わたしにしか懐かない龍神の子供(?)を拾いました~可愛いんで育てたいと思います

あきた

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第十二章

83・炎の舞台と霧の龍

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 観客は逃げ惑い、火柱を消そうと朧が次々に氷で消すが、追いつかない。
 やがて炎がおぼろを包み込み、キイロはとうとうこらえきれず飛び出してしまった。

「朧様!」

 まさかそこに妻がいると思わなかった朧は驚いた。

「ムーラン!なぜ君が!」
「朧様が心配で」

 慌ててキイロごと朧は氷で自分たちを包み込む。

「まさか、変装まで?」
「ばれないようにしてきたのですが、うまくいきました」
「全く、あなたという人は……」
 言いながら朧は笑っていた。
「それより、あいつは」
「恐ろしいことをしています。あんな横暴なやり方を許すとは、あいつは守護を捨てたか奪ったか。本来なら陛下のために使う力をこんな事になど」
「あいつを止める事はできないのでしょうか?」
「できない事はありませんが、そうなると私は能力を使い過ぎてしまいます。多分これは罠です」
「罠、ですか」
「ええ。ここでこんな力をわざわざ使って、私まで駆り出したのは、わたしの力を奪うのが目的でしょう。力を使いつくした後、つるばみが、連中の一番上の奴が、出てきてしまうでしょう」

 それを狙っての大げさな舞台だ。
 だからこんなに人を集めた。
 まずは人を助けるために能力を使わざるを得なくなる。
 そのうえで、こうして潤朱うるしゅという炎の力を使わせ朧の力を削る。
 そしてその上で、本来の目的であることをやるのだろう。

「クーデター、とまでは言いませんが、暴動を起こすつもりでしょう。警備にあたる私がそれを止めきれなければ、自分たちのほうが力が上と誇示できます」
「そんな馬鹿な」
「いえ、元々私が軍に入るまでは、橡の一族が軍の上にも居たのです。ですが、私が軍に所属したことで薄氷の一族の力が入り、橡は好き放題できなくなってしまった」
「逆恨みです」
「そうです。ですが、彼らはそうは思っていないでしょう」

 さて、どうするか、と朧は考え込む。

(なんとか建物と人への被害は防げているが)

 いつまでも朧に無尽蔵に能力が続くわけでもない。
 しかし、やり返すほど能力を使えばこの先の橡の策略に対応できなくなる。

「なんとか舛花が橡を押さえてくれれば良いのですが」

 肩を抱く朧の手に、キイロは自分の手をのせた。

(なんとか、お手伝いできないかしら)

 わずかな、自分でもよく判らない能力しか持っていないけれど、こういう時に朧の役には立てないのか。

(どうやって、使えばいいの?)

 手のひらから水を出すくらいの事しかできないけれど、どうにかもっと手伝えないのか。
 キイロはそう思って、思わず手のひらを相手に向けた。

(出て!)

 水がわずかでも出てくれれば、と思ったキイロだった。
 すると、キイロの手のひらからは白い霧状のものがあふれて、目の前で白い靄になった。

「え?なに?え?」

 霧はどんどん広がって大きくなり、キイロと朧を包み込む。

「ムーラン?あなたはなにを?」
「わ、わかりません!でも、頑張ってみます!」

 なんとか朧を助けたい、この炎をおさめたい。
 そう願うキイロの手からは霧が放出され、やがて真っ白い龍の姿になった。

「なんだあれは?」

 驚く潤朱の二人に、キイロはわけもわからず、ただ必死に願い続けた。

(お願い、朧様を、助けて!)

 すると龍はキイロと朧の二人を包み込むようにぐるぐる回り、やがて炎に包まれた舞台の火を全て消し去ってしまっていた。

「な、なによあれは……」

 呆然と思が龍を見上げ、立ちすくむ。

「朧、まさかこんな能力があっただと?」

 困惑している二人に、朧は怒鳴った。

「いい加減、おろかな真似はやめろ!なにをやっても私には通じない!」

 呆然とした思の叔父は、ふらふらと舞台を歩き、ばたんと倒れ込んだ。

「叔父様!」

 だたっと駆け寄った思だったが、その思も途中でふらつきはじめ、やがて倒れてしまった。
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