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65:ヒロインの回想
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◆ ◆
『カラフルラバーズ』の世界に転生したと気づいたのは小学二年生のときだった。
校庭の鉄棒から落ちた衝撃で前世の記憶を思い出したあたしは、自分がヒロインである現実を飛び上がって喜び、神さまに深く感謝した。
その日から毎日毎日神さまにお祈りした。
『どうか何事もなくあたしがヒロインになれますように』と。
一年ほど経って、りっちゃんが現れた。
りっちゃんはあたしの願いから生まれた神だと自己紹介し、あたしをヒロインにするために尽力してくれた。
あたしにとてつもない『ヒロイン補正』をかけ、周りの人間からあたしへの敵意を消し去り、無条件で好印象を持つように認識を弄った。
他人の頭上に好感度ゲージが表示されるようになったのも、りっちゃんがそうしてくれたから。まるで視界の一部がゲーム画面になったようで面白かった。
それからのあたしはヒロインというよりも女王だった。
頭上の好感度ゲージを見れば相手の好き嫌いがすぐに把握できるので、プラスの『好き』に傾くよう努力した。そうすれば自然と人が集まった。
誰もあたしに逆らわず、望めば全てが思い通りになった。
誰もがあたしを愛し、敬い、尊重してくれた。
実に快適で平穏な日々の中、思うのは拓馬たちのことばかり。
何しろ彼らは運命の相手。
あたしの恋人であり、将来の旦那候補である。
あたしはりっちゃんに拓馬たちを探させ、見つけ次第感情制限をかけさせた。
万が一にもあたし以外の女子を好きになってもらっては困る。
あたしこそが彼らのヒロインなのだから。
りっちゃんの報告によれば拓馬たちは大層な美少年、『カラフルラバーズ』そのままの容姿みたいで、会うのが楽しみだった。
ゲーム本編の筋書きを守るならば、彼らと初めて会うのは高校二年生。
でもそんなに悠長に待てるわけもなく、中学を卒業し、親にある程度の自由を許される高校生になってから、あたしは一度だけ藤美野に行った。
残念ながら拓馬たちには会えなかったけれど、その代わり、帰る途中の駅前で野々原悠理を見つけた。
彼女があたしの目を引いたのは、その頭上に好感度ゲージが見えなかったからだ。こんなことは初めてだった。
どういうことか尋ねると、りっちゃんは野々原悠理があたしと同じ転生者である可能性を指摘した。異界から来た人間だから、自分の力が通用しないかもしれない、と。
対策として、りっちゃんはハムスターの下僕『シロ』を作り、彼女に張りつかせることにした。
もし彼女が拓馬たちに何かしたら下僕が教えてくれる、だから放っといても大丈夫。そのはずだった。
けれど、藤美野の夏祭りの日。
拓馬たちと会えるかなと、胸をときめかせて祭りの会場に行ってみれば、あろうことか、拓馬は野々原悠理の手を引き、楽しげにデートしていた。
しかも拓馬の彼女に対する好感度ゲージはほぼMAX、恋心を封じていなければ恋人になっていたことは確実だった。
許せるわけがなかった。
いくら転生者とはいえ、野々原悠理はただのモブだ。
『カラフルラバーズ』に野々原悠理なんて名前は出てこない。
モブがヒロインの座を奪うなんてあってはならないことだ。
『カラフルラバーズ』の世界に転生したと気づいたのは小学二年生のときだった。
校庭の鉄棒から落ちた衝撃で前世の記憶を思い出したあたしは、自分がヒロインである現実を飛び上がって喜び、神さまに深く感謝した。
その日から毎日毎日神さまにお祈りした。
『どうか何事もなくあたしがヒロインになれますように』と。
一年ほど経って、りっちゃんが現れた。
りっちゃんはあたしの願いから生まれた神だと自己紹介し、あたしをヒロインにするために尽力してくれた。
あたしにとてつもない『ヒロイン補正』をかけ、周りの人間からあたしへの敵意を消し去り、無条件で好印象を持つように認識を弄った。
他人の頭上に好感度ゲージが表示されるようになったのも、りっちゃんがそうしてくれたから。まるで視界の一部がゲーム画面になったようで面白かった。
それからのあたしはヒロインというよりも女王だった。
頭上の好感度ゲージを見れば相手の好き嫌いがすぐに把握できるので、プラスの『好き』に傾くよう努力した。そうすれば自然と人が集まった。
誰もあたしに逆らわず、望めば全てが思い通りになった。
誰もがあたしを愛し、敬い、尊重してくれた。
実に快適で平穏な日々の中、思うのは拓馬たちのことばかり。
何しろ彼らは運命の相手。
あたしの恋人であり、将来の旦那候補である。
あたしはりっちゃんに拓馬たちを探させ、見つけ次第感情制限をかけさせた。
万が一にもあたし以外の女子を好きになってもらっては困る。
あたしこそが彼らのヒロインなのだから。
りっちゃんの報告によれば拓馬たちは大層な美少年、『カラフルラバーズ』そのままの容姿みたいで、会うのが楽しみだった。
ゲーム本編の筋書きを守るならば、彼らと初めて会うのは高校二年生。
でもそんなに悠長に待てるわけもなく、中学を卒業し、親にある程度の自由を許される高校生になってから、あたしは一度だけ藤美野に行った。
残念ながら拓馬たちには会えなかったけれど、その代わり、帰る途中の駅前で野々原悠理を見つけた。
彼女があたしの目を引いたのは、その頭上に好感度ゲージが見えなかったからだ。こんなことは初めてだった。
どういうことか尋ねると、りっちゃんは野々原悠理があたしと同じ転生者である可能性を指摘した。異界から来た人間だから、自分の力が通用しないかもしれない、と。
対策として、りっちゃんはハムスターの下僕『シロ』を作り、彼女に張りつかせることにした。
もし彼女が拓馬たちに何かしたら下僕が教えてくれる、だから放っといても大丈夫。そのはずだった。
けれど、藤美野の夏祭りの日。
拓馬たちと会えるかなと、胸をときめかせて祭りの会場に行ってみれば、あろうことか、拓馬は野々原悠理の手を引き、楽しげにデートしていた。
しかも拓馬の彼女に対する好感度ゲージはほぼMAX、恋心を封じていなければ恋人になっていたことは確実だった。
許せるわけがなかった。
いくら転生者とはいえ、野々原悠理はただのモブだ。
『カラフルラバーズ』に野々原悠理なんて名前は出てこない。
モブがヒロインの座を奪うなんてあってはならないことだ。
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