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第十四章
93・式の支度
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朧とキイロの式の日取りが決まり、朧は一旦、仕事の為軍へと戻った。
「ねえキイロ!じゃなかった、ムーラン、また贈り物が届いてたわよ!」
そういって梅花がどっさりと荷物を抱えてキイロの部屋へと持って来た。
「すっかり私もムーラン様の侍女ね!」
「もう、梅花ったら。あとムーラン様、はやめて。キイロでもムーランでも」
「でも、本当の名前じゃないんでしょ?」
「そうだけど。でもずっと梅花にはそう呼ばれていたし」
キイロ自身、まだ本名にそこまで慣れていない。
時折、名前を間違えそうになる。
「でもそんなひどい話あるのねー、いくら子供の頃とは言え、勝手に名前を変えちゃうなんて」
「そうね……」
元はと言えば、橡の仕業ときけば全て納得はいく。
「栴檀家、って古いおうちなんでしょ?」
「ええ。元は龍の嫌う能力を持っていて、やがて龍が従う一族なんですって」
「わかるわあ、朧様もキイロにはメロメロだもんね!」
「めろめろって……」
キイロは苦笑するが、でもそれでも大切にされているのは幸福だと思う。
「そんな特別な能力なんかないわよ。あったらとっくになんとかしてるもの」
キイロの能力は、いまはすっかり落ち着いている。
というのも、この薄氷の屋敷には龍神の泉があり、龍の力がとめどなく溢れているからこそ、キイロの能力もバランスが取れるのだそうだ。
「能力を切り離そうと、わざわざ龍と相性の悪い蘇芳家と繋がったり、画策していたようよ」
橡は自らの呪いで蛇へ姿を変え、滅んでしまった。
元幕府の反乱軍はあっというまに鎮圧された。
あれは、最後の恨みを晴らすための舞台だったのだ。
「潤朱のお姫様は?ずっと病院なの?」
「いまはどこか遠い島で、療養中だそうよ」
能力にあてられると、ああなるのです。
そう朧は寂し気に言った。
「朧様があれほどの能力を好きに使えるのは、軍に入った結果なんですって」
キイロを探す為、仕方なく軍に入った朧だったが、鍛えられた結果、能力もコントロールが自在になったらしい。
「こういうのなんていうんだっけ?塞翁が馬?」
「そうねえ」
キイロを探すために軍に入って、おかげで知らない間に朧は敵の敵になっていた、という事だ。
「ひょっとしたら本当に、朧様に見つけて貰えなかったら、私はずっと蘇芳キイロのまま、適当な所へ嫁入りしてたかもしれないのに」
いま、式の準備でさまざまな人から立派な贈り物が次々に届いている。
ドレスに着物、化粧品にアクセサリー。
でも、キイロが大事にとっておくのは、朧からの贈り物だけだ。
「本当に朧様からのものだけでいいの?」
「ええ。あとは藍銅伯爵さまからのものね。一応、『お父様』なわけだし」
これもキイロにとってはありがたかった。
最近知ったのだが、藍銅伯爵は随分と力を持っている方らしく、キイロはその養女というだけで扱いが変わるそうだ。
「この間もお越しになって、なにがしたい?と尋ねられて。働きたいと言ったら笑われて」
「あら、そりゃそうよ」
「でもちゃんと、働き口を用意して下さるって!」
「本当?」
「ええ。せめて自分のものくらい、自分の力でなんとかしたいって言ったら、身分を内緒にして働ける場所をご用意くださるって!」
「素晴らしいじゃないの。伯爵家、なんてお高くとまってるのかと思ってたけど」
「思いがけない事を私が言うので、面白いって伯爵が……お父様がおっしゃったわ」
藍銅伯爵にとって、キイロはお金持ちの道楽なのかもしれないが、それでも願いが通るならそれでいい。
朧に捨てられる、とは思っていないが、いつでも自分の力を使って生きていけるようにしておくのは、キイロの信条だ。
「しっかり働いて、独り立ちくらいいつでもできるようになっておかないと、りんちゃんに顔向けできないもの」
