19 / 101
第三章
19・まるで山の中
しおりを挟む
車は進んで外れの方へ向かう。
いつの間にか、両側が森のように木が生い茂っていて、まさか山の中に?と思わず外を見る。
そんなキイロの様子に気づき、運転手は告げた。
「現在、薄氷さまの敷地内に入っております。ご安心ください」
「敷地内?」
「はい、先ほどから」
山の中ではないのか?
そういえば道路もちゃんとして揺れもほとんどない。
一体どこへ向かっているのか。
顔を見合わせるキイロと梅花だ。
やがて木々がなくなったかと思うと、いきなり目の前が開けた。
まるで英国の王族を思わせるような広い庭園と、洋館のような建物と、和風のお屋敷が並んで建っている。
「到着しました。薄氷家へご案内いたします」
運転手がそう言い、和風のお屋敷のほうへ車をつけた。
車専用の玄関があるのか、車をそのまま乗りつけると、ドアが開いた。
わらわらと女中が現れた。
「お待ちしておりました」
「お疲れ様でございます」
「お話は伺っております」
「お風呂のご用意が出来ております」
「え?え?え?」
次々に話かけられ、キイロが困惑していると、そのまま「さささ」と肩を押された。
キイロと梅花と子供は、やたら広い風呂場へ案内された。
「ささ、風邪をひかないうちに」
「子供は我々が預かります」
「ダメ!」
はっとキイロは子供を抱きかかえたが、一人の女中が首を横に振った。
「ご安心ください、我々も一緒にお風呂へ向かいます」
「あなた方が入浴している間、目の前でこの子の面倒をみます故」
「どうか、疑わないでいただきますよう」
次々にまたそう言われ、キイロは仕方なく頷いた。
(そもそも、こんな場所まで来てしまったんだし)
薄氷の家なら、もう預けるしかないのだろう。
「判りました。でも、すぐに戻してください」
一緒にお風呂まで来るなら、目の前で奪われることもないだろう。
キイロの返答に、女中らは次々に「ええ、ええ」と頷いた。
(それにしても一体、ここは何なんだろう?)
昨日から変な目にあってばかりだな、とキイロは思った。
入浴は女中らも一緒に風呂に入り、あれこれキイロどころか赤ん坊も梅花の世話もやいた。
体を洗われ、髪も数人で洗われ、ゆっくり湯船につけられて体の芯からあたたまった。
「やっぱりお風呂はいいわね。昨日の梅花のお風呂も助かったけど」
「なにいってんの。うちみたいな小さなお風呂」
「とんでもない。いきなり押しかけたのに、あたたかいお風呂に入れてくれて、感謝してる」
「キイロ……」
「わたし、そんなに恵まれてないと思ったけど、友達だけは最高に恵まれてる」
「私だってそうよ」
梅花の言葉に、キイロは頷いた。
入浴を済ませると、また女中らは着替えから髪のまとめから、なにからなにまで世話をやく。
「自分でできますから」
キイロと梅花が言うも、女中らは次々に首を横に振る。
「我々の仕事ですから」
「そうです、専門にお任せください」
そう言われると仕方なく、キイロらは従うしかなかった。
しかし専門というだけあって手際は見事で、キイロも梅花もあっというまに奇麗に身支度を整えて貰った。
「梅花、まるで女学校の時みたいね」
「キイロだってよく似合ってて可愛いわ」
品の良い、揃えの着物を着せられて二人はまるで姉妹のような感覚になる。
「とても良い着物ね。仕立てはどこかしら」
梅花が不思議がるが「わからないわ」と首をかしげる。
子供はどこ、とキイロがきょろきょろすると、女中がちゃんと着替えを済ませた子供を連れてきてくれた。
そこでキイロはあれ?と思う。
心なしか、子供が少し、大きくなった気がするのだ。
さっきまで確かに、1歳すぎ、なんとか2歳くらいのよちよちした雰囲気だったのに、目の前の子供はちょっと大きくなっている。
でも顔はそのままだし、雰囲気も変わってない。
(???なんで?)
それでも子供はキイロに向かって「だっこして」というように手を伸ばして来たのでキイロは抱きかかえた。
(やっぱり、重くなっているような)
いつの間にか、両側が森のように木が生い茂っていて、まさか山の中に?と思わず外を見る。
そんなキイロの様子に気づき、運転手は告げた。
「現在、薄氷さまの敷地内に入っております。ご安心ください」
「敷地内?」
「はい、先ほどから」
山の中ではないのか?
