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第十四章
92・お互いに
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(こんな人でも照れる事ってあるんだ)
キイロは驚いて、思わず笑った。
「笑わないでください」
「ごめんなさい、でも」
そっか、とキイロは思った。
「そんなにも、ずっと探してくださったんですね」
「ええ。とても時間がかかりました」
キイロは思った。
自分一人が耐えているのだと。
いつになったらこの家から逃げられて、いつになったら自由になれるのか。
結婚が決まっても、ごはんと布団、あとはその後捨てられてからの生活。
そのくらいしか頭になかった。
でもそうじゃなかった。
キイロが自分の生活だけ必死に生きている間、朧は軍人になってまで、キイロを探してくれたのだ。
その大変さはきっと、キイロには判らないだろう。
それでも、きっと、そこまでして求めてくれたのは。
「わたしのために、なんですね」
キイロが言うと、朧は「ええ」と頷いた。
「いつもあなたを探す為でした。やっと見つけた時には、夢ではないかと何度も自分の頬を打ちました」
「まあ」
「そのくらい夢でも見たんです。やっと見つけた、という夢を何回見たか覚えていない位」
「わたしが、わたしすらよく判っていない間、朧様が考えて下さったんですね」
キイロは朧の手を取った。
「どうか、わたしの夫になってください。わたしじゃなにもできないかもしれませんけど」
「あなたはそこに居るだけでいいです。あなたが生きて、傍に居て、それだけで私は、わたしの悲しみが癒されるんです」
化物と言われて避けられたことは、キイロも朧も同じ立場だった。
「でも私は、あなたを探す機会を掴むことができた。それは誇りです」
「ええ、朧様」
そういってキイロは、朧の左手の薬指に指輪をはめた。
「いつまでもずっと、一緒に居て下さい。あなたと共にいまいります」
キイロが言うと、朧は頷き、「勿論」と微笑んだ。
「これでわたしたちは夫婦ですね」
「ええ」
ぎゅっと朧がキイロを抱きしめた。
暫く朧に抱きしめられていたキイロだが、ふと顔をあげた。
「でも、どうします?結婚式のときに交換する指輪がありませんよ?」
「新しいのを作らせましょう。それは記念においておけば良いのですし」
「そんな勿体ない。一度外して」
「いやですよ!あなたがはめてくれたのに!」
「でもどうせまたつければいいじゃないですか」
「そういう事じゃありません。あなたが、わたしにいまつけてくれたんですよ。一生外しません」
ふいっとすっぽをむく朧に、子供みたいだな、とキイロは笑った。
「朧様って、子供みたいですね」
「……りんさまを見て思ったんです。あんな素直に育ちたかった、と」
「りんちゃんみたいに?」
「ええ。我儘で、素直で、愛情を受け止めて、表現する。あんな風でありたかったと、いまなら判ります」
龍神でありながら、どこまでも人の子供のようだった。
甘やかされた子供なら、きっとあんな風に育ったに違いない。
出来れば自分もそうありたい。
朧の願いをそのまま表現したような子供だった。
「あなたに抱きしめられて育ったりんさまは、きっと幸福だったと思い居ます」
キイロは泉の社を見つめた。
「りんちゃん、いつか帰ってきてくれるかしら」
「きっと帰ってきますよ」
なぜなら、朧の魂とりんの魂は繋がっている。
なんとなくだが、わかるのだ。
(あなたが、黙って大人しく、何百年も眠っていられるはずがない)
卵のまま、りんは眠っているが、一日も早く外に出たくてうずうずしているのが判る。
(きっと、また生まれたら)
キイロにべったりくっついて、甘えて育つのだろう。
次はちゃんと、『おうりゅう』になってしまうのかもしれない。
そうなったら、薄氷は、一層の繁栄を見せるのだろう。
栴檀家のものが薄氷に嫁入りする、とは)
