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53:招き猫の依頼(1)
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(違うんです。ご心配なさらずとも、朝陽くんとわたしは純粋に友達なので、彼は現在フリーです。ただし正体は狐なので、恋愛対象としては考えないほうが良いんじゃないかと思います。というのも、姫子ちゃんと彼が夜に話していたとき、人間と恋愛をするつもりはないって言ってたの聞いちゃったんですよ。いえ決して盗み聞きじゃありません。わたしがテレビを見てる横で堂々と話してるんですもの、聞こえちゃうじゃないですか。もしあなたが愛に種族は関係ない、狐であろうと愛し抜くと誓えるなら姫子ちゃんみたいに猛アピールしたら振り向く可能性はなきにしもあらずなので、頑張ってみたらいいんじゃないでしょうか。その場合、わたしは潔く身を引きますし、朝陽くんの家財道具一式をお渡ししますので、これからはあなたが養ってあげてくださいね――)
「何をぶつぶつ言ってるんだ? 遠い目をして」
「はっ」
いつの間にか口に出していたらしい。
現実に帰還すると、美緒は通りを歩いていた。
昨日の入学式の朝、姫子が鞄を振り回していた住宅街である。
(あ。あのおばあさん、昨日もいた)
美緒は小さな家の前にいる老婆に目を留めた。
玄関先でハルジオンを見下ろし、ため息をついていた老婆は、今日はたんぽぽを右手に持っている。
「……もう。なんだっていうのかしらね」
老婆は薄気味悪そうに眉をひそめてたんぽぽを落とし、こちらに背を向け、家に戻って行った。
「?」
どうも様子がおかしい。
あのハルジオンやたんぽぽは、自分で摘んだものではないのだろうか。
「美緒。銀太。あれ」
銀太と揃って、美緒は朝陽が指さした方向を見た。
老婆が立っていた場所から少し離れた縁側の前に、奇妙な猫がいた。
猫というにはデフォルメが効きすぎた、ずんぐりむっくりな二・五等身の身体。
上向きに半円を描いた細い目。
基本色は白で、右耳が淡い茶色、左耳が濃い茶色のぶち猫だ。
首には赤い首輪と鈴をつけており、体長は十センチほどしかない。
手のひらにも乗ってしまいそうなミニサイズである。
断じて普通の猫ではない。あやかしだ。
「今日も笑ってくれないかあ。困ったなあ……どんな花をあげれば笑うのかな……やっぱり雑草じゃダメか……でも盗んだら犯罪だしなあ……」
独りごちていた猫(?)は、家の前で立ち止まっている朝陽と美緒を見て、身体を硬直させた。
猫が釘付けになっているのは朝陽の左袖から覗く、赤い紐。
「あなたぁ!!」
猫は身体の割に小さすぎる足を懸命に動かして走り、朝陽の足に縋りついた。
「その紐を持っているということはあやかし相談員ですね? ボクいまとっても困ってるんですよ! 助けてください!」
「何をぶつぶつ言ってるんだ? 遠い目をして」
「はっ」
いつの間にか口に出していたらしい。
現実に帰還すると、美緒は通りを歩いていた。
昨日の入学式の朝、姫子が鞄を振り回していた住宅街である。
(あ。あのおばあさん、昨日もいた)
美緒は小さな家の前にいる老婆に目を留めた。
玄関先でハルジオンを見下ろし、ため息をついていた老婆は、今日はたんぽぽを右手に持っている。
「……もう。なんだっていうのかしらね」
老婆は薄気味悪そうに眉をひそめてたんぽぽを落とし、こちらに背を向け、家に戻って行った。
「?」
どうも様子がおかしい。
あのハルジオンやたんぽぽは、自分で摘んだものではないのだろうか。
「美緒。銀太。あれ」
銀太と揃って、美緒は朝陽が指さした方向を見た。
老婆が立っていた場所から少し離れた縁側の前に、奇妙な猫がいた。
猫というにはデフォルメが効きすぎた、ずんぐりむっくりな二・五等身の身体。
上向きに半円を描いた細い目。
基本色は白で、右耳が淡い茶色、左耳が濃い茶色のぶち猫だ。
首には赤い首輪と鈴をつけており、体長は十センチほどしかない。
手のひらにも乗ってしまいそうなミニサイズである。
断じて普通の猫ではない。あやかしだ。
「今日も笑ってくれないかあ。困ったなあ……どんな花をあげれば笑うのかな……やっぱり雑草じゃダメか……でも盗んだら犯罪だしなあ……」
独りごちていた猫(?)は、家の前で立ち止まっている朝陽と美緒を見て、身体を硬直させた。
猫が釘付けになっているのは朝陽の左袖から覗く、赤い紐。
「あなたぁ!!」
猫は身体の割に小さすぎる足を懸命に動かして走り、朝陽の足に縋りついた。
「その紐を持っているということはあやかし相談員ですね? ボクいまとっても困ってるんですよ! 助けてください!」
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