50 / 52
50:おめでとうをあなたに
しおりを挟む
「はいっ。というわけで! ユリウス婚約おめでとー!!」
『おめでとう!!』「おめでとうございます!!」
夜。
ずらりと料理が並べられた食卓を囲み、全員が乾杯した。
「……いやそれはいいんだけど、なんであんたが乾杯の音頭を取るのよ?」
乾杯の音頭を取り終えて隣に座ったジオに、ルーシェは顔を向けた。
「この面子で盛り上げられるのはオレしかいなくねーか?」
「……まあそうね」
納得して、ルーシェは葡萄酒を飲んだ。
ルーシェはお酒が苦手なので、二口ほど飲んだ残りは全部ジオに飲んでもらった。
「皆、ありがとう……と言っても、実際に結婚するのは二年後の予定だが」
上座に座るユリウスはどこか照れくさそうだ。
「十五歳じゃ若すぎるもんなー。法律的には問題ねーけど、ユリウスが少女趣味だと思われちまう」
「でも、エマ様はいますぐでも構わないと仰ったのでは? 覚悟が決まっておられますし」
セラはふふっと笑った。
「……よくわかったな。その通りだ。だが、やはりエマは若すぎるし、数年経って結婚適齢期を迎える頃には心変わりをするかもしれないからな」
「またそんなことを仰って……」
セラは顔を曇らせたが、ユリウスは安心させるように微笑んでかぶりを振った。
「だから、俺も努力しようと思う。彼女の心が離れないように」
「…………」
ルーシェは驚いた。
恋愛に否定的だったユリウスがこんな発言をするのは初めてだった。
「……変わったな、ユリウス」
ジオが笑う。それは、思いがけないほど優しい笑顔だった。
「まあな。自分より四つも年下の少女にあれだけまっすぐに好きだと言われたら、負けを認めるしかない」
ユリウスは苦笑した。
「いい加減過去に囚われるのは止めて前を向こうと思う。そう思えるようになったのはエマと、ここにいる皆のおかげだ。ありがとう。いままで心配をかけてしまってすまなかった。でも、もう大丈夫だ」
そう言ったユリウスの表情は、まるで雨上がりの空のように晴れやかだった。
「……いまのお言葉、ノエル様に聞かせて差し上げたかったです。一番喜ばれたでしょうに……」
セラはハンカチを目に押し当てた。
「大げさだな。さあ、みんな食べよう。せっかく作ってくれた料理が冷めてしまう」
「はい!」
ユリウスに促され、セラは笑顔で頷いたが。
「ごめんユーリ、おれは少し席を外す。みんなは気にせず食べててくれ」
リュオンは立ち上がり、食堂を出て行った。
「?」
不思議には思ったものの、体調が悪いとかそういうわけではなさそうなので、ルーシェは残された皆と歓談した。
それから二十分ほど後。
「あれ」
と、セラとユリウスが喋っている途中で唐突に、ジオが何かに気づいたような声を上げた。
「どうした?」
セラとユリウスが揃ってジオを見つめる。
「いや。すぐわかるよ」
ジオは何故か笑っている。
やがて、開けっ放しの扉からリュオンが戻ってきた。
深い緑色の軍服を着た銀髪の少年もリュオンに続いて食堂に入ってくる。
「みんな、久しぶり」
笑顔で片手をあげたノエルを見て、
「ええええ!?」
「ノエル!?」
ジオを除く全員が驚愕して立ち上がった。
「リュオンが連れてきてくれたのね!?」
「ああ。王都には行ったことがあるからな」
喜んでいるセラの頭を撫でてリュオンは微笑んだ。
長距離転移魔法で転移できる場所は『過去に行ったことがある場所』か『予め長距離転移用の魔法陣が描かれている場所』に限られる。
この場合は前者だったらしい。
「でも、ノエル、仕事は? 今日は休日だったの?」
ルーシェは困惑して尋ねた。
「いや、一時間だけ休みを貰ってきたんだよ。ぼくの部下は優秀だから、一時間くらいいなくなったって大丈夫。それより兄さん、婚約おめでとう!!」
ノエルは兄に駆け寄って抱きついた。
「あ、ああ、ありがとう……」
まだ現実が信じられないらしく、ユリウスは目を白黒させながら弟を抱き返した。
「良かった、本当に良かった。過去はもうどうしようもないけれど、やっと未来に目を向けられるようになったんだね。一時は本当に、どうなることかと……」
「なんだ、泣いてるのかノエル。お前も大げさだな」
「だって……」
目を擦る弟を見てユリウスは苦笑し、柔らかな声で言った。
「夕食がまだなら一緒に食べないか? 今日はな、ここにいる皆が俺のために料理を作ってくれたんだ――」