朧自ら望んだこととはいえ、まるで運命に翻弄されているような気がするのだった。
キイロは驚いて、思わず笑った。
「笑わないでください」
「ごめんなさい、でも」
そっか、とキイロは思った。
「そんなにも、ずっと探してくださったんですね」
「ええ。とても時間がかかりました」
キイロは思った。
自分一人が耐えているのだと。
いつになったらこの家から逃げられて、いつになったら自由になれるのか。
結婚が決まっても、ごはんと布団、あとはその後捨てられてからの生活。
そのくらいしか頭になかった。
でもそうじゃなかった。
キイロが自分の生活だけ必死に生きている間、朧は軍人になってまで、キイロを探してくれたのだ。
その大変さはきっと、キイロには判らないだろう。
それでも、きっと、そこまでして求めてくれたのは。
「わたしのために、なんですね」
キイロが言うと、朧は「ええ」と頷いた。
「いつもあなたを探す為でした。やっと見つけた時には、夢ではないかと何度も自分の頬を打ちました」
「まあ」
「そのくらい夢でも見たんです。やっと見つけた、という夢を何回見たか覚えていない位」
「わたしが、わたしすらよく判っていない間、朧様が考えて下さったんですね」
キイロは朧の手を取った。
「どうか、わたしの夫になってください。わたしじゃなにもできないかもしれませんけど」
「あなたはそこに居るだけでいいです。あなたが生きて、傍に居て、それだけで私は、わたしの悲しみが癒されるんです」
化物と言われて避けられたことは、キイロも朧も同じ立場だった。
「でも私は、あなたを探す機会を掴むことができた。それは誇りです」
「ええ、朧様」
そういってキイロは、朧の左手の薬指に指輪をはめた。
「いつまでもずっと、一緒に居て下さい。あなたと共にいまいります」
キイロが言うと、朧は頷き、「勿論」と微笑んだ。
「これでわたしたちは夫婦ですね」
「ええ」
ぎゅっと朧がキイロを抱きしめた。
暫く朧に抱きしめられていたキイロだが、ふと顔をあげた。
「でも、どうします?結婚式のときに交換する指輪がありませんよ?」
「新しいのを作らせましょう。それは記念においておけば良いのですし」
「そんな勿体ない。一度外して」
「いやですよ!あなたがはめてくれたのに!」
「でもどうせまたつければいいじゃないですか」
「そういう事じゃありません。あなたが、わたしにいまつけてくれたんですよ。一生外しません」
ふいっとすっぽをむく朧に、子供みたいだな、とキイロは笑った。
「朧様って、子供みたいですね」
「……りんさまを見て思ったんです。あんな素直に育ちたかった、と」
「りんちゃんみたいに?」
「ええ。我儘で、素直で、愛情を受け止めて、表現する。あんな風でありたかったと、いまなら判ります」
龍神でありながら、どこまでも人の子供のようだった。
甘やかされた子供なら、きっとあんな風に育ったに違いない。
出来れば自分もそうありたい。
朧の願いをそのまま表現したような子供だった。
「あなたに抱きしめられて育ったりんさまは、きっと幸福だったと思い居ます」
キイロは泉の社を見つめた。
「りんちゃん、いつか帰ってきてくれるかしら」
「きっと帰ってきますよ」
なぜなら、朧の魂とりんの魂は繋がっている。
なんとなくだが、わかるのだ。
(あなたが、黙って大人しく、何百年も眠っていられるはずがない)
卵のまま、りんは眠っているが、一日も早く外に出たくてうずうずしているのが判る。
(きっと、また生まれたら)
キイロにべったりくっついて、甘えて育つのだろう。
次はちゃんと、『おうりゅう』になってしまうのかもしれない。
そうなったら、薄氷は、一層の繁栄を見せるのだろう。
栴檀家のものが薄氷に嫁入りする、とは)
朧自ら望んだこととはいえ、まるで運命に翻弄されているような気がするのだった。
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