世界はあるべき姿へ戻される 第二次世界大戦if戦記

颯野秋乃

文字の大きさ
32 / 69

ドイツ第三帝国 バラトン湖南部

しおりを挟む
 翌朝ペーターはヘルマンが起こしに来るまで目が覚めることが無かった。「よく眠れたみたいだな。この分だと心配なんて不要そうだな」と、寝起きがてらに、からかわれる。「俺を誰だと思っている」と軽く返し、「確かにな」返事と共にコーヒーを差し出したヘルマンから、受け取り一口含む。苦めなコーヒーのカフェインが目を冴えさせる。
 部屋に運ばれた朝食を摂りながら、部隊全体の状況報告を確認する。先日の戦闘で少なからず死者は発生しているが部隊全体としての被害は軽微で無視できる状態であった。補充も完了している。しかし、問題な部分も少なからずあった。

 それはペーター達の位置している場所は敵地に既に侵入しており、補給を届けるためには車両に頼るほかない点であった。弾薬も燃料も備蓄は暫く持つ量を今は持っているがどこかで確保せざるを得なくなっている。この問題は戦闘開始前にペーターが補給を要請していなかったのが大きな理由であった。

 ペーターは部隊全体の補給を管理している士官のフェーラを呼んだ。まもなく彼女はペーターの前に現れた。

「今後の補給はどのように推移すると考えてる?」

「現在の我々の備蓄では最良でこの戦争が終息するまでは持つでしょう。但しそれは弾薬に限った話です。燃料は首都目前にして全て停止することになるでしょう」

「なるほど、ならばどこかで補給せねばならないわけだ」

「ええ、その通りです」

「君は戦車の整備士としてもうであると聞いた。それを見込んで1つ聞きたいことがある」

「なんでしょう」

「他国の燃料でも我々の戦車や車両は十分に動かすことは可能か?」

「ええ、何ら支障なく動かすことが可能です。私のバッチに掛けて」

「情報感謝する。退室してくれ」

「ペーター師団長、1つよろしいでしょうか?」

「なんだ?」

「私を責めないのですか?」

この発言後に、当たりは静寂に包まれた。ペーターはフェーラの言っていることが全く理解できなかった。彼女が何故自分が彼女を責めると考えていたのか心当たりが全くなかったのだ。彼女がこの沈黙をどのように受け取ったかは全く分からないが、彼女は次のように話を進めた。

「本国からの補給も本来私が担わなくてはならない領域です。今回は私の不祥事で仕事を増やしてしまい申し訳ありませんでした」

 この彼女の発言で全て合点がいったペーター。彼女は自分の仕事を出来ていないために私に呼ばれたと考えているワケだった。そうなってくると、いらないお世話をしたのはもしかすると自分かも知れないと思い始めてしまう。しかし、このまま曖昧にしてしまってはもったいない。しっかりとした規則を設けるべきだとペーター判断した。

「謝らないでくれ。私も師団長を抜擢されてからほとんど日が経っていないから、師団全体をどのように運用することが適切なのかがまだ判然としていないんだ。まだナニも実害が出る前に、今回の件は言い契機になったと私は考えている。今日以降この師団の全ての補給に関する全てを君に任せても構わないだろうか?必要があれば必要なだけ手を貸すことを約束しよう」

「その任を拝命いたします。これより本国に補給に関する打診を行います。後に結果のみを報告します」

「よろしく頼む。あと、これから一時間後に作戦会議を行う。それに出席すること」

「かしこまりました。ではこれで失礼します」

 彼女はそう言って部屋を出て行った。「旨いこと話がまとまって良かったな」と、ペーターの座る後ろのカーテンからヘルマンが現れそう言う。「本当に…」と返す。

「それで?俺の一番の関心事は燃料の確保だよな。本国からの補給が届くまでここで待っておくのでは駄目なのか?」

「これには一種の命令が与えられているんだよ」

「ほう?して、その命令とは?」

「一週間後にバラトン湖を越えた地点でロンメル将軍の指揮する部隊と合流しなくてはならないんだ。だから悠長に補給物資を待っているわけにはいけないんだ」

「動機は理解した。ならどうやって、燃料を手に入れる?」

「それは簡単な理屈だよ。自軍に無いのならば敵軍から奪えば良いだけの話しさ」

 それから、ペーターは自信の構想をヘルマンに聞かせた。それは実に興味深いモノで、作戦会議でも同じ内容が話され各隊からの反応も上々であった。その日の白昼満を持してペーター師団は街を発ち、次の攻略地点を目指して前進を開始した。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

