで育ててくれた恩返しがしたい!」と懐きまくってくる。  最強の相棒を手に入れたシグは、今まで自分を見下してきた人間たちを見返すことを決意するのだった。 ーーーーーー ーーー 閲覧、お気に入り登録、感想等いつもありがとうございます。とても励みになります! ※2020.6.8お陰様でHOTランキングに載ることができました。ご愛読感謝!

A級パーティから追放された俺はギルド職員になって安定した生活を手に入れる

国光
ファンタジー
A級パーティの裏方として全てを支えてきたリオン・アルディス。しかし、リーダーで幼馴染のカイルに「お荷物」として追放されてしまう。失意の中で再会したギルド受付嬢・エリナ・ランフォードに導かれ、リオンはギルド職員として新たな道を歩み始める。 持ち前の数字感覚と管理能力で次々と問題を解決し、ギルド内で頭角を現していくリオン。一方、彼を失った元パーティは内部崩壊の道を辿っていく――。 これは、支えることに誇りを持った男が、自らの価値を証明し、安定した未来を掴み取る物語。

レベル1の時から育ててきたパーティメンバーに裏切られて捨てられたが、俺はソロの方が本気出せるので問題はない

あつ犬
ファンタジー
王国最強のパーティメンバーを鍛え上げた、アサシンのアルマ・アルザラットはある日追放され、貯蓄もすべて奪われてしまう。 そんな折り、とある剣士の少女に助けを請われる。「パーティメンバーを助けてくれ」! 彼の人生が、動き出す。

追放された宮廷薬師、科学の力で不毛の地を救い、聡明な第二王子に溺愛される

希羽
ファンタジー
王国の土地が「灰色枯病」に蝕まれる中、若干25歳で宮廷薬師長に就任したばかりの天才リンは、その原因が「神の祟り」ではなく「土壌疲弊」であるという科学的真実を突き止める。しかし、錬金術による安易な「奇跡」にすがりたい国王と、彼女を妬む者たちの陰謀によって、リンは国を侮辱した反逆者の濡れ衣を着せられ、最も不毛な土地「灰の地」へ追放されてしまう。 ​すべてを奪われた彼女に残されたのは、膨大な科学知識だけだった。絶望の地で、リンは化学、物理学、植物学を駆使して生存基盤を確立し、やがて同じく見捨てられた者たちと共に、豊かな共同体「聖域」をゼロから築き上げていく。 ​その様子を影から見守り、心を痛めていたのは、第二王子アルジェント。宮廷で唯一リンの価値を理解しながらも、彼女の追放を止められなかった無力な王子だった。

追放貴族少年リュウキの成り上がり~魔力を全部奪われたけど、代わりに『闘気』を手に入れました~

さとう
ファンタジー
とある王国貴族に生まれた少年リュウキ。彼は生まれながらにして『大賢者』に匹敵する魔力を持って生まれた……が、義弟を溺愛する継母によって全ての魔力を奪われ、次期当主の座も奪われ追放されてしまう。 全てを失ったリュウキ。家も、婚約者も、母の形見すら奪われ涙する。もう生きる力もなくなり、全てを終わらせようと『龍の森』へ踏み込むと、そこにいたのは死にかけたドラゴンだった。 ドラゴンは、リュウキの境遇を憐れみ、ドラゴンしか使うことのできない『闘気』を命をかけて与えた。 これは、ドラゴンの力を得た少年リュウキが、新しい人生を歩む物語。

外れスキル《コピー》を授かったけど「無能」と言われて家を追放された~ だけど発動条件を満たせば"魔族のスキル"を発動することができるようだ~

空月そらら
ファンタジー
「鑑定ミスではありません。この子のスキルは《コピー》です。正直、稀に見る外れスキルですね、何せ発動条件が今だ未解明なのですから」 「何てことなの……」 「全く期待はずれだ」 私の名前はラゼル、十五歳になったんだけども、人生最悪のピンチに立たされている。 このファンタジックな世界では、15歳になった際、スキル鑑定を医者に受けさせられるんだが、困ったことに私は外れスキル《コピー》を当ててしまったらしい。 そして数年が経ち……案の定、私は家族から疎ましく感じられてーーついに追放されてしまう。 だけど私のスキルは発動条件を満たすことで、魔族のスキルをコピーできるようだ。 そして、私の能力が《外れスキル》ではなく、恐ろしい能力だということに気づく。 そんでこの能力を使いこなしていると、知らないうちに英雄と呼ばれていたんだけど? 私を追放した家族が戻ってきてほしいって泣きついてきたんだけど、もう戻らん。 私は最高の仲間と最強を目指すから。

コストカットだ!と追放された王宮道化師は、無数のスキルで冒険者として成り上がる。

あけちともあき
ファンタジー
「宮廷道化師オーギュスト、お前はクビだ」  長い間、マールイ王国に仕え、平和を維持するために尽力してきた道化師オーギュスト。  だが、彼はその活躍を妬んだ大臣ガルフスの陰謀によって職を解かれ、追放されてしまう。  困ったオーギュストは、手っ取り早く金を手に入れて生活を安定させるべく、冒険者になろうとする。  長い道化師生活で身につけた、数々の技術系スキル、知識系スキル、そしてコネクション。  それはどんな難関も突破し、どんな謎も明らかにする。  その活躍は、まさに万能!  死神と呼ばれた凄腕の女戦士を相棒に、オーギュストはあっという間に、冒険者たちの中から頭角を現し、成り上がっていく。  一方、国の要であったオーギュストを失ったマールイ王国。  大臣一派は次々と問題を起こし、あるいは起こる事態に対応ができない。  その方法も、人脈も、全てオーギュストが担当していたのだ。  かくしてマールイ王国は傾き、転げ落ちていく。 目次 連載中 全21話 2021年2月17日 23:39 更新

復讐完遂者は吸収スキルを駆使して成り上がる 〜さあ、自分を裏切った初恋の相手へ復讐を始めよう〜

サイダーボウイ
ファンタジー
「気安く私の名前を呼ばないで! そうやってこれまでも私に付きまとって……ずっと鬱陶しかったのよ!」 孤児院出身のナードは、初恋の相手セシリアからそう吐き捨てられ、パーティーを追放されてしまう。 淡い恋心を粉々に打ち砕かれたナードは失意のどん底に。 だが、ナードには、病弱な妹ノエルの生活費を稼ぐために、冒険者を続けなければならないという理由があった。 1人決死の覚悟でダンジョンに挑むナード。 スライム相手に死にかけるも、その最中、ユニークスキル【アブソープション】が覚醒する。 それは、敵のLPを吸収できるという世界の掟すらも変えてしまうスキルだった。 それからナードは毎日ダンジョンへ入り、敵のLPを吸収し続けた。 増やしたLPを消費して、魔法やスキルを習得しつつ、ナードはどんどん強くなっていく。 一方その頃、セシリアのパーティーでは仲間割れが起こっていた。 冒険者ギルドでの評判も地に落ち、セシリアは徐々に追いつめられていくことに……。 これは、やがて勇者と呼ばれる青年が、チートスキルを駆使して最強へと成り上がり、自分を裏切った初恋の相手に復讐を果たすまでの物語である。

処理中です...