85 / 101
第十三章
85・栴檀家の正体
しおりを挟む
「それほどまでに強いのか?」
青白の問いに「そりゃそうだろ」と答える。
「なにせ実際は栴檀家のものというじゃないか」
「滅びたはずじゃ」
「なかったってことだよ。朧は初恋でしかないらしいが、それにしたって偶然が過ぎる」
「そりゃあ……龍も従うってわけか」
ははあ、と青白も頷く。
「栴檀家といや、規模は小さくとも古からの一族だ。元々は龍が嫌う能力を持っていたが、龍を飼いならす方法をある一族に教わってからというもの、龍を従えて共に生きて来た。権力者にいいように使われ、龍を守るために自らを隠していたために、今度は滅んでしまったと聞いていたが」
「そのかすかな残り、というのが偶然にも朧の初恋の女の子だったというわけだ」
「―――――そりゃ、怖い。いや、怖いぞ?」
「だから言っているだろう。朧の身は心配じゃない。むしろ、彼女が自分の力の限界を知らないほうが怖いと」
「朧が尻に敷かれそうつって、笑ってる場合じゃなかったな」
「全くだ。橡はその情報を知って使おうとしているのか、または知らずにやらかしているのか」
「なあ、この船、無事に済むと思うか?」
心配そうに青白が尋ねた。
「……浮いてる状態で残れば御の字ってところじゃねえかな。橡の一族に弁償させるか」
「また冗談を」
青白は縹を見返したが、「本気か」と尋ね、縹は黙って頷いた。
「俺、この船で休暇取って旅行したかったんだけど!」
「すぐには無理だろうな」
「そんなあ」
折角の豪華客船、どうか無事であってくれと青白は願うしかなかった。
舞台から逃れた朧たちは、抜け道を通り敵にも遭遇せず、脱出できるデッキ迄もう少し、というところだった。
ところがデッキには何十人もの人質として船の客が残っていて、朧は舌打ちした。
「橡め。卑怯な真似を」
「朧様、脱出は」
「あなたがただけでも先に逃げる方法を考えなければ」
「いえ、私はついてまいります」
キイロは決意していた。
さっき、炎に巻かれた朧を見た時、絶対傍にいようと誓った。
「お邪魔になっても、わたしはおそばに居ます」
きっぱりと告げるキイロに、朧は小さく笑った。
「まったく、どうしようもないですね」
「わたし、絶対」
「わかりました。正直、あなたが居ると私も助かります。あなたの能力はすさまじいものがあります」
朧は思う。
多分それは、りんの守護があるからこそだ。
「りんさま、どうか彼女をお願いします」
「言われんでもわかっておる。好きにせい」
すると梅花が口をはさんだ。
「りんちゃん、なんかざっぱーんってあいつらやっつけられないの?」
「できるぞ」
りんがそう返して、皆は顔を見合わせた。
「この船が壊れてええなら」
やっぱりそのくらいの力はあるのか、と皆は思った。
「大事な船じゃろう。じゃったらわしがどうこうするより、人のことは人でなんとかせい」
「おっしゃる通りです」
しかし、一度大人になってから子供のふりをしているりんは、以前よりよっぽど状況の判断が出来ている。
「どうにか、無傷で逃げる事はできないでしょうか」
そしてふと港を見ると、軍の車が次々に到着していた。
「朧様、軍の方が」
「これで少しは上手くいくでしょう」
黒い立派な車や、馬に乗った軍の人々が集まりはじめ、人を配置し始めた。
(あとは橡がどう出るか)
おとなしく話に従ってくれればよいが、と思っている朧だったが、話はそう甘くはなかった。
人質の中から、どこかの男が引っ張り出され、橡は男のこめかみに銃を突き付けて怒鳴った。
「いいか!わたしに従わないとこの男の命はないと思え!」
そこで朧は、はっと顔をあげた。
「なんてことを」
「御存じの方ですか?」
「恐れ多くも、宮家の方に銃をつきつけるなど。あれはもう、どうしようもない」
そこまでするとは、と朧は青ざめてすらいた。
キイロは、なんとかしなくちゃ、と気持ちばかり焦り、しかしいい考えは浮かばない。
(どうすれば良いの?)