あれからずっとりんは卵のままで、目覚める様子は見えない。
(本当に、帰って来てくれるのかな)
「ねえキイロ!じゃなかった、ムーラン、また贈り物が届いてたわよ!」
そういって梅花がどっさりと荷物を抱えてキイロの部屋へと持って来た。
「すっかり私もムーラン様の侍女ね!」
「もう、梅花ったら。あとムーラン様、はやめて。キイロでもムーランでも」
「でも、本当の名前じゃないんでしょ?」
「そうだけど。でもずっと梅花にはそう呼ばれていたし」
キイロ自身、まだ本名にそこまで慣れていない。
時折、名前を間違えそうになる。
「でもそんなひどい話あるのねー、いくら子供の頃とは言え、勝手に名前を変えちゃうなんて」
「そうね……」
元はと言えば、橡の仕業ときけば全て納得はいく。
「栴檀家、って古いおうちなんでしょ?」
「ええ。元は龍の嫌う能力を持っていて、やがて龍が従う一族なんですって」
「わかるわあ、朧様もキイロにはメロメロだもんね!」
「めろめろって……」
キイロは苦笑するが、でもそれでも大切にされているのは幸福だと思う。
「そんな特別な能力なんかないわよ。あったらとっくになんとかしてるもの」
キイロの能力は、いまはすっかり落ち着いている。
というのも、この薄氷の屋敷には龍神の泉があり、龍の力がとめどなく溢れているからこそ、キイロの能力もバランスが取れるのだそうだ。
「能力を切り離そうと、わざわざ龍と相性の悪い蘇芳家と繋がったり、画策していたようよ」
橡は自らの呪いで蛇へ姿を変え、滅んでしまった。
元幕府の反乱軍はあっというまに鎮圧された。
あれは、最後の恨みを晴らすための舞台だったのだ。
「潤朱のお姫様は?ずっと病院なの?」
「いまはどこか遠い島で、療養中だそうよ」
能力にあてられると、ああなるのです。
そう朧は寂し気に言った。
「朧様があれほどの能力を好きに使えるのは、軍に入った結果なんですって」
キイロを探す為、仕方なく軍に入った朧だったが、鍛えられた結果、能力もコントロールが自在になったらしい。
「こういうのなんていうんだっけ?塞翁が馬?」
「そうねえ」
キイロを探すために軍に入って、おかげで知らない間に朧は敵の敵になっていた、という事だ。
「ひょっとしたら本当に、朧様に見つけて貰えなかったら、私はずっと蘇芳キイロのまま、適当な所へ嫁入りしてたかもしれないのに」
いま、式の準備でさまざまな人から立派な贈り物が次々に届いている。
ドレスに着物、化粧品にアクセサリー。
でも、キイロが大事にとっておくのは、朧からの贈り物だけだ。
「本当に朧様からのものだけでいいの?」
「ええ。あとは藍銅伯爵さまからのものね。一応、『お父様』なわけだし」
これもキイロにとってはありがたかった。
最近知ったのだが、藍銅伯爵は随分と力を持っている方らしく、キイロはその養女というだけで扱いが変わるそうだ。
「この間もお越しになって、なにがしたい?と尋ねられて。働きたいと言ったら笑われて」
「あら、そりゃそうよ」
「でもちゃんと、働き口を用意して下さるって!」
「本当?」
「ええ。せめて自分のものくらい、自分の力でなんとかしたいって言ったら、身分を内緒にして働ける場所をご用意くださるって!」
「素晴らしいじゃないの。伯爵家、なんてお高くとまってるのかと思ってたけど」
「思いがけない事を私が言うので、面白いって伯爵が……お父様がおっしゃったわ」
藍銅伯爵にとって、キイロはお金持ちの道楽なのかもしれないが、それでも願いが通るならそれでいい。
朧に捨てられる、とは思っていないが、いつでも自分の力を使って生きていけるようにしておくのは、キイロの信条だ。
「しっかり働いて、独り立ちくらいいつでもできるようになっておかないと、りんちゃんに顔向けできないもの」
あれからずっとりんは卵のままで、目覚める様子は見えない。
(本当に、帰って来てくれるのかな)
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