世界はあるべき姿へ戻される 第二次世界大戦if戦記

颯野秋乃

文字の大きさ
11 / 69

1937年1月ドイツ第三帝国 他国の動向精査

しおりを挟む
「どうだ?進んでいるか?」

「極東の艦上戦闘機に対する熱意は執念すら感じさせられます。幾つかの怨霊に取り憑かれているのではないかと思うほどです。」

「それは褒めているのか?ゲーリング。」

「もちろんですとも、総統。この馬力のエンジンでこの航続距離、旋回速度。驚嘆に値します。如何せん耐久性には難がありますが、現行の兵器としては十分すぎるほどです。」

「それほどまでにか…。この度の技術協力は成功であったという事だな。」

「ええ。」

大日本帝国との技術協力には、互いに本体の贈与はなかった。理由は簡単で、贈与よりも先に自国への配備が先であるからだ。よってドイツ第三帝国では、設計図が届いた日から、メッサーシュミットによって製造が始まった。異国の技術がふんだんに使われたものを製造するのは容易ではなく、一機の製造にひと月も要した。

試験運用では数値通りの成果をだし、大日本帝国が嘘をついていないことが確認できた。

そして今、ドイツ第三帝国は大日本帝国からの技術協力機体、零式艦上戦闘機の改造に乗り出そうとしていた。

「現在我が帝国で研究中の新型エンジンを搭載することによって、速度、航続距離の改善は余裕であります。そしてこの機体は陸上使用に転換するより、海上での使用を行いたいと考えております。よってこれを対艦攻撃機に転換を図りたいと考えております。」

「彼の機体を対艦攻撃機にか…。」

「はい。1から対艦攻撃機の研究を行うのは余りにも無駄が多いと考えます。目の前にある優秀な機体を改造する方が有意義でありましょう。」

「なるほどな…。了解した。後のことは任せる。」

「承りました。結果が出しだい報告に参ります。」

「よろしく頼む。」

フゥ…。黒革の椅子に身を預けるヒトラー。自分しかいない会議室から外を眺める。少し前までとは明らかに違う賑わい。一部では好景気だという輩もいるが、その中心にいると色々わかるものだ。例え自分のように学が無くとも、これが偽りのものであると分かるのだ…。

しかし!!この賑わいを本当のモノへとしなければならない!!我らは誇り高きゲルマン民族なのである。そのためにゲルマン民族の住む地域を我ら帝国の手によって統一せねばならない!!

決意を新たにヒトラーは文官を呼び、オーストラリアのアンシュルス、ズデーテン地方要求など、ゲルマン民族の多い土地の領土請求の用意を早く進めるように通達する。

そして、文官と入れ替わるようにゲルトが入ってくる。脇に抱えられた幾つかの封筒が、存在感を放っていた。

「何用だ?おまえとの面会の予定はなかったはずだが?」

「秘書官に無理を言って通してもらった。早急に総統の耳に入れるべき事柄がありまして。」

「ほう…。」

目線だけで先を促すと、ゲルトはヒトラーの前にいくつもの紙束を置いた。

「まずは我が国周辺での問題です。ハンガリーがイタリアの協力を得てトリアノン条約の破棄の動き始めています。我が国のように大規模な秘密裏の再軍備は行えていないようですが、これからは大々的に再軍備を行うようになるでしょう。」

「ハンガリーの再軍備は我らにとっては望むべきことではないのか?たしかハンガリーの宰相はホルティーではなかったのか?やつは我らに近い政策をとっていたはずだ。」

「それがホルティー宰相の支持率が経済政策の失策で低迷しています。ハンガリーではオーストリア=ハンガリー二重帝国の再興を望む声が日に日に増すばかりです。」

「何だと…。」

ドイツ第三帝国は国力の増強のためにオーストリアの併合を考えていたヒトラーには、大きな誤算であった。

「オーストリア=ハンガリー二重帝国の再興となると、チェコスロヴァキアまで奴らの野望に巻き込まれる可能性があるな。ゲルト。ハンガリーの行動に細心の注意を払え。」

「承りました。次は極東の話ですが、大日本帝国が中国国民党に対して戦争の可能性を通達してきました。これがその資料です。」

その紙には大日本帝国今年の冬が明けた四月に盧溝橋にて事件を起こして、対中戦争に入る、とあった。そしてドイツ第三帝国へのお願いとして、義勇軍の派遣を依頼したいとあった。

「義勇軍か…。ドクトリンの発展や、新型兵器の運用試験地として使えるかもしれないな…。ゲルトはどう考える?」

「我々が有している軍隊をどれほど出すのか、が非常に大きな問題です。あまりに大きな義勇軍は我らの国民にも良い印象を与えないでしょう。それだけにとどまらず、英・仏の介入の口実を与えることになりかねません。」

