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126:天狐は舞い、そして新たな幕が開く(3)
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「お兄ちゃん、いままで本当にありがとう。ぼくはお兄ちゃんの弟で本当に幸せだったよ。お兄ちゃんはこれまでぼくのことばっかりで、自分を犠牲にしてまで尽くしてくれたけど、これからは自分が幸せになることだけ考えてね。美緒と幸せになってね」
「ああ」
朝陽が目を細め、頷いた。
「じゃあね、お兄ちゃん、美緒。また会えるって信じてるから」
「うん」
もし朝陽と破局したら、などと、無粋なことは言わない。
いまはただ、優しい奇跡を信じていたいから。
「ばいばい。またね」
手を振る二人の身体は他の幽霊たちと同じように溶け崩れて光の粒子となり、空高く昇って行った。
美緒と朝陽は空を仰いだ。
どちらからともなく手を繋ぎ、金色の光が見えなくなるまで、いつまでも、いつまでも。
「芳谷美緒!」
金色の光が見えなくなり、首を下げたところで唐突に名前を呼ばれた。
びっくりして見上げると、アマネが櫓の端に立ち、こちらを見下ろしていた。
あやかしたちが何事かという顔でこちらを見ている。
「行って来い」
朝陽が囁いて、繋いでいた手を離した。
美緒は無数のあやかしたちの視線に晒され、緊張しながら櫓に続く階段を上り、アマネの前に立った。
アマネは櫓の周囲に群がるあやかしたちを見回しながら声を張り上げた。
「この者は、かの有名な良枝の孫の美緒である! 美緒はかつての良枝と同じように、悪しき大鬼を成敗し、ヨガクレのために尽力してくれた! よってその功績を讃え、ここにあやかし相談員の証を授け、ヨガクレの名誉住人に認定する!」
あやかしたちがどよめく。
呆けていると、アマネは恭しく頭を垂れた篝から赤い紐を受け取り、美緒に向き直った。
「効き手は右だったな。左手を出しなさい」
「は、はい」
慌てて左袖をまくり上げて差し出すと、アマネは美緒の左手首に紐を巻きつけながら言った。
「一つ種明かしをしよう。なんでもお見通しと言ったがあれは嘘じゃ。わらわは銀太に霊力を分け与えたじゃろう。銀太の目を通してお主たちのことを見ておったのじゃよ」
「え」
「わらわも万能ではない。ヨガクレに住むあやかしたち全員の現状を逐一把握しておったら、情報量で頭がパンクしてしまうわ」
左手首に紐をつけ終えて、アマネは笑い、すぐに表情を引き締めた。
「しかし、万能ではないが、それに近いことはできる。じゃから、わらわは本来、何があっても介入すべきではないのだ。ヨガクレにおいてわらわの力はあまりに強すぎる。出しゃばると独裁者になりかねん。それはわらわの本意ではない」
アマネはゆるゆるとかぶりを振り、美緒の目をその目で射た。
「お主もあやかし相談員となったのだから、問題があれば自分で解決しなさい。本当に困ったときだけわらわに頼るように」
「はい」
美緒は左手首の紐に手をかけ、頷き、微笑んだ。
「ああ」
朝陽が目を細め、頷いた。
「じゃあね、お兄ちゃん、美緒。また会えるって信じてるから」
「うん」
もし朝陽と破局したら、などと、無粋なことは言わない。
いまはただ、優しい奇跡を信じていたいから。
「ばいばい。またね」
手を振る二人の身体は他の幽霊たちと同じように溶け崩れて光の粒子となり、空高く昇って行った。
美緒と朝陽は空を仰いだ。
どちらからともなく手を繋ぎ、金色の光が見えなくなるまで、いつまでも、いつまでも。
「芳谷美緒!」
金色の光が見えなくなり、首を下げたところで唐突に名前を呼ばれた。
びっくりして見上げると、アマネが櫓の端に立ち、こちらを見下ろしていた。
あやかしたちが何事かという顔でこちらを見ている。
「行って来い」
朝陽が囁いて、繋いでいた手を離した。
美緒は無数のあやかしたちの視線に晒され、緊張しながら櫓に続く階段を上り、アマネの前に立った。
アマネは櫓の周囲に群がるあやかしたちを見回しながら声を張り上げた。
「この者は、かの有名な良枝の孫の美緒である! 美緒はかつての良枝と同じように、悪しき大鬼を成敗し、ヨガクレのために尽力してくれた! よってその功績を讃え、ここにあやかし相談員の証を授け、ヨガクレの名誉住人に認定する!」
あやかしたちがどよめく。
呆けていると、アマネは恭しく頭を垂れた篝から赤い紐を受け取り、美緒に向き直った。
「効き手は右だったな。左手を出しなさい」
「は、はい」
慌てて左袖をまくり上げて差し出すと、アマネは美緒の左手首に紐を巻きつけながら言った。
「一つ種明かしをしよう。なんでもお見通しと言ったがあれは嘘じゃ。わらわは銀太に霊力を分け与えたじゃろう。銀太の目を通してお主たちのことを見ておったのじゃよ」
「え」
「わらわも万能ではない。ヨガクレに住むあやかしたち全員の現状を逐一把握しておったら、情報量で頭がパンクしてしまうわ」
左手首に紐をつけ終えて、アマネは笑い、すぐに表情を引き締めた。
「しかし、万能ではないが、それに近いことはできる。じゃから、わらわは本来、何があっても介入すべきではないのだ。ヨガクレにおいてわらわの力はあまりに強すぎる。出しゃばると独裁者になりかねん。それはわらわの本意ではない」
アマネはゆるゆるとかぶりを振り、美緒の目をその目で射た。
「お主もあやかし相談員となったのだから、問題があれば自分で解決しなさい。本当に困ったときだけわらわに頼るように」
「はい」
美緒は左手首の紐に手をかけ、頷き、微笑んだ。
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