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第四章
22・ずっと昔から
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「どうして私を?どなたかとお間違えではないでしょうか」
キイロにしてみたら、会った事もないし、そもそも薄氷家なんて、よく知りもしない存在だ。
(というか、なんでいろいろ内緒だったんだろう?)
もしあの義母や義兄、父親なら、こんな立派な家に娘が嫁になるといえば大喜びで威張り散らかしそうなものだが。
「いえ、間違いではありません」
そういって朧はペンダントを取り出す。
銀のロケットだ。
ぱちんと開き、中の写真を見せた。
キイロはそれを見て驚く。
幼い頃の自分だからだ。
「これ、私?」
「ええ。間違いなくあなたです」
なぜこの人はキイロの幼い頃の写真を持っているのだろうか。
「以前、私たちは会っているのですよ。でもあなたは多分、それを覚えてらっしゃらない」
「も、申し訳ありません」
「いえ、仕方のない事なんです。あなたのせいではなくて。そうですね、まずはあなたの事を、自分で判る限り教えていただけますか?」
薄氷の言葉に、キイロは頷いた。
自分は蘇芳家の娘であること、名前はキイロ。
母をはやくになくし、義母と連れ子の義兄と家族になった。
父は実の父親。
女学校に一応、通わせては貰ったが、必要なものはかなり自分で稼ぐしかなく、裕福とは程遠かった。
成績もそこまで優秀というわけでもなく、女学校時代の思い出は、梅花と一緒に過ごしたり、女学校の図書館で借りる本を読んだり、アルバイトとして子供たちと遊んだり。
「長屋の方々にはとても助けて頂きました」
梅花のいま住んでいる長屋は、その知り合いのつてで繋がった場所だった。
キイロに出来る事は、女学校で習った事をそのまま長屋の
女性や子供たちに教える事で、時々、ごちそうになったり、近くの商店や庄屋に女学校で習った事を娘さんに教えたりという家庭教師みたいなこともやっていた。
そうやって稼いだお金で教科書を買ったり、学校で必要な備品を揃えたり。
幸い、かなりのお金持ちがあつまる女学校だったので先輩らや同級生も生活に余裕がある人が多く、キイロにおさがりをくれたり、親戚の子の家庭教師を紹介してくれたりもした。
かなり自分は恵まれたと思っている。
「成程、女学校時代は判りました。では、その前は?」
「その前、は」
実はあまり記憶がはっきりしない。
母親をなくしたせいで、ショックだったのか、母親の記憶もあまりない。
「よく覚えていなくて」
「そうでしょうね。なぜなら、あなたは名前を縛られてしまったから」
そう朧は呟く。
「あなたの本当の名前は、いま呼ばれている名前ではありません」
そういわれ、キイロはきょとんと首を傾げた。
「それは一体」
「名前は契約です。良くも悪くも、その契約に縛られる。あなたを奪うために、連中はあなたを名前で縛った。記憶がないのはそのせいです」
驚いた。
自分の名前を疑ったこともなかったし、母親があまりにおかしくなってそんな名前をつけたとしか聞いていない。
キイロが伝えると朧は心底呆れた表情で「バカなことを」と呟いた。
「あなたほどの人の名前を、適当に縛ってもその能力までは縛られはしないというのに」
能力?とキイロは首を傾げた。
「あなたは、他人とは少し違う能力がありますね。ああ、隠さなくても大丈夫です。我々はその事も知っていますから」
「―――――本当に?」
「ええ。大丈夫です。それに、だからこそ、あなたが火事の現場から消えたと聞いて、きっと生きていると確信できました。そしてあなたがいたからこそ、その子も助かったのだと」
その子、とキイロの傍に居る子供を差して言った。
「この子は、一体誰の子なのでしょうか?」
ひょっとして朧の?と疑いのまなざしをむけるが、朧は察したように苦笑した。
「私の隠し子とかじゃありませんよ」
では一体、誰の子供なのだろうか。
キイロにしてみたら、会った事もないし、そもそも薄氷家なんて、よく知りもしない存在だ。
(というか、なんでいろいろ内緒だったんだろう?)
