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第十四章
97・継承式
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(すごい、素敵)
礼装姿を見たことがないキイロはちょっと驚いて目をぱちぱちさせてしまった。
が、朧はキイロを見て目を細めた。
「さ、行きなさい」
藍銅伯爵にそっと手を差しのばされ、キイロは頷く。
朧がキイロの手を取り、藍銅伯爵に会釈した。
「我儘を聞いていただいて、ありがとうございました」
「言っただろう。こんなに可愛い娘が出来て私は嬉しいんだと。娘の式まで参加できるとは思わなかった」
そしてキイロを見て呟く。
「感謝している」
「―――――お父様、」
キイロが思わず呟くと、珍しく藍銅伯爵は感情を露わにして、大きな笑みを見せた。
「あなたは私の娘だ。この先もそれを忘れないで欲しい。朧、娘を頼むよ」
「ええ、勿論です」
朧は頷くと、しっかりとキイロの手を握った。
式はつつがなく厳かに進行した。
龍神の前での特別な式だそうで、聞きなれない祝詞が読み上げられたり、よくわからない宝物のようなものが並べられたりと、なにかとものめずらしかった。
最後は、帝の代理という方から刺繍の入った旗のようなものを受け取り、式はそれで完了となった。
「なんだか変わった式ですね」
「古来からの伝統だそうです。実は私も、見るのもするのも初めてです」
朧が言う。
「それはそうじゃ。なぜなら、この式は式であると同時に継承式でもあるからの」
朧の母にそう言われ、朧は「え?」と目を見開いた。
「継承式?誰が?」
「おぬしのじゃ。これで名目上はともかく、『継承』は無事行われた。この先はお前が薄氷で一番の立場となる」
「ちょっと待ってください、私はなにも」
「言っておらぬ。どうせあれこれと無駄に逃げるのが見えておるからの。式と混ぜてしまえばわからんと思ったが、その通りじゃったの」
朧の母は楽しそうに笑った。
「朧様?なにがなんだか」
朧はため息をついた。
「継承するのを逃げていたんです。私は軍に所属していますから、なにがあるか判らないし」
「愚問である。継承さえすれば、能力もますます自分の好きに使えるようになる。これまでは少々、危ういところもあったが、妻を貰ったのだ。もう無茶な探索もすまい」
「無茶な探索?とは?」
キイロが朧の母に尋ねると、母は笑って言った。
「そのままよ。力尽きて倒れるまで、そちを探してばかりおったからの。子供の頃は何度能力を使い切って倒れたか覚えておらんくらい」
「母上、そのようなこと、いまは良いでしょう」
「今じゃから言うのである。求める女性を妻に持てた。あとは力を与えても、無茶はするまい?」
「そりゃ……帰ってこなければなりませんから」
「だから継承させた。なに、外部には派手な継承式をせねばバレはせん。お前はこれまで通りで良い」
つまり、朧に実質の権限を与えながら、面倒な仕事はこれまで通り朧の母がやってくれるということだ。
「ありがとうございます」
「この立場に面倒が多いのは判っておる。お前が軍人として、納得いくような仕事ができあがったなら、その時にお披露目をすればよい。まあ、数人は気づいておるじゃろうがの」
例えば、と朧の母は、藍銅伯爵を見た。
伯爵はいつも通りの飄々とした姿だったが、笑いながらちょっと困ったような顔をしていた。
「思いがけないことに驚いておるようじゃの。あれを驚かせられたのは愉快じゃ」
「母上がまさかこんな事をなさるとは思いませんよ。息子の私ですら考えもしませんでした」
「―――――そのほうがなにかと都合が良いのでな」
そのうちわかる、と朧の母は楽しそうに笑った。
「それよりも、いまは母親として、息子のお前に改めて。求めた伴侶を得られて、良かった。お前がずっと必死で探しておったのは知っておったからの。よき夫婦となれ」
「はい、勿論です」
「はい、お母様」
朧とキイロは頷き合い、互いに見つめ合った。
その時だ。
「大変です皆さま、どうかこちらへ」
慌てた女中の様子に、朧もキイロも、どうしたのか、と目を見合わせた。
