【完結】勇者PTから追放された空手家の俺、可愛い弟子たちと空手無双する。俺が抜けたあとの勇者たちが暴走? じゃあ、最後に俺が息の根をとめる

ともボン

文字の大きさ
22 / 104
第四章 ~空手家という名の闘神、大草原に舞い降りる~

道場訓 二十二   守るべき弟子のために

しおりを挟む
 遠くのほうに大量の砂埃すなほこりと草葉が舞っていた。

 耳を澄ませば地鳴りのような音もどんどん近づいてくる。

 魔物どもが俺たちという新たな獲物えものを見つけ、一斉に押し寄せて来ているのだ。

「エミリア、お前に一つ課題を与える」

 俺は押し寄せてくる魔物どもをにらみながら、隣にいたエミリアに話しかける。

「か、課題ですか?」

「そうだ。お前にはこの場から逃げることを禁ずる。これから闘神流空手とうしんりゅうからてを学ぶ者の責務せきむとして、師匠と決めた男がどういう闘いをするのかそのまなこに焼きつけろ。それが俺からお前に与える最初の課題だ」

「お主、正気か!」

 突如とつじょ、話を聞いていたキキョウが横槍よこやりを入れてくる。

「この場から逃げることを禁じるだと! それでは魔物どもに囲まれても逃げるなと言うのか!」

「キキョウ・フウゲツ、お前も相当に動揺どうようしているな。魔物どもに囲まれたら、どのみち逃げられないだろうが。それに敵前逃亡は死罪……だろ?」

「確かにそうだが……それでも逃げるなとはあまりにも」

 こくではないか、とキキョウが口にしようとしたときだ。

「逃げません」

 エミリアはきっぱりと答えた。

「ケンシン師匠がそう言うのなら、たとえ何十の魔物に襲われようとも絶対に逃げません。私はケンシン師匠の弟子になると決めたのですから」

 そう言いながらもエミリアは怖くて仕方がないのだろう。

 気丈きじょうに振る舞ってはいるものの、目線を下げれば両膝が震えている。

 けれども、俺に伝えた言葉に嘘偽うそいつわりはなかった。

 俺を見つめてくるエミリアの目の奥には、俺を心の底から信じている信頼の光がはっきりと輝いていたのだ。

 このとき、俺は初めてエミリアが愛おしいと思った。

 恋心からという意味ではなく、これから闘神流空手とうしんりゅうからての技を伝える弟子として愛おしいと思ったのだ。

 同時に俺は決心する。

 絶対にエミリアだけは死なせはしない、と。

「エミリア、右手のてのひらを出せ」

 俺がそう言うと、エミリアは素直に右手のてのひらを出してくる。

 すぐに俺はエミリアの右手のてのひらに、自分の右手のてのひらを上から重ねた。

 直後、俺は自分のてのひらのほぼ中心にあるツボ――労宮ろうきゅうからエミリアの労宮ろうきゅうを通して一気に気力アニマを流し込んだ。

「あっ!」

 エミリアは身体を震わせながら全身を大きくけ反らせる。

 しかし、それも一瞬のことだった。

 すぐにエミリアは普通の状態になり、自分の右手のてのひらを見つめる。

「俺の気力アニマの一部を流し込まれてどんな感じだ?」

 エミリアは自分の右手のてのひらから俺に視線を移してきた。

「ち、力が……身体の底から今まで感じたことのない力があふれてきます」

 やはり、エミリアには気力アニマを使いこなす才能があるようだ。

「具体的に身体はどんな状態になっている?」

「状態……ですか?」

「たとえば身体が熱くなっているとか、逆に寒くなってるとかだな。他にも身体の反応として全身の軽いしびれや、身体が異常に重く感じるとかがある」

 俺の質問にエミリアはすぐに答えた。

「私は身体の中が光っているような感じでしょうか……いえ、もっと具体的に言うのなら、握りこぶしほどの大きさの光の玉が全身を駆け巡っているような……そんな感覚がはっきりとあります」

 これには俺も驚いた。

 エミリアは強引に気力アニマを引き出されたにもかかわらず、いきなり体内に光を感じるという最高位の感覚を感じたのか。

 気力アニマとは生まれたときにそなわっている魔力マナとは違い、気力アニマを使える師匠の元で修行して会得えとくしていく後天的な力のことだ。

 その気力アニマを開発する最初の段階として、今の俺がやったように互いの右手のてのひらのツボ――労宮ろうきゅうから一方的に気力アニマを流し込むという行為がある。

 もちろん、流し込む気力アニマの量は調整しないといけない。

 気力アニマに耐性のない人間の体内に一定以上の気力アニマを流し込んでしまえば、下手をすれば流し込まれた側は心身を害して死に至ってしまうからだ。

 けれども適切な量を流し込まれて気力アニマを開発された人間には、成功した証として〈八触はっしょく〉と呼ばれる効感反応こうかんはんのうが起きる。

 酸気感さんきかん―――身体がだるく感じる。

 冷気感れいきかん―――身体が寒く感じる。

 熱気感ねっきかん―――身体が熱く感じる。

 張気感ちょうきかん―――身体にりを感じる。

 麻気感まきかん―――身体にしびれを感じる。

 大気感だいきかん―――身体が重く感じる。

 小気感しょうきかん―――身体が軽く感じる。

 光気感こうきかん―――身体に光を感じる。

 という八つの感覚だ。

 そしてこの効感反応こうかんはんのうの中でもっとも気力アニマが開発されたことを示すのは、身体に光を感じる光気感こうきかんという現象が起きたときだ。

 他の七つの感覚のときには肉体自体に変化はないものの、光気感こうきかんを感じたときの肉体は一時的だが恐ろしく頑強がんきょうになる。

 どれぐらいかと言うと魔法使いの〈身体強化ブースト〉の魔法が、それこそ児戯じぎかと思うほどには肉体の強さが筋量とは関係なく強くなるのだ。

 エミリア本人はまだ自覚していないだろうが、光気感こうきかんを感じている今ならオークやゴブリン程度の攻撃をまともに受けても致命傷ちめいしょうになることはないだろう。

 しかし、万が一ということもある。

「エミリア、先に謝っておく。もしも痛かったら許してくれ」

 俺はそう言うと、「何をですか?」と訊き返そうとしたエミリアにそれなりの力を加えた横蹴りを繰り出した。

 左足の足刀そくとうの部位がエミリアの腹に食い込み、そのままエミリアの身体は見えない糸に引っ張られたように数メートルも吹き飛んだ。

 やがてエミリアの身体は何度も転がりながらようやく止まった。

「この外道が! 女子おなごに対していきなり何をするか!」

 キキョウは俺がとち狂ったと勘違いしたのだろう。

 今にも大刀で斬りかからんばかりに全身から闘気を放出する。

 だが、俺はそんなキキョウを無視してエミリアに声をかけた。

「エミリア、どうだ? 少しでも痛みを感じるか?」

 数秒ほど経ったあと、エミリアは勢いよく跳ね起きた。

 そしてエミリアは信じられないといった顔で自分の身体を見回す。

「全然、痛くありません。蹴られた場所も地面に打ちつけた場所も……どこも痛くありません」

 俺は心中で大きくうなずいた。

 どうやら光気感こうきかんによる肉体の強化は十分に発揮はっきされているようだ。

「驚かせてすまなかったな、エミリア。だが、これでお前の肉体は気力アニマによって強化されていることは分かっただろ。だから、魔物に襲われたら遠慮はするな。今のお前は中ランク程度の魔物に対してはほぼ無敵だ。今まで修練した拳と自分の気力アニマを信じて存分に闘え」