『おめでとう!!』「おめでとうございます!!」
夜。
ずらりと料理が並べられた食卓を囲み、全員が乾杯した。
「……いやそれはいいんだけど、なんであんたが乾杯の音頭を取るのよ?」
乾杯の音頭を取り終えて隣に座ったジオに、ルーシェは顔を向けた。
「この面子で盛り上げられるのはオレしかいなくねーか?」
「……まあそうね」
納得して、ルーシェは葡萄酒を飲んだ。
ルーシェはお酒が苦手なので、二口ほど飲んだ残りは全部ジオに飲んでもらった。
「皆、ありがとう……と言っても、実際に結婚するのは二年後の予定だが」
上座に座るユリウスはどこか照れくさそうだ。
「十五歳じゃ若すぎるもんなー。法律的には問題ねーけど、ユリウスが少女趣味だと思われちまう」
「でも、エマ様はいますぐでも構わないと仰ったのでは? 覚悟が決まっておられますし」
セラはふふっと笑った。
「……よくわかったな。その通りだ。だが、やはりエマは若すぎるし、数年経って結婚適齢期を迎える頃には心変わりをするかもしれないからな」
「またそんなことを仰って……」
セラは顔を曇らせたが、ユリウスは安心させるように微笑んでかぶりを振った。
「だから、俺も努力しようと思う。彼女の心が離れないように」
「…………」
ルーシェは驚いた。
恋愛に否定的だったユリウスがこんな発言をするのは初めてだった。
「……変わったな、ユリウス」
ジオが笑う。それは、思いがけないほど優しい笑顔だった。
「まあな。自分より四つも年下の少女にあれだけまっすぐに好きだと言われたら、負けを認めるしかない」
ユリウスは苦笑した。
「いい加減過去に囚われるのは止めて前を向こうと思う。そう思えるようになったのはエマと、ここにいる皆のおかげだ。ありがとう。いままで心配をかけてしまってすまなかった。でも、もう大丈夫だ」
そう言ったユリウスの表情は、まるで雨上がりの空のように晴れやかだった。
「……いまのお言葉、ノエル様に聞かせて差し上げたかったです。一番喜ばれたでしょうに……」
セラはハンカチを目に押し当てた。
「大げさだな。さあ、みんな食べよう。せっかく作ってくれた料理が冷めてしまう」
「はい!」
ユリウスに促され、セラは笑顔で頷いたが。
「ごめんユーリ、おれは少し席を外す。みんなは気にせず食べててくれ」
リュオンは立ち上がり、食堂を出て行った。
「?」
不思議には思ったものの、体調が悪いとかそういうわけではなさそうなので、ルーシェは残された皆と歓談した。
それから二十分ほど後。
「あれ」
と、セラとユリウスが喋っている途中で唐突に、ジオが何かに気づいたような声を上げた。
「どうした?」
セラとユリウスが揃ってジオを見つめる。
「いや。すぐわかるよ」
ジオは何故か笑っている。
やがて、開けっ放しの扉からリュオンが戻ってきた。
深い緑色の軍服を着た銀髪の少年もリュオンに続いて食堂に入ってくる。
「みんな、久しぶり」
笑顔で片手をあげたノエルを見て、
「ええええ!?」
「ノエル!?」
ジオを除く全員が驚愕して立ち上がった。
「リュオンが連れてきてくれたのね!?」
「ああ。王都には行ったことがあるからな」
喜んでいるセラの頭を撫でてリュオンは微笑んだ。
長距離転移魔法で転移できる場所は『過去に行ったことがある場所』か『予め長距離転移用の魔法陣が描かれている場所』に限られる。
この場合は前者だったらしい。
「でも、ノエル、仕事は? 今日は休日だったの?」
ルーシェは困惑して尋ねた。
「いや、一時間だけ休みを貰ってきたんだよ。ぼくの部下は優秀だから、一時間くらいいなくなったって大丈夫。それより兄さん、婚約おめでとう!!」
ノエルは兄に駆け寄って抱きついた。
「あ、ああ、ありがとう……」
まだ現実が信じられないらしく、ユリウスは目を白黒させながら弟を抱き返した。
「良かった、本当に良かった。過去はもうどうしようもないけれど、やっと未来に目を向けられるようになったんだね。一時は本当に、どうなることかと……」
「なんだ、泣いてるのかノエル。お前も大げさだな」
「だって……」
目を擦る弟を見てユリウスは苦笑し、柔らかな声で言った。
「夕食がまだなら一緒に食べないか? 今日はな、ここにいる皆が俺のために料理を作ってくれたんだ――」
202
あなたにおすすめの小説
何もしない公爵夫人ですが、なぜか屋敷がうまく回っています
