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55:招き猫の依頼(3)
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「おばあさんも美緒さんみたいに見える人だったら良かったんですけどねぇ。そしたら、ボクが直接声をかけて、慰めたりできるんですけど。ないものねだりをしたところで仕方ありませんし、どうにかおばあさんと接点を作って、励ましてあげてもらえないでしょうか」
猫は朝陽の手のひらに前足をつき、ぺこっと頭を下げた。
朝陽はしばらく猫の後頭部を見つめていた。
わかった、とも、嫌だ、とも言わない。
怒っても笑ってもいない、無表情。
たまに見る顔だ。何かを真剣に考えているときの顔。
「お兄ちゃん?」
銀太がいまだ頭を垂れている猫を気遣って、返答を促す。
どうしたんだろう、と美緒が思っていると、朝陽はおもむろに口を開いた。
「……銀太、美緒の肩に移動して」
「え? うん」
銀太が跳躍し、美緒の肩に移動する。
朝陽は手のひらサイズの猫を足元に下ろして、辺りを見回した。
誰も見ていないのを確認してから、ぽんっと白い煙を噴き上げて狐に転じる。
「わあ、朝陽さんって本当に狐だったんですねえ。化けるのがお上手なんですねえ」
猫が感心したように言ったが、美緒はその行動が理解できずに尋ねた。
「朝陽くん、どうしたのいきなり」
まさか純粋に猫を喜ばせるために変身したわけでもないだろう。
「おれの霊力をこいつにやる」
「ええっ!?」
朝陽以外の驚く声が唱和した。
猫など地面から一センチ飛び上がっている。
「そ、そんなことできるんですか!?」
猫は着地するなり、朝陽に詰め寄った。
「できる。狐は霊力のコントロールが抜群に上手いからな」
「でもお兄ちゃん! そんなことしたら衰弱しちゃうよ! 人間で言うなら生命力をあげるようなものじゃない! 危ないよ!」
銀太が美緒の肩から飛び降り、猫と朝陽の間に割り込んで訴えた。
「……朝陽くん。危ないんだったら――」
「大丈夫。全部じゃなくて、ある程度を与えるだけだから」
朝陽はかぶりを振って、美緒の発言を押しとどめた。
毅然とした口調から余計な介入を拒んでいるのが伝わって来て、美緒は口をつぐむしかない。
「おれが持つ霊力の、そうだな、半分くらいやれば存在感が増して気づけるようになるだろ。よっぽど鈍い人間じゃない限り」
「……でも……半分って……」
「大丈夫だって。心配いらない」
朝陽は前足で銀太の身体を叩く真似をした。
「……。信じるよ?」
渋々、といった様子で銀太が身を引くと、猫は再び朝陽と距離を詰めた。
「本当に良いんですか?」
「ああ。おばあさんと話してみたいんだろ?」
「はい! おばあさんとおじいさんはボクの大好きなご主人様なんです! お願いします、どうかボクにおばあさんと話すチャンスをください!!」
猫が平伏する。
「わかった」
朝陽は地面に座り、両前足で猫に触れた。
朝陽の身体が淡い光に包まれ、その光は前足から猫へと伝わり、猫の身体が光り出す。
数秒して、朝陽は前足を下ろした。
「どうだ?」
声は普段通りに聞こえた。
狐の姿なので顔色が悪いのかどうかも判断がつかない。
(大丈夫なのかな……)
朝陽の意思を尊重して見守りつつも、美緒は不安で仕方なかった。
「凄いです! これならおばあさんも気づいてくれそうです! ありがとうございます、朝陽さん!」
淡い光に包まれた猫は頭を下げ、歓喜を表すようにその場で一回転し、それから家へと突進していった。
玄関の扉を透過して中に入り、そのまま見えなくなる。
「おばあさん! おばあさん! ボクのことが見えますか!?」
家の中から猫の声がする。
数十秒が経ち、猫が玄関の扉から出てきた。
猫は朝陽の手のひらに前足をつき、ぺこっと頭を下げた。
朝陽はしばらく猫の後頭部を見つめていた。
わかった、とも、嫌だ、とも言わない。
怒っても笑ってもいない、無表情。
たまに見る顔だ。何かを真剣に考えているときの顔。
「お兄ちゃん?」
銀太がいまだ頭を垂れている猫を気遣って、返答を促す。
どうしたんだろう、と美緒が思っていると、朝陽はおもむろに口を開いた。
「……銀太、美緒の肩に移動して」
「え? うん」
銀太が跳躍し、美緒の肩に移動する。
朝陽は手のひらサイズの猫を足元に下ろして、辺りを見回した。
誰も見ていないのを確認してから、ぽんっと白い煙を噴き上げて狐に転じる。
「わあ、朝陽さんって本当に狐だったんですねえ。化けるのがお上手なんですねえ」
猫が感心したように言ったが、美緒はその行動が理解できずに尋ねた。
「朝陽くん、どうしたのいきなり」
まさか純粋に猫を喜ばせるために変身したわけでもないだろう。
「おれの霊力をこいつにやる」
「ええっ!?」
朝陽以外の驚く声が唱和した。
猫など地面から一センチ飛び上がっている。
「そ、そんなことできるんですか!?」
猫は着地するなり、朝陽に詰め寄った。
「できる。狐は霊力のコントロールが抜群に上手いからな」
「でもお兄ちゃん! そんなことしたら衰弱しちゃうよ! 人間で言うなら生命力をあげるようなものじゃない! 危ないよ!」
銀太が美緒の肩から飛び降り、猫と朝陽の間に割り込んで訴えた。
「……朝陽くん。危ないんだったら――」
「大丈夫。全部じゃなくて、ある程度を与えるだけだから」
朝陽はかぶりを振って、美緒の発言を押しとどめた。
毅然とした口調から余計な介入を拒んでいるのが伝わって来て、美緒は口をつぐむしかない。
「おれが持つ霊力の、そうだな、半分くらいやれば存在感が増して気づけるようになるだろ。よっぽど鈍い人間じゃない限り」
「……でも……半分って……」
「大丈夫だって。心配いらない」
朝陽は前足で銀太の身体を叩く真似をした。
「……。信じるよ?」
渋々、といった様子で銀太が身を引くと、猫は再び朝陽と距離を詰めた。
「本当に良いんですか?」
「ああ。おばあさんと話してみたいんだろ?」
「はい! おばあさんとおじいさんはボクの大好きなご主人様なんです! お願いします、どうかボクにおばあさんと話すチャンスをください!!」
猫が平伏する。
「わかった」
朝陽は地面に座り、両前足で猫に触れた。
朝陽の身体が淡い光に包まれ、その光は前足から猫へと伝わり、猫の身体が光り出す。
数秒して、朝陽は前足を下ろした。
「どうだ?」
声は普段通りに聞こえた。
狐の姿なので顔色が悪いのかどうかも判断がつかない。
(大丈夫なのかな……)
朝陽の意思を尊重して見守りつつも、美緒は不安で仕方なかった。
「凄いです! これならおばあさんも気づいてくれそうです! ありがとうございます、朝陽さん!」
淡い光に包まれた猫は頭を下げ、歓喜を表すようにその場で一回転し、それから家へと突進していった。
玄関の扉を透過して中に入り、そのまま見えなくなる。
「おばあさん! おばあさん! ボクのことが見えますか!?」
家の中から猫の声がする。
数十秒が経ち、猫が玄関の扉から出てきた。
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