 直後、俺はエミリアから魔物どもに視線を移す。

「俺も俺の役目をしっかりと果たしてくるからな」

 俺はエミリアから離れると、ゆっくりと魔物どもに向かって歩き出した。

「じゃあ、一番槍いちばんやりを務めに行ってくる。あとは任せたぞ」

「け、ケンシン師匠!」

 不意に俺は立ち止まり、顔だけを後方に振り向かせた。

 何か言いたそうなエミリアと目が合う。

「あの……その……こういうときに何とお声をかければよいのか」

 俺はフッとエミリアに笑みを向ける。

「馬鹿だな。お前も武人ぶじんはしくれなら、こういうときに伝える言葉は一つしかないだろ?」

 しばし考え込んだエミリアは、やがて俺にかけるべき言葉を思い出したようだ。

「ケンシン師匠――ご武運ぶうんを!」

 そうだ、戦地せんちに向かう武人ぶじんにかける言葉なんてそれしかない。

おう!」

 俺はエミリアのはげましを受け止めると、一番槍いちばんやりの務めを果たすため、勢いよく大地を蹴って駆け出した。

 闘神流空手とうしんりゅうからて、ケンシン・オオガミ――いざ、して参る!
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』

ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。 全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。 「私と、パーティを組んでくれませんか?」 これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!

能力『ゴミ箱』と言われ追放された僕はゴミ捨て町から自由に暮らすことにしました

御峰。
ファンタジー
十歳の時、貰えるギフトで能力『ゴミ箱』を授かったので、名門ハイリンス家から追放された僕は、ゴミの集まる町、ヴァレンに捨てられる。 でも本当に良かった!毎日勉強ばっかだった家より、このヴァレン町で僕は自由に生きるんだ! これは、ゴミ扱いされる能力を授かった僕が、ゴミ捨て町から幸せを掴む為、成り上がる物語だ――――。

ユニークスキルの名前が禍々しいという理由で国外追放になった侯爵家の嫡男は世界を破壊して創り直します

かにくくり
ファンタジー
エバートン侯爵家の嫡男として生まれたルシフェルトは王国の守護神から【破壊の後の創造】という禍々しい名前のスキルを授かったという理由で王国から危険視され国外追放を言い渡されてしまう。 追放された先は王国と魔界との境にある魔獣の谷。 恐ろしい魔獣が闊歩するこの地に足を踏み入れて無事に帰った者はおらず、事実上の危険分子の排除であった。 それでもルシフェルトはスキル【破壊の後の創造】を駆使して生き延び、その過程で救った魔族の親子に誘われて小さな集落で暮らす事になる。 やがて彼の持つ力に気付いた魔王やエルフ、そして王国の思惑が複雑に絡み大戦乱へと発展していく。 鬱陶しいのでみんなぶっ壊して創り直してやります。 ※小説家になろうにも投稿しています。

収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?

木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。 追放される理由はよく分からなかった。 彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。 結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。 しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。 たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。 ケイトは彼らを失いたくなかった。 勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。 しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。 「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」 これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。

【完結】帝国から追放された最強のチーム、リミッター外して無双する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】  スペイゴール大陸最強の帝国、ユハ帝国。  帝国に仕え、最強の戦力を誇っていたチーム、『デイブレイク』は、突然議会から追放を言い渡される。  しかし帝国は気づいていなかった。彼らの力が帝国を拡大し、恐るべき戦力を誇示していたことに。  自由になった『デイブレイク』のメンバー、エルフのクリス、バランス型のアキラ、強大な魔力を宿すジャック、杖さばきの達人ランラン、絶世の美女シエナは、今まで抑えていた実力を完全開放し、ゼロからユハ帝国を超える国を建国していく。   ※この世界では、杖と魔法を使って戦闘を行います。しかし、あの稲妻型の傷を持つメガネの少年のように戦うわけではありません。どうやって戦うのかは、本文を読んでのお楽しみです。杖で戦う戦士のことを、本文では杖士(ブレイカー)と描写しています。 ※舞台の雰囲気は中世ヨーロッパ〜近世ヨーロッパに近いです。 〜『デイブレイク』のメンバー紹介〜 ・クリス(男・エルフ・570歳)   チームのリーダー。もともとはエルフの貴族の家系だったため、上品で高潔。白く透明感のある肌に、整った顔立ちである。エルフ特有のとがった耳も特徴的。メンバーからも信頼されているが…… ・アキラ(男・人間・29歳)  杖術、身体能力、頭脳、魔力など、あらゆる面のバランスが取れたチームの主力。独特なユーモアのセンスがあり、ムードメーカーでもある。唯一の弱点が…… ・ジャック(男・人間・34歳)  怪物級の魔力を持つ杖士。その魔力が強大すぎるがゆえに、普段はその魔力を抑え込んでいるため、感情をあまり出さない。チームで唯一の黒人で、ドレッドヘアが特徴的。戦闘で右腕を失って以来義手を装着しているが…… ・ランラン(女・人間・25歳)  優れた杖の腕前を持ち、チームを支える杖士。陽気でチャレンジャーな一面もあり、可愛さも武器である。性格の共通点から、アキラと親しく、親友である。しかし実は…… ・シエナ(女・人間・28歳)  絶世の美女。とはいっても杖士としての実力も高く、アキラと同じくバランス型である。誰もが羨む美貌をもっているが、本人はあまり自信がないらしく、相手の反応を確認しながら静かに話す。あるメンバーのことが……