鷹 綾
恋愛
辺境公爵カーネル・クリスの妻となったフィレ・バーナード。
けれど彼女は、屋敷を仕切ることも、改革を行うことも、声高に意見を述べることもしなかった。
指示を出さない。
判断を奪わない。
必要以上に関わらない。
「何もしない夫人」として、ただ静かにそこにいるだけ。
それなのに――
いつの間にか屋敷は落ち着き、
使用人たちは迷わなくなり、
人は出入りし、戻り、また進んでいくようになる。
誰かに依存しない。
誰かを支配しない。
それでも確かに“安心できる場所”は、彼女の周りに残っていた。
必要とされなくてもいい。
役に立たなくてもいい。
それでも、ここにいていい。
これは、
「何もしない」ことで壊れなかった関係と、
「奪わない」ことで続いていった日常を描く、
静かでやさしい結婚生活の物語。
婚約破棄で悪役令嬢を辞めたので、今日から素で生きます。
黒猫かの
恋愛
「エリー・オルブライト! 貴様との婚約を破棄する!」
豪華絢爛な夜会で、ウィルフレッド王子から突きつけられた非情な宣告。
しかし、公爵令嬢エリーの心境は……「よっしゃあ! やっと喋れるわ!!」だった。
【本編完結済み】二人は常に手を繋ぐ
もも野はち助
恋愛
【あらすじ】6歳になると受けさせられる魔力測定で、微弱の初級魔法しか使えないと判定された子爵令嬢のロナリアは、魔法学園に入学出来ない事で落胆していた。すると母レナリアが気分転換にと、自分の親友宅へとロナリアを連れ出す。そこで出会った同年齢の伯爵家三男リュカスも魔法が使えないという判定を受け、酷く落ち込んでいた。そんな似た境遇の二人はお互いを慰め合っていると、ひょんなことからロナリアと接している時だけ、リュカスが上級魔法限定で使える事が分かり、二人は翌年7歳になると一緒に王立魔法学園に通える事となる。この物語は、そんな二人が手を繋ぎながら成長していくお話。
※魔法設定有りですが、対人で使用する展開はございません。ですが魔獣にぶっ放してる時があります。
★本編は16話完結済み★
番外編は今後も更新を追加する可能性が高いですが、2024年2月現在は切りの良いところまで書きあげている為、作品を一度完結処理しております。
※尚『小説家になろう』でも投稿している作品になります。
一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました
しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、
「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。
――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。
試験会場を間違え、隣の建物で行われていた
特級厨師試験に合格してしまったのだ。
気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの
“超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。
一方、学院首席で一級魔法使いとなった
ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに――
「なんで料理で一番になってるのよ!?
あの女、魔法より料理の方が強くない!?」
すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、
天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。
そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、
少しずつ距離を縮めていく。
魔法で国を守る最強魔術師。
料理で国を救う特級厨師。
――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、
ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。
すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚!
笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。
【完結】エレクトラの婚約者
buchi
恋愛
しっかり者だが自己評価低めのエレクトラ。婚約相手は年下の美少年。迷うわー
エレクトラは、平凡な伯爵令嬢。
父の再婚で家に乗り込んできた義母と義姉たちにいいようにあしらわれ、困り果てていた。
そこへ父がエレクトラに縁談を持ち込むが、二歳年下の少年で爵位もなければ金持ちでもない。
エレクトラは悩むが、義母は借金のカタにエレクトラに別な縁談を押し付けてきた。
もう自立するわ!とエレクトラは親友の王弟殿下の娘の侍女になろうと決意を固めるが……
11万字とちょっと長め。
謙虚過ぎる性格のエレクトラと、優しいけど訳アリの高貴な三人の女友達、実は執着強めの天才肌の婚約予定者、扱いに困る義母と義姉が出てきます。暇つぶしにどうぞ。
タグにざまぁが付いていますが、義母や義姉たちが命に別状があったり、とことんひどいことになるザマァではないです。
まあ、そうなるよね〜みたいな因果応報的なざまぁです。
王命により、婚約破棄されました。
緋田鞠
恋愛
魔王誕生に対抗するため、異界から聖女が召喚された。アストリッドは結婚を翌月に控えていたが、婚約者のオリヴェルが、聖女の指名により独身男性のみが所属する魔王討伐隊の一員に選ばれてしまった。その結果、王命によって二人の婚約が破棄される。運命として受け入れ、世界の安寧を祈るため、修道院に身を寄せて二年。久しぶりに再会したオリヴェルは、以前と変わらず、アストリッドに微笑みかけた。「私は、長年の約束を違えるつもりはないよ」。
3回目の人生は、悪役令嬢を辞めて引きこもります~一歩も出ずに国を救ったら、なぜか「聖女」として崇められ最強の男たちが部屋を包囲してくる件~
放浪人
恋愛
公爵令嬢エリザベートは、1度目は悪役令嬢として断罪され処刑、2度目は改心して聖女となり国に尽くしたが過労死……という悲惨な最期を遂げた。 記憶を持ったまま3度目の人生が始まった瞬間、彼女は固く決意する。 「もう絶対に働きません! 今世は部屋から一歩も出ず、睡眠と趣味に命をかけます!」
最強の拒絶結界『絶対領域』で部屋に籠城し、婚約破棄イベントも夜会も全て無視して惰眠を貪ろうとするエリザベート。 しかし、彼女の「働きたくない」一心からの行動――適当な農業アドバイスや、安眠妨害への容赦ない迎撃――が、周囲には「国を憂う深慮遠謀」「慈愛に満ちた奇跡」として超好意的に解釈されてしまう!?
ヤンデレ化した元婚約者の王太子、物理で愛を語る脳筋騎士団長、効率厨の隣国王子、さらには古代の引きこもり少年までをも巻き込み、事態は国家規模の大騒動へ。 部屋ごと空を飛んで戦場を浄化し、パジャマ姿で古代兵器を操り、地下牢をスイートルームに変えながら、エリザベートは究極の安眠を手に入れることができるのか? 塩対応すればするほど愛され、逃げれば逃げるほど伝説になる、最強引きこもり令嬢の勘違いドタバタ溺愛ファンタジー、ここに完結!
【完結】亡くなった婚約者の弟と婚約させられたけど⋯⋯【正しい婚約破棄計画】
との
恋愛
「彼が亡くなった?」
突然の悲報に青褪めたライラは婚約者の葬儀の直後、彼の弟と婚約させられてしまった。
「あり得ないわ⋯⋯あんな粗野で自分勝手な奴と婚約だなんて!
家の為だからと言われても、優しかった婚約者の面影が消えないうちに決めるなんて耐えられない」
次々に変わる恋人を腕に抱いて暴言を吐く新婚約者に苛立ちが募っていく。
家と会社の不正、生徒会での横領事件。
「わたくしは⋯⋯完全なる婚約破棄を準備致します!」
『彼』がいるから、そして『彼』がいたから⋯⋯ずっと前を向いていられる。
人が亡くなるシーンの描写がちょっとあります。グロくはないと思います⋯⋯。
ーーーーーー
ゆるふわの中世ヨーロッパ、幻の国の設定です。
完結迄予約投稿済。
R15は念の為・・
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる