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60:魔法スクロール(2)
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「うん。これまで散々ぼくの目の前でいちゃついておいて、やっぱり王子様と結婚するからお前はもう用済みでーすさようならーとか、そんなふざけた話、あってたまるかって感じだもんね。いやあ、リーリエが選択肢を間違えなくて良かったよ。もしそんなことになってたら……ふふ」
何ですかその暗黒の笑顔は!?
ルーク様と結婚します、なんて言っていたら、私は《黒の森》に送られるより酷い目に遭っていたのでは!?
「まあ、無かった未来の話をしても無意味だよね。これからもフィルのことをよろしくね? 末永く」
「もちろんです。フィルディス様のことは、私が必ず幸せにします」
私は真顔で言った。
もうエミリオ様がどんな圧を放っても揺るがない。
私の決意は伝わったらしく、エミリオ様はじっと私を見つめ――ようやく、微笑んだ。
「うん。フィルを幸せにしてくれるならいい。それでこそ、命がけで救った甲斐があったってものだ」
その言葉にほっと胸を撫でおろしたのも束の間、エミリオ様はふと思い出したように軽い口調で続けた。
「ところでさ、フィルに余計なことを吹き込んで落ち込ませた羽虫たち。あいつら、全部焼き払ってもいいよね?」
「それだけはどうかご容赦ください!!」
慌てふためく私をエミリオ様は面白そうに眺め、懐から何かを取り出した。
それは、複雑な魔導式と魔法陣が描かれた紙片だった。
「これ、あげるよ。魔導師以外でも魔法を使用することができる消費型の魔法道具で、魔法スクロールっていうんだってさ。『賢者の塔』で実物を貰ったから、見様見真似で作ってみた。あまり高出力にすると危ないかなと思って、とりあえず『猛烈な風を起こす』くらいの威力にしといた。護身用にはなるはずだよ。フィルにもまた今度同じものを作ってあげるつもり」
「ありがとうございます。実物を見てすぐに試作品を作れるとは、さすがは魔法の天才ですね……」
私は複雑極まりない紋様が描かれたスクロールを受け取り、感嘆した。
「でも、護身用とは。エミリオ様は私が誰かに狙われるとお考えなのですか?」
「そりゃあ世の中、どんな馬鹿がいるかわからないからね。フィル以外にもリーリエに惚れてる連中はたくさんいる。中には『俺のものにならないならいっそ!』とかやる馬鹿がいてもおかしくないでしょ? もしかしたらルーク様がやるかもよ? 表向きは物分かりの良い善人のふりをして、王太子である私の求婚を断るとはけしからん、私のプライドを傷つけた報いだ、死ねー! とかさ。これがレニールだったら絶対やるでしょ、アイツ」
「……認めたくはありませんが、やるでしょうね。プライドの高いお人でしたから」
他人は平気でないがしろにするくせに、自分がないがしろにされることは許さない人だったなあと、私は遠い目をした。
「でも、ルーク様はレニール様とは違いますよ。求婚を断ったからといって逆恨みされるようなお方ではないと思います。私はルーク様を信じます」
「あ。いまぼくのこと、ひねくれすぎじゃないかコイツ? って思ったでしょ」
「そんなことは……」
「いいんだよ、ぼくはそれで。リーリエもフィルもすぐに他人を信用するからね。物事を疑ってかかるのはぼくの役目なのさ。じゃあね」
「あっ、エミリオ様。急いでお部屋に戻ったほうが良いですよ」
私は去りゆくエミリオ様の背中に、今夜晩餐会の予定があることを告げた。
何ですかその暗黒の笑顔は!?
ルーク様と結婚します、なんて言っていたら、私は《黒の森》に送られるより酷い目に遭っていたのでは!?
「まあ、無かった未来の話をしても無意味だよね。これからもフィルのことをよろしくね? 末永く」
「もちろんです。フィルディス様のことは、私が必ず幸せにします」
私は真顔で言った。
もうエミリオ様がどんな圧を放っても揺るがない。
私の決意は伝わったらしく、エミリオ様はじっと私を見つめ――ようやく、微笑んだ。
「うん。フィルを幸せにしてくれるならいい。それでこそ、命がけで救った甲斐があったってものだ」
その言葉にほっと胸を撫でおろしたのも束の間、エミリオ様はふと思い出したように軽い口調で続けた。
「ところでさ、フィルに余計なことを吹き込んで落ち込ませた羽虫たち。あいつら、全部焼き払ってもいいよね?」
「それだけはどうかご容赦ください!!」
慌てふためく私をエミリオ様は面白そうに眺め、懐から何かを取り出した。
それは、複雑な魔導式と魔法陣が描かれた紙片だった。
「これ、あげるよ。魔導師以外でも魔法を使用することができる消費型の魔法道具で、魔法スクロールっていうんだってさ。『賢者の塔』で実物を貰ったから、見様見真似で作ってみた。あまり高出力にすると危ないかなと思って、とりあえず『猛烈な風を起こす』くらいの威力にしといた。護身用にはなるはずだよ。フィルにもまた今度同じものを作ってあげるつもり」
「ありがとうございます。実物を見てすぐに試作品を作れるとは、さすがは魔法の天才ですね……」
私は複雑極まりない紋様が描かれたスクロールを受け取り、感嘆した。
「でも、護身用とは。エミリオ様は私が誰かに狙われるとお考えなのですか?」
「そりゃあ世の中、どんな馬鹿がいるかわからないからね。フィル以外にもリーリエに惚れてる連中はたくさんいる。中には『俺のものにならないならいっそ!』とかやる馬鹿がいてもおかしくないでしょ? もしかしたらルーク様がやるかもよ? 表向きは物分かりの良い善人のふりをして、王太子である私の求婚を断るとはけしからん、私のプライドを傷つけた報いだ、死ねー! とかさ。これがレニールだったら絶対やるでしょ、アイツ」
「……認めたくはありませんが、やるでしょうね。プライドの高いお人でしたから」
他人は平気でないがしろにするくせに、自分がないがしろにされることは許さない人だったなあと、私は遠い目をした。
「でも、ルーク様はレニール様とは違いますよ。求婚を断ったからといって逆恨みされるようなお方ではないと思います。私はルーク様を信じます」
「あ。いまぼくのこと、ひねくれすぎじゃないかコイツ? って思ったでしょ」
「そんなことは……」
「いいんだよ、ぼくはそれで。リーリエもフィルもすぐに他人を信用するからね。物事を疑ってかかるのはぼくの役目なのさ。じゃあね」
「あっ、エミリオ様。急いでお部屋に戻ったほうが良いですよ」
私は去りゆくエミリオ様の背中に、今夜晩餐会の予定があることを告げた。
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