A級パーティから追放された俺はギルド職員になって安定した生活を手に入れる

国光
ファンタジー
A級パーティの裏方として全てを支えてきたリオン・アルディス。しかし、リーダーで幼馴染のカイルに「お荷物」として追放されてしまう。失意の中で再会したギルド受付嬢・エリナ・ランフォードに導かれ、リオンはギルド職員として新たな道を歩み始める。 持ち前の数字感覚と管理能力で次々と問題を解決し、ギルド内で頭角を現していくリオン。一方、彼を失った元パーティは内部崩壊の道を辿っていく――。 これは、支えることに誇りを持った男が、自らの価値を証明し、安定した未来を掴み取る物語。

追放された宮廷薬師、科学の力で不毛の地を救い、聡明な第二王子に溺愛される

希羽
ファンタジー
王国の土地が「灰色枯病」に蝕まれる中、若干25歳で宮廷薬師長に就任したばかりの天才リンは、その原因が「神の祟り」ではなく「土壌疲弊」であるという科学的真実を突き止める。しかし、錬金術による安易な「奇跡」にすがりたい国王と、彼女を妬む者たちの陰謀によって、リンは国を侮辱した反逆者の濡れ衣を着せられ、最も不毛な土地「灰の地」へ追放されてしまう。 ​すべてを奪われた彼女に残されたのは、膨大な科学知識だけだった。絶望の地で、リンは化学、物理学、植物学を駆使して生存基盤を確立し、やがて同じく見捨てられた者たちと共に、豊かな共同体「聖域」をゼロから築き上げていく。 ​その様子を影から見守り、心を痛めていたのは、第二王子アルジェント。宮廷で唯一リンの価値を理解しながらも、彼女の追放を止められなかった無力な王子だった。

勇者パーティーに追放された支援術士、実はとんでもない回復能力を持っていた~極めて幅広い回復術を生かしてなんでも屋で成り上がる~

名無し
ファンタジー
 突如、幼馴染の【勇者】から追放処分を言い渡される【支援術士】のグレイス。確かになんでもできるが、中途半端で物足りないという理不尽な理由だった。  自分はパーティーの要として頑張ってきたから納得できないと食い下がるグレイスに対し、【勇者】はその代わりに【治癒術士】と【補助術士】を入れたのでもうお前は一切必要ないと宣言する。  もう一人の幼馴染である【魔術士】の少女を頼むと言い残し、グレイスはパーティーから立ち去ることに。  だが、グレイスの【支援術士】としての腕は【勇者】の想像を遥かに超えるものであり、ありとあらゆるものを回復する能力を秘めていた。  グレイスがその卓越した技術を生かし、【なんでも屋】で生計を立てて評判を高めていく一方、勇者パーティーはグレイスが去った影響で歯車が狂い始め、何をやっても上手くいかなくなる。  人脈を広げていったグレイスの周りにはいつしか賞賛する人々で溢れ、落ちぶれていく【勇者】とは対照的に地位や名声をどんどん高めていくのだった。

処理中です...