「大義名分のない異国の地で戦争する口実は難しいな…。しかし新型兵器の実地試験の情報が欲しい。いざ戦争になって不具合がありましたでは、話にならないのだ。」

「それもそうですね…。こちらの方で派遣可能な部隊の選定に入ります。総統は国民・義勇軍兵士に対する演説の用意をお願いします。」

「任せておけ。」
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

幻の十一代将軍・徳川家基、死せず。長谷川平蔵、田沼意知、蝦夷へ往く。

克全
歴史・時代
 西欧列強に不平等条約を強要され、内乱を誘発させられ、多くの富を収奪されたのが悔しい。  幕末の仮想戦記も考えましたが、徳川家基が健在で、田沼親子が権力を維持していれば、もっと余裕を持って、開国準備ができたと思う。  北海道・樺太・千島も日本の領地のままだっただろうし、多くの金銀が国外に流出することもなかったと思う。  清国と手を組むことも出来たかもしれないし、清国がロシアに強奪された、シベリアと沿海州を日本が手に入れる事が出来たかもしれない。  色々真剣に検討して、仮想の日本史を書いてみたい。 一橋治済の陰謀で毒を盛られた徳川家基であったが、奇跡的に一命をとりとめた。だが家基も父親の十代将軍:徳川家治も誰が毒を盛ったのかは分からなかった。家基は田沼意次を疑い、家治は疑心暗鬼に陥り田沼意次以外の家臣が信じられなくなった。そして歴史は大きく動くことになる。 印旛沼開拓は成功するのか? 蝦夷開拓は成功するのか? オロシャとは戦争になるのか? 蝦夷・千島・樺太の領有は徳川家になるのか? それともオロシャになるのか? 西洋帆船は導入されるのか? 幕府は開国に踏み切れるのか? アイヌとの関係はどうなるのか? 幕府を裏切り異国と手を結ぶ藩は現れるのか?

対ソ戦、準備せよ!

湖灯
歴史・時代
1940年、遂に欧州で第二次世界大戦がはじまります。 前作『対米戦、準備せよ!』で、中国での戦いを避けることができ、米国とも良好な経済関係を築くことに成功した日本にもやがて暗い影が押し寄せてきます。 未来の日本から来たという柳生、結城の2人によって1944年のサイパン戦後から1934年の日本に戻った大本営の特例を受けた柏原少佐は再びこの日本の危機を回避させることができるのでしょうか!? 小説家になろうでは、前作『対米戦、準備せよ!』のタイトルのまま先行配信中です!

土方歳三ら、西南戦争に参戦す

山家
歴史・時代
 榎本艦隊北上せず。  それによって、戊辰戦争の流れが変わり、五稜郭の戦いは起こらず、土方歳三は戊辰戦争の戦野を生き延びることになった。  生き延びた土方歳三は、北の大地に屯田兵として赴き、明治初期を生き抜く。  また、五稜郭の戦い等で散った他の多くの男達も、史実と違えた人生を送ることになった。  そして、台湾出兵に土方歳三は赴いた後、西南戦争が勃発する。  土方歳三は屯田兵として、そして幕府歩兵隊の末裔といえる海兵隊の一員として、西南戦争に赴く。  そして、北の大地で再生された誠の旗を掲げる土方歳三の周囲には、かつての新選組の仲間、永倉新八、斎藤一、島田魁らが集い、共に戦おうとしており、他にも男達が集っていた。 (「小説家になろう」に投稿している「新選組、西南戦争へ」の加筆修正版です) 

対米戦、準備せよ!

湖灯
歴史・時代
大本営から特命を受けてサイパン島に視察に訪れた柏原総一郎大尉は、絶体絶命の危機に過去に移動する。 そして21世紀からタイムリーㇷ゚して過去の世界にやって来た、柳生義正と結城薫出会う。 3人は協力して悲惨な負け方をした太平洋戦争に勝つために様々な施策を試みる。 小説家になろうで、先行配信中!

大東亜戦争を有利に

ゆみすけ
歴史・時代
 日本は大東亜戦争に負けた、完敗であった。 そこから架空戦記なるものが増殖する。 しかしおもしろくない、つまらない。 であるから自分なりに無双日本軍を架空戦記に参戦させました。 主観満載のラノベ戦記ですから、ご感弁を

征空決戦艦隊 ~多載空母打撃群 出撃!~

蒼 飛雲
歴史・時代
 ワシントン軍縮条約、さらにそれに続くロンドン軍縮条約によって帝国海軍は米英に対して砲戦力ならびに水雷戦力において、決定的とも言える劣勢に立たされてしまう。  その差を補うため、帝国海軍は航空戦力にその活路を見出す。  そして、昭和一六年一二月八日。  日本は米英蘭に対して宣戦を布告。  未曾有の国難を救うべく、帝国海軍の艨艟たちは抜錨。  多数の艦上機を搭載した新鋭空母群もまた、強大な敵に立ち向かっていく。

蒼穹の裏方

Flight_kj
SF
日本海軍のエンジンを中心とする航空技術開発のやり直し 未来の知識を有する主人公が、海軍機の開発のメッカ、空技廠でエンジンを中心として、武装や防弾にも口出しして航空機の開発をやり直す。性能の良いエンジンができれば、必然的に航空機も優れた機体となる。加えて、日本が遅れていた電子機器も知識を生かして開発を加速してゆく。それらを利用して如何に海軍は戦ってゆくのか?未来の知識を基にして、どのような戦いが可能になるのか?航空機に関連する開発を中心とした物語。カクヨムにも投稿しています。

もし石田三成が島津義弘の意見に耳を傾けていたら

俣彦
歴史・時代
慶長5年9月14日。 赤坂に到着した徳川家康を狙うべく夜襲を提案する宇喜多秀家と島津義弘。 史実では、これを退けた石田三成でありましたが……。 もしここで彼らの意見に耳を傾けていたら……。

処理中です...