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22:狂気を感じるラブレター
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期末テストが終わり、夏休みまであと一週間を切った。
テストの結果は上々で、両親に褒められ、臨時のお小遣いまでゲットできた。
全ては有栖先輩たちのおかげだ。
入学時から常に学年トップの有栖先輩はテストの一週間前に『もうすぐテストだけど勉強会開いて欲しい人いる?』とLIMEで呼びかけてきた。
その呼びかけに対して一年の皆が応じた結果、先輩のマンションでは放課後連日勉強会が開かれることになった。
しかも豪華なお菓子や夕食つき。
高級マンションの15階から見る夜景は綺麗だった。
勉強が終わった後のゲーム大会も――ちなみにゲーム機器を持ってきたのは幸太くん――とても楽しかった。
モブとはいえ、私、この世界に転生できて良かった。
だって日記帳の一ページじゃ書き切れないくらい、毎日が充実してるもの。
七月の青空の下、私は涼しげな夏服の生徒たちに混じって上機嫌で校門を通り、昇降口へと向かっていた。
上機嫌の理由はもう一つある。
なんと昨日、拓馬が自力で冷奴《ひややっこ》を作ることに成功したのだ。
冷奴といえば豆腐を切って醤油、あるいはポン酢をかけるだけの超お手軽メニューだけど、とにかく拓馬の『触れた食材が腐る』という世にも奇妙な特異能力が発現しなくなりさえすればいい。
神さまが乃亜のためにかけた呪いとも思える、あの厄介極まりない能力さえ消え去ってしまえば、後は努力次第でどうにでもなる。
これから拓馬の料理の腕は飛躍的に上がっていくことだろう。
「ふふふー♪」
これはもはや歴史的快挙だ。革命だ。
苦節一ヶ月、私はついに拓馬の新しい未来を切り拓いた。
脳内で流している歌に合わせて左手に持った鞄を振りながら昇降口に入ると、靴箱の前で立ち尽くしている由香ちゃんを見つけた。
なんだか様子が変だ。
怯えたような、不安そうな目で自分の靴箱を見ている。
由香ちゃんは最近元気がない。
会話していても、沈黙した拍子にふと重いため息をついたり、物憂げな表情を見せる。
悩み事があるなら聞くよと言ったけれど、大丈夫とやんわり断られてしまったし。
もどかしい。
何かあるなら力になりたいのに。
由香ちゃんとは、そういう友達になりたいのに。
「おはよう、由香ちゃん」
早足で歩み寄る。
「あ、悠理ちゃん……おはよう」
由香ちゃんは弱々しく笑った。
あまり眠れていないのか、目の下にうっすらと隈がある。
「どうしたの? 靴、履き替えないの?」
「うん……」
由香ちゃんはためらいを見せてから、靴箱の蓋に手をかけた。
蓋が開いた途端、三通もの封筒がバラバラとすのこに落ち、一通は風に乗って由香ちゃんのローファーの上に落ちた。
差出人は同一人物らしく、どれも同じファンシーな熊の封筒で、裏側には赤いハートのシールが貼られてある。
古典的なハートのシールからして、差出人が何のために手紙を書いたのかは瞭然。
しかも由香ちゃんの靴箱の中の上履きには、まだいくつか封筒が乗っていた。
数えてみると、落ちた封筒と全部合わせて七通。
ここまでいくと狂気を感じる。
「…………」
由香ちゃんは足元に散らばる封筒を見て真っ青になり、ふらっ……とその小柄な身体を傾けた。
テストの結果は上々で、両親に褒められ、臨時のお小遣いまでゲットできた。
全ては有栖先輩たちのおかげだ。
入学時から常に学年トップの有栖先輩はテストの一週間前に『もうすぐテストだけど勉強会開いて欲しい人いる?』とLIMEで呼びかけてきた。
その呼びかけに対して一年の皆が応じた結果、先輩のマンションでは放課後連日勉強会が開かれることになった。
しかも豪華なお菓子や夕食つき。
高級マンションの15階から見る夜景は綺麗だった。
勉強が終わった後のゲーム大会も――ちなみにゲーム機器を持ってきたのは幸太くん――とても楽しかった。
モブとはいえ、私、この世界に転生できて良かった。
だって日記帳の一ページじゃ書き切れないくらい、毎日が充実してるもの。
七月の青空の下、私は涼しげな夏服の生徒たちに混じって上機嫌で校門を通り、昇降口へと向かっていた。
上機嫌の理由はもう一つある。
なんと昨日、拓馬が自力で冷奴《ひややっこ》を作ることに成功したのだ。
冷奴といえば豆腐を切って醤油、あるいはポン酢をかけるだけの超お手軽メニューだけど、とにかく拓馬の『触れた食材が腐る』という世にも奇妙な特異能力が発現しなくなりさえすればいい。
神さまが乃亜のためにかけた呪いとも思える、あの厄介極まりない能力さえ消え去ってしまえば、後は努力次第でどうにでもなる。
これから拓馬の料理の腕は飛躍的に上がっていくことだろう。
「ふふふー♪」
これはもはや歴史的快挙だ。革命だ。
苦節一ヶ月、私はついに拓馬の新しい未来を切り拓いた。
脳内で流している歌に合わせて左手に持った鞄を振りながら昇降口に入ると、靴箱の前で立ち尽くしている由香ちゃんを見つけた。
なんだか様子が変だ。
怯えたような、不安そうな目で自分の靴箱を見ている。
由香ちゃんは最近元気がない。
会話していても、沈黙した拍子にふと重いため息をついたり、物憂げな表情を見せる。
悩み事があるなら聞くよと言ったけれど、大丈夫とやんわり断られてしまったし。
もどかしい。
何かあるなら力になりたいのに。
由香ちゃんとは、そういう友達になりたいのに。
「おはよう、由香ちゃん」
早足で歩み寄る。
「あ、悠理ちゃん……おはよう」
由香ちゃんは弱々しく笑った。
あまり眠れていないのか、目の下にうっすらと隈がある。
「どうしたの? 靴、履き替えないの?」
「うん……」
由香ちゃんはためらいを見せてから、靴箱の蓋に手をかけた。
蓋が開いた途端、三通もの封筒がバラバラとすのこに落ち、一通は風に乗って由香ちゃんのローファーの上に落ちた。
差出人は同一人物らしく、どれも同じファンシーな熊の封筒で、裏側には赤いハートのシールが貼られてある。
古典的なハートのシールからして、差出人が何のために手紙を書いたのかは瞭然。
しかも由香ちゃんの靴箱の中の上履きには、まだいくつか封筒が乗っていた。
数えてみると、落ちた封筒と全部合わせて七通。
ここまでいくと狂気を感じる。
「…………」
由香ちゃんは足元に散らばる封筒を見て真っ青になり、ふらっ……とその小柄な身体を傾けた。
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