虐げられた聖女は精霊王国で溺愛される~追放されたら、剣聖と大魔導師がついてきた~

星名柚花

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23:エヴァside(3)

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「どうなさったんですか聖女様、怖いお顔をされて」
 付き添っている村人の一人に声をかけられて、私ははっと我に返った。

「いいえ、なんでもありませんわ」
 軽く咳払いして、優しい微笑みを浮かべてみせる。

 ふわふわと波打つ金髪。ぱっちりとした大きな菫色の瞳。
 薔薇色の唇に、磁器の如く艶やかな肌。

 私は抜群の美女だ。幼いころから周囲の人間を虜にしてきた自負がある。

『天使の微笑み』と万人に讃えられる微笑を向けられた村人はポッと頬を染めた。
 他の村人たちも陶酔したような顔で私を見ている。

 表には出さなかったものの、私は村人たちの反応に満足した。

 ――この私に微笑まれたことを光栄に思いなさい。

 何といっても私はレニール様の婚約者。
 一年後はレニール様の妃となり、いずれ国母となるのだから!

 薄汚れた農民たちと共に居るのは苦痛だけど、頑張って愛想を振りまかなくては。
 民草に愛される王妃を目指さなければね。

「そ、それなら良かったです。これをご覧ください」
 村人たちは広大な麦畑の前で立ち止まり、そこに生えていた麦の一つを摘まんでみせた。
 顔を近づけて見れば、その麦は一部が変色していた。
 周りにある麦もそうだ。このままだと遠からず枯れ果ててしまうだろう。

「まあ……報告書で読んだ通りのようですね。なんでも、数日前から麦だけではなく、村中の農作物が枯れ始めているとか……」
「はい。こんなこと、いままでありませんでした」
「是非とも聖女様の力を貸してくだせえ」
「麦はこの村の重要な財源なんです。このまま枯れちまえば税が払えず、ワシら全員領主様にお叱りを受けちまう」
「どうか奇跡の力で私どもをお救いください」
「もちろんです。そのために私はここへ来たのですから」
 ニッコリ微笑み、視線だけで辺りを見回す。

 麦畑がある辺り一帯は、うっすらと赤い瘴気に覆われている。
 赤い瘴気は、動植物に害を成す『悪いもの』だ。
 いくら聖女が浄化しても、どこからともなく発生する瘴気は悪魔王がこの世界に放った呪いとも言われている。

 私はその場に跪いた。
 服が土で汚れるのは嫌だったけれど、立ったまま祈るなんて聖女らしくない。
 恭しく跪き、頭を垂れるのが女神の敬虔な信徒としての正しい姿だ。
 私は胸の前で手を組み、目を閉じた。

 ――女神レムリアよ、どうか私に瘴気を祓う力を与えたまえ。

 身体中に神秘の力が漲っていくのを感じる。
 蓄積された力が最大値に達したと思ったその瞬間、私は力を解き放った。
 解き放たれた力は眩い金色の光を放ち、辺り一帯の瘴気を浄化すると同時に麦を蘇らせた。はずだった。
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