世界はあるべき姿へ戻される 第二次世界大戦if戦記

颯野秋乃

文字の大きさ
66 / 69

小アジア戦略

しおりを挟む
トルコ全体を俯瞰し、隣国の一部に至っても期待された地図。その地図には無数の書き込みと、メモ書きが付けられている。

「さぁ、問題が山積しているこの小アジア。君なら何から手をつける?」

これは非常に難しい質問だ。トルコのヨーロッパ側では共産化したギリシャと関係は非常に宜しくない。戦争する余裕のないトルコと、バルカン、ドイツ、イタリアと相手にはできないギリシャの睨み合いが続いている。

コーカサス近隣ではギリシャの爆発を待つソ連が待機している。先の戦争でソ連赤軍のボスポラス海峡の自由通行が認められ、多少圧は弱まったものの、依然として不凍港を含めた南下政策は堅持されている。

中東地域は覇者がおらず、軍事的混迷と宗教的対立、民族問題が重なり合い、混沌としている。さながら外交ゲームの中心地だ。

イタリアが失陥したトリポリ。アフリカ大陸への足がかりは既になく、かろうじでジブラルタル海峡を制圧し、モロッコをスペイン軍が攻略中である。しかしどうもその進捗は芳しくはなさそうだ。

地中海はイギリスの軍港である、マルタおよびキプロスがあり地中海の覇者は未だ現れない。ジブラルタルがなくなり万全な状況とはいかないイギリスであったが、スエズは十分に機能している。

トルコと国境を接するフランス領では戦闘は未だ行なわれていない。これはドイツとトルコは同盟関係でありながらの、参戦していないためだ。トルコの持つ地中海にもつ諸島群に加えて、長い海岸線を守り切る十分な戦力を割けない、割きたくないドイツと、仮想敵国であるソ連と連合両者共を相手にできないトルコの思惑が一致しているためだ。

ただ、地中海に覇を唱えたいイタリアとしては面白くない話しだ。積極的な武器供与と投資を行ないつつ、過去の偉大なオスマンというプロパガンダをトルコ国内で流布している。

この問題が山積した状況で、我々の使命はエネルギー資源の確保。主に石油だ。その目的はこの小アジアでは果たせそうにない。そうなると、我々が執るべき手段は自ずと見えてくる。

「ペルシアとイラクとの交渉ですね。便宜上・・・そうですね・・・。仮にEラインと呼びましょう。それをトルコ国内に整備します。使用するのはトルコ国内の石炭や褐炭です。褐炭はタブ付いているため安いでしょう。それを用いた蒸気機関車をトルコを横断させ、ヨーロッパまで石油を運搬します。帰りには輸出品でも詰めば良いでしょう」

「石油の陸上輸送を汽車を使って行なうということか?」

「ええ。海上輸送は不可能です。そして、この方法であれば早速ですが、トルコ国内で敷設を始められます。交渉には時間がかかるでしょうし、調度よいのではないでしょうか?」

「2000km近くある距離だ。おいそれとできるものじゃない。しかし、悩んでもいても仕方ない。石油の確保問題はその方向であげるしかないか・・・」

納得いった雰囲気ではないロンメルであるが、こう言った話しは本来自分たちがする必要がないだ。だからこそ必要なんだとは思うものの、もう少し専門的な知識を持った人物が欲しいものだと思う。

その後しばらくはトルコ各地を回り視察を続けた。その途中で本国から一通の指令書が届く。ロンメルが開き、内容を待つ。

「少し毛色は変わったが、貴殿のEライン構想が採用されたようだぞ」

ロンメルから手紙を受け取り、付属している資料に目を通す。鉄道ではなくパイプラインを引くとのこと。北欧諸国やドイツ、イタリアで同規格のパイプラインを作成し、現地でつなぎ合わせていくというもの。本国の試算では日間5km程度の遠心が可能とされており、イスタンブールからイラク及びペルシア国境まで1年で敷設を終えられるとしている。

「交渉は本国が行なうらしい。我々はトルコ政府との調整や人員の確保が主務となる」

「はは、来年からは将軍ではなく現場監督員ですね」

「全くだ」
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

対ソ戦、準備せよ!

湖灯
歴史・時代
1940年、遂に欧州で第二次世界大戦がはじまります。 前作『対米戦、準備せよ!』で、中国での戦いを避けることができ、米国とも良好な経済関係を築くことに成功した日本にもやがて暗い影が押し寄せてきます。 未来の日本から来たという柳生、結城の2人によって1944年のサイパン戦後から1934年の日本に戻った大本営の特例を受けた柏原少佐は再びこの日本の危機を回避させることができるのでしょうか!? 小説家になろうでは、前作『対米戦、準備せよ!』のタイトルのまま先行配信中です!

幻の十一代将軍・徳川家基、死せず。長谷川平蔵、田沼意知、蝦夷へ往く。

克全
歴史・時代
 西欧列強に不平等条約を強要され、内乱を誘発させられ、多くの富を収奪されたのが悔しい。  幕末の仮想戦記も考えましたが、徳川家基が健在で、田沼親子が権力を維持していれば、もっと余裕を持って、開国準備ができたと思う。  北海道・樺太・千島も日本の領地のままだっただろうし、多くの金銀が国外に流出することもなかったと思う。  清国と手を組むことも出来たかもしれないし、清国がロシアに強奪された、シベリアと沿海州を日本が手に入れる事が出来たかもしれない。  色々真剣に検討して、仮想の日本史を書いてみたい。 一橋治済の陰謀で毒を盛られた徳川家基であったが、奇跡的に一命をとりとめた。だが家基も父親の十代将軍:徳川家治も誰が毒を盛ったのかは分からなかった。家基は田沼意次を疑い、家治は疑心暗鬼に陥り田沼意次以外の家臣が信じられなくなった。そして歴史は大きく動くことになる。 印旛沼開拓は成功するのか? 蝦夷開拓は成功するのか? オロシャとは戦争になるのか? 蝦夷・千島・樺太の領有は徳川家になるのか? それともオロシャになるのか? 西洋帆船は導入されるのか? 幕府は開国に踏み切れるのか? アイヌとの関係はどうなるのか? 幕府を裏切り異国と手を結ぶ藩は現れるのか?

対米戦、準備せよ!

湖灯
歴史・時代
大本営から特命を受けてサイパン島に視察に訪れた柏原総一郎大尉は、絶体絶命の危機に過去に移動する。 そして21世紀からタイムリーㇷ゚して過去の世界にやって来た、柳生義正と結城薫出会う。 3人は協力して悲惨な負け方をした太平洋戦争に勝つために様々な施策を試みる。 小説家になろうで、先行配信中!

もし石田三成が島津義弘の意見に耳を傾けていたら

俣彦
歴史・時代
慶長5年9月14日。 赤坂に到着した徳川家康を狙うべく夜襲を提案する宇喜多秀家と島津義弘。 史実では、これを退けた石田三成でありましたが……。 もしここで彼らの意見に耳を傾けていたら……。

土方歳三ら、西南戦争に参戦す

山家
歴史・時代
 榎本艦隊北上せず。  それによって、戊辰戦争の流れが変わり、五稜郭の戦いは起こらず、土方歳三は戊辰戦争の戦野を生き延びることになった。  生き延びた土方歳三は、北の大地に屯田兵として赴き、明治初期を生き抜く。  また、五稜郭の戦い等で散った他の多くの男達も、史実と違えた人生を送ることになった。  そして、台湾出兵に土方歳三は赴いた後、西南戦争が勃発する。  土方歳三は屯田兵として、そして幕府歩兵隊の末裔といえる海兵隊の一員として、西南戦争に赴く。  そして、北の大地で再生された誠の旗を掲げる土方歳三の周囲には、かつての新選組の仲間、永倉新八、斎藤一、島田魁らが集い、共に戦おうとしており、他にも男達が集っていた。 (「小説家になろう」に投稿している「新選組、西南戦争へ」の加筆修正版です) 

征空決戦艦隊 ~多載空母打撃群 出撃!~

蒼 飛雲
歴史・時代
 ワシントン軍縮条約、さらにそれに続くロンドン軍縮条約によって帝国海軍は米英に対して砲戦力ならびに水雷戦力において、決定的とも言える劣勢に立たされてしまう。  その差を補うため、帝国海軍は航空戦力にその活路を見出す。  そして、昭和一六年一二月八日。  日本は米英蘭に対して宣戦を布告。  未曾有の国難を救うべく、帝国海軍の艨艟たちは抜錨。  多数の艦上機を搭載した新鋭空母群もまた、強大な敵に立ち向かっていく。

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

大東亜戦争を有利に

ゆみすけ
歴史・時代
 日本は大東亜戦争に負けた、完敗であった。 そこから架空戦記なるものが増殖する。 しかしおもしろくない、つまらない。 であるから自分なりに無双日本軍を架空戦記に参戦させました。 主観満載のラノベ戦記ですから、ご感弁を

処理中です...