青白の問いに「そりゃそうだろ」と答える。
「なにせ実際は栴檀家のものというじゃないか」
「滅びたはずじゃ」
「なかったってことだよ。朧は初恋でしかないらしいが、それにしたって偶然が過ぎる」
「そりゃあ……龍も従うってわけか」
ははあ、と青白も頷く。
「栴檀家といや、規模は小さくとも古からの一族だ。元々は龍が嫌う能力を持っていたが、龍を飼いならす方法をある一族に教わってからというもの、龍を従えて共に生きて来た。権力者にいいように使われ、龍を守るために自らを隠していたために、今度は滅んでしまったと聞いていたが」
「そのかすかな残り、というのが偶然にも朧の初恋の女の子だったというわけだ」
「―――――そりゃ、怖い。いや、怖いぞ?」
「だから言っているだろう。朧の身は心配じゃない。むしろ、彼女が自分の力の限界を知らないほうが怖いと」
「朧が尻に敷かれそうつって、笑ってる場合じゃなかったな」
「全くだ。橡はその情報を知って使おうとしているのか、または知らずにやらかしているのか」
「なあ、この船、無事に済むと思うか?」
心配そうに青白が尋ねた。
「……浮いてる状態で残れば御の字ってところじゃねえかな。橡の一族に弁償させるか」
「また冗談を」
青白は縹を見返したが、「本気か」と尋ね、縹は黙って頷いた。
「俺、この船で休暇取って旅行したかったんだけど!」
「すぐには無理だろうな」
「そんなあ」
折角の豪華客船、どうか無事であってくれと青白は願うしかなかった。
舞台から逃れた朧たちは、抜け道を通り敵にも遭遇せず、脱出できるデッキ迄もう少し、というところだった。
ところがデッキには何十人もの人質として船の客が残っていて、朧は舌打ちした。
「橡め。卑怯な真似を」
「朧様、脱出は」
「あなたがただけでも先に逃げる方法を考えなければ」
「いえ、私はついてまいります」
キイロは決意していた。
さっき、炎に巻かれた朧を見た時、絶対傍にいようと誓った。
「お邪魔になっても、わたしはおそばに居ます」
きっぱりと告げるキイロに、朧は小さく笑った。
「まったく、どうしようもないですね」
「わたし、絶対」
「わかりました。正直、あなたが居ると私も助かります。あなたの能力はすさまじいものがあります」
朧は思う。
多分それは、りんの守護があるからこそだ。
「りんさま、どうか彼女をお願いします」
「言われんでもわかっておる。好きにせい」
すると梅花が口をはさんだ。
「りんちゃん、なんかざっぱーんってあいつらやっつけられないの?」
「できるぞ」
りんがそう返して、皆は顔を見合わせた。
「この船が壊れてええなら」
やっぱりそのくらいの力はあるのか、と皆は思った。
「大事な船じゃろう。じゃったらわしがどうこうするより、人のことは人でなんとかせい」
「おっしゃる通りです」
しかし、一度大人になってから子供のふりをしているりんは、以前よりよっぽど状況の判断が出来ている。
「どうにか、無傷で逃げる事はできないでしょうか」
そしてふと港を見ると、軍の車が次々に到着していた。
「朧様、軍の方が」
「これで少しは上手くいくでしょう」
黒い立派な車や、馬に乗った軍の人々が集まりはじめ、人を配置し始めた。
(あとは橡がどう出るか)
おとなしく話に従ってくれればよいが、と思っている朧だったが、話はそう甘くはなかった。
人質の中から、どこかの男が引っ張り出され、橡は男のこめかみに銃を突き付けて怒鳴った。
「いいか!わたしに従わないとこの男の命はないと思え!」
そこで朧は、はっと顔をあげた。
「なんてことを」
「御存じの方ですか?」
「恐れ多くも、宮家の方に銃をつきつけるなど。あれはもう、どうしようもない」
そこまでするとは、と朧は青ざめてすらいた。
キイロは、なんとかしなくちゃ、と気持ちばかり焦り、しかしいい考えは浮かばない。
(どうすれば良いの?)
72
あなたにおすすめの小説
無能令嬢、『雑役係』として辺境送りされたけど、世界樹の加護を受けて規格外に成長する
タマ マコト
ファンタジー
名門エルフォルト家の長女クレアは、生まれつきの“虚弱体質”と誤解され、家族から無能扱いされ続けてきた。
社交界デビュー目前、突然「役立たず」と決めつけられ、王都で雑役係として働く名目で辺境へ追放される。
孤独と諦めを抱えたまま向かった辺境の村フィルナで、クレアは自分の体調がなぜか安定し、壊れた道具や荒れた土地が彼女の手に触れるだけで少しずつ息を吹き返す“奇妙な変化”に気づく。
そしてある夜、瘴気に満ちた森の奥から呼び寄せられるように、一人で足を踏み入れた彼女は、朽ちた“世界樹の分枝”と出会い、自分が世界樹の血を引く“末裔”であることを知る——。
追放されたはずの少女が、世界を動かす存在へ覚醒する始まりの物語。
【完結】奇跡のおくすり~追放された薬師、実は王家の隠し子でした~
いっぺいちゃん
ファンタジー
薬草と静かな生活をこよなく愛する少女、レイナ=リーフィア。
地味で目立たぬ薬師だった彼女は、ある日貴族の陰謀で“冤罪”を着せられ、王都の冒険者ギルドを追放されてしまう。
「――もう、草とだけ暮らせればいい」
絶望の果てにたどり着いた辺境の村で、レイナはひっそりと薬を作り始める。だが、彼女の薬はどんな難病さえ癒す“奇跡の薬”だった。
やがて重病の王子を治したことで、彼女の正体が王家の“隠し子”だと判明し、王都からの使者が訪れる――
「あなたの薬に、国を救ってほしい」
導かれるように再び王都へと向かうレイナ。
医療改革を志し、“薬師局”を創設して仲間たちと共に奔走する日々が始まる。
薬草にしか心を開けなかった少女が、やがて王国の未来を変える――
これは、一人の“草オタク”薬師が紡ぐ、やさしくてまっすぐな奇跡の物語。
※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。
侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました
下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。
ご都合主義のSS。
お父様、キャラチェンジが激しくないですか。
小説家になろう様でも投稿しています。
突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!