そういえば道路もちゃんとして揺れもほとんどない。
一体どこへ向かっているのか。
顔を見合わせるキイロと梅花だ。
やがて木々がなくなったかと思うと、いきなり目の前が開けた。
まるで英国の王族を思わせるような広い庭園と、洋館のような建物と、和風のお屋敷が並んで建っている。
「到着しました。薄氷家へご案内いたします」
運転手がそう言い、和風のお屋敷のほうへ車をつけた。
車専用の玄関があるのか、車をそのまま乗りつけると、ドアが開いた。
わらわらと女中が現れた。
「お待ちしておりました」
「お疲れ様でございます」
「お話は伺っております」
「お風呂のご用意が出来ております」
「え?え?え?」
次々に話かけられ、キイロが困惑していると、そのまま「さささ」と肩を押された。
キイロと梅花と子供は、やたら広い風呂場へ案内された。
「ささ、風邪をひかないうちに」
「子供は我々が預かります」
「ダメ!」
はっとキイロは子供を抱きかかえたが、一人の女中が首を横に振った。
「ご安心ください、我々も一緒にお風呂へ向かいます」
「あなた方が入浴している間、目の前でこの子の面倒をみます故」
「どうか、疑わないでいただきますよう」
次々にまたそう言われ、キイロは仕方なく頷いた。
(そもそも、こんな場所まで来てしまったんだし)
薄氷の家なら、もう預けるしかないのだろう。
「判りました。でも、すぐに戻してください」
一緒にお風呂まで来るなら、目の前で奪われることもないだろう。
キイロの返答に、女中らは次々に「ええ、ええ」と頷いた。
(それにしても一体、ここは何なんだろう?)
昨日から変な目にあってばかりだな、とキイロは思った。
入浴は女中らも一緒に風呂に入り、あれこれキイロどころか赤ん坊も梅花の世話もやいた。
体を洗われ、髪も数人で洗われ、ゆっくり湯船につけられて体の芯からあたたまった。
「やっぱりお風呂はいいわね。昨日の梅花のお風呂も助かったけど」
「なにいってんの。うちみたいな小さなお風呂」
「とんでもない。いきなり押しかけたのに、あたたかいお風呂に入れてくれて、感謝してる」
「キイロ……」
「わたし、そんなに恵まれてないと思ったけど、友達だけは最高に恵まれてる」
「私だってそうよ」
梅花の言葉に、キイロは頷いた。
入浴を済ませると、また女中らは着替えから髪のまとめから、なにからなにまで世話をやく。
「自分でできますから」
キイロと梅花が言うも、女中らは次々に首を横に振る。
「我々の仕事ですから」
「そうです、専門にお任せください」
そう言われると仕方なく、キイロらは従うしかなかった。
しかし専門というだけあって手際は見事で、キイロも梅花もあっというまに奇麗に身支度を整えて貰った。
「梅花、まるで女学校の時みたいね」
「キイロだってよく似合ってて可愛いわ」
品の良い、揃えの着物を着せられて二人はまるで姉妹のような感覚になる。
「とても良い着物ね。仕立てはどこかしら」
梅花が不思議がるが「わからないわ」と首をかしげる。
子供はどこ、とキイロがきょろきょろすると、女中がちゃんと着替えを済ませた子供を連れてきてくれた。
そこでキイロはあれ?と思う。
心なしか、子供が少し、大きくなった気がするのだ。
さっきまで確かに、1歳すぎ、なんとか2歳くらいのよちよちした雰囲気だったのに、目の前の子供はちょっと大きくなっている。
でも顔はそのままだし、雰囲気も変わってない。
(???なんで?)
それでも子供はキイロに向かって「だっこして」というように手を伸ばして来たのでキイロは抱きかかえた。
(やっぱり、重くなっているような)
84
あなたにおすすめの小説
無能令嬢、『雑役係』として辺境送りされたけど、世界樹の加護を受けて規格外に成長する
タマ マコト
ファンタジー
名門エルフォルト家の長女クレアは、生まれつきの“虚弱体質”と誤解され、家族から無能扱いされ続けてきた。
社交界デビュー目前、突然「役立たず」と決めつけられ、王都で雑役係として働く名目で辺境へ追放される。
孤独と諦めを抱えたまま向かった辺境の村フィルナで、クレアは自分の体調がなぜか安定し、壊れた道具や荒れた土地が彼女の手に触れるだけで少しずつ息を吹き返す“奇妙な変化”に気づく。
そしてある夜、瘴気に満ちた森の奥から呼び寄せられるように、一人で足を踏み入れた彼女は、朽ちた“世界樹の分枝”と出会い、自分が世界樹の血を引く“末裔”であることを知る——。
追放されたはずの少女が、世界を動かす存在へ覚醒する始まりの物語。
【完結】奇跡のおくすり~追放された薬師、実は王家の隠し子でした~
いっぺいちゃん
ファンタジー
薬草と静かな生活をこよなく愛する少女、レイナ=リーフィア。
地味で目立たぬ薬師だった彼女は、ある日貴族の陰謀で“冤罪”を着せられ、王都の冒険者ギルドを追放されてしまう。
「――もう、草とだけ暮らせればいい」
絶望の果てにたどり着いた辺境の村で、レイナはひっそりと薬を作り始める。だが、彼女の薬はどんな難病さえ癒す“奇跡の薬”だった。
やがて重病の王子を治したことで、彼女の正体が王家の“隠し子”だと判明し、王都からの使者が訪れる――
「あなたの薬に、国を救ってほしい」
導かれるように再び王都へと向かうレイナ。
医療改革を志し、“薬師局”を創設して仲間たちと共に奔走する日々が始まる。
薬草にしか心を開けなかった少女が、やがて王国の未来を変える――
これは、一人の“草オタク”薬師が紡ぐ、やさしくてまっすぐな奇跡の物語。
※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。
侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました
下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。
ご都合主義のSS。
お父様、キャラチェンジが激しくないですか。
小説家になろう様でも投稿しています。
突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!