幻の十一代将軍・徳川家基、死せず。長谷川平蔵、田沼意知、蝦夷へ往く。

克全
歴史・時代
 西欧列強に不平等条約を強要され、内乱を誘発させられ、多くの富を収奪されたのが悔しい。  幕末の仮想戦記も考えましたが、徳川家基が健在で、田沼親子が権力を維持していれば、もっと余裕を持って、開国準備ができたと思う。  北海道・樺太・千島も日本の領地のままだっただろうし、多くの金銀が国外に流出することもなかったと思う。  清国と手を組むことも出来たかもしれないし、清国がロシアに強奪された、シベリアと沿海州を日本が手に入れる事が出来たかもしれない。  色々真剣に検討して、仮想の日本史を書いてみたい。 一橋治済の陰謀で毒を盛られた徳川家基であったが、奇跡的に一命をとりとめた。だが家基も父親の十代将軍:徳川家治も誰が毒を盛ったのかは分からなかった。家基は田沼意次を疑い、家治は疑心暗鬼に陥り田沼意次以外の家臣が信じられなくなった。そして歴史は大きく動くことになる。 印旛沼開拓は成功するのか? 蝦夷開拓は成功するのか? オロシャとは戦争になるのか? 蝦夷・千島・樺太の領有は徳川家になるのか? それともオロシャになるのか? 西洋帆船は導入されるのか? 幕府は開国に踏み切れるのか? アイヌとの関係はどうなるのか? 幕府を裏切り異国と手を結ぶ藩は現れるのか?

対ソ戦、準備せよ!

湖灯
歴史・時代
1940年、遂に欧州で第二次世界大戦がはじまります。 前作『対米戦、準備せよ!』で、中国での戦いを避けることができ、米国とも良好な経済関係を築くことに成功した日本にもやがて暗い影が押し寄せてきます。 未来の日本から来たという柳生、結城の2人によって1944年のサイパン戦後から1934年の日本に戻った大本営の特例を受けた柏原少佐は再びこの日本の危機を回避させることができるのでしょうか!? 小説家になろうでは、前作『対米戦、準備せよ!』のタイトルのまま先行配信中です!

土方歳三ら、西南戦争に参戦す

山家
歴史・時代
 榎本艦隊北上せず。  それによって、戊辰戦争の流れが変わり、五稜郭の戦いは起こらず、土方歳三は戊辰戦争の戦野を生き延びることになった。  生き延びた土方歳三は、北の大地に屯田兵として赴き、明治初期を生き抜く。  また、五稜郭の戦い等で散った他の多くの男達も、史実と違えた人生を送ることになった。  そして、台湾出兵に土方歳三は赴いた後、西南戦争が勃発する。  土方歳三は屯田兵として、そして幕府歩兵隊の末裔といえる海兵隊の一員として、西南戦争に赴く。  そして、北の大地で再生された誠の旗を掲げる土方歳三の周囲には、かつての新選組の仲間、永倉新八、斎藤一、島田魁らが集い、共に戦おうとしており、他にも男達が集っていた。 (「小説家になろう」に投稿している「新選組、西南戦争へ」の加筆修正版です) 

対米戦、準備せよ!

湖灯
歴史・時代
大本営から特命を受けてサイパン島に視察に訪れた柏原総一郎大尉は、絶体絶命の危機に過去に移動する。 そして21世紀からタイムリーㇷ゚して過去の世界にやって来た、柳生義正と結城薫出会う。 3人は協力して悲惨な負け方をした太平洋戦争に勝つために様々な施策を試みる。 小説家になろうで、先行配信中!

大東亜戦争を有利に

ゆみすけ
歴史・時代
 日本は大東亜戦争に負けた、完敗であった。 そこから架空戦記なるものが増殖する。 しかしおもしろくない、つまらない。 であるから自分なりに無双日本軍を架空戦記に参戦させました。 主観満載のラノベ戦記ですから、ご感弁を

征空決戦艦隊 ~多載空母打撃群 出撃!~

蒼 飛雲
歴史・時代
 ワシントン軍縮条約、さらにそれに続くロンドン軍縮条約によって帝国海軍は米英に対して砲戦力ならびに水雷戦力において、決定的とも言える劣勢に立たされてしまう。  その差を補うため、帝国海軍は航空戦力にその活路を見出す。  そして、昭和一六年一二月八日。  日本は米英蘭に対して宣戦を布告。  未曾有の国難を救うべく、帝国海軍の艨艟たちは抜錨。  多数の艦上機を搭載した新鋭空母群もまた、強大な敵に立ち向かっていく。

蒼穹の裏方

Flight_kj
SF
日本海軍のエンジンを中心とする航空技術開発のやり直し 未来の知識を有する主人公が、海軍機の開発のメッカ、空技廠でエンジンを中心として、武装や防弾にも口出しして航空機の開発をやり直す。性能の良いエンジンができれば、必然的に航空機も優れた機体となる。加えて、日本が遅れていた電子機器も知識を生かして開発を加速してゆく。それらを利用して如何に海軍は戦ってゆくのか?未来の知識を基にして、どのような戦いが可能になるのか?航空機に関連する開発を中心とした物語。カクヨムにも投稿しています。

もし石田三成が島津義弘の意見に耳を傾けていたら

俣彦
歴史・時代
慶長5年9月14日。 赤坂に到着した徳川家康を狙うべく夜襲を提案する宇喜多秀家と島津義弘。 史実では、これを退けた石田三成でありましたが……。 もしここで彼らの意見に耳を傾けていたら……。

処理中です...