虐げられた聖女は精霊王国で溺愛される~追放されたら、剣聖と大魔導師がついてきた~

星名柚花

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43:様子がおかしい理由は(1)

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「……。またそんな危ないことを……」
 フィルディス様は片手で額を押さえ、ため息をついた。

「すみません。言ったら止められると思いまして。でも、ご覧の通り、今回は何事もなく無事でしたから。悪魔王を封じた結晶には歴代の聖女たちの祈りが糸のように絡みついていたのです。例えるのは難しいですが、私はそれを編み込んで、こう……網のように広げて、結晶をきつく縛り上げたんです」
 身振り手振りを加えて説明する。

「私が封印を成し遂げられたのは過去の聖女様たちのおかげなのですよ」
「そうかもしれないが、バラバラだった聖女たちの力を一つにまとめ上げたのは紛れもなくリーリエだろう。リーリエは本当に凄いな。よく頑張った」
 フィルディス様は片手を上げかけて、すぐに下ろした。

 ……あれ?
 いま確かにフィルディス様は私に触れようとしたはずなのに、どうして止めてしまったのだろう。

「あ、あの……」
 少し迷ってから、思い切って言う。

「何かご褒美をいただけませんか?」
「ご褒美?」
 フィルディス様は少し驚いたように眉を上げた。

「珍しいな、リーリエがそんなことを言いだすなんて。何が欲しいんだ? おれが買えるようなものならいいんだが」
「いえ、物が欲しいわけではないんです。ラザード様は衣食住の全てを保証してくださっていますし、ドレスも靴も衣装部屋にたくさんあります。これ以上はもう入りません」
「じゃあ、おれに何を望んでるんだ?」
「……その……頭を撫でるとか、抱きしめるとか――い、いえ、抱きしめていただくなんて、それはさすがにやりすぎですよね! すみません、忘れてください!」
 頬が熱くなるのを感じながら両手を振る。
 精霊たちが視界の端で戯れに抱き合っているのを見て、つられて大胆なことを口走ってしまった。

「中庭で抱きしめるのはちょっとな。人目があるし」
 フィルディス様はちらりと中庭の隅を見た。
 だいぶ距離が開いているけれど、そこには厳めしい顔つきをした警備中の兵士が立っている。

「他人に妙な誤解をされるような行為は慎むべきだ。リーリエは噂の的になっていることを自覚したほうが良い。悪魔王を封印したとなると、これからはより多くの――大げさでも何でもなく、国中の人がリーリエの一挙手一投足に注目することだろう。中には尊敬や好意ではなく、嫉妬や敵意を抱く者も現れるはずだ。言動には注意してくれ」
「……はい」
 フィルディス様の言葉は全くの正論だ。
 私のためを思っての忠告なのだから、素直に聞くべきだとわかっている。

 ……わかってはいるのだけれど。
 甘えるな、自分の身は自分で守れと、突き放されているようで寂しい。
『よく頑張った』という言葉はもらえたのだから、それ以上のご褒美を求めるなんて贅沢が過ぎたのかしら。
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