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最終章 ~華やかで煌びやかな地下の世界・元勇者の消滅編~
道場訓 八十七 勇者の誤った行動 ㉙
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牢獄から出たい一心で新魔薬を飲んだものの、こうして失敗作の人間を目の前にすると自分の行動に寒気を感じてしまう。
だが、何にせよ新魔薬は俺に適合したのは事実。
そうだ。
俺は失敗作じゃない。
魔人の力を見事に獲得した貴重な成功例なんだ。
しかし、まだ不安な種があることはある。
「よう、ソドム。それで俺の新魔薬の適合率がどれぐらいあるのかはいつ調べてくれるんだ?」
新魔薬の適合率。
俺がソドムとゴモラに大人しくついてきた理由がこれだった。
確かに俺は新魔薬によって魔人の力を得た。
これは間違いない。
ただ、問題なのはこの魔人の力を本当に自由に使って良いのかどうかだった。
初級魔法のように簡単に使いまくって魔力切れが起きるぐらいならまだいい。
俺が危惧しているのは、この魔人の力をどれほど自由に使えるのかどうかということだ。
1日に1回なのか?
それとも2回なのか3回なのか?
さすがの俺もハイリスク・ハイリターンは好きじゃない。
俺が好きなのはノーリスク・ハイリターンのみだ。
「まあ、そう焦るな。少なくてもお前はここにいる連中よりも大丈夫だ。たとえ新魔薬と適合して魔人の力の片鱗を見せた奴がいても、普段の体調不良がずっと続くような奴も多い。その点、お前はそんな様子がまったくない」
ソドムが言うと、ゴモラも「やっぱり素質なのかね」と言葉を繋げた。
「素質か……」
素質があると言われると悪い気がしない。
俺はクソどものせいで勇者の座から降ろされたものの、こうなったら魔人の力を駆使して〝魔王〟として生きるのも良いのかもしれないな。
魔王、キース・マクマホン。
ふむ、中々悪くない。
冷静になって考えてみると、本当の意味で勇者として生きていくのは制約が多すぎる。
国からの指定勇者とはいえ、湯水のように国から金を貰えるわけじゃなかった。
魔王討伐の任命を受けたと言えば聞こえは良いが、見方を変えれば国の兵よりも先に敵の親玉へと特攻する捨て石とも言える。
もしも俺が魔王を討伐できず死んだとしても、国は俺の代わりの勇者を見つけて任命するだけ。
冒険者稼業の身に勇者の称号はあまりにも眩しかったから受けたが、それは誤りだったと今ならはっきりと断言できる。
真に自分の欲望のままに行動できるのは勇者ではない。
行動できるとしたら、それは非道の限りを尽くして欲望を満たす者。
魔王だ。
決めたぜ、俺は魔王になる。
魔人の力を完全にモノにして、俺は魔王となってこの国に復讐してやるんだ。
くくくっ……楽しみすぎる。
などと心の奥底から湧いてくる黒い感情に舌なめずりをしたときだ。
「ソドムさま!」
と、奥の部屋からドタバタと全身白装束の男たちが駆け寄ってきた。
前もってソドムたちから聞いていた、この実験室を管理している研究者という奴らなのだろう。
「そんなに慌ててどうした?」
ソドムが尋ねると、白装束の1人が答えた。
「脱獄です。女が1人逃げました」
「女が逃げた? 顧客リストで集めた連中の1人か?」
はい、白装束の1人が頷く。
「何だよ、だらしねえな。女の1人や2人ぐらいさっさと捕まえろよ」
そう言ったのはゴモラだ。
「ですが、えらく強い女でして警備の人間たちも何人か倒されました」
「どんな女だ? まさか、女サムライか?」
「はい……いや、いいえと答えるべきでしょうか。リストにはサムライと書いてあったのですが、実際には違ったようで」
「まどろっこしいな。サムライなのにサムライじゃなかったってか? だったら何だったんだよ」
白装束の1人は歯切れ悪く言った。
「どうやら空手家というやつらしいです」
だが、何にせよ新魔薬は俺に適合したのは事実。
そうだ。
俺は失敗作じゃない。
魔人の力を見事に獲得した貴重な成功例なんだ。
しかし、まだ不安な種があることはある。
「よう、ソドム。それで俺の新魔薬の適合率がどれぐらいあるのかはいつ調べてくれるんだ?」
新魔薬の適合率。
俺がソドムとゴモラに大人しくついてきた理由がこれだった。
確かに俺は新魔薬によって魔人の力を得た。
これは間違いない。
ただ、問題なのはこの魔人の力を本当に自由に使って良いのかどうかだった。
初級魔法のように簡単に使いまくって魔力切れが起きるぐらいならまだいい。
俺が危惧しているのは、この魔人の力をどれほど自由に使えるのかどうかということだ。
1日に1回なのか?
それとも2回なのか3回なのか?
さすがの俺もハイリスク・ハイリターンは好きじゃない。
俺が好きなのはノーリスク・ハイリターンのみだ。
「まあ、そう焦るな。少なくてもお前はここにいる連中よりも大丈夫だ。たとえ新魔薬と適合して魔人の力の片鱗を見せた奴がいても、普段の体調不良がずっと続くような奴も多い。その点、お前はそんな様子がまったくない」
ソドムが言うと、ゴモラも「やっぱり素質なのかね」と言葉を繋げた。
「素質か……」
素質があると言われると悪い気がしない。
俺はクソどものせいで勇者の座から降ろされたものの、こうなったら魔人の力を駆使して〝魔王〟として生きるのも良いのかもしれないな。
魔王、キース・マクマホン。
ふむ、中々悪くない。
冷静になって考えてみると、本当の意味で勇者として生きていくのは制約が多すぎる。
国からの指定勇者とはいえ、湯水のように国から金を貰えるわけじゃなかった。
魔王討伐の任命を受けたと言えば聞こえは良いが、見方を変えれば国の兵よりも先に敵の親玉へと特攻する捨て石とも言える。
もしも俺が魔王を討伐できず死んだとしても、国は俺の代わりの勇者を見つけて任命するだけ。
冒険者稼業の身に勇者の称号はあまりにも眩しかったから受けたが、それは誤りだったと今ならはっきりと断言できる。
真に自分の欲望のままに行動できるのは勇者ではない。
行動できるとしたら、それは非道の限りを尽くして欲望を満たす者。
魔王だ。
決めたぜ、俺は魔王になる。
魔人の力を完全にモノにして、俺は魔王となってこの国に復讐してやるんだ。
くくくっ……楽しみすぎる。
などと心の奥底から湧いてくる黒い感情に舌なめずりをしたときだ。
「ソドムさま!」
と、奥の部屋からドタバタと全身白装束の男たちが駆け寄ってきた。
前もってソドムたちから聞いていた、この実験室を管理している研究者という奴らなのだろう。
「そんなに慌ててどうした?」
ソドムが尋ねると、白装束の1人が答えた。
「脱獄です。女が1人逃げました」
「女が逃げた? 顧客リストで集めた連中の1人か?」
はい、白装束の1人が頷く。
「何だよ、だらしねえな。女の1人や2人ぐらいさっさと捕まえろよ」
そう言ったのはゴモラだ。
「ですが、えらく強い女でして警備の人間たちも何人か倒されました」
「どんな女だ? まさか、女サムライか?」
「はい……いや、いいえと答えるべきでしょうか。リストにはサムライと書いてあったのですが、実際には違ったようで」
「まどろっこしいな。サムライなのにサムライじゃなかったってか? だったら何だったんだよ」
白装束の1人は歯切れ悪く言った。
「どうやら空手家というやつらしいです」
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