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95:心強い味方
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「明日まで待って。それまでに必ず枝垂桜を説得してみせると伝えてもらえないかな。茨様のために素晴らしい花を咲かせてもらう。約束するから!」
朝陽は探るような眼差しで美緒を見つめた。
目を逸らさずにいると、朝陽はようやく頷いた。
「……明日までだな。わかった」
朝陽はふいっと背中を向けて、廊下を引き返していった。
遠い背中を見つめて唇を噛む。
足音がした。体重の軽い子どもの足音が近づいてくる。
「……屋敷に充満してる香が原因よ。茨が出入りの貿易商から買ったの。うんと東の町から取り寄せた一点ものとかで、あの香を吸い込んだあやかしは茨の虜になる。嗅覚に優れた狐なら、毒が回るのも早いわ」
紅雪は美緒の隣で止まり、顔を伏せた。
「なんで早く教えなかったとか言わないでよね。茨に雇われてここにきたからには敵だと思ってたし、その、みんな不幸になれとか、やけになってたし――」
「うん。わかってる、大丈夫。紅雪ちゃんのせいじゃないよ。悪いのは茨だもの」
去り際に紅雪の肩を叩いてから、美緒は夜霧に歩み寄り、軽く頭を下げた。
「まだいてくださってありがとうございます」
「ええ? まあ……うん」
恨み言ではなく礼を言われるのは心外だったらしく、夜霧は戸惑っている。
「取引をしたいんです。あなたの目的はお金なんでしょう? 茨があなたにいくら払ったのかわかりませんが、わたしはその倍支払います。だから寝返ってください」
真顔で言うと、夜霧は苦笑した。
「はは。面白いことを言うね。美緒ちゃんたちは金貨3枚も払えないから働いてたんでしょうに。今回茨がボクに払おうとしてたのは金貨5枚だよ? その倍の10枚を、どうやって払うの?」
「茨が将来わたしに払う慰謝料で」
「へ」
目を瞬いた夜霧に、美緒はうっすらと微笑んだ。
「最悪な嫌がらせを受けたんです、慰謝料を請求するのは当然の権利でしょう? わたしは調子に乗った大鬼を玉座から叩き落とし、相応の報いを受けさせます。必ず」
決意を込めて断言する。
「わたしには何の力もありませんが、心強い味方がいます。彼らに頼れば勝算はあります。――ね、銀太くん。来てくれて本当にありがとう」
身体ごと、屋敷のほうへ向き直る。
ちょうどそのタイミングで、縁側の下の暗闇から一匹の狐が姿を表した。
「ううん、どういたしまして。なんだかよくわからないけど、大変なことになってるみたいだね。来て良かったよ」
立ち塞がる高い石垣も、分厚い門も、万物をすり抜けられる幽霊の銀太には何の障害にもならない。
とことこと可愛らしく四つ足を動かし、尻尾を揺らしながら歩いてきた銀太に、美緒は心からの笑みを浮かべ、しゃがんで頭を撫でた。
朝陽は探るような眼差しで美緒を見つめた。
目を逸らさずにいると、朝陽はようやく頷いた。
「……明日までだな。わかった」
朝陽はふいっと背中を向けて、廊下を引き返していった。
遠い背中を見つめて唇を噛む。
足音がした。体重の軽い子どもの足音が近づいてくる。
「……屋敷に充満してる香が原因よ。茨が出入りの貿易商から買ったの。うんと東の町から取り寄せた一点ものとかで、あの香を吸い込んだあやかしは茨の虜になる。嗅覚に優れた狐なら、毒が回るのも早いわ」
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「なんで早く教えなかったとか言わないでよね。茨に雇われてここにきたからには敵だと思ってたし、その、みんな不幸になれとか、やけになってたし――」
「うん。わかってる、大丈夫。紅雪ちゃんのせいじゃないよ。悪いのは茨だもの」
去り際に紅雪の肩を叩いてから、美緒は夜霧に歩み寄り、軽く頭を下げた。
「まだいてくださってありがとうございます」
「ええ? まあ……うん」
恨み言ではなく礼を言われるのは心外だったらしく、夜霧は戸惑っている。
「取引をしたいんです。あなたの目的はお金なんでしょう? 茨があなたにいくら払ったのかわかりませんが、わたしはその倍支払います。だから寝返ってください」
真顔で言うと、夜霧は苦笑した。
「はは。面白いことを言うね。美緒ちゃんたちは金貨3枚も払えないから働いてたんでしょうに。今回茨がボクに払おうとしてたのは金貨5枚だよ? その倍の10枚を、どうやって払うの?」
「茨が将来わたしに払う慰謝料で」
「へ」
目を瞬いた夜霧に、美緒はうっすらと微笑んだ。
「最悪な嫌がらせを受けたんです、慰謝料を請求するのは当然の権利でしょう? わたしは調子に乗った大鬼を玉座から叩き落とし、相応の報いを受けさせます。必ず」
決意を込めて断言する。
「わたしには何の力もありませんが、心強い味方がいます。彼らに頼れば勝算はあります。――ね、銀太くん。来てくれて本当にありがとう」
身体ごと、屋敷のほうへ向き直る。
ちょうどそのタイミングで、縁側の下の暗闇から一匹の狐が姿を表した。
「ううん、どういたしまして。なんだかよくわからないけど、大変なことになってるみたいだね。来て良かったよ」
立ち塞がる高い石垣も、分厚い門も、万物をすり抜けられる幽霊の銀太には何の障害にもならない。
とことこと可愛らしく四つ足を動かし、尻尾を揺らしながら歩いてきた銀太に、美緒は心からの笑みを浮かべ、しゃがんで頭を撫でた。
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