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72:大鬼の招待(4)
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(……屋敷の花を咲かせてほしいっていうのは建前で、屋敷の門をくぐった途端、わたしは大鬼もしくは、その手下たちにボコボコにされるんじゃ……?)
「……無理にとは言わないよ? 大鬼と君のおばあ様の関係を知る烏丸様も、どうしても嫌なら断っても構わないと仰っていた。もらった金なら返せばいいし、何より美緒ちゃんにそんな顔をさせるのは辛い」
黒田は美緒の右手を取り、顔を近づけてきた。
キラキラした光が彼の周囲を取り巻いているように見える。
これがイケメンオーラというやつか。
烏天狗たちはまたか、という顔をしているだけで、誰も諫めようとはしない。
黒田が美緒にこういう思わせぶりな言動をするのは日常茶飯事なのである。
美緒は左手を上げてそこら中弾けまくる光の粒子を防ぎながら言った。
「いえ、大丈夫です。一度引き受けたものを断ったら、烏丸様の信用にも関わるでしょう? 烏丸様はたとえ大鬼の意図がどうであれ、ヨガクレで働き続けたいというのなら、困難から逃げずに立ち向かえ、と仰りたいんだと思うんです」
「それはそうだけど……俺は美緒ちゃんのほうが心配だ」
黒田は眉尻を下げた。
「大丈夫です。純粋にわたしの働きぶりが気に入ってくださったと信じて、行ってみます! 危なかったら即逃げます! わたし、逃げ足だけは早いんです! 中学では陸上部でしたから!」
どんなに足が速くても、鬼という人外に追いかけられて逃げ切れるとは思わなかったが、黒田を安心させるためにそう言う。
黒田は他の烏天狗たちと違って、一度も人間だからと差別しなかった。
嘘か本当かわからない甘い言葉を囁き、隙あらば口説こうとしてくるのは勘弁してほしかったが、それでも優しくしてくれたのは確かで、好きか嫌いかと問われたら好きだと即答できる。
「……わかった。じゃあ、大鬼の屋敷まで運んであげるよ」
「ありがとうございます」
「あの」
と、朝陽が会話に割り込んできた。
「おれもついていっていいですか。おれの担当区域は姫子に任せるので」
「え、でも。姫子ちゃんが大変じゃ」
「いいから。朝陽の担当区域の桜はあたしがきっちり咲かせておく。その代わり、ちゃんと無事に帰ってこないと承知しないからね。数学のプリントでわからない問題もあるし、あんたたちにいなくなられちゃ困るのよ」
姫子は朝陽と美緒を交互に見て、腰に手を当てた。
こういうとき、心配そうな顔をせず、素直に「無事に帰って来てね」と言えないのが姫子らしくて、
「うん!」
美緒は笑って頷いた。
朝陽がついてきてくれるなら、こんなに心強いことはない。
心の中でもやもやと膨れ上がっていた不安の雲は消え去り、何があっても大丈夫だと、そう思えた。
「……無理にとは言わないよ? 大鬼と君のおばあ様の関係を知る烏丸様も、どうしても嫌なら断っても構わないと仰っていた。もらった金なら返せばいいし、何より美緒ちゃんにそんな顔をさせるのは辛い」
黒田は美緒の右手を取り、顔を近づけてきた。
キラキラした光が彼の周囲を取り巻いているように見える。
これがイケメンオーラというやつか。
烏天狗たちはまたか、という顔をしているだけで、誰も諫めようとはしない。
黒田が美緒にこういう思わせぶりな言動をするのは日常茶飯事なのである。
美緒は左手を上げてそこら中弾けまくる光の粒子を防ぎながら言った。
「いえ、大丈夫です。一度引き受けたものを断ったら、烏丸様の信用にも関わるでしょう? 烏丸様はたとえ大鬼の意図がどうであれ、ヨガクレで働き続けたいというのなら、困難から逃げずに立ち向かえ、と仰りたいんだと思うんです」
「それはそうだけど……俺は美緒ちゃんのほうが心配だ」
黒田は眉尻を下げた。
「大丈夫です。純粋にわたしの働きぶりが気に入ってくださったと信じて、行ってみます! 危なかったら即逃げます! わたし、逃げ足だけは早いんです! 中学では陸上部でしたから!」
どんなに足が速くても、鬼という人外に追いかけられて逃げ切れるとは思わなかったが、黒田を安心させるためにそう言う。
黒田は他の烏天狗たちと違って、一度も人間だからと差別しなかった。
嘘か本当かわからない甘い言葉を囁き、隙あらば口説こうとしてくるのは勘弁してほしかったが、それでも優しくしてくれたのは確かで、好きか嫌いかと問われたら好きだと即答できる。
「……わかった。じゃあ、大鬼の屋敷まで運んであげるよ」
「ありがとうございます」
「あの」
と、朝陽が会話に割り込んできた。
「おれもついていっていいですか。おれの担当区域は姫子に任せるので」
「え、でも。姫子ちゃんが大変じゃ」
「いいから。朝陽の担当区域の桜はあたしがきっちり咲かせておく。その代わり、ちゃんと無事に帰ってこないと承知しないからね。数学のプリントでわからない問題もあるし、あんたたちにいなくなられちゃ困るのよ」
姫子は朝陽と美緒を交互に見て、腰に手を当てた。
こういうとき、心配そうな顔をせず、素直に「無事に帰って来てね」と言えないのが姫子らしくて、
「うん!」
美緒は笑って頷いた。
朝陽がついてきてくれるなら、こんなに心強いことはない。
心の中でもやもやと膨れ上がっていた不安の雲は消え去り、何があっても大丈夫だと、そう思えた。
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