もしあの義母や義兄、父親なら、こんな立派な家に娘が嫁になるといえば大喜びで威張り散らかしそうなものだが。
「いえ、間違いではありません」
そういって朧はペンダントを取り出す。
銀のロケットだ。
ぱちんと開き、中の写真を見せた。
キイロはそれを見て驚く。
幼い頃の自分だからだ。
「これ、私?」
「ええ。間違いなくあなたです」
なぜこの人はキイロの幼い頃の写真を持っているのだろうか。
「以前、私たちは会っているのですよ。でもあなたは多分、それを覚えてらっしゃらない」
「も、申し訳ありません」
「いえ、仕方のない事なんです。あなたのせいではなくて。そうですね、まずはあなたの事を、自分で判る限り教えていただけますか?」
薄氷の言葉に、キイロは頷いた。
自分は蘇芳家の娘であること、名前はキイロ。
母をはやくになくし、義母と連れ子の義兄と家族になった。
父は実の父親。
女学校に一応、通わせては貰ったが、必要なものはかなり自分で稼ぐしかなく、裕福とは程遠かった。
成績もそこまで優秀というわけでもなく、女学校時代の思い出は、梅花と一緒に過ごしたり、女学校の図書館で借りる本を読んだり、アルバイトとして子供たちと遊んだり。
「長屋の方々にはとても助けて頂きました」
梅花のいま住んでいる長屋は、その知り合いのつてで繋がった場所だった。
キイロに出来る事は、女学校で習った事をそのまま長屋の
女性や子供たちに教える事で、時々、ごちそうになったり、近くの商店や庄屋に女学校で習った事を娘さんに教えたりという家庭教師みたいなこともやっていた。
そうやって稼いだお金で教科書を買ったり、学校で必要な備品を揃えたり。
幸い、かなりのお金持ちがあつまる女学校だったので先輩らや同級生も生活に余裕がある人が多く、キイロにおさがりをくれたり、親戚の子の家庭教師を紹介してくれたりもした。
かなり自分は恵まれたと思っている。
「成程、女学校時代は判りました。では、その前は?」
「その前、は」
実はあまり記憶がはっきりしない。
母親をなくしたせいで、ショックだったのか、母親の記憶もあまりない。
「よく覚えていなくて」
「そうでしょうね。なぜなら、あなたは名前を縛られてしまったから」
そう朧は呟く。
「あなたの本当の名前は、いま呼ばれている名前ではありません」
そういわれ、キイロはきょとんと首を傾げた。
「それは一体」
「名前は契約です。良くも悪くも、その契約に縛られる。あなたを奪うために、連中はあなたを名前で縛った。記憶がないのはそのせいです」
驚いた。
自分の名前を疑ったこともなかったし、母親があまりにおかしくなってそんな名前をつけたとしか聞いていない。
キイロが伝えると朧は心底呆れた表情で「バカなことを」と呟いた。
「あなたほどの人の名前を、適当に縛ってもその能力までは縛られはしないというのに」
能力?とキイロは首を傾げた。
「あなたは、他人とは少し違う能力がありますね。ああ、隠さなくても大丈夫です。我々はその事も知っていますから」
「―――――本当に?」
「ええ。大丈夫です。それに、だからこそ、あなたが火事の現場から消えたと聞いて、きっと生きていると確信できました。そしてあなたがいたからこそ、その子も助かったのだと」
その子、とキイロの傍に居る子供を差して言った。
「この子は、一体誰の子なのでしょうか?」
ひょっとして朧の?と疑いのまなざしをむけるが、朧は察したように苦笑した。
「私の隠し子とかじゃありませんよ」
では一体、誰の子供なのだろうか。
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