『悪役令嬢は、二度目の人生で無言を貫く。~処刑回避のために黙っていただけなのに、なぜか冷徹宰相様から「君こそ運命の人だ」と溺愛さています~』
放浪人
恋愛
「もう、余計なことは喋りません(処刑されたくないので!)」
王太子の婚約者エリスは、無実の罪を着せられた際、必死に弁解しようと叫び散らした結果「見苦しい」と断罪され、処刑されてしまった。 死に戻った彼女は悟る。「口は災いの元。二度目の人生は、何があっても口を閉ざして生き延びよう」と。
しかし、断罪の場で恐怖のあまり沈黙を貫いた結果、その姿は「弁解せず耐え忍ぶ高潔な令嬢」として称賛されてしまう。 さらに、人間嫌いの冷徹宰相クラウスに「私の静寂を理解する唯一の女性」と盛大な勘違いをされ、求婚されてしまい……!?
「君の沈黙は、愛の肯定だね?」(違います、怖くて固まっているだけです!) 「この国の危機を、一目で見抜くとは」(ただ臭かったから鼻を押さえただけです!)
怯えて黙っているだけの元悪役令嬢と、彼女の沈黙を「深遠な知性」と解釈して溺愛する最強宰相。 転生ヒロインの妨害も、隣国の陰謀も、全て「無言」で解決(?)していく、すれ違いロマンティック・コメディ! 最後はちゃんと言葉で愛を伝えて、最高のハッピーエンドを迎えます。
追放された宮廷薬師、科学の力で不毛の地を救い、聡明な第二王子に溺愛される
希羽
ファンタジー
王国の土地が「灰色枯病」に蝕まれる中、若干25歳で宮廷薬師長に就任したばかりの天才リンは、その原因が「神の祟り」ではなく「土壌疲弊」であるという科学的真実を突き止める。しかし、錬金術による安易な「奇跡」にすがりたい国王と、彼女を妬む者たちの陰謀によって、リンは国を侮辱した反逆者の濡れ衣を着せられ、最も不毛な土地「灰の地」へ追放されてしまう。
すべてを奪われた彼女に残されたのは、膨大な科学知識だけだった。絶望の地で、リンは化学、物理学、植物学を駆使して生存基盤を確立し、やがて同じく見捨てられた者たちと共に、豊かな共同体「聖域」をゼロから築き上げていく。
その様子を影から見守り、心を痛めていたのは、第二王子アルジェント。宮廷で唯一リンの価値を理解しながらも、彼女の追放を止められなかった無力な王子だった。
乙女ゲームに転生したら不遇ヒロインでしたが、真エンドは自分で選びます
タマ マコト
ファンタジー
社畜のように他人の期待に応える人生を送り、事故で命を落とした朝霧玲奈は、かつて遊んでいた乙女ゲームの世界に“不遇ヒロイン”として転生する。
努力しても報われず、最終的に追放される役割を知った彼女は、誰かに選ばれる物語を拒否し、自分の意志で生きることを決意する。
さて、物語はどう変化するのか……。
失恋までが初恋です。
あんど もあ
ファンタジー
私の初恋はお兄様。お兄様は、私が五歳の時にご両親を亡くして我が家にやって来て私のお兄様になってくださった方。私は三歳年上の王子様のようなお兄様に一目ぼれでした。それから十年。お兄様にはルシンダ様と言う婚約者が、私にも婚約者らしき者がいますが、初恋は続行中ですの。
そんなマルティーナのお話。
オネエ伯爵、幼女を拾う。~実はこの子、逃げてきた聖女らしい~
雪丸
ファンタジー
アタシ、アドルディ・レッドフォード伯爵。
突然だけど今の状況を説明するわ。幼女を拾ったの。
多分年齢は6~8歳くらいの子。屋敷の前にボロ雑巾が落ちてると思ったらびっくり!人だったの。
死んでる?と思ってその辺りに落ちている木で突いたら、息をしていたから屋敷に運んで手当てをしたのよ。
「道端で倒れていた私を助け、手当を施したその所業。賞賛に値します。(盛大なキャラ作り中)」
んま~~~尊大だし図々しいし可愛くないわ~~~!!
でも聖女様だから変な扱いもできないわ~~~!!
これからアタシ、どうなっちゃうのかしら…。
な、ラブコメ&ファンタジーです。恋の進展はスローペースです。
小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。(敬称略)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる