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07:春の神社で(2)
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風に乗って運ばれてきた薄紅の花びらが、目の前を横切り、誘うようだ。
吸い寄せられるように桜の前に立ち、満開の花を見上げる。と。
「芳谷美緒?」
突然、名前を呼ばれた。
びっくりして振り返ると、晴れた青空の下、金髪の少年が立っていた。
さきほど自分を見ていた少年だ。
改めてきちんと見れば、思わず呼吸を忘れるほどに美しい少年だった。
金髪だと思っていたが、それは陽の光によるもので、本当は淡い茶色らしい。
切れ長の金色の瞳は強い意志を秘め、美緒を射抜いている。
服装はフード付きのパーカーとジャケットにデニムのスラックス。
良く似合っているが、彼ならば何を着ても似合うだろう。
(誰だろう?)
即座に知り合いの名前を脳内に列挙してみたが、該当するような人物はいない。
これほどの美形、よほどのことがない限り忘れないと思うのだが。
「はい、そうですけど……あなたは?」
少年はようやく当たりを引いた、とでもいうように、軽く顎を引いた。
「朝陽《あさひ》。狐坂《こさか》朝陽と名乗っている。銀太の兄だ」
表情を動かさずに朝陽は言った。
「えっ?」
美緒は目を丸くして、拝殿を見た。
これぞ神の御導きとでもいうべきか。
まさか願って一分と経たずに銀太に繋がる人物に会えるとは。
「えっ、じゃあ――」
あなたも狐なんですかと聞きかけて止めた。無意味な質問だ。
狐の兄が人間であるわけがない。
朝陽は狐の耳も尻尾も隠し、上手に人に化けているのだろう。
「じゃあ?」
朝陽が促してきた。
「あ、いえ。初めまして、朝陽さん」
どぎまぎしながら会釈する一方で、急速に鼓動は早まっていた。
美緒はもう七年も銀太を待った。
今日は会いに来てくれるだろうか――期待しては裏切られ、ため息をついたこれまでの日々を思う。
もしも銀太に会えたらどれだけ待たせるんだと怒ってやろうと思っていた。
つんと顎を反らして、剥れてみせようと。
でも、いざその機会を得てみれば、そんなことは頭から吹き飛んだ。
また会える、その喜びと期待で胸がいっぱいだ。
「銀太くんにはお世話になりました。もう七年も前のことになりますけど……銀太くんはいまどうしてるんですか?」
逸る気持ちを抑えて、朝陽に歩み寄る。
銀太が笑ったときに覗く八重歯が見たい。
あの優しい笑顔をもう一度――
「銀太は一年前に死んだ」
「…………え」
端的に告げられた言葉は、思考の全てを奪った。
吸い寄せられるように桜の前に立ち、満開の花を見上げる。と。
「芳谷美緒?」
突然、名前を呼ばれた。
びっくりして振り返ると、晴れた青空の下、金髪の少年が立っていた。
さきほど自分を見ていた少年だ。
改めてきちんと見れば、思わず呼吸を忘れるほどに美しい少年だった。
金髪だと思っていたが、それは陽の光によるもので、本当は淡い茶色らしい。
切れ長の金色の瞳は強い意志を秘め、美緒を射抜いている。
服装はフード付きのパーカーとジャケットにデニムのスラックス。
良く似合っているが、彼ならば何を着ても似合うだろう。
(誰だろう?)
即座に知り合いの名前を脳内に列挙してみたが、該当するような人物はいない。
これほどの美形、よほどのことがない限り忘れないと思うのだが。
「はい、そうですけど……あなたは?」
少年はようやく当たりを引いた、とでもいうように、軽く顎を引いた。
「朝陽《あさひ》。狐坂《こさか》朝陽と名乗っている。銀太の兄だ」
表情を動かさずに朝陽は言った。
「えっ?」
美緒は目を丸くして、拝殿を見た。
これぞ神の御導きとでもいうべきか。
まさか願って一分と経たずに銀太に繋がる人物に会えるとは。
「えっ、じゃあ――」
あなたも狐なんですかと聞きかけて止めた。無意味な質問だ。
狐の兄が人間であるわけがない。
朝陽は狐の耳も尻尾も隠し、上手に人に化けているのだろう。
「じゃあ?」
朝陽が促してきた。
「あ、いえ。初めまして、朝陽さん」
どぎまぎしながら会釈する一方で、急速に鼓動は早まっていた。
美緒はもう七年も銀太を待った。
今日は会いに来てくれるだろうか――期待しては裏切られ、ため息をついたこれまでの日々を思う。
もしも銀太に会えたらどれだけ待たせるんだと怒ってやろうと思っていた。
つんと顎を反らして、剥れてみせようと。
でも、いざその機会を得てみれば、そんなことは頭から吹き飛んだ。
また会える、その喜びと期待で胸がいっぱいだ。
「銀太くんにはお世話になりました。もう七年も前のことになりますけど……銀太くんはいまどうしてるんですか?」
逸る気持ちを抑えて、朝陽に歩み寄る。
銀太が笑ったときに覗く八重歯が見たい。
あの優しい笑顔をもう一度――
「銀太は一年前に死んだ」
「…………え」
端的に告げられた言葉は、思考の全てを奪った。
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