「た、卵が、龍神さまの卵が」
キイロは、はっとして顔をあげた。
礼装姿を見たことがないキイロはちょっと驚いて目をぱちぱちさせてしまった。
が、朧はキイロを見て目を細めた。
「さ、行きなさい」
藍銅伯爵にそっと手を差しのばされ、キイロは頷く。
朧がキイロの手を取り、藍銅伯爵に会釈した。
「我儘を聞いていただいて、ありがとうございました」
「言っただろう。こんなに可愛い娘が出来て私は嬉しいんだと。娘の式まで参加できるとは思わなかった」
そしてキイロを見て呟く。
「感謝している」
「―――――お父様、」
キイロが思わず呟くと、珍しく藍銅伯爵は感情を露わにして、大きな笑みを見せた。
「あなたは私の娘だ。この先もそれを忘れないで欲しい。朧、娘を頼むよ」
「ええ、勿論です」
朧は頷くと、しっかりとキイロの手を握った。
式はつつがなく厳かに進行した。
龍神の前での特別な式だそうで、聞きなれない祝詞が読み上げられたり、よくわからない宝物のようなものが並べられたりと、なにかとものめずらしかった。
最後は、帝の代理という方から刺繍の入った旗のようなものを受け取り、式はそれで完了となった。
「なんだか変わった式ですね」
「古来からの伝統だそうです。実は私も、見るのもするのも初めてです」
朧が言う。
「それはそうじゃ。なぜなら、この式は式であると同時に継承式でもあるからの」
朧の母にそう言われ、朧は「え?」と目を見開いた。
「継承式?誰が?」
「おぬしのじゃ。これで名目上はともかく、『継承』は無事行われた。この先はお前が薄氷で一番の立場となる」
「ちょっと待ってください、私はなにも」
「言っておらぬ。どうせあれこれと無駄に逃げるのが見えておるからの。式と混ぜてしまえばわからんと思ったが、その通りじゃったの」
朧の母は楽しそうに笑った。
「朧様?なにがなんだか」
朧はため息をついた。
「継承するのを逃げていたんです。私は軍に所属していますから、なにがあるか判らないし」
「愚問である。継承さえすれば、能力もますます自分の好きに使えるようになる。これまでは少々、危ういところもあったが、妻を貰ったのだ。もう無茶な探索もすまい」
「無茶な探索?とは?」
キイロが朧の母に尋ねると、母は笑って言った。
「そのままよ。力尽きて倒れるまで、そちを探してばかりおったからの。子供の頃は何度能力を使い切って倒れたか覚えておらんくらい」
「母上、そのようなこと、いまは良いでしょう」
「今じゃから言うのである。求める女性を妻に持てた。あとは力を与えても、無茶はするまい?」
「そりゃ……帰ってこなければなりませんから」
「だから継承させた。なに、外部には派手な継承式をせねばバレはせん。お前はこれまで通りで良い」
つまり、朧に実質の権限を与えながら、面倒な仕事はこれまで通り朧の母がやってくれるということだ。
「ありがとうございます」
「この立場に面倒が多いのは判っておる。お前が軍人として、納得いくような仕事ができあがったなら、その時にお披露目をすればよい。まあ、数人は気づいておるじゃろうがの」
例えば、と朧の母は、藍銅伯爵を見た。
伯爵はいつも通りの飄々とした姿だったが、笑いながらちょっと困ったような顔をしていた。
「思いがけないことに驚いておるようじゃの。あれを驚かせられたのは愉快じゃ」
「母上がまさかこんな事をなさるとは思いませんよ。息子の私ですら考えもしませんでした」
「―――――そのほうがなにかと都合が良いのでな」
そのうちわかる、と朧の母は楽しそうに笑った。
「それよりも、いまは母親として、息子のお前に改めて。求めた伴侶を得られて、良かった。お前がずっと必死で探しておったのは知っておったからの。よき夫婦となれ」
「はい、勿論です」
「はい、お母様」
朧とキイロは頷き合い、互いに見つめ合った。
その時だ。
「大変です皆さま、どうかこちらへ」
慌てた女中の様子に、朧もキイロも、どうしたのか、と目を見合わせた。
「た、卵が、龍神さまの卵が」
キイロは、はっとして顔をあげた。
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