『悪役令嬢は、二度目の人生で無言を貫く。~処刑回避のために黙っていただけなのに、なぜか冷徹宰相様から「君こそ運命の人だ」と溺愛さています~』
放浪人
恋愛
「もう、余計なことは喋りません(処刑されたくないので!)」
王太子の婚約者エリスは、無実の罪を着せられた際、必死に弁解しようと叫び散らした結果「見苦しい」と断罪され、処刑されてしまった。 死に戻った彼女は悟る。「口は災いの元。二度目の人生は、何があっても口を閉ざして生き延びよう」と。
しかし、断罪の場で恐怖のあまり沈黙を貫いた結果、その姿は「弁解せず耐え忍ぶ高潔な令嬢」として称賛されてしまう。 さらに、人間嫌いの冷徹宰相クラウスに「私の静寂を理解する唯一の女性」と盛大な勘違いをされ、求婚されてしまい……!?
「君の沈黙は、愛の肯定だね?」(違います、怖くて固まっているだけです!) 「この国の危機を、一目で見抜くとは」(ただ臭かったから鼻を押さえただけです!)
怯えて黙っているだけの元悪役令嬢と、彼女の沈黙を「深遠な知性」と解釈して溺愛する最強宰相。 転生ヒロインの妨害も、隣国の陰謀も、全て「無言」で解決(?)していく、すれ違いロマンティック・コメディ! 最後はちゃんと言葉で愛を伝えて、最高のハッピーエンドを迎えます。
追放された宮廷薬師、科学の力で不毛の地を救い、聡明な第二王子に溺愛される
希羽
ファンタジー
王国の土地が「灰色枯病」に蝕まれる中、若干25歳で宮廷薬師長に就任したばかりの天才リンは、その原因が「神の祟り」ではなく「土壌疲弊」であるという科学的真実を突き止める。しかし、錬金術による安易な「奇跡」にすがりたい国王と、彼女を妬む者たちの陰謀によって、リンは国を侮辱した反逆者の濡れ衣を着せられ、最も不毛な土地「灰の地」へ追放されてしまう。
すべてを奪われた彼女に残されたのは、膨大な科学知識だけだった。絶望の地で、リンは化学、物理学、植物学を駆使して生存基盤を確立し、やがて同じく見捨てられた者たちと共に、豊かな共同体「聖域」をゼロから築き上げていく。
その様子を影から見守り、心を痛めていたのは、第二王子アルジェント。宮廷で唯一リンの価値を理解しながらも、彼女の追放を止められなかった無力な王子だった。
乙女ゲームに転生したら不遇ヒロインでしたが、真エンドは自分で選びます
タマ マコト
ファンタジー
社畜のように他人の期待に応える人生を送り、事故で命を落とした朝霧玲奈は、かつて遊んでいた乙女ゲームの世界に“不遇ヒロイン”として転生する。
努力しても報われず、最終的に追放される役割を知った彼女は、誰かに選ばれる物語を拒否し、自分の意志で生きることを決意する。
さて、物語はどう変化するのか……。
失恋までが初恋です。
あんど もあ
ファンタジー
私の初恋はお兄様。お兄様は、私が五歳の時にご両親を亡くして我が家にやって来て私のお兄様になってくださった方。私は三歳年上の王子様のようなお兄様に一目ぼれでした。それから十年。お兄様にはルシンダ様と言う婚約者が、私にも婚約者らしき者がいますが、初恋は続行中ですの。
そんなマルティーナのお話。
オネエ伯爵、幼女を拾う。~実はこの子、逃げてきた聖女らしい~
雪丸
ファンタジー
アタシ、アドルディ・レッドフォード伯爵。
突然だけど今の状況を説明するわ。幼女を拾ったの。
多分年齢は6~8歳くらいの子。屋敷の前にボロ雑巾が落ちてると思ったらびっくり!人だったの。
死んでる?と思ってその辺りに落ちている木で突いたら、息をしていたから屋敷に運んで手当てをしたのよ。
「道端で倒れていた私を助け、手当を施したその所業。賞賛に値します。(盛大なキャラ作り中)」
んま~~~尊大だし図々しいし可愛くないわ~~~!!
でも聖女様だから変な扱いもできないわ~~~!!
これからアタシ、どうなっちゃうのかしら…。
な、ラブコメ&ファンタジーです。恋の進展はスローペースです。
小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。(敬称略)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる