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40:雀のお宿
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「ねえ朝陽くん、ここどこ?」
「ヨガクレの北東にある温泉街だ。あの橋の向こうに旅館があるだろう」
振り返れば、緩やかな弧を描く橋の向こうに立派な旅館が立っていた。
瓦屋根の木造建築で、五階建て。
「……旅館にしては大きすぎない? お城かと思った」
実はアトラクション施設です、と言われても納得してしまいそうだ。
「あれが尾裂狐《おさきぎつね》が運営する老舗の温泉旅館、『尾裂屋』。他にも色んな旅館があるけど、一番の名物はあそこだな。でも美緒が喜びそうなのはあっち」
朝陽が指した場所には旅館がいくつかあったが、示したい建物は一目でわかった。
デフォルメされた可愛らしい雀の像がでんと屋根の上に鎮座する妙な建物がある。
「……遠目だってことを差し引いても、『尾裂屋』に比べて随分と小さいね?」
というか、そもそも人間が入れそうにないサイズだ。
「小動物のための宿?」
「ああ。あれは雀のお宿だ」
「雀のお宿!? 『舌切り雀』に出てきたやつ!? 中に入ったら豪華な食事が出て来て雀が歌や踊りで歓迎してくれるの!? 最後には大小のつづらの選択が待ってたりする!?」
食いついた美緒に、朝陽は首を傾げた。
「そこまでのサービスはやってないと思うけど。でも、泊まりたいと予約したら特別な丸薬をくれる。それを飲めばどんなあやかしも一日限定で雀になる」
「いやああああ何それ行きたい!! 一日雀体験したい空飛んでみたい!!」
大興奮して言うと、声を上げて朝陽が笑った。
「良枝さんも雀になったらしいよ」
「ええええおばあちゃんずるい! わたしも雀になりたい! 行こういま行こうすぐ行こう!!」
「違うでしょうが」
元気良く歩き出した美緒は、むんずと首根っこを掴まれ、大きくのけ反った。
さかさまになった視界に姫子の仏頂面が映る。
「目的を忘れないで。あたしたちがヨガクレに来たのは雀になるためじゃなくて霊草を手に入れるためでしょ! 雀は関係ない、いま全くちっとも関係ないから!!」
「でも……でも……雀……」
雀になれるという朝陽の言葉はあまりにも魅力的すぎた。
雀たちが周りを飛び回って『いらっしゃい。私たちと一緒に空を飛びましょう』と誘う幻覚すら見える。
「ええいやかましい! 行くわよ!!」
「ああああ……」
美緒は華奢な外見に似合わず怪力な姫子に引きずられ、泣く泣く一日雀体験を諦めたのだった。
「ヨガクレの北東にある温泉街だ。あの橋の向こうに旅館があるだろう」
振り返れば、緩やかな弧を描く橋の向こうに立派な旅館が立っていた。
瓦屋根の木造建築で、五階建て。
「……旅館にしては大きすぎない? お城かと思った」
実はアトラクション施設です、と言われても納得してしまいそうだ。
「あれが尾裂狐《おさきぎつね》が運営する老舗の温泉旅館、『尾裂屋』。他にも色んな旅館があるけど、一番の名物はあそこだな。でも美緒が喜びそうなのはあっち」
朝陽が指した場所には旅館がいくつかあったが、示したい建物は一目でわかった。
デフォルメされた可愛らしい雀の像がでんと屋根の上に鎮座する妙な建物がある。
「……遠目だってことを差し引いても、『尾裂屋』に比べて随分と小さいね?」
というか、そもそも人間が入れそうにないサイズだ。
「小動物のための宿?」
「ああ。あれは雀のお宿だ」
「雀のお宿!? 『舌切り雀』に出てきたやつ!? 中に入ったら豪華な食事が出て来て雀が歌や踊りで歓迎してくれるの!? 最後には大小のつづらの選択が待ってたりする!?」
食いついた美緒に、朝陽は首を傾げた。
「そこまでのサービスはやってないと思うけど。でも、泊まりたいと予約したら特別な丸薬をくれる。それを飲めばどんなあやかしも一日限定で雀になる」
「いやああああ何それ行きたい!! 一日雀体験したい空飛んでみたい!!」
大興奮して言うと、声を上げて朝陽が笑った。
「良枝さんも雀になったらしいよ」
「ええええおばあちゃんずるい! わたしも雀になりたい! 行こういま行こうすぐ行こう!!」
「違うでしょうが」
元気良く歩き出した美緒は、むんずと首根っこを掴まれ、大きくのけ反った。
さかさまになった視界に姫子の仏頂面が映る。
「目的を忘れないで。あたしたちがヨガクレに来たのは雀になるためじゃなくて霊草を手に入れるためでしょ! 雀は関係ない、いま全くちっとも関係ないから!!」
「でも……でも……雀……」
雀になれるという朝陽の言葉はあまりにも魅力的すぎた。
雀たちが周りを飛び回って『いらっしゃい。私たちと一緒に空を飛びましょう』と誘う幻覚すら見える。
「ええいやかましい! 行くわよ!!」
「ああああ……」
美緒は華奢な外見に似合わず怪力な姫子に引きずられ、泣く泣く一日雀体験を諦めたのだった。
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