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天使の困惑~sideシェラ~
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なんだか、ふわふわする。
ふふっ、母様の抱っこみたいで懐かしい。
ガタゴト ガタゴト
「ん⋯、あ、れ⋯?ここ、どこ⋯?」
「シェラ!はぁ、よかった、目が覚めたか?」
「ライアス殿下⋯?」
僕が見慣れない天井をぼんやり眺めていると、殿下は不安そうに、僕の顔を覗き込んできた。
「僕、ライアス殿下の部屋にいたのに⋯」
「シェラ、すまなかった。俺の加減が効かずに、シェラはベッドで気を失ったんだ。ここは王家の馬車の中だ。もうすぐ伯爵家の屋敷に着く」
「気を失った?あっ、確かハグの練習をしてて、ライアス殿下とベッドで抱き合って⋯、あれ?それからどうなったんだっけ??」
僕が頭の中に残る記憶を少しずつ辿っていると、殿下は目を見開いて僕を見てきた。
「シェラとベッドで⋯、抱き合う⋯。うっ!」
殿下が何やらおかしな声を出すので、僕は天井から殿下に視線を移した。すると殿下は少し前かがみになって、僕からすーっと目を逸らした。
「ライアス殿下、大丈夫ですか?」
「あ、ああ、ちょっと刺激が強かっただけだ」
「刺激、ですか?」
刺激なんて何も感じないのに。むしろずっとふわふわしてて、心地いいくらいだ。
「シェラ、気分はどうだ?」
「はい。もう大丈夫です。あれっ⋯?僕、ライアス殿下に抱っこされてますか?」
僕はようやく、自分が殿下に抱き抱えられている事に気づいた。
「あっ、すいません。殿下の上だったなんて、すぐに降ります」
僕が慌てて殿下の上から退こうとすると、殿下は僕が動けないように、抱き締めている腕に力を込めた。
「駄目だ。降りる事は許さん」
「は、離してください。このままでは、不敬になってしまいます」
「不敬?大切な恋人を抱っこしてるだけなのに、どうして不敬になるんだ?いいから、じっとしていろ」
「で、でも⋯」
「はぁ⋯」
殿下から溜め息をつかれて、また叱られると思い、僕は怖くて殿下から顔を逸らして、目をきつく閉じた。
「シェラ⋯、俺が怖いか?」
少しの沈黙の後、殿下の落ち込んだような声が聞こえてきて、僕はそっと目を開いた。
殿下は肩をがっくりと落とし、眉尻を下げて今にも泣き出しそうな顔をしていた。
「殿下⋯?」
「俺は昔から、シェラを見ると、冷静でいられなくなる。それでつい、きつい態度を取ってしまうが、あれは俺の本心ではないんだ。シェラ、信じてくれ」
殿下は申し訳なさそうに、僕を見つめてそう言った。
でも、信じてくれと言われても、子供の頃から刷り込まれた殿下のイメージは、そう簡単には覆らない。
「僕、ライアス殿下に、叱られた記憶しかありません」
「ぐっ⋯、反省している」
「本心ではないと言われても、うぅん⋯、優しいライアス殿下を想像できません」
「なっ!?だから、違うんだ!」
耳元で殿下の大きな声を聞いて、僕の肩はビクッと跳ねた。
「ああっ、すまない、シェラ。言ったそばからこれだ。俺は子供の頃から何も成長できてないな」
殿下は、まるで大型犬が叱られた時のように、しゅんと小さくなった。
ライアス殿下は、本当に反省してるみたいだ。
たとえフリだとしても、恋人役の僕に少しでも歩み寄ろうとしてるのかもしれない。
無理矢理感は否めないけど、恋人役を引き受けたからには、僕も殿下の事を信じてみようと思った。
「僕、ライアス殿下を信じます。殿下、これから恋人(役)として、よろしくお願いします」
僕はライアス殿下を見つめ、できるだけ柔らかな笑顔を作って、殿下に微笑んだ。
すると殿下の体が、ガタガタと震え出した。
「わわっ、殿下!?」
「シェ、シェラーーー!!好きだーーー!!!」
「えっ?ぐえっ!」
僕は殿下から骨が軋程力いっぱい抱き締められ、また気を失いそうになった。
殿下は必死に僕に謝りながら、お詫びに何か贈り物をしたいからと、半ば強引に城下に行く約束をさせられた。
ふふっ、母様の抱っこみたいで懐かしい。
ガタゴト ガタゴト
「ん⋯、あ、れ⋯?ここ、どこ⋯?」
「シェラ!はぁ、よかった、目が覚めたか?」
「ライアス殿下⋯?」
僕が見慣れない天井をぼんやり眺めていると、殿下は不安そうに、僕の顔を覗き込んできた。
「僕、ライアス殿下の部屋にいたのに⋯」
「シェラ、すまなかった。俺の加減が効かずに、シェラはベッドで気を失ったんだ。ここは王家の馬車の中だ。もうすぐ伯爵家の屋敷に着く」
「気を失った?あっ、確かハグの練習をしてて、ライアス殿下とベッドで抱き合って⋯、あれ?それからどうなったんだっけ??」
僕が頭の中に残る記憶を少しずつ辿っていると、殿下は目を見開いて僕を見てきた。
「シェラとベッドで⋯、抱き合う⋯。うっ!」
殿下が何やらおかしな声を出すので、僕は天井から殿下に視線を移した。すると殿下は少し前かがみになって、僕からすーっと目を逸らした。
「ライアス殿下、大丈夫ですか?」
「あ、ああ、ちょっと刺激が強かっただけだ」
「刺激、ですか?」
刺激なんて何も感じないのに。むしろずっとふわふわしてて、心地いいくらいだ。
「シェラ、気分はどうだ?」
「はい。もう大丈夫です。あれっ⋯?僕、ライアス殿下に抱っこされてますか?」
僕はようやく、自分が殿下に抱き抱えられている事に気づいた。
「あっ、すいません。殿下の上だったなんて、すぐに降ります」
僕が慌てて殿下の上から退こうとすると、殿下は僕が動けないように、抱き締めている腕に力を込めた。
「駄目だ。降りる事は許さん」
「は、離してください。このままでは、不敬になってしまいます」
「不敬?大切な恋人を抱っこしてるだけなのに、どうして不敬になるんだ?いいから、じっとしていろ」
「で、でも⋯」
「はぁ⋯」
殿下から溜め息をつかれて、また叱られると思い、僕は怖くて殿下から顔を逸らして、目をきつく閉じた。
「シェラ⋯、俺が怖いか?」
少しの沈黙の後、殿下の落ち込んだような声が聞こえてきて、僕はそっと目を開いた。
殿下は肩をがっくりと落とし、眉尻を下げて今にも泣き出しそうな顔をしていた。
「殿下⋯?」
「俺は昔から、シェラを見ると、冷静でいられなくなる。それでつい、きつい態度を取ってしまうが、あれは俺の本心ではないんだ。シェラ、信じてくれ」
殿下は申し訳なさそうに、僕を見つめてそう言った。
でも、信じてくれと言われても、子供の頃から刷り込まれた殿下のイメージは、そう簡単には覆らない。
「僕、ライアス殿下に、叱られた記憶しかありません」
「ぐっ⋯、反省している」
「本心ではないと言われても、うぅん⋯、優しいライアス殿下を想像できません」
「なっ!?だから、違うんだ!」
耳元で殿下の大きな声を聞いて、僕の肩はビクッと跳ねた。
「ああっ、すまない、シェラ。言ったそばからこれだ。俺は子供の頃から何も成長できてないな」
殿下は、まるで大型犬が叱られた時のように、しゅんと小さくなった。
ライアス殿下は、本当に反省してるみたいだ。
たとえフリだとしても、恋人役の僕に少しでも歩み寄ろうとしてるのかもしれない。
無理矢理感は否めないけど、恋人役を引き受けたからには、僕も殿下の事を信じてみようと思った。
「僕、ライアス殿下を信じます。殿下、これから恋人(役)として、よろしくお願いします」
僕はライアス殿下を見つめ、できるだけ柔らかな笑顔を作って、殿下に微笑んだ。
すると殿下の体が、ガタガタと震え出した。
「わわっ、殿下!?」
「シェ、シェラーーー!!好きだーーー!!!」
「えっ?ぐえっ!」
僕は殿下から骨が軋程力いっぱい抱き締められ、また気を失いそうになった。
殿下は必死に僕に謝りながら、お詫びに何か贈り物をしたいからと、半ば強引に城下に行く約束